ヘ短調作品34

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今日私が取り上げたのは、ドイツの詩人クロップシュトックの「バラの花輪」である。クロップシュトックは18世紀後半に活躍したドイツの詩人である。ギリシア・ラテン語に通じ、古代の牧歌に影響された詩を書き、名声を博した人とある。学生時代に読んだか、名前を見た記憶のある詩人である。この詩はシューベルトを始め、数人の作曲家が付曲している。たしかに18世紀の古典ブームに貢献した人だろうし、シューベルトがほってはおかない詩人ではある。



Das Rosenband

Im Frühlingsschatten fand ich sie;
da band ich sie mit Rosenbändern:
sie fühlt' es nicht und schlummerte.

Ich sah sie an; mein Leben hing
mit diesem Blick an ihrem Leben;
ich fühlt' es wohl und wußt' es nicht.

Doch lispelt' ich ihr sprachlos zu
und rauschte mit den Rosenbändern:
da wachte sie vom Schlummer auf.

Sie sah mich an; ihr Leben hing
mit diesem Blick an meinem Leben,
und um uns ward's Elysium.

Friedrich Gottlieb Klopstock



バラの花輪

彼女は春の木陰にいた。
僕は彼女をバラの花輪で結んだ。
彼女は気付かずに眠っていた。

僕は彼女を見つめた。僕の生命は
一目で彼女の生命と結びついた。
僕には未知の活気ある生命を感じた。

でも静かにつぶやきながら、
バラの花輪をゆすると
彼女は眠りから覚めた。

彼女は僕を見つめた。彼女の生命は
一目で僕の生命と結びついた。
あたりはまるでエリュシオン。

クロップシュトック

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32.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

フンボルト・シュトラーセ[ライプツィッヒ]、1878年3月10日

親愛なるわが友へ

 ドレスデン(1)(訳注1)でのあの日々を振り返るとき、わたしはこの喜びを否定する気は毛頭ございません。大好きなニ長調は寝てもさめてもわたしたちの脳裏を去りません。こんなめったにない幸せを感謝する言葉もないほどです。わたしはしかし、今回お手紙を差し上げるのはほかの理由からです。わたしはあなたに抗議したいのです。わたしたちは、真剣であれ、冗談であれ、たまたま飛び出す言葉を許しあう、共通の足場の上に立っていると考えます。あなたの周囲でもっとも忍耐強くお香をたいている者の一人からの意見を辛抱して聞いてください。この前提から始めたいと思います。

 あなたはシラー・シュトラーセで最初は、優しくて親切でした。窓際の席でのお話も(お酒を全部こぼした後で)、わたしの兄のささいな矛盾を説得的な論理で直したのもとっても楽しかったと思います。それからいやな男の名前が出てきました。そして、あなたは確か、その男がハインリッヒの四重奏(2)を誉めておきながら、その年の冬には、あなたの変ロ調(3)を軽蔑し否定した、あの古い話にふれました。これは独りよがりの皮肉から出たことで、誰かが言ったようにあなたはいつも自分のことをあざけります。でもあなたが話しかけていたのは、公正な第三者ではなくて、この批評家の無知を真っ先に笑うことをあなたが充分ご存じの人物です。イギリスを活動の拠点にするなどという、自分から取り下げるべき考えをもった臆病者に対してではありません。自分自身をあなたの靴の紐をほどくにも値しないと卑下し、真理の追求者であり、謙虚な弟子に対してです。この人にとって、過大な評価は得られるものが皆無であるために、こっぴどい批評よりも千倍も苦痛なのです。こんなことに無頓着である、あなたの雅量のなさ(あえてそう言わせていただきます)は非難されるべきです。ハインリッヒのためというよりあなたのせいでわたしは傷つきます。あなたが彼を理解していないのが悲しいのです。この抗議を去年試みるつもりでしたが、ベックマン(4)がたまたま居合わせたので、その機会を失いました。またそのときには冷ややかな洒落で押さえ込まれるのではと懸念しました。でも今はもう怖くはありません。率直に申し上げますが、これは親切心からでも正義感からでもありませんし、まったくあなたらしくありません。あなたに適合しない血の一滴のせいであることをわたしは望むものです。出血多量で死なないようとりわけ細い静脈を切ってその血を出しては如何でしょう。

 わたしをもっとも傷つけたのは、あなたがさも気の毒そうに「可哀想に、可哀想に」と言ったことです。自分の言葉はある程度考えて使わなければ。でも、あなたが誤解し傷つけている人物は、あなたに人生を賭け、プードルか子供のように、またカトリック教徒が守護聖人を愛するようにあなたを愛しているのです。この場合には、たとえ愛情を上手に表現する才に恵まれていなくても、話は違ってきませんか。この場合に一番傷つくのはわたしです。申し上げておきますが、彼はこの大それたお説教のことを何も知りませんし、心安らかに床につきました。日の出とともに万事正常であることは間違いありません。彼の妻は怒りっぽい質ではありませんが、どうしても怒りをあなたにぶつけるのを押さえきれません。これもあなたが招いたことです。わたしは怒りと同時に悲しくなります。わたしが無条件の誠意と限りない尊敬を与え続けている人に対する不満に耐える以上の苦痛はありません。

 あなたがこんな時にご自身が残酷であるとは思ってもいないでしょう。あなたの背中に、こんなことを言わせたり、他人を致命的に傷つけさせたりすることのできる「黒犬」の一種が(おかげさまで身近には知りませんが)いるからです。致命的であることが分かったら、あなたはそれを捨てるでしょう。あなたは心の底では親切な方で、真の愛情に対して意識的に軽蔑を投げ返すはずはないからです。

 あなたの庭からこの毒草を取り除いてください。そしてこの際のない手紙のせいでわたしを憎まないでください。女というものは簡潔ではありえませんものね。

 わたしがあなたから短いお手紙をうけとるまでは(そうしたら一年で許して上げます)、わたしの「心の苦しみ」(5)をあなたのコラール前奏曲(訳注2)で癒します。これは諳んじていて、暗がりでも一人で演奏できます。深甚なる尊敬をヨハネス・ブラームス様に。心からの握手を。

エリーザベト・ヘルツォーゲンベルク(6)より 




(1)ニ長調交響曲は3月6日の灰の水曜日にドレスデンの王立オペラ劇場で宮廷楽団により演奏された。

(2)リーター・ビーダーマンから出版され、ブラームスに献呈された作品42の3曲中の1曲。

(3)変ロ調の四重奏曲、作品67 。

(4)ロベルト・ベックマン(Robert Beckmann,1848-1891)、バイオリニストで弦楽四重奏団のリーダー。

(5)オルガン曲、「おお悲しみよ。おお心の痛みよ」の主題によるコラール前奏曲とフーガ。Musikalisches Wochenblatt の付録として発表された。

(6)ブラームスの返事は無くなっている。次の手紙からはブラームスが返事を書き、フラウ・フォン・ヘルツォーゲンベルクをなだめるのに成功したことは明らかである。


訳注

1.写真は1880年撮影とされており、ヴュルナーが指揮していた王立歌劇場は旗が立っている建物である。戦後再建されたザクセン州立歌劇場と大差はないが、ブラームスの時代にきわめて近い時代の光景を見ることができる。



2.あいにくタダで聞くことはできないが、作品番号のついていない、ブラームスの珍しいオルガン曲の楽譜は見ることができる。

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