ヘ短調作品34

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「今日の詩」の選者は今日もまたイェーツの詩を送ってきた。題名は不適切かもしれないが「第二のトロイ」としておいた。またまた「彼女」にこだわった詩である。彼女とはモード・ゴーンに間違いないだろう。イェーツは生涯彼女を引きずってきたらしい。彼女はイェーツを振ったおかげで、トロイのヘレナに喩えられて後世に名を残した。女冥利に尽きるというものである。


No Second Troy

Why should I blame her that she filled my days
With misery, or that she would of late
Have taught to ignorant men most violent ways,
Or hurled the little streets upon the great.
Had they but courage equal to desire?
What could have made her peaceful with a mind
That nobleness made simple as a fire,
With beauty like a tightened bow, a kind
That is not natural in an age like this,
Being high and solitary and most stern?
Why, what could she have done, being what she is?
Was there another Troy for her to burn?

William Butler Yeats


第二のトロイ

僕は彼女を咎めるつもりはない。彼女が
僕の日々を台なしにしたからといって
また最近無知な男たちに過激な手段を教唆し
貧民街から駆り出そうとしたからといって。
連中に願望ほどの強い勇気があるだろうか?
どうして彼女が平安でありえたであろう?
高貴さゆえにすぐに燃える単純な精神
このご時世には自然とは言い難い
ピンと張りつめた弓のような美貌
気位が高く、超然とし、決然としている。
この性格で彼女は一体何が出来たろう?
彼女に燃やすべき第二のトロイがあったろうか?

イェーツ

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今日のドイツの詩はトラークルの「孤独者の秋」の第3編「呪われた者」である。前回まで少しロマンチックになったと思ったが、トラークルは本性を露にして、怪奇な幻想の夜を演出している。先入観かもしれないが、死の女神を想像して訳してみた。とんでもない迷訳かもしれないが。最後にソーニャなる女性が登場する。


Die Verfluchten

1

Es dämmert. Zum Brunnen gehn die alten Fraun.
Im Dunkel der Kastanien lacht ein Rot.
Aus einem Laden rinnt ein Duft von Brot
Und Sonnenblumen sinken übern Zaun.

Am Fluß die Schenke tönt noch lau und leis.
Guitarre summt; ein Klimperklang von Geld.
Ein Heiligenschein auf jene Kleine fallt,
Die vor der Glastür wartet sanft und weiß.

O! blauer Glanz, den sie in Scheiben weckt,
Umrahmt von Dornen, schwarz und starrverzückt.
Ein krummer Schreiber lächelt wie verrückt
Ins Wasser, das ein wilder Aufruhr schreckt.


2

Am Abend säumt die Pest ihr blau Gewand
Und leise schließt die Tür ein finstrer Gast.
Durchs Fenster sinkt des Ahorns schwarze Last;
Ein Knabe legt die Stirn in ihre Hand.

Oft sinken ihre Lider bös und schwer.
Des Kindes Hände rinnen durch ihr Haar
Und seine Tränen stürzen heiß und klar
In ihre Augenhöhlen schwarz und leer.

Ein Nest von scharlachfarbnen Schlangen bäumt
Sich träg in ihrem aufgewühlten Schoß.
Die Arme lassen ein Erstorbenes los,
Das eines Teppichs Traurigkeit umsäumt.


3

Ins braune Gärtchen tönt ein Glockenspiel.
Im Dunkel der Kastanien schwebt ein Blau,
Der süße Mantel einer fremden Frau.
Resedenduft; und glühendes Gefühl

Des Bösen. Die feuchte Stirn beugt kalt und bleich
Sich über Unrat, drin die Ratte wühlt,
Vom Scharlachglanz der Sterne lau umspült;
Im Garten fallen Äpfel dumpf und weich.

Die Nacht ist schwarz. Gespenstisch bläht der Föhn
Des wandelnden Knaben weißes Schlafgewand
Und leise greift in seinen Mund die Hand
Der Toten. Sonja lächelt sanft und schön

Trakl


呪われたる者

1

日が暮れる。泉に向かう老女たち。
栗の樹の闇で笑う赤き口。
店から漏れるバンの香
向日葵の花が柵ごしに垂れる。

川沿いの居酒屋、なおも静かに沈んだ音。
ギターの響き。小銭のチャリンという音。
聖なる光が照らす、あの女の子
彼女は静かに、清らかにガラスの扉の前で待つ。

ああ!彼女が青き輝きを見た窓ガラス
棘で縁どられ、黒き恐怖で夢を見た。
怪しげな狂気の作家が微笑みかける
水は激しい嵐に戦慄する。

2

疫病の女神は夕暮れに青き衣に縁取りし
暗闇の客は静かに扉を閉める。
楓の黒き荷は窓から消える。
少年は額を手で支える。

女神の忌まわしき瞼は不機嫌に沈む。
子供の手は女神の髪をまさぐり
子供の涙が澄んで熱く落ちる
黒く虚ろな疫病の女神の眼窩の中。

鳥の巣は深紅の蛇を避け
女神の波打つ胸元に寄る。
絨毯の悲哀を縁取る
死せる鳥を解放する腕 。

3

枯葉の小庭に響く鉄琴。
栗の樹の闇に揺れる青
見知らぬ女の芳しき外套。
ミニョネットの香と燃える悪の

感覚。冷たく、濡れた白い額は
ネズミが掘るゴミにかがみ込み
星の紅の輝きに照らされ
林檎は衰弱し朦朧として庭に落ちる。

黒き夜。フェーンは幽霊のように
歩き回る少年の白き寝間着を膨らまし
死の女神の手がそっと彼の口に伸び
ソーニアは優しく楽しげに笑う。

トラークル

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97.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

〔ライプツィッヒ〕1881年11月

  自己否定は健全なこととされていますので、わたしはそれに慰めを見出すことにしました。わたしはマイニンゲンには行けません。率直に理由をお話しします。 この年の終わりのまさに今、出費には格別注意しなければなりません。わたしの「イェナの戦い」で、ヴェニスの母親に会いに行くおそろしく長い旅で、わたし たちはずいぶんお金を使いました。

  家族にもわたし自身にもお金を倹約しています。そして今まででもっとも偉大で、美しく、豪華なおもてなしを辞退しなければなりません。これがどんなに辛い か、あなたに長々と述べる必要はありません。あなたはわたしのことをご存じです。普通は、粗くてしまりのない演奏を聴いていますだけに、最愛の曲のきめ細やかな演奏が聴けたら、どんなに感謝することでしょう。しかし、申し上げましたように、理性の要請があれば、人間ときにはしっかりしなければなりません。 ハインリッヒは抵抗するわけにはいきません。彼一人ですから短期の滞在を安く上げることができます。彼からすべてを聞き、そちらにいる彼を思うだけで、行く場合の半分の価値があります。しかし、わたしの場合は小さな犠牲ではありませんので、少しばかりの同情をお願いします。

 しかし、お手紙に感謝します。またわたしたちの訪問に本当にご配慮くださり、感謝いたします。あなたは心の優しいかたです。わたしの唯一のお願いがあります。とくに美しい箇所で――たとえばハ短調の第一楽章の最後(1)で、あなたが少しばかりわたしのことを考えください。ここで憧れの和音が変ロ短調のビートに来ます。

{楽譜挿入}

 半分諦めの境地のE.H.は27日を憧れています。



(1) ハ短調交響曲。総譜25ページの第13-15小節。

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