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「今日の詩」の選者が送ってきたのは「リー・ハント」 なる詩人の「アブ・ベン・アデム」という詩である。詩はもちろんのこと作者も知らなかった。
「アブ・ベン・アデム」正式なアラビア名はイブラヒム・ビン・アダムである。マホメットの友人であり、二代目のカリフになった人の子孫であり、今のアフガニスタン北部の一地方のサルタンであった。神の啓示を受け、悔い改めて玉座を捨て、苦行して神の教えを説いた人物であるとのこと。
西欧社会で知られたのはこのリー・ハントの有名な詩のせいであるそうだ。なるべくキリスト教徒であるハントのキリスト教的な響きのする語彙を避けようとも考えたが、英文の訳者にそんな権限はないのかもしれない。ただ気をつけて頂きたいのは、アラーの神を信ずるアデムがキリスト教の神の啓示を受けて悔い改めて回心したわけではない。
Abou Ben Adhem
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Abou Ben Adhem (may his tribe increase!)
Awoke one night from a deep dream of peace,
And saw, within the moonlight of his room,
Making it rich, and like a lily in bloom,
An angel writing in a book of gold:-
Exceeding peace had made Ben Adhem bold,
And to the presence in the room he said,
'What writest thou?' - The vision raised its head,
And with a look made of all sweet accord,
Answered 'The names of those who love the Lord.'
'And is mine one?' said Abou. 'Nay, not so,'
Replied the angel. Abou spoke more low,
But cheerly still; and said 'I pray thee then,
Write me as one that loves his fellow-men.'
The angel wrote, and vanished. The next night
It came again with a great wakening light,
And showed the names who love of God had blessed,
And lo! Ben Adhem's name led all the rest.
Leigh Hunt
Ibrahim Bin Adham
アブ・ベン・アデム
アブ・ベン・アデム(彼の部族に栄えあれ!)
彼はある夜平安の眠りから覚め
部屋を照らす月光の中で見たものは
辺りを気高くし 百合のような
天使が黄金の書を書いている姿。
至福の平安にみたされ
声を掛けたベン・アデム
「何をなさっています?」― 幻は頭を上げ
いとも優しい表情を浮かべて
「神を愛する人達の名前だよ」と言われた。
「私の名前も?」とアブはたずねた。「いや」
と天使の答。アブはでも嬉しそう
ささやいた「お願いです書いて下さい
神に忠実な人達を愛していると」
天使は書いて 姿を消した。次の夜
まばゆい光とともに現れ
神の愛が祝福した人達の名前を見せた。なんと!
ベン・アデムの名前が最初に載っていた。
リー・ハント
訳し終わってなぜこの詩が有名なのか分からなかった。イギリス帝国主義の時代のオリエント趣味に受けたのであろうか。彼は千夜一夜物語に登場するカリフではないのだが。
トップ写真にも困った。徹底した偶像崇拝否定のイスラム教の聖人である。いっそのこと作者の肖像を載せることにした。
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