ヘ短調作品34

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「今日の詩」はエメリー・ディキンソンの「俺は弾が込められた銃」である。原題は” My Life had stood - a Loaded Gun –“である。彼女が精魂込めて書いた詩であることは間違いないが、この詩の決定的な解釈はまだないそうである。女らしさをとうに捨てたエミリーであるが、人間としても非常に危ういところまで来ている。その意味で注釈学者の関心のみならず、フェミニストの論争ネタとしても有名であるらしい。Webにフェミニストとおぼしき女性の長文のエッセイがあったが、まだ読んではいない。

私はエメリーの課題に悩まされるアメリカの学生の足元を見たサイトを時々訪問しているが、このサイトの桜になって、なにがしかの謝礼を受け取っていると思われる人物の短いコメントを参考にした。この詩は猟銃と所有者の関係であるというものである。おそらくクラスでインストラクターの話を聞いた人物であろう。それも一つの解釈だと思い、それに沿って訳を試みた。すなわち、所有者を憎む猟銃が彼の命を狙っているが、最後の一歩のところで踏み切れないところはいつものエメリーである。

My Life had stood - a Loaded Gun -

My Life had stood - a Loaded Gun -
In Corners - till a Day
The Owner passed - identified -
And carried Me away -

And now We roam in Sovereign Woods -
And now We hunt the Doe -
And every time I speak for Him -
The Mountains straight reply -

And do I smile, such cordial light
Upon the Valley glow -
It is as a Vesuvian face
Had let its pleasure through -

And when at Night - Our good Day done -
I guard My Master's Head -
'Tis better than the Eider-Duck's
Deep Pillow - to have shared -

To foe of His - I'm deadly foe -
None stir the second time -
On whom I lay a Yellow Eye -
Or an emphatic Thumb -

Though I than He - may longer live
He longer must - than I -
For I have but the power to kill,
Without--the power to die.

Emily Dickinson


俺は弾が込められた銃

俺は弾が込められた銃 − 立っていた −
隅っこに − 夜が明けるまで
持ち主が通りがかり − 俺を確かめ −
俺を持ち去った −

俺達は領主の森を徘徊し −
雌鹿狩りをする −
男に話しかけるたびに −
山がすぐに返事をする −

俺がほくそ笑むと、谷には
励ましの光が輝く −
ヴェスヴィアスの満足を
表す表情のよう −

夜になり − 大猟の日が終わり −
俺は親父の顔を見つめる −
ケワタガモの羽毛の枕で −
一緒に寝るよりまし −

俺は心底−こいつの仇の仇 −
俺が黄色い目を剥き
断固拒絶の親指を出すと −
誰も二度と歯向かいはしない −

俺はこいつより − 長生きするかも
いや先に逝くのは − 俺かな −
銃の俺は殺すことはできても
死ぬことが−できないのだ。

エミリー・ディキンソン

なお My life を「俺」と訳した。弱強格の関係でI とせず、My life どうしたのかもしれないが、「俺の人生」という訳はどうかと思う。猟銃という道具のコンパクトな擬人的表現であると思った。最初「命ある俺」を訳語として考えてみたが、やはり冗長な感じがして、結局「俺」に落ち着いた。

絵はイギリス18世紀の画家ライト・オブ・ダービーの描いたヴェスヴィアス火山である。

なお改訳「私は噴火寸前の側火山」は以下を参照して下さい。

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今日のドイツの詩は「夢見るセバスチャン」の第11部「ランスの夜」である。相変わらず「黄昏」、「憂鬱」、「暗き」ということは出て来るもの、彼としては快適な夏の描写である。

Sebastian im Traum 11

Abend in Lans

Wanderschaft durch dämmernden Sommer
An Bündeln vergilbten Korns vorbei. Unter getünchten Bogen,
Wo die Schwalbe aus und ein flog, tranken wir feurigen Wein.

Schön: o Schwermut und purpurnes Lachen.
Abend und die dunklen Düfte des Grüns
Kühlen mit Schauern die glühende Stirne uns.

Silberne Wasser rinnen über die Stufen des Walds,
Die Nacht und sprachlos ein vergessenes Leben.
Freund; die belaubten Stege ins Dorf.

