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さて今回の詩は代名詞 it が最初に登場し、その動作が記述されていく。その it とその動作を副詞ではなく、唐突に挿入された形容詞で描写していく。最後までこの it の本名は明らかにされていない。謎解き問題である。エミリーが盛んに詩を書いた南北戦争当時、本名は locomotive だったのだろうか。この名詞4音節もあり、冠詞が入ると5音節くってしまう。今回は綺麗に弱強格の8・6 ・8・6のバラードを書いたエミリーこの名詞を入れるわけにはいかない。train は冠詞を入れて2音節だが、これでは乗客までも入ってしまう。主役は汽笛を鳴らし煙をはいて客車を牽引する機械にしたいのだろう。
I like to see it lap the miles
I like to see it lap the miles,
And lick the valleys up,
And stop to feed itself at tanks;
And then, prodigious, step
Around a pile of mountains,
And, supercilious, peer
In shanties by the sides of roads;
And then a quarry pare
To fit its sides, and crawl between,
Complaining all the while
In horrid, hooting stanza;
Then chase itself down hill
And neigh like Boanerges;
Then, punctual as a star,
Stop--docile and omnipotent--
At its own stable door.
Emily Dickinson
見て楽しい!この生物が駆け出し
見て楽しい!この生物が駆け出し
谷間を舐めまわり
止まってはタンクで餌を食べ
驚異― また走り出す。
山々を駆けおり
道際の小屋
両側を削った石垣を
横柄に―見下し
身をかがめて会間を進む。
ボーという怖い音を鳴らして
不平を言い続けて
聖ボアネルゲのように
山の中を駆け回る。
星のように正確に
厩屋の戸で止まる
従順な万能機械―。
エミリー・ディキンソン
*先日ウェッブで今日の詩が取り上げられ9人のコメントがあった。そのページに今日行こうとしたが、ついにたどり着けなかった。記憶しているのはコメントを入れた学生とおぼしき人物の恨み節である。
大意は:エミリ−・ディキンソンのただ混乱しているだけで、意味のない詩を評価する人はまともな神経の持ち主とはおもえない。フロストは詩人だが、こんな詩人が大学の課題に出されるのはたまらない。。。というものであった。
一人は考えさしてくれというコメントだったが、7人は素晴らしい傑作だという意見であった。声なき声というか、彼の恨み節に同調したい学生は数多くいるのではないだろうか。私もよく分からなかったが、ネイティブの学生達のコメントのおかげで理解できてきたつもりである。
今やアメリカの代表的詩人に祭り上げられているエミリー・ディキンソンに悩まされている学生の気持ちは分かる。謎のエミリー・ディキンソンは大学の先生や学生の重要な論文ネタである。アメリカを代表するという詩人という評価もあれば、歴史上最大級の詩人という評価をする人まで現れているとのこと。
また産業にもなっている。英文専攻ではないが、単位は取らなくてはいけない学生は渋々10ドルばかり払ってこの詩の注釈あるいはエッセイをダウンロードしなくてはならない。入学してからも勉強しなければいけないアメリカの大学。日本の進学塾同様、学生の弱みにつけ込む商売は繁盛しているのであろう。
*この詩は脚韻はまことに弱いが、バラード形式のおかげで三人の作曲家が付曲している。合唱曲、ピアノ伴奏、弦楽器の伴奏付きである。興味のあるかたは下のURLをどうぞ。
http://www.recmusic.org/lieder/get_text.html?TextId=4765
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