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久しぶりにフロストの詩である。フロストは砂塵の平原の彼方に太古の住居跡をみる。そこは危険から身を守る隠れ家であるが、部族の飢えを軽くするために最後に隠棲する場所でもある。 A Cliff Dwelling There sandy seems the golden sky And golden seems the sandy plain. No habitation meets the eye Unless in the horizon rim, Some halfway up the limestone wall, That spot of black is not a stain Or shadow, but a cavern hole, Where someone used to climb and crawl To rest from his besetting fears. I see the callus on his soul The disappearing last of him And of his race starvation slim, Oh years ago - ten thousand years. Robert Frost 絶壁の住まい 金の大空は砂にみえる 砂の平原は金にみえる 見渡すかぎり家はない ただ水平線の彼方の 黒い斑点はシミでも 影でもない、洞窟だ。 不断の恐怖から逃れるため 這い上がった人がいる。 彼の精神のカルスを見る 彼の終の隠棲と 部族の飢えの軽減。 ああ昔 ― 何万年も昔。 ロバート・フロスト 写真はアリゾナ州の絶壁の住まいある。長期居住可能な住居であるので、フロストのいう避難場所としての「絶壁の住まい」ではない。 the callus on his soul は「精神のカルス(たこ)」という日本語は馴染めない。「耳にたこ」という表現はあるが。辛苦に鍛えられた精神を驚嘆する表現だと思う。
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フロスト
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すでに何順目かの「今日の詩」はフロストの初期の詩集を送ってきた。訳した記憶があるが、それを見ないで訳すことにした。訳文に引っ掛かる所がある。たぶん間違いである。相変わらず韻文である。なんと言うことはない田園の一瞬。 A Time to Talk And slows his horse to a meaning walk, I don’t stand still and look around On all the hills I haven’t hoed, And shout from where I am, What is it? No, not as there is a time to talk. I thrust my hoe in the mellow ground, Blade-end up and five feet tall, And plod: I go up to the stone wall For a friendly visit. Robert Frost (1874-1863) 話をする時間 友人が道端から僕に声をかけ 馬の歩調を並足に緩める 僕は思わず、まだ鋤を入れていない 斜面を見回し その場から声を上げた、何か? 別にないよ、話をする暇があって。 刃がつき長さ5フィートの鋤を 僕は軟らかい土に突き立て 歩き出す。僕は石の壁に向かい 友人と会う。 ロバート・フロスト(1874-1863)
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「今日の詩」はフロストの「太平洋岸にて」である。正直意味不明の箇所があって困った。困った末にウェブの掲示板を覗いてみたら、さすが文学専攻の学生たち「逆説的」な意見が飛び交っている。ほかにも学識を誇示する「感想文」がでているが、私は混乱するばかりである。私はフロストのこの詩を、太平洋岸で荒波を見ながら「天地破壊(終末)」に思いをはせた詩と考えて訳した。冷戦時代に核の脅威に脅えた頃の作詩かなとも思うが、まだ制作年代は分かっていない。 この詩の解釈以前に、英文の解読に困ったが、とくに誤魔化した箇所については【・】を付けておく。いずれにしても掲示板の投稿の量からして論争ネタ、論文ネタになる詩のようだ。 Once By The Pacific The shattered water made a misty din. Great waves looked over others coming in, And thought of doing something to the shore That water never did to land before. The clouds were low and hairy in the skies, 【Like locks blown forward in the gleam of eyes.】 You could not tell, and yet it looked as if The shore was lucky in being backed by cliff, The cliff in being backed by continent; It looked as if a night of dark intent Was coming, and not only a night, an age. Someone had better be prepared for rage. There would be more than ocean-water broken Before God's last 'Put out the Light' was spoken. Frost 太平洋の岸辺で 海水は砕け散って鈍い音を立てた。 大波は後に続く波を見渡しては 海水が大地にもうする事はないか あれこれ思案を巡らしていた。 気味悪い雲は大空に低く垂れ 【錠から解き放されたかのよう。】 はっきりしないが、よかったようだ 岸を支える崖があったし 崖を支える陸地があった。 近付きつつある邪悪な心の闇 いや闇だけではなく、怒りが。 この怒りに備える人がいてもいい。 いずれ大海の海水以上の破壊があり 遂に神の「光よ、去れ!」の言葉が発せられる。 フロスト 詩の形式は英雄韻:AABBCC
であり14行であるのでソネットと言えるが、段落は一切ない。 |
