ヘ短調作品34

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「今日の詩」も以前にメイルで届いたフロストの詩である。今までも選者が重複したことがあるので300の詩を送ったと称しているが、全部で290ぐらいだろう。とてもじゃない難解な詩が残されているので、目標を280にしてみることにした。

今日の詩は難易度としては易しい部類に入り、作者も私のお気に入り。だが大変気が重い。でも訳したからには投稿してみよう。原題は” Out, Out“ である。きわめて口語的な題名が一番難しいが労働災害の時などに発する言葉であろうか。「ヤッチマッタ」と訳した。


Out, Out

The buzz-saw snarled and rattled in the yard
And made dust and dropped stove-length sticks of wood,
Sweet-scented stuff when the breeze drew across it.
And from there those that lifted eyes could count
Five mountain ranges one behind the other
Under the sunset far into Vermont.
And the saw snarled and rattled, snarled and rattled,
As it ran light, or had to bear a load.
And nothing happened: day was all but done.
Call it a day, I wish they might have said
To please the boy by giving him the half hour
That a boy counts so much when saved from work.
His sister stood beside them in her apron
To tell them "Supper." At the word, the saw,
As if to prove saws knew what supper meant,
Leaped out at the boy's hand, or seemed to leap
He must have given the hand.

Robert Frost


ヤッチマッタ

電動ノコギリがうなり声を出しながら
ホコリを上げてマキの長さに木を切り
微風が吹くと甘い匂を落としていった。
そこから目を上げては、山を数えると
山は遠くまで五段に重なり合っている
日が沈む中、はるかバーモントまでも。
電動ノコギリがうなり声を出しながら
仕事は軽快に進み、一山担ぐ必要がある。
今日はここまで、仕事仲間の連中が
見習いにあと30分と言ってくれれば
見習いは作業の終わる時間が数えられた。
エプロンを着た彼の妹がやって来て
「晩ご飯よ」と言った。ノコギリは
晩ご飯の意味が分かっているかのように
見習いの手から飛び上がったようだった。
見習いは手をヤッチマッタに違いない。

フロスト

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トム・トムスンの湖と崖の絵である。たいした力量の画家だと思う。彼はカナダの自然を描き、その後のカナダの画壇に登場した七人の絵描きグループ・セブンに大きな影響を与えた。私の個人的見解であるが、このグループの画家達はついにトム・トムスンを抜けなかったように思う。今日の詩もアルフォンス・ボールガールの詩である。それにしてもフランス語は韻を踏みやすい言語なのだろうか。ごく自然である。


La mouette

Aux coups de feu la mouette
N'a pas changé de chemin,
Et sa brune silhouette
Sur le ciel rose et carmin
Se découpe nette.

Par le seul appui du vent
Majestueuse elle plane,
Puis doucement, doucement,
Dans la brume diaphane
S'incline en avant :

Et glisse de telle sorte,
Qu'elle va choir où l'on voit
L'horizon fermer sa porte.
Elle baisse, baisse et choit.
La mouette est morte.

Alphonse BEAUREGARD (1881-1924)


カモメ

銃弾一発でカモメは
行路を変えはしない
茶色い影は
紅色の空にくっきりと
輪郭を描く。

風に支えられ
威厳を保って滑空し
静かに、静かに
澄んだ霧の中
前へと進んで行く。

同じように滑空し
いつも降りる
地平が閉門する所。
カモメは降りて、降りて行く。
カモメは死んだ。

アルフォンス・ボールガール

誘惑者 -- ヘッセ

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今日のドイツの詩は、ヘルマン・ヘッセの「誘惑者」である。ドイツの教養小説の伝統を多少とも受け継いでいるヘッセである。ヘッセ自身が今日の詩に出てくるような「誘惑者」だったとは思えない。仕事が意外にうまく行ったときの話と考えた方がいいのかもしれない。どこかで聞いたような教訓的な話で終わっている。

この詩4行ごとにピリオドがあるので区切ってみた。詩の韻の構造を調べるためである。構造は全ての詩節で[a, b, a, b]となって綺麗である。

Verführer

Gewartet habe ich vor vielen Türen,
In manches Mädchenohr mein Lied gesungen,
Viel schöne Frauen sucht ich zu verführen,
Bei der und jener ist es mir gelungen.

