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「今日の詩」の選者は「ああ僕の恋人は六月に咲く」に引き続き、スコットランドの詩人ロバート・バーンズの「ハギス賛歌」を送ってきた。リーダーの英和辞典でかなり訳せるが、OEDも参照した。
「食うために生きる」フランス人と狭い海峡を隔てて「生きるために食う」イギリス人が住んでいる。そのイギリスでも、スコットランドとなればまさに「生きるための」食い物ハギスという薄気味悪い食い物がある。
ハギスは羊の胃袋に詰め物をして茹でた料理である。中身は茹でた羊の内臓、オートミル、刻んだタマネギである。このハギスを民族の誇る料理であるとする協会ができたという話はどこかで読んだ。
実はそれ以前にバーンズがハギスを賛美する詩を書いていたのである。以下は前半はバーンズの原詩、和訳は少しばかり自信のない私の訳である。
途中で悪魔が登場するので気をつけて頂きたい。伝説によれば、狡猾な悪魔と一緒に食事をするときは長いスプーンを使うべきとされる。悪魔に食べられて自分の分はなくなるからである。フランス調理と違って美味なハギスにかぎりその心配はない。スコットランド人の旺盛な食欲は悪魔にハギスを食べる暇を与えないという話になっている。
Address To A Haggis
Fair fa' your honest, sonsie face,
Great chieftain o' the puddin-race!
Aboon them a' ye tak your place,
Painch, tripe, or thairm:
Weel are ye wordy o' a grace
As lang's my arm.
The groaning trencher there ye fill,
Your hurdies like a distant hill,
Your pin wad help to mend a mill
In time o' need,
While thro' your pores the dews distil
Like amber bead.
His knife see rustic Labour dight,
An' cut you up wi' ready sleight,
Trenching your gushing entrails bright,
Like ony ditch;
And then, O what a glorious sight,
Warm-reekin, rich!
Then, horn for horn,
they stretch an' strive:
Deil tak the hindmost! on they drive,
Till a' their weel-swall'd kytes belyve,
Are bent lyke drums;
Then auld Guidman, maist like to rive,
"Bethankit!" 'hums.
Is there that owre his French ragout
Or olio that wad staw a sow,
Or fricassee wad mak her spew
Wi' perfect sconner,
Looks down wi' sneering, scornfu' view
On sic a dinner?
Poor devil! see him ower his trash,
As feckless as a wither'd rash,
His spindle shank, a guid whip-lash,
His nieve a nit;
Thro' bloody flood or field to dash,
O how unfit!
But mark the Rustic, haggis fed,
The trembling earth resounds his tread.
Clap in his walie nieve a blade,
He'll mak it whissle;
An' legs an' arms, an' heads will sned,
Like taps o' thrissle.
Ye Pow'rs wha mak mankind your care,
And dish them out their bill o' fare,
Auld Scotland wants nae skinking ware
That jaups in luggies;
But, if ye wish her gratefu' prayer,
Gie her a haggis!
Burns
ハギス賛歌
正直で愛らしいお前の顔
プディング族の偉大なる首領
全員の上座に座る
胃袋に肝臓に腎臓
わが腕の長さほども
お前は感謝の祈りに値する
悲鳴を上げるお皿に
お前はデンとお尻を乗せ
お前の串はいざというとき
汁を搾るのに役立つ
穴からこぼれる肉汁は
琥珀のビーズのよう
ナイフは難儀しながら
お前を巧みに切り裂き
お前のを溝のようにほり
輝く中身はほとばしり出る
なんと素晴らしく豪華な眺め
温かい湯気が出る
次から次にスプーン
争って手を伸ばし
悪魔に負けるなと急ぐこと
とうとう腹はふくれて
太鼓腹になる
どうしても遅れる老紳士は
ご馳走様とむしゃくしゃ
こんな光景が他でみれるか
ラグーやシチュウは豚も食わない
フリカッセなんて胸が悪く苦なり
はき出すに決まっている
こんな食事はみんなせせら笑って
軽蔑するに決まっている
食べ散らされた後の悪魔の哀れなこと
一週間干されたイグサ
つむのような脛は鞭にはいいだろう
握り拳はナッツのよう
流血や戦場を駆け抜けるには
全く向いていない
ハギスが田舎者をを育てた
足音で大地を揺るがし
広き拳に剣を握り
刃をうならし
彼はアザミの先のように
手も足も頭も切り落とす
お前は人々を育む力だ
食事には力を皿に盛りつけろ
スコットランドには皿ではねる
水っぽい食い物は要らない
お前がスコットランドから感謝の祈りが
欲しければハギスを与えよ。
バーンズ
この見た目に悪いことこの上ない料理には逸話がある。
シェイクスピアの悲劇「マクベス」で、スコットランドの王位簒奪者のマクベスが宴会を催す。彼が殺したはずの王の亡霊が宴会に出てきた。彼は錯乱状態になる。ハギスが料理に出てきたのが、マクベスの狂気のきっかけだっとというまことしやかな話がある。この話ブリトン人が創作した話ではない。ハギスを広めようというスコットランド人自身も認めているお話である。
先日エディンバラを案内する番組があったが、モルト・ウィスキーは出てきたが、ハギスは登場しなかった。スコットランドに行かれたらハギスを食べてみられるべきである。
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