ヘ短調作品34

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フロスト

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摂理 -- フロスト

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「今日の詩」はフロストの Design である。タイトルの訳に迷ったが神学的な内容と判断して「設計」とか「計画」ではなく、神の計画すなわち「摂理」とすることにした。これには異論があるかもしれない。

話者は白い花にひそんでいた白い蜘蛛が、白い蛾を捕捉する。いずれも善を象徴する「白」の生物の間で暗黒の夜に繰り広げられる光景は、生物学者から見ればなんでもない話である。話者はここに神の「摂理」を見る思いがする、という話と解釈した。


Design

I found a dimpled spider, fat and white,
On a white heal-all, holding up a moth
Like a white piece of rigid satin cloth--
Assorted characters of death and blight
Mixed ready to begin the morning right,
Like the ingredients of a witches' broth--
A snow-drop spider, a flower like a froth,
And dead wings carried like a paper kite.

What had that flower to do with being white,
The wayside blue and innocent heal-all?
What brought the kindred spider to that height,
Then steered the white moth thither in the night?
What but design of darkness to appall?--
If design govern in a thing so small.

Robert Frost.



摂理

太って白いギザギザした蜘蛛が
白い薬草の上で純正の白サテン
のような蛾を持ち上げる ―
死と害虫の似合いの役者が
そろい正に朝の始まり
魔女の釜の中身のよう ―
純白の蜘蛛、泡のような花
吊りあげられる羽はまるで凧。

道端の青い無害な薬草がなぜ
白くならなければならない?
白い蜘蛛があそこまで下り
白い蛾を夜ここに誘ったものは?
恐るべき暗黒の摂理以外に? ―
摂理がかくも小さき物に及ぶとしたら。

フロスト



この詩は14行の詩、すなわちソネット形式である。あと一歩で非常に珍しい構造のソネットになったのだが。この14行の詩の脚はたったの4韻で構成されている。まさに名人芸である。

なおこの蜘蛛であるが、網を張って虫を捕捉するタイプの蜘蛛ではなく、花に隠れて虫を取るタイプと思われる。たまたまこのフロストの詩はあるアメリカの英語の先生のブログで、「課題」になっていた。私が学生ではないので、IDやパスワードを要求するこの先生のブログに入ることは断念したが、このブログと写真は参考になると思う。


上の写真は白い「カニグモ」である。残念ながら、虫は蛾ではないし、植物も薬草かどうかは知らない。ウィキペディアでカニグモを調べると、黄色い花に黄色くなった「カニグモ」が見られておもしろい。

火と氷 -- フロスト

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「今日の詩」はフロストの「火と氷」である。実は、この詩も何日か前にメールで届いたものである。宿題に悩むアメリカの学生たちの投稿を見ているうちに、勝手な解釈というか想念(妄想?)がわいてきた。釈然とはしないが、ひとまず試訳を投稿してみる。

フロストは昔からの地球の最後は「火」か「氷」かという論争の形式に乗る形で詩を書いている。「火」と「氷」という物理学の概念から議論しているようにみえるが、人間の心にある野望(欲望)とか憎悪(冷淡)による破滅を語っているような気がしてきた。「火」とは「野望」であり、「氷」とは「憎悪」である。 world も世界と訳すべきか地球と訳すべきかまだ確信があるわけではない。彼は巧妙に「地球」の話からいつの間にか「世界」に切り換えているように思える。

気を付けなければいけないのは、この詩が書かれた年代である。諸帝国の野望から起き、「火」による世界の滅亡の危機に瀕した第一次世界大戦終結後の1923年にこの詩を書いている。

フロストは第二次世界大戦後しばらく生きた詩人であるが、「氷」の「冷戦時代」を予言していたとすれば、彼はたしかにアメリカの「賢人」である。


Fire and Ice

Some say the world will end in fire,
Some say in ice.
From what I've tasted of desire
I hold with those who favor fire.
But if it had to perish twice,
I think I know enough of hate
To say that for destruction ice
Is also great
And would suffice.

Frost



火と氷

地球は火に包まれて終わるという意見と
氷で覆われて終わるという意見がある。
私が野望の結果を体験しているから
私は火説に賛成である。しかし
二度滅亡しなければいけないとすれば
私は憎悪を充分理解しているつもりである。
氷の破壊能力もすさまじく
地球の滅亡に充分だと断定できる。

フロスト

ヴォランティア団体の LibriVox の提供するFIRE AND ICE の朗読である。ヴォランティア団体であるので、朗読の質の保証はないが、何といってもネイティヴである。

これも韻文である。繰りかえしもあるが、9行の詩を3韻で処理していいる。まさに名人芸である。

[fire, desire, fire], [ice,.twice, ice., suffice],[ hate, great]


上の絵は「氷の海」と訳されているが、「希望号の難破」ではないだろうか。

大犬座 -- フロスト

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ここ数日「今日の詩」の選者は星にこだわっている。今日は大犬座である。阪神タイガースを underdogというのは知っていたけど、その反対が overdogというのは知らなかった。勉強になった。

Canis Major

The great Overdog
That heavenly beast
With a star in one eye
Gives a leap in the east.
He dances upright
All the way to the west
And never once drops
On his forefeet to rest.
I'm a poor underdog,
But to-night I will bark
With the great Overdog
That romps through the dark.

