ヘ短調作品34

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「今日の詩」は毎日追いかけてくる。詩人によっては少し慣れて来た人もあり、メール到着後、最長で2時間後には投稿という目標を達成できる場合もある。エメリー・ディキンソンのように、いつまでたっても読解できない詩人に限って、選者は次から次へと送ってくる。キリがないし、ドイツ語やフランス語の詩の読解能力が落ちてくる。今日から、余裕のある日に限り、グーテンベルクに載っているドイツ語の詩を訳し始めることにした。以前に読んだことのある詩人から始めるよう。今日はホフマンスタールの「囚われの料理人の歌」である。


Der Schiffskoch, ein Gefangener, singt:

Weh, geschieden von den Meinigen,
Lieg ich hier seit vielen Wochen,
Ach und denen, die mich peinigen,
Muß ich Mahl- um Mahlzeit kochen.

Schöne purpurflossige Fische,
Die sie mir lebendig brachten,
Schauen aus gebrochenen Augen,
Sanfte Tiere muß ich schlachten.

Stille Tiere muß ich schlachten,
Schöne Früchte muß ich schälen
Und für sie, die mich verachten,
Feurige Gewürze wählen.

Und wie ich gebeugt beim Licht in
Süß- und scharfen Düften wühle,
Steigen auf ins Herz der Freiheit
Ungeheuere Gefühle!

Weh, geschieden von den Meinigen,
Lieg ich hier seit wieviel Wochen!
Ach und denen, die mich peinigen,
Muß ich Mahl- um Mahlzeit kochen!

Hugo von Hofmannsthal



囚われの料理人の歌

悲しい!家族とは引き離され
何週間もここにいる、しかも
俺をむち打った連中のために
食事の準備をさせられる。

真っ赤なヒレのきれいな魚
おかげで俺は元気になったが
打ちひしがれた目で俺を見ている
俺は従順な獣を殺さねばならぬ。

俺は大人しい獣を殺し
きれいな果物の皮をむき
俺をののしる連中のために
辛いスパイスを選ばねばならぬ。

灯りの下で腰をかがめ
きつく甘い香料を混ぜていると
自由を求める心にこみ上げる
途方もないこの気持ち!

悲しい!家族とは引き離され
何週間もここにいる、しかも
俺をむち打った連中のために
食事の準備をさせられる。

ホフマンスタール

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31.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

ライプツィッヒ、1878年3月1日

 親愛なる友へ

 ご存じのように、フンボルト・シュトラーセのわたしたちは、あなたの工房から出るものならどんなものでも、歓声を上げて喜んでおります。さらにわたしたちを喜ばせたのはこのゾクゾクする魔女のデュエット(1)(訳注1)です。これは絶え間なくあふれ出る霊感です。このすてきな、古びた写本用の紙(2)もこの曲に合っています。歌詞(3)は血も凍るようですが、この歌詞を先日貸して上げた進歩的な教授には腹が立ちました。彼にはまったく荒唐無稽の印象を与えたようです。彼はグリムのおとぎ話で育ってはいなかったのです。わたしは嬉しくて申し上げますが、母親が煙突から逃げたことを知ってはいましたけど、これを歌うたびに背中を身震いが通り過ぎていきます。わたしはこの曲をレントゲン家の末娘と練習するつもりです。彼女の無邪気で子供らしいソプラノが魔女の娘にぴったりです。わたしは魔女とわかるようにしています。それにしてもなんと楽しいのでしょう。筋書きは最初から分かっていますから、伴奏の低音部が「娘や。今日は五月一日だよ(’S ist heute der erste Mai, liebes Kind! )」の声を強調し、さらに怖がる娘のモティーフが母親の返歌の伴奏部に導入されます(身震いしたい人ならかならず聴き入ります)。これでこの部分は二重奏のようになり、まるで娘の声が聞こえるかのようです。もちろん返歌は、期待通り、問いかけの転回です。そして最後のクライマックスにいたるまで効果があり、エドワード の親子とそっくりです。こんなことはすべてあなたの方がよっぽどご存じのことですから、おしゃべりするのは愚かですね。わたしのペンがこんなに走ってしまったことを恥ずかしく思いますが、あなたは辛抱強い方ですものね。

 「村にも魔女はいるの?(Ob im Dorf wohl Hexen sind? )」の Ob をヘル・キプケ(4)に敬意を表して、わたしはニ音の強い拍子で歌いたいのですが、構いませんか。それがとてもうまく合います。エンゲルマンのお父様(5)が今日こちらに見え、誇らしげにお孫さんたちへのあなたの賛辞(6)を読み上げました。あなたが生まれたばかりの子を見もしなかったといって、お祖母様が憤慨していたのが滑稽ですね。

わたしたちのバッハ・コンサートは一週間前に開かれました。オルガン奏者が当日に病気になりましたが、成功裏に終えることができました。 アマンダ・メイア(訳注2)というスウェーデンの綺麗な女の子が助けに来てくれ、見事に責任を果たしてくれました。女もそう軽蔑したものではないでしょう。

 ではさようなら。さらにもう一度あなたに感謝いたします。あなたが感動してわたしにご褒美をあげたいと思われたときにはぜひ送ってください。魔女役をすぐに他の人に譲れ、ですって。(変ニ音の恐怖の動機)それにしても、あなたはドレスデンに行かれる予定ですか。フラウ・シューマンと「魔の炎」も? 「娘や。今日は五月一日だよ。」でもわたしたちは暗闇の中です。

 ヘル・ジムロック(7)は今日不安そうにあなたの動きを訊いていました。でもあなたは気の毒な「トッゲンブルグ」のアストール(8)にはこのデュエットを聴かす気でしょう。

「行い良ければ、天使はみな平等になり、最後には天国にいく」

  “Guttätigkeit macht Engeln gleich und führt zuletzt ins Himmelreich.“

ではまたドレスデンでアウフヴィーダーゼーン!

感謝するあなたのE.H.より





(1) 「ワルプギスの夜(Walpurgisnacht)」。二人のソプラノのためのデュエット、作品75の第4曲。

(2) ブラームスは古紙として買った古い写本用の紙が大好きだった。

(3) ウィリボード・アレクシス(Willibald Alexis)の歌詞

(4) カール・キプケ(Karl Kipke)、音楽評論家。ブラームスの誤った朗唱を非難した。

(5) T.W.エンゲルマンの父。

(6) ブラームスのユトレヒトの家族宛のお祝いの手紙。

(7) ブラームスの出版者。

(8) リーター・ビーダーマン社の社長。

訳注

1.以前このブログでWalpurgisnachtの訳をしてみた。

2.アマンダ・メイヤという女性はライプツィッヒの音楽院でバイオリンと作曲を学ぶ女子学生であり、今後ともこの書簡集に登場する。フェミニストが作成した女性作曲家のリストにも載っている。

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