Und immer, wenn ein Mund sich mir ergab,
Und immer, wenn die Gier Erfüllung fand,
Sank eine selige Phantasie ins Grab,
Hielt ich nur Fleisch in der enttäuschten Hand.

Der Kuß, um den ich innigst mich bemühte,
Die Nacht, um die ich lang voll Glut geworben,
Ward endlich mein — und war gebrochene Blüte,
Der Duft war hin, das Beste war verdorben.

Von manchem Lager stand ich auf voll Leid,
Und jede Sättigung ward Überdruß;
Ich sehnte glühend fort mich vom Genuß
Nach Traum, nach Sehnsucht und nach Einsamkeit.

O Fluch, daß kein Besitz mich kann beglücken,
Daß jede Wirklichkeit den Traum vernichtet,
Den ich von ihr im Werben mir gedichtet
Und der so selig klang, so voll Entzücken!

Nach neuen Blumen zögernd greift die Hand,
Zu neuer Werbung stimm ich mein Gedicht ...
Wehr dich, du schöne Frau, straff dein Gewand!
Entzücke, quäle — doch erhör mich nicht!

Hesse


誘惑者

僕は多くの扉の前で立ち
僕の歌を多くの乙女の耳に入れ
僕は多くの綺麗な女を誘惑しようとし
ここでもあそこでもうまく行った。

口でうまく行ったときはいつも
欲望が満たされたときはいつも
幸福な夢物語は消え去り
幻滅した手で抱くのは単なる肉。

僕がぜひとも獲得したかった接吻
僕が熱烈に得ようと努力した夜
ついに僕の物となると − 花は萎み
香は失せ、幸は消えた。

僕は苦悩に満ちて寝床から起きあがった。
満足は倦怠になった。
夢の後、憧憬の後、孤独の後
僕はさらに燃えるような快楽を切望した。

何たること!占有で幸福にはなれない
実現は夢を打ち砕き
僕は彼女の好意を得ようと夢を詩に書き
詩は幸福に響き、喜びに満ちていた!

新しい花を躊躇しながらも握り
新しい獲得のために僕は詩を書く…
美しき花よ、身を守り、衣服を締めよ!
楽しみ、苦しめ − だが僕に気を許すな!

ヘッセ


絵は「誘惑者」の代名詞になっているカサノーヴァの出身地、退廃の都ヴェニスの風景。

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158.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