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「今日の詩」の選者が推奨する詩はリピートが多くなった。今日のフロスト「金色を保つものなし」も初めてではないと思う。多少知識が付いたので読み直してみた。脚韻は英詩では常套的な単語であるが、実に見事である。英詩の技巧の教科書に採用されていることであろう。 Nothing gold can stay Nature's first green is gold, Her hardest hue to hold. Her early leaf's a flower; But only so an hour. Then leaf subsides to leaf. So Eden sank to grief, So dawn goes down to day. Nothing gold can stay. Frost 金色を保つ物はなし 自然の新緑は黄金 でも色合いは儚い。 葉は忽ち花になり 保つはただの一刻。 葉は葉に埋もれて 楽園は悲哀に暮れ 暁光も昼光へと堕す。 金色を保つ物はなし。 フロスト 脚韻はいわゆる英雄韻: gold, hold flower, hour leaf, grief day, stay 外韻は三行に認められる。 Nature's first green is gold, Her hardest hue to hold. So dawn goes down to day. 各行は三行を除いて六歩格(六音節)である。格調は辞書で調べた所以下のようである。最初と最後の行を除いて弱強格である。最後は強弱格で締めくくったと見るのであるが、実際に朗読者はどうアクセントを付けるのか探してみたい。 Nature's first green is gold,
Her hardest hue to hold. Her early leaf's a flowr; But only so an hour. Then leaf subsides to leaf. So Eden sank to grief, so dawn goes down to day. Nothing gold can stay. |
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フロストの三韻句法による14行詩の「「夜に馴染んで」の仏訳に挑戦することにした。似ているとは言っても、英語は英語であり、フランス語はフランス語である。私の電子辞書でフランス語にコード化しただけではどうにもならない。一日考えて末に、かろうじてフランス語もどきの「訳詩」のでっち上げに成功した。文法的に正しいかどうか、正しいとしても意味が通じるかどうか。 三韻句法による14行詩の構造は一般に [a,b,a], [b,c,b], [c,d,c], [d,e,d],[e,e] と表記される。通常5種類の韻で行を終わらせる。だがフロストは最後に最初の行をレフレインしているので [a,b,a], [b,c,b], [c,d,c], [d,a,d],[a,a] となっている。つまり4種類の韻を行末に持ってこなければいけない。フロストの場合は次の4語である。 night, light, height, right, night しかも訳詩であるからには最重要の the night は尊重する。結果 la nuit を最初の行の末尾に持ってこなくてはならない。原詩はすべて英語での完璧な韻を踏んでいるが、私の仏訳はフランス詩の完全韻ではない。それでも韻の成績評価で「良」はクリアしているつもりである。 原詩 Acquainted with the night I have been one acquainted with the night. I have walked out in rain - and back in rain. I have outwalked the furthest city light. I have looked down the saddest city lane. I have passed by the watchman on his beat And dropped my eyes, unwilling to explain. I have stood still and stopped the sound of feet When far away an interrupted cry Came over houses from another street, But not to call me back or say good-bye; And further still at an unearthly height, One luminary clock against the sky Proclaimed the time was neither wrong nor right. I have been one acquainted with the night. Frost 僕は一人夜に馴染んでいた。 雨に出かけ、戻るときも雨。 歩いて街の灯もはるか遠く。 僕は侘しい路を見下ろした。 伏目で夜警をやり過ごした。 話をするのも億劫だった。 僕は止まり、じっとすると 一本向こうの道路の家から 途切れた叫び声が聞こえた。 僕を呼び止めるのではない。 そして地上より遥かに高く 空に映えて輝く時計は黙し 時刻が正確か否かは語らぬ。 僕は一人夜に馴染んでいた。 フロスト 仏訳 Familiarisée avec la nuit. Je me suis familiarisée avec la nuit. J'ai passé au-dehors de la lumière. Dans la pluie sorti − rentrée dans la pluie. J'ai regardé le chemin en arrière. J'ai passé à côté du vieux gardien, Juste devant que j'ai baissée mes paupière. J'ai resté debout et ne fait des bruits rien Quand une voix interrompu est venu Du chemin prochain, que j'ai entendu bien, Mais ni pour m'appeler ni pour faire salut. Et plus loin au ciel, la horloge a luit. Je l'ai regardé et n'ai parti plus. Tôt ou tard ? Elle me n'a pas instruit. Je me suis familiarisée avec la nuit. Frost 仏訳大意 夜と馴染みに 僕は夜と馴染みになった。 僕は光の外に出ていた。 雨で出かけ ― 戻ると雨。 僕は路を振り返った。 僕は老警官の前を 瞳を落とし通った。 音を立てぬよう立っていた。 隣の路から途切れた声が したが、良く聞こえた。 呼ぶのでも、挨拶でもない。 空遠くには時計が光っていた。 僕は見つめ、立ち去らなかった。 進んでいるか、遅れているか?語らぬ時計。 僕は夜と馴染みになった。 フロスト
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