ヘ短調作品34

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「今日の詩」は以前紹介したことがある。作者 Herrick のカタカナ表記を「ハーリック」としていた。今日リーダーズで調べたところ、「ヘリック」となっていたので、改めて披露する次第である。さらにラファエル前派のヘリックの詩を題材にした絵が見つかったので、併せて紹介する。

ヘリックは僧籍にあり信者にお説教をしたこともある。現在では極めて現世的というより猥雑な感じがする詩で知られている。17世紀のイギリスは信仰心が厚く、信徒のお布施も多かったろう。家柄が貴族ではない頭のいい子にとって、お坊さんになるのは良いキャリアだったのだろう。

生臭坊主だったかと思えば、彼は独身で人生を終えた人であり、女性体験があったのかどうか疑わしい。エロティックな文学の作者はえてして真面目な人によって書かれるものらしい。


Delight In Disorder.

A sweet disorder in the dress
Kindles in clothes a wantonness:
A lawn about the shoulders thrown
Into a fine distraction:
An erring lace, which here and there
Enthralls the crimson stomacher:
A cuff neglectful, and thereby
Ribbands to flow confusedly:
A winning wave (deserving note)
In the tempestuous petticoat:
A careless shoe-string, in whose tie
I see a wild civility:
Do more bewitch me, than when art
Is too precise in every part.

Robert Herrick


乱れている方が

衣装の色っぽい乱れは
内緒の浮気の始まり。
肩に引っ掛けたローンは
目の保養。
レースの乱れがあちこち
深紅の胸飾が魅力的。
袖口が無造作だから
リボンもめちゃくちゃ。
愛嬌たっぷりの波が(注目!)
乱れたスカートに。
だらしない靴ひもの結び方
作法が乱れています。
完璧な作法よりも
私は魅惑されます。

ヘリック

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2.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからヨハネス・ブラームスへ

アウスゼー、1876年8月1日(1)

親愛なるヘル・ブラームスへ

お友達のベルタ(2)から伺いましたけど、あなたから親切な便りがあるのですって。それからハインリッヒの「ブラームスの主題による変奏曲」の楽譜を見てみたいとおっしゃったのですか。わたしはもう嬉しくって、彼女の言うことがいっぺんには信じられませんでした。ハインリッヒはこの変奏曲であなたに迷惑をかけたくないといっていました。聞こえるのは海原の怒涛と岸を打つ波の音だけという、お好みの孤独な別荘におられるのに、こんなに単調でおとなしい音楽は歓迎されないだろうというのです。でもあなたの思いやりのあるご希望を聞いて事態は変わりました。あなたがこの作品を完全に否定されるとは思いたくないですけど、でもご不満でしたら、遠慮なく、おっしゃってください。雄鹿が谷川を慕って喘ぐように、ハインリッヒも手厳しい批評であれ、気休めの批評であれ、率直な批評を慕って喘ぐことになると思います。

 サスニッツでは快適な日々を送っていらっしゃることと推察いたします。それはあなたにとってもわたしたちにとってもいいことですわ。快適であれば、お仕事もはかどるでしょうし、わたしたちはあなたの努力の成果をお待ちできますものね。

 サスニッツでは、灰色のビーフとスターチとヴァニラでこしらえた、なんともいいようのないグジャグジャのプッディングしか出てこなかったというお話を覚えています。でもあなたはきっとそんなのには無頓着でしょうね(3)。とってもつらい経験をしたある女の人から聞いたのですが、最後には自分の部屋でこっそりゆで卵か、目玉焼きの毎日だったそうですよ。あなたももっと追い詰められたら、同じようになさればと思ってこのお話をしました。ここではわたしたちの生活は悪くありません。川鱒と鮭は豊富にあります。お値段がすごく高くて一度も食べていませんけど。でもカツレツやベーコン・ケーキなら手が届きます。あなたのお知り合いのウィーンからいらしたベルタからは、夕食用に素敵なミート・プディングを時々送ってもらいます。それに、お宅を伺うときにはいつも、天下一品のアウスゼー・ブランドのレープクーヘンを持たせてくれます。ですからわたしはよくお宅に伺っては、女にしかできない芸当ですけど、たあいもないお喋りを千と一つもしています。わたしは、ベルタよりは大人だと思っていますけど、ずっと仲良くお付き合いしています。

 ベルタは可哀想に突然亡くなられたお父さん(4)のことでつらい思いをしています。この方のお父さんはどの点からみても親子の関係では傑出した方でした。でも今は、お母さんのことを思って元気そうに振る舞い、もっぱらお母さんを慰めることに専念しておられます。

 まあどうしてこんなに長い手紙になったのでしょう。作法を知らないとは思わないでくださいね。そう思われても、ベルタのせいにしてください。

 最後になりますが、ライプツィッヒ訪問を考えられたことはありませんか。この前はそんなにいやな思いはなさらなかったはず。ご存知のように、忌々しいフィリシテ人もいますけど、あなたを尊敬するお友達は多数います。

また訪問されるときには、ぜひお願いしたいことがありますけど。ホテル・ハウフェはやめて、ヘルツォーゲンベルク家にお泊まりください。ベッドはハウフェと同じぐらい上等、コーヒーはずっとおいしいですし、すごく広いとはいえませんけど、まずまずの広さの二部屋、ベッド・カバーは絹の手触りで、灰皿は数え切れないほどありますし、何よりも平安と静けさをお約束できます。そしてハウフェの建物のように金メッキや彫刻もありませんし、絢爛豪華とはいきませんが、われたしたちはそれに対抗して、あなたがわが家では快適に、憂い事もなく、過ごせるようにいたします。そしてあなたの来訪がわたしたちにとってどんなに喜びであるかをご確認頂けます。ぜひ考えてみてください。わたしたちは現在フンボルト・シュトラーセに住んでいます。カイル法律事務所のすぐ裏です。ゲバントハウスの理事の皆さん(5)を訪問なさるにはすごく便利です。

では、もうここでやめなくては。さようなら親愛なるブラームス様。わが家訪問の件よろしくお考え下さいませ。

エリーザベト・ヘルツォーゲンベルクより 







(1)夫婦が同じ日に互いに気づかずに手紙を書き、二人ともブラームスに一部ずつ送ったことは明白である。

(2) フラウ・ベルタ・ファーベル(Frau Bertha Faber)、ウィーンの福音派の牧師グスタフ・ポルブスツキー博士(Gustav Porubszky)の娘、アルトゥール・ファーベル(Arthur Faber)の妻。ハンブルクの女声合唱団時代(1859-1861)以来のブラームスの友人 。

(3)彼女は少し皮肉を言っている。ブラームスは食事には無頓着で知られていた。

(4)1876年7月17日死去。

(5)ブラームスはいかなる儀式も嫌うことで知られており、おそらく生涯一度も表敬訪問をしていないはずである。



* 「雄鹿が谷川を慕って喘ぐように」というのは旧約聖書の詩編にあるダビデ王作とされる有名な詩である。夫妻が住むライプツィッヒに音楽院を創設したメンデルスゾーンが合唱曲を作っている。

アウスゼーのレープクーヘンまだ老舗は続いているようである。香料のきついジンジャー・ブレッドの類ではなかと思う。

* ブラームスはこの書簡に出てくるベルタの出産を祝って彼の有名な子守歌を献呈している。


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