[ライプツィヒ]1885年5月21−22日

 親愛なる友へ

  あなたのカードから推察しますと、「宛先変更」だけでなく、急ぐよう要求しておられるのですね。すみません。わたしが大事な歌を長く持ちすぎていると思っていらっしゃるのですね。別段やましいところ――わたしは持っていても良いと思っておりました――はありませんが、気はとがめます。でも歌と別れることは できませんでした。「虫よけ箱」を包んだり、絨毯を払い、引っ越しの準備をしたり、独身の人には分からない、ありとあらゆる楽しい仕事の合間をぬって、こ の美しい作品に捧げるわずかの時間をひねり出すのは難しいことです。たしかに、歌曲は楽しくなりましたし、わたしが絶望的な恋に落ちたのも数曲あります。 直ちに言うとしたら、無条件に賛成できるのは中間のパートがホ長調になっている嬰ニ(1) (ダウメルの歌詞)の美しさです。これは世界でもっとも見事な歌曲の一つであることは間違いありません。声が理想的であるばかりでなく、「私はとても知りたかった(Ich gabe viel, um zu erfahre )」 の始まりが活気に充ち、メロディーの一連の音は適切で歌手と聴き手を喜ばせます。とりわけ、歌詞と音楽が深い感情と愛らしい生気で完璧に融け合っていま す。この愛撫は各所に惜しみなく注がれ、それぞれの細かい変化が特定の部分をより効果的にする計算された効果があります。たとえば「私の頭の考えは(In meinem Haupte die Gedanken )」で導入される八分音符とか位置だけ変えるハーモニーがそうです。見て感じるのは楽しいのですが、歌ってみて最後に「世界中でこんなに愛らしい響きはない(so wunderlieblich sei auf der Welt kein anderer Hall )と確信します。つぎに来るのは「航海(Meerfahrt )」(2)です。不思議に感動的な角笛の響き、イ短調のハーモニー上の変へ音、ホ短調上の変ハ音と続き、最後にBナチュラル(3)です。これらにははっとさせ新鮮さがあります。音楽素材の蓄えは尽きたように見えるし、選ばれた人以外にはその通りですが、これらは表現が要求されるときにいつまでも思い起こされる驚異の部に間違いなく入るものです。ねえ、あなた自身航海には格別弱いのではありませんか。この曲と嬰ニの曲に対する態度は「わたしとだれそれさんとどっちが好き」と訊かれて、「あなたが一番好きですけど、だれそれさんも一番好きです」と答える子供のようです。「航海」には高貴な余裕があり、真のソステヌートの特徴があり、雄大な輪郭があります。あなたが上手にこなされるものです。ハーモニーの独創性にも関わらず、調性がなんと安らかで健全なのでしょう。 立っている場所と向かう方向がはっきり定まっていています。七番の半音下げた抑制された苦悩が短調の最初の調子(4)にとけ込み方の美しさ。音声が初めて絶望的な嬰へ音(5)になりますが、――何と鋭く印象的で、それでいて抑制されています。
申し訳ないのですが、「夜鶯)」と「さまよい人」両方に正しい意見を言いません。事実、完全に承認できるのは一方――「夜鶯」 ――だけです。この曲は大好きです。メロディーは甘くて苦い夜鶯の歌そのものです。長い間隔と短い間隔で歓喜しているようです。情熱的な可愛い生き物。へ長調のパートの素朴な優しさが対照的に魅力的です(6)。「調べは消えた(verklungenen Tonen )」のクライマックスが見事に準備されていて、「お前の歌のかすかな余韻(In deinem Liede ein leiser Widerhall)」の歌詞のところで開始動機に楽しげに復帰します。この曲はまったく森の若葉のように美しく、わたしには 「見つけた(Gefunden)」――「彼の好みのものはなかった(nichts zu suchen, das war sein Sinn ) (7)――のように思えて最初から最後まで感銘を受けました。「さまよい人」には北の感触があります。第二のパートが充分補っていないため楽しい対照を見逃します(8)。いずれにせよ、「夜鶯」の後ではうまく行きません。前に置けばその効果が減じられてしまいます。もし極端だったら、わたしを止めてください。でも同時に忘れないでください。わたしはあなたのご命令(9)に従っているのです。そしてこのことが忘れられる前に言わせていただきますが、ある曲には納得がいきません。それは「もれいずるder sich leuchtend drangert )」月(10)の 曲です。わたしの趣味が無責任で気まぐれであるか、他の人と音楽的に同列でないのかもしれません。容赦なく言えば、ブラームスの作品の輪郭だけがありま す。様式とは区別してマンネリズムと呼ぶべきものです。意見を言えば生意気だと思いますが、黙っておれば、あなたの歌曲全般に忠実ではないと感じます。こ れらの曲はわたしたちの北極星ではないでしょうか。わたしたちの教養を測る尺度ではないでしょうか。わたしたちは最高位にいる巨匠に要求する権利はないの でしょうか。わたしたちブラームス党は、こんな複雑で落ち着きのないメロディーをどうして承認できるというのでしょう。この曲は他の曲と同等には評価でき ないと強く感じます。しかし、わたしはロ短調(ハイネの) (11)の精妙な熱情で生き返ります。技巧に加えて、優しさと楽しさがあります。これはまさに宝石、驚異の簡潔さです。演奏して飽きることはありません。最後の楽節「私の涙とため息を連れて行っておくれ(Nehmt mit meine Tranen und Seufzer )」魅力がなんと確実なことでしょう。

 「船上にて(Auf dem Schiffe’)」(12)ははためく帆の伴奏部が魅力的です。嬰ホ音の民謡の小品(13)は表情豊かで素朴です。でもこの小節は好きにはなれません。

