ヘ短調作品34

ルブランの回想録の link 先はゲストブックを御覧ください。

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

イメージ 1

現代詩人はなんとじれったい。魅力的な女に関心を持つのにどうしてこうも言い訳が必要なのだろう。

どんな美女といえども、その頭蓋骨を想像すれば、その女の魔力から解放される。エリオットはウェブスターやらジョン・ダンの講釈から始まる。ようやくグリーシンなるロシアの女性が登場する。若干解剖学的な続きがあるが。彼が好きな猫族のジャガーが登場する。ジャガーは猫の臭いもなく一匹で樹上に暮らし、周囲を静かにさせる威厳がある。

グリーシンも一人で小さな家に住みながら浮いた噂もないのだろう。彼女に魅せられたエリオットであるが、習性で己が肉体を解剖する。そこにあるのは空理空論を吐き出す肺を守る乾いた肋骨である。だが「死のささやき」はしばらく消えることになる。

詩は八つの四行詩から構成され、偶数行で韻を踏んでいる。二十世紀になると、韻文もルーズになってきたが、エリオットとしては綺麗なほうである。だが最後の詩節の charm と warm というカップリングは、見た目には韻のようだが発音の類似性はないので韻とはみなされない。「視覚韻」と呼ばれているものである。19世紀ではそれだけで物笑いの種になったし、同時代のフロストでも絶対にしない組み合わせである。重々承知の上でエリオットはやっている。詩が朗読されるより読まれるようになった時代を反映しているのであろうか。


Whispers of Immortality

WEBSTER was much possessed by death
And saw the skull beneath the skin;
And breastless creatures under ground
Leaned backward with a lipless grin.

Daffodil bulbs instead of balls
Stared from the sockets of the eyes!
He knew that thought clings round dead limbs
Tightening its lusts and luxuries.

Donne, I suppose, was such another
Who found no substitute for sense,
To seize and clutch and penetrate;
Expert beyond experience,

He knew the anguish of the marrow
The ague of the skeleton;
No contact possible to flesh
Allayed the fever of the bone.
. . . . .
Grishkin is nice: her Russian eye
Is underlined for emphasis;
Uncorseted, her friendly bust
Gives promise of pneumatic bliss.

The couched Brazilian jaguar
Compels the scampering marmoset
With subtle effluence of cat;
Grishkin has a maisonette;

The sleek Brazilian jaguar
Does not in its arboreal gloom
Distil so rank a feline smell
As Grishkin in a drawing-room.

And even the Abstract Entities
Circumambulate her charm;
But our lot crawls between dry ribs
To keep our metaphysics warm.

T.S. Eliot



不死のささやき

ウェブスターは死にすっかり憑かれ
皮膚の下の頭蓋骨を見るのだった。
それで胸のない地下の生き物が
のけぞって唇の欠けた笑みをうかべた。

眼球のかわりに水仙の球根が
眼窩からにらみつける!
欲望と贅沢を抑える思考が
死体に纏わるのを彼は知っていた。

ダンもその一人だと思うが
対象を把握し透徹する感覚には
代替物がないことを発見した
経験を超越した専門家。

彼が知っていたのは
骨髄の苦痛、頭蓋骨の悪寒。
肉体との接触の可能性がないと
骨の熱は和らぐことである。

グリーシキンはいい。彼女の目は
ロシア風、強調のために線がある。
コルセットしない、親しみやすい胸は
胸膨らむ幸福を期待させる。

うずくまるブラジルのジャガー
猫を微かに発するだけで
走り回るキヌザルを従える。
グリーシキンは小さな家を持っている。

滑らかなブラジルのジャガー
樹上の影にあって
鼻をつく猫臭を発しない
客間のグリーシキンもそう。

抽象的な実在すらも
彼女の魅力を取り巻く。
だが僕らの持分は乾いた肋骨を
這い回り、空論を暖める。

ESエリオット




1. グリーシキンというロシア美人のモデルはディアギレフ舞踊団のセラフィナ・アスタフィェーヴァSerafima Astafieva (1876-1934)であるとされる。グーグルで画像検索してみた。残念ながら、彼女には会えなかった。

全1ページ

[1]


.
fminorop34
fminorop34
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

過去の記事一覧

検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事