Trakl


夢見るセバスチャン11

ランスの夜

黄味を帯びた作物の束を通り過ぎて
黄昏の夏の遍歴。ツバメが出入りする
漆喰のアーチの下で、われらは真っ赤なワインを飲んだ。

快適。ああ憂鬱と深紅の笑い。
夜と緑の暗き芳香が驟雨とともに
われらの熱き額を冷やす。

銀水が森を滴り落ちて行き
夜と無言で忘れ去られたし命。
友人。葉茂れる村への小道。

トラークル

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85.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

〔ライプツィッヒ〕1881年3月27日

 親愛なる友へ

  あなたの写真を見てわたしたちは大喜びしました。本当のあなたを確認しました。善良で幸せそうな表情がとってもいいと思いました。これは写真家がめったに 捉えることはないものです。シエナ宛てに手紙を書くのは大変です。あなたが届かない所にいることがはっきり分かっていては、うまく文通できません。あなたが、鉛色の空の下でのわたしたちの日常生活に興味を持つとは思えません。本当は、あなたがシエナ宛(1)の手紙を望んでおられることを知り感動しているのです。わたしはただ小さなイーゼルにのっている(しょっちゅう落ちますが)善良なるブラームスへ感謝しています。その横には、あなたのために催されたライプツィッヒの祭典で疲れた後に休んでおられた大きなソファがあります。あなたが、公演で冬の旅を懐かしく眺めているとき、ああ、ライプツィッヒはなんという哀れな彫像なのでしょう。さらに、陽気なライン地方の町々や心暖かいオランダでは、凱旋につぐ凱旋で英雄のように通って来られたのです。フラウ・エンマのアムステルダムやユトレヒトからの報告を読むたびに、わたしは羨ましくなりました。

 ここではいつも新しい問題や失望があります。まず、ルスト(2)が聖トマスの棕櫚の聖日に、オーケストラ用に編曲したト短調フーガを指揮します。彼は四声のための「コラール前奏曲(Choral Vorspiele)」に適当なテキストを付けました。彼をカントールに指名しまたのはあなたですよ。さらにファウスト(3)の 第二部のまったく出来の悪い演奏をがまんしていました。ハインリッヒはコーラスで歌いました。彼はもっと研究したかったのです。わたしも参加したのです が、リハーサルは一回だけでした。わたしはこのだらしなさに耐えられまずに辞退しました。第九交響曲を何とか片付けるのを聴いているのも悲劇です。こんな場合には、あなたの指揮が見られたら、聴けたらと思います。―――素晴らしい活き活きとしたリズムで。あなたの表情豊かな腕の動きは内からの衝動に応える ものであり、ただ他人から一定の成果を引き出すためではありません。あなたの音楽との同一性は、つまらない神経を排除し、考え抜かれた計画通りの効果をも たらします。

 ハレのコンサート(4)はああ実に魅力的でした。でも意見をいう人はいませんでした。この聖別された人物の前では全員がひれ伏し、彼の振る舞いは、燦然と光り輝く聖体顕示台に聖体をはじめて奉挙する僧侶のようでした。彼は気分が悪くなる解剖学の講義でもしているような時がありました。まるで、古代の彫刻から愛らしい肉体をはぎ取る 実験をし、骨と筋肉の仕組みを崇拝させようとするみたいでした。バネが機械を動かすのを知るのは面白いのですが、裸のままで横たわらせて無作法に指し示すともう面白くはありません。ビューローは、楽句ごとにハーモニーの変化ごとにきざな小休止をとりますが、これは許し難いものです。イ長調の最終楽章では、 所々で、彼がいいと思うところで完全休止しました。どの縦線にも独自の微妙な違いがあるものです。コリオラン序曲は、クライマックスになっても、前例がないほどゆっくりと演奏されました。生気のあるチェロのパートがこのテンポでは奇妙でした。ようするに、この演奏のもくろみはすべて、ベートーベンの外套をまといながら彼自身を顕示することだったのです。彼が、真似のできないやり方で振り返って、聴衆を見つめたとき、――もちろん彼はスコアなしで指揮します ――わたしはつい、ゲバントハウス・コンサートの前でわたしたちに向かって言った人を思い出しました。「今夜はコンサートに来ているのだ。考えていること はない。簡単なことだ。私がオーケストラを止めてみせましょうか」

