ヘ短調作品34

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今回はエミリー・ディキンソンの風の歌である。同時代のイギリス詩人クリスティーナ・ロゼッティの風の詩となんと違うことだろう。彼女の詩にはタイトルがないから、最初の1行をタイトルとすべきだが、other_wind さんのご指摘で作曲家武満徹氏が2行目をタイトルにしているとのことでそれにならった。

And then I knew 'twas Wind –


Like Rain it sounded till it curved
And then I knew 'twas Wind --
It walked as wet as any Wave
But swept as dry as sand --
When it had pushed itself away
To some remotest Plain
A coming as of Hosts was heard
It filled the Wells, it pleased the Pools
It warbled in the Road --
It pulled the spigot from the Hills
And let the Floods abroad --
It loosened acres, lifted seas
The sites of Centres stirred
Then like Elijah rode away
Upon a Wheel of Cloud.

Eminly Dickinson



風であることに気付いた

雨音のようにだったが 雨が曲がり
それが風であることに気付いた ―
風は動くときは波のように湿り
通りすぎるときは砂のように乾いた ―
風ははるか遠く
大草原にまで進出すれば
軍勢の襲来にも聞こえた
風は泉を満たし 池の機嫌をとり
風は道中喉を鳴らした ―
風は山々の栓を抜き
水を溢れさせた ―
風は大地をゆるませ 海をうねらせた
風の中心は揺り動き
エリアが馬車に乗って
雲の渦に飛び去ったようだ。

エミリー・ディキンソン


何と it が多い詩であろう。それが繰り返されるごとに硬質で冷たい印象を与えているが、それでいて it の音は詩を分断することなく、ダイナミックに風を移行させるから不思議である。 詩の構造をしっかり調べたわけではないが、8音節か 6音節で改行している。この詩は詩節で区切られることもなく、ピリオドが最後に一つだけある。接続詞が極度に少なく、it がそれを代用しているようである。化粧気のない彼女の詩は、私が19世紀の詩で出会った非常に珍しい例である。

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