{楽譜挿入}

 これはこんな素朴で愛らしい歌には相応しくない癖の悪い偽りの関係です。その他の点では魅力があり、行儀も良いのですが。ハルムの「冬の夜(Winternacht )」(14)は悲しくなります。こんな渇いた詩はあなたの作曲に相応しくありません。歌っている人は震えて毛皮の外套が欲しくなります。「レディ・ジュディス」(15はよい詩です。歌詞は素晴らしく、音楽は繊細です。でも短すぎます。それに可能性のある処理が要求されます。――つまり歌唱に厳格にではなく、最後の詩の変化と拡張があることが望まれます。すぐに終わっています。詩に集中しすぎて、聴き手はさらになにかが欲しいと感じます(16)。「さすらい人」の伴奏部の変奏は以前のよりも面白くありません。三曲をなんどか歌ってみて、「夜鶯」は魅惑的で、もう少し禁欲的であったほうが良いかな思われるほどです。

 お手紙では、さらに送ってくださる歌についてふれておられます。まだ来るのですか。なんという収穫なのでしょう。あなたにとって、こんなに多く採られた、すべて良質で素晴らしい真珠に糸を通すのは何と楽しい作業なのでしょう。

貴重な作品を山のように送っていただいて感謝します。わたしとハインツはこの宝庫に突進するのが無上の幸せです。もしあなたが喜びの叫びを聞き格別美しくい 傑作を見つけ、熊がじゃれつくようにて押し合いへし合いしているのを見たら、人を幸せにするご自分の力量の証拠に満足されるはずです。

 あなた――そしてわたしたち――にとって秋の大爆発で頂点に達する、生産的で活力回復の夏であることを祈ります。交響曲の噂をいつものように聞いております。でも今回はマイニンゲンの公女(17)が自信たっぷりで言っています。わたし自身は葉書での謎めいた言葉から推して弦楽四重奏を想像しています。

 クリスマスにいただきたいものがあります。イ短調の歌、自筆の「航海」です。この要求が厚かましいとお考えでしたら取り下げます――ライプツィッヒ人らしく。今日はイ短調がわたしの唯一の恋人でした。明日はたぶん変ニ長調です。

 ハインツからよろしくとのことです。彼は山であなたと会って、わたしたちのテーブルに同席してもらいたいのです。七月の気候は良いでしょう。その時はわたしたちだけです。わたしたちの八月は親戚漬けです。わたしの自由の終わりです。さようなら。もう一度感謝します。

あなたのエリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクより



(1) 「われらはさまよい歩き(Wir Wadelten) 、作品96第2番。

(2) 作品96第4曲。

(3) 第3、29、58小節。

(4) 第48小節以降。

(5) 第54小節。

(6) ”Nein, trauter Vogel, nein!”

(7) ゲーテの Gefunden の引用。

(8) 事実、「さすらい人」は双子の兄であったから、「見つけられる」はずであった。ブラームスは「夜鶯」を念頭に置いていたかもしれないが、そのときにはまだ作曲されていなかった。

(9) ブラームスは「さすらい人」を最終的に書き直し、ずっと後に作品106に含めた。

(10) ハイネの「月がもれいずるように(Wie der Mond sich leutend dr??nget)」。ブラームスはこの歌をこの反対のために取りやめ、彼が当時考えていたハイネの歌集を断念した。

(11) 「すべての花が(Es Schauen die Blumen)」、作品96第3曲。

(12) 作品97第2曲。

(13) 「別れ(Trennung)」、作品97第6曲。キーはへ音であり、変ホ音ではない。効果的にするためであろうが、ブラームスは半音移調した。第14小節の不快な関係を避けるため、
次のようになった。

{楽譜挿入} 

(14)この歌は出版されなかった。ハルムの詩に“Winternacht“ というのはないが、“Schneestorm“がこれに相当する。  

(15) 「誘拐(Entfuhrungmai)」、作品97第3曲。W.アレクシス(W.Alexis)の詩。

(16) ブラームスはこの忠告に従って、最後を一小節伸ばし、最後の盛り上がりを強調した。

(17) マイニンゲン公女マリー。

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