Frost


大犬座

大きな勝ち犬
目に星がある
天体の動物は
東から飛び出す。
彼は立ったまま
ずっと西まで踊り
前足を落として
休もうとはしない。
僕は負け犬だけど
今晩は暗闇を
はね回る勝ち犬と
一緒に吠えてやろう。

フロスト

絆と愛 -- フロスト

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「今日の詩」はフロストの「絆と自由」である。「拘束と自由」という訳も考えたが、そこまで愛を否定的に捉えていないと思う。いずれにしても「思考」の自由性を大宇宙に瞬く星の光にたとえている。彼らしい韻文詩である。


Bond and Free

Love has earth to which she clings
With hills and circling arms about--
Wall within wall to shut fear out.
But thought has need of no such things,
For thought has a pair of dauntless wings.

On snow and sand and turn, I see
Where Love has left a printed trace
With straining in the world's embrace.
And such is Love and glad to be
But thought has shaken his ankles free.

Thought cleaves the interstellar gloom
And sits in Sirius' disc all night,
Till day makes him retrace his flight
With smell of burning on every plume,
Back past the sun to an earthly room.

His gains in heaven are what they are.
Yet some say Love by being thrall
And simply staying possesses all
In several beauty that Thought fares far
To find fused in another star.

Robert Frost.



絆と愛

愛には大地があり
へばりつく高台と周囲の武器 ―
恐怖を締め出す城壁内の城壁。
思考にはこんなものは必要ない
思考にはビクともしない翼がある。

雪、砂、曲がり角の上には
愛が世界の抱擁で
印した跡がある。
これを嬉ぶのが愛であるが
思考は踵を振り払う

思考は宇宙の闇を分け入り
夜明けまでシリウスの円盤に座り
日の出とともに焼ける匂いを舞い上げ
飛行の路を引き返し
太陽を通り過ぎて場所に戻る。

思考はただ元に戻るだけである
愛はひたすら尽くし
とどまっては美で虜にするという
思考はさらに遠く他の星に旅し
美が融合するのを見る。

フロスト




4詩節から構成され、各詩節は5行からなり、脚韻の構造は全詩節で一貫している。記号的に表現すれば

[a, b, b, a, a]

となっている。

テーマは新しいが、20世紀の詩人にしては韻に拘っている。また前衛的なグループからの誘いにも乗らなかった。これも彼の人気に貢献しているように思われる。

種を埋める -- フロスト

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「今日の詩」はフロストの「種を埋める」である。自然と共に過ごす喜びを19世紀以前の田園詩人とはひと味違う手法で描いている。フロストは労働者の目線で眺めて書いている。今回も10音節の韻文である。



Putting in the Seed

You come to fetch me from my work to-night
When supper's on the table, and we'll see
If I can leave off burying the white
Soft petals fallen from the apple tree.
(Soft petals, yes, but not so barren quite,
Mingled with these, smooth bean and wrinkled pea;)
And go along with you ere you lose sight
Of what you came for and become like me,
Slave to a springtime passion for the earth.
How Love burns through the Putting in the Seed
On through the watching for that early birth
When, just as the soil tarnishes with weed,

The sturdy seedling with arched body comes
Shouldering its way and shedding the earth crumbs.

Robert Frost



種を埋める

君は僕を呼びに来る 夜の作業があるし
食卓に夕食が並んでいる 分かるだろう
林檎の樹から落ちた白い花弁を
鋤込む作業を放ってはおけない。
(柔らかい花弁 うん でも滑らかな豆や
皺々のエンドウと混ざれば悪くはないよ)
出かけようか 君が来た目的を忘れ
僕のような奴隷になる前に
春になると僕は大地に夢中なって働く。
愛が燃え盛るのは 種子を埋め
発芽を見守り
草で土の色が変り

逞しい芽が体を曲げ
押しのけ 地面を破るとき。

フロスト


各行の末尾は以下のようである。

[to-night, see, white, tree, quite, pea, sight, me, earth, Seed, birth, weed, comes, crumbs]

同韻の語を記号で表すと

[a, b, a, b, a, b, a, b, c, d, c, d, e, e]

となっている。

フロストの詩は口語的である。彼自身はしゃべったままを書けば、詩になると言っている。フロストの詩は良く計算され、20世紀の詩としては綺麗な韻文である。

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