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知人の蓄音機を語り始めると記憶に蘇るレコードが出てくる。カザルスの無伴奏チェロ曲の話をしたが、カザルスはご存知カザルス・トリオを結成している。バイオリニストのティボーとピアニストのコルトーの仲間である。知人はドイツびいきであったから、彼らの演奏するベートーベンの「大公トリオ」を持っていた。私自身はその後フランスの音楽を聴くようになり、ベートーベンについてはロマンチックな伝記を通じてしか知らなくなった。だが彼の室内楽は知人のコレクションにより私の脳に刷り込まれた。その筆頭がベートーベンの友人であり、パトロンであったルドルフ大公に献呈された通称「大公」である。特に第一楽章の雄渾な響きは忘れられない。今日はそのカザルス・トリオの「大公」がYouTubeにあったのでご紹介したいと思う。
それにしてもこのトリオの生涯は極端に違う。カザルスは平和主義者として尊敬されたが、ティボーは飛行機事故で死亡し、ストラディヴァリとともに哀悼の意を表された。コルトーはナチに協力的であり、戦後失意の晩年を送った。思うにコルトーは三人の中で一番有能な人物ではなかったか。頭のいい人はつねに活躍の場がないと気がすまないものである。ヴィシー政権の実権を握った頭脳明晰なピエール・ラヴァルがその例で、常に注目を浴びる場にいた。コルトーがナチ協力者になったのは、ドイツ音楽に対する造詣の深さや思想的なものがあるかもしれないが、能力を発揮できない亡命生活は耐えられなかったのではないかと思う。一度コルトーの伝記をしっかり読んでみたいと思う。
上の写真は右からティボー、カザルス、コルトーであるが、中央の人物はフォーレではないかと思う。いつも白髪の頭と髭の写真を見るが、帽子を被ったフォーレは何処にもない。まさかクレマンソーではないだろう。写真にはサインがあり、最後の Cortot の字は読めたがその他の字は読めなかった。 |

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