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ヨーロッパでは有名な大聖堂は数あれど、田舎町の教区教会で、訪問者が世界一というのは、わが教会であるというのがホーリー・トリニティ・チャーチの言い分である。だが意外なことに、この有名な教区教会が財政難であるという。あと9年後には、この教会で洗礼をうけ、この教会に埋葬された超有名な詩人の没後400年をむかえるというのに!この度、ワシントンポスト紙の記者がこの教会を訪れた。
教会は老いても詩人はやはり超人気
メアリー・ジョーダン記者、
ワシントンポスト紙 2月6日
ストラットフォード・アポン・エイボン、イギリス
一月のある寒い日の午後2時30分、ボール・ロアンはホーリー・トリニティ・チャーチ(聖三位一体教会)に来た。ウィリアム・シェイクスピアの墓の前に立ち止まり、墓石に刻まれた呪いの言葉を読んだ。
「この石に触れざる者に幸あれ わが骨を動かしたる者に呪いあれ」
「なんて書いてあるの?」古い英語に必死になっていた中国生まれのロアンは尋ねた。
「これは警告でね。この骨をいじった者は呪われる!」と67歳のニゲル・ペンは言った。彼はエイボン川のほとりにある、この歴史的教会で手助けをしている。シェイクスピアは石の洗礼盤で洗礼を受けた。この洗礼盤は今では造花で埋められおり、1616年彼が埋葬された墓石のそばにある。
この当時、人々は高いお金を払って40年間教会内の土地を借り受け、40年後に他の人のために骨を退けたのである。しかし、ペンが言うには、シェイクスピアの死後まもなく墓石に四行詩を書いて彼の骨に触らないように、警告した人物がいる。
「彼を惜しんだ人がいたことは確かだよ」とペンはロアンに言った。ロアンはうなずきながら、小さいデジタルカメラで写真を撮った。「親友がいたことは確かだね」
シェイクスピア自身がこの墓碑銘を書いたという人もいるが、ペンが言うには、その証拠がない。「でもこの警告の効果はあったわけさ!」
2時45分、バスに乗ったアルゼンチンの学生の一団が真鍮の手すりと墓の下でひざまずくために敷かれている赤いビロードの周りに集まった。他の観光客も、世界最高の作家と称される人物の最後の安息の場所を一目見ようとしてその後に続いた。ほとんどの人は献金集めの白髪の婦人が示唆する3$を入場料(強制ではないが)として払った。学生は1$である。
金は800年たった教会にとって今大問題である。天井は漏れ窓の金属は腐食し、不吉なシバンムシが古い梁に入り込んでいる。これはイギリスではどこにでもある話である。現代の世俗主義の風潮で、何百という古い教会が信者がいないまま放置され、その修理には何千万ドルもの費用がかかる。
シェイクスピアの教会の会という団体が800万ドル以上の資金を集めようとしている。ペンによれば、オスカーの最優秀女優賞にノミネートされたイギリスの女優ジュディ・デンチが後援者の一人である。
教会の老朽化に心を痛めるペンは「このままだと大変な大変な損失になるよ」と言った。細い縦縞のスーツを着たこの痩せた人は50フィートの天井を見上げ、嵐になったら、水が柱を伝って流れ落ちている箇所を指摘した。
北京生まれのロアンは、イギリスの大学で金融の勉強をしているが、シェイクスピアの墓を眺めるにつれて困惑した様子であった。彼の墓は祭壇の左に、彼の妻アン・ハザウェーの横に置かれている。「シェイクスピアは文学では非常に重要な人物のに、なぜ墓が真ん中に置かれていないの?」とロアンは尋ねた。
毎年二十万人以上の人がこの教会を訪れる。日本とアメリカ、中国からも増えているが、みな同じ質問をする。
ペンは熱心に説明した。シェイクスピアの埋葬場所は彼の文学的才能とは何の関係もないのだと。彼はこの教区教会の世俗牧師だったから、そこに埋められたというのが理由である。ロアンは数ブロック先の町の中心に戻ったが、10代のアルゼンチンの子供たちは他の周りでざわめき互いに写真を取り合っていた。ニコラスという子には何の感銘もなかったようだ。「死んだ人ばっかりだもの」
だがこの死せる人物は相変わらず人々を惹きつけ続けた。
3時45分には、ドイツ人のカップルが入ってきて「ロメオトジュリエット」の作者の安息の場所を見て感激した様子であった。野菜と果物の有機栽培をを営むアラバマ州のコリンズ・デービス25歳はびっくりした様子だった。「アメリカにはこんな古いものは無い」と言い、膝をついて写真を撮った。
4時には、ステンドグラスから漏れる太陽の光がかげり始めたが、オーストラリアのサンドラ・ハッチングスはこの教会の国境を超えた魅力について語った。「国籍はどうであれ、彼はすべての人々を魅了しました」キャス・ブランはこの日曜日の午後、この古いイギリスの教会を訪問した数少ないイギリス人の一人であった。
「私は彼がウェストミンスター寺院に葬られているものと思っていました」と彼女は言った。このロンドンの名所にはチャールズ・ディケンズ、ラドヤード・キプリング等イギリス文学の巨人が眠っているからである。彼女は言うには、たぶんイギリス人は「シェイクスピアはあまりに身近である」のでそれが当然と思いこんでる。
彼女は話しているとき、彼女の息子がクスクス笑いながら、真鍮の手すりを潜り始めた。彼女はそこを優しく引きとめ、「エイダン、坊や、シェイクスピアのお墓に入ってはいけません」と言った。
ペンは上機嫌で質問、特に呪いについてに5時まで答えていた。閉館は5時で、日曜日の夜のミサの準備を始めなければいけない。
*ちなみに中国人学生ロアン君が解読に苦労したシェイクスピアの墓碑銘の四行詩の全文は次のごとくである。
Good friend for Iesus sake forbeare
To digg the dust encloased heare:
Blest be ye man yt spares thes stones
And curst be he yt moves my bones.
現代英語にすれば以下のようになろうか。
Good friend, for Jesus' sake forbear,
To dig the dust enclosed here.
Blessed be the man that spares these stones,
But cursed be he that moves my bones.
ピープスの日記で ye は you と the であることは承知していたが、yt は知らなかった。yt が that の短縮形であると書いてあったのはOEDだけであった。まだ IとJの区別がなされていないのは墓碑銘という伝統的であるべき文章だからであろうか。ちょっとませたイギリスの子供なら読める英語なのだろうか。
さらに教会のサイトは素っ気ないが
http://www.stratford-upon-avon.org/
お金に困っているみたいだがシェイクスピア様のおかげで、信者がいなくて倉庫に転用する教会よりはましである。たしかに教会は天井が高いので雨漏りがなければ倉庫にはなるかもしれない。だが檀家がある以上、拝観料を取り立る日本のお寺のようにするわけにもいかないのが悩みである。あくまでも献金である。
また求人広告も出ている。日本語の出来る方とは書いてないが、教会の経営、観光のお仕事に自信のある方は英語で履歴書を書いて送られてはどうだろう。応募の期限は今月いっぱいである。
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