と ころで、あなたのお友達のTh.がいました。彼は生粋のハンブルク子ですが、上品ぶってはいませんでした。キルヒナーが罵りはじめると、Th.は陽気に 笑ってこんな風に自分の意見をいうのを耳にするのは気持ちがいいと言いました。キルヒナーは優雅で愛らしい――というのが適切でしょう――デュエットを何 曲か作曲しました。彼はうさぎのように多産です。彼の作品はどれも、素人臭い駄作と比較すれば品位があり、素晴らしく音楽的ですから、歓迎せざるをえません。

  今日はたっぷり一日分鬱憤を晴らしました。あなたがイタリアにいらっしゃるのはご同慶の至りです。わたしはシエナを知っていて良かったと思います。あなたが円形劇場のような市場に着いたときの喜びが目に見えるようです。そこのレースに間に合っていたら、一番興奮したと言われたはずです。人々は昔の衣装を着 て、飾り立てられた馬が勢い良く観覧席を壊すので、いつも小さな事故があります。優勝者は宴会のときにテーブルにすわり、後援した女から鼻にキスしてもらいます。もし機会があれば、サン・ジミニャーノからヴォルテラに行かれてはどうでしょう。景色は神々しいまでに荒涼として印象的です。そこでわたしは、少年があのコンチェルト(5)の 第二楽章を思い出させる節を歌うのを聴きました。その歌には千もの思い出が埋められた埋葬室にかんする魅惑的な歌詞がついていました。大理石職人は夜の半分か全部を歌いながら過ごします。一人が言いました。「夜寝る奴はばかだよ。昼働いたらいつ歌うんかね」ああ、そこでは全てがなんて美しいのでしょう。なんと贅沢で、自然で、必然的なのでしょう。結局は当然のように受け入れてしまう、惜しみなく贅沢できる、明るさと温かさと意識しない美しさがあります。

 その中におられるあなたを妬んではいません。あなたはそれに値される方だからです。人によってはひどく妬ましく思います。みな風邪をひきますから、シシリーでは気を付けてください。あの懐かしい茶色の、もう泥のついていないコート(6)をよく干してくださいね。

  ではさようなら。この不名誉な長い手紙を帳消しにするためにしばらくはお手紙しません。ビルロート教授と一緒に旅行しているのでしょう。いつか彼にお会い できたらなんとすてきでしょう。彼はゲバントハウスの初演になぜ来られないのですか。あらためて、今まさにわたしたちの所有物になりましたレクイエムのことで感謝いたします。―― レントゲンと「ミス」からよろしくとのことです。

いつまでも忠実なヘルツォーゲンベルク夫妻より



(1) ブラームスは3月15日にイタリアに出発した。彼の二度目の旅行は最初の旅行より長期間にわたり、旅行先も広範囲であった。テオドール ・ビルロートとアドルフ・エクスナー教授が同行したが、ブラームスをローマに残した。彼はローマで過ごしたかったのである。行程は、ヴェニスフィレンツイエシエナ、 オルヴィエート、ローマ、ナポリ、シシリー、フィレンツェとピサを経由して帰った。ブラームスは5月7日、彼の48歳の誕生日にヴェニスに戻っている。

(2) ウィルヘルム・ルスト(1822-1892)、聖トマス教会のオルガニスト兼カントール。

(3) シューマン作曲。

(4) ビューローのベートーベン演奏会。書簡84。 彼女は後にビューローにたいする厳しい判断を修正すべきであると考えている。ビューローは、自分自身、管弦楽団、それに聴衆に確信が持てるまでは、特別な効果を狙って、お洒落な解釈者として休止しただけである。ピアノ演奏でも指揮でも同様である。彼の大げさな身振りは必然的なものであった。彼が状況を掌握 し、聴衆とうまく行きだすと、彼の解釈からは、個人的な性格がなくなり、彼が深く心にかけていた音楽の率直な表現になるのである。

(5) ブラームス、バイオリン・コンチェルト。

(6) ブラームスは新調すると色々と不都合があるので、新しい服を注文したがらなかった。友人から衣装をふやすように言われるのを非常に嫌った。

エリーザベトがブラームスに薦めたシエナの有名な競馬の光景である。

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