ヘ短調作品34

ルブランの回想録の link 先はゲストブックを御覧ください。

ヘルツォーゲンベルク書簡集

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

イメージ 1

198.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

ベルリン、1887年1月9日と10日

 親愛なる友へ

 明日先ず楽譜を荷造りしますが、今日少し書かせてもらいます。何はともあれ、新曲の喜びを伝えることになるでしょう。このちっぽけなお手紙さんが印象を列挙して、それぞれの美しさの理由を書いてみせると気取っても笑われるだけです。やってもいいのですが、納得のいくものを書く自信はありません。今回の作曲の成功は指摘しうる特徴にあるのではなく、天の霊感を受けたという事実です。天はあなたに特別味方されたのです。わたしはこれほど均整のとれたトリオを知りません。情熱的で抑制され、力強くて愛らしく、簡潔で雄弁です。最終楽節を書き終えたとき、あなたはハインリッヒ捕鳥王(Heinrich der Vogler )が祈りを捧げている気分ではありませんか。「大猟を授けたもうたる主よ、われ汝に感謝す。」

 四楽章ともわたしを魅了しました。最終楽章はもっとも感動的でした。でもほかの楽章が劣るわけではありません。ピアノと弦の対話のある物静かなアンダンテより愛らしい曲は想像できません。第一楽章は妙なる第二主題で見事です。仕上げは簡潔で素晴らしいものです。最後まで欠点を見出せません。それが終わって、もっと聴いていたいからです。でも全曲中の真珠は控えめの第二楽章で、これにはかないません。その幻影のような姿(ハインリッヒが「愛らしい亡霊」といいました)の美しさははっきりと感じ取れるものです。

この作品がどれほどわたしたちを喜ばせたかをご存じでしたら。この世であなたの音楽ほど喜びを与えてくれるものはありません。あなたが命じられた生意気なことが言えなくてもがっかりする必要はありません。事実発見できませんし、よほど堅苦しい人間にならなければ、不満が言えません。最終楽章で第二主題がないのに驚きました。善なる神は5片の花を創りたまい、それ以上の花も創りたまい、いつもそれで良かったのです。神の花。第二主題のない動きを作れるのにわたしたちがほかの方法を指示できますか。わたしたちは習性の生き物ですし、あなたはめったに伝統を踏み外さないから、それは衝撃でした。トリオのアンダンテの終止部で、バイオリンとチェロのそろって出てくる楽節を変奏しました。バイオリンを一オクターブ上げて。最初はこうでした。

{楽譜挿入}

 昨夜はヴィルデンブルッフ(1)夫妻がお見えになってものですから、途中で止めました。今朝は遅れるといけないので楽譜には一瞥もくれないで書くことにします。記憶で不正確な所があるかもしれません。はっきり言えるのはヨアヒムによれば最初の版が容易であることです。第二版よりずっと良い。中間部の効果を帳消しにしています。彼はいじらない方がずっとよいと考えています。あなたの曲のおかげで皆上機嫌でした。満喫し、他のことは話題にはなりませんでした。ヴィルデンブルックス夫妻も同様でした。耳が良くはないのですが、音楽に感動しないわけではありません。彼はいい気分になり、トリオにあなたの性格が出ていると述べておられました。わたしも同感です。写真よりもずっと良いのです。それはあなたの真の自己が示しております。

 わたしは楽譜をフランクフルト(2)に送りたいです。わたしはあの立派な女性より先に見せて頂くのは――偶然かもしれませんが――気が悪いのです。彼女には美しくて良い作品、とくにあなたの作品を最初に見る権利のある方です。彼女が強く希望しておられ、あなたは――イ長調ソナタのように心優しい――都合つき次第フランクフルトに送っていただけますね。それから合唱曲の新曲(3)をわたしにお願いします。ぜひとも見たいのです。あなたは今いい作品ですっかり気前が良くなっているはずですから、(親切の)鉄は熱いうちに打って、合唱曲を包んでくださいますよね。

 ハインリッヒとわたしほどひとえに渇望と愛の目で見るのはいません。断言できますが、ハインリッヒはあなたの最上の聴衆ですよ。あなたの美しい新作を見る喜び、愛情ある知的で誠実な喜びに敵うものはありません。こんな熱意を持たない音楽家は気の毒ですわ。ひねくれて、自分の小さな成功までも記録し弁護しています。わたしがXとかYとかと結婚していたらと考えても見てください。決して生きてはいなかったですわ。

 ではさようなら。合唱曲を送るときにはハインリッヒの四つのマドリガル(わたしが自分で包みました)を同封してください。あなたには少しはお気に召したと思います。「夜に(In der Nacht)(4)をここで聴きましたが、ビロードのような響きでした。最後の低音部の導入部は見事です。

 わたしたちの愛情を独占する他のものをすぐに送ってくださいね。

 トリオの最終楽章の tempi の意見を決めたいと思っております。いつ、いつこの曲に再会できますか。

感謝を忘れぬ友エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクより







(1) エルンスト・フォン・ヴィルデンブルッフ(Ernst von Wildenbruch, 1845-)、公使館顧問。詩人、小説家。

(2) フラウ・シューマン。

(3) 「秋に(Im Herbst)、作品104第5曲」。

(4)「混声合唱のための6つの歌、ア・カペラ(Sechs Ges??nge f??r gemischten Chor a capella)、作品57」として後に出版。

イメージ 1

197.ブラームスからエリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクへ

[ウィーン、1887年1月6日]

 今日は木曜日です。月曜日までお貸しします。あなたのお客さんと音楽家たちによろしくお伝えください。

 このトリオのフィナーレから先ず注意深く扱うべきです。あとは逆の順序で。

いつまでもあなたのJ.Br.より

イメージ 1

196.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

[ベルリン]1886年12月31日]

 親愛なる友へ

 わたしたちがヨアヒムと一緒に夕食をしておりましたら、あなたの書留小包が二つ到着しました。わたしたちは当然食事を急ぎ、ソナタに取りかかりました。試演は決して不満足ではありませんでした(1)。フラウ・フォン・B__が手紙で言っていたほどの難曲ではなくて助かりました。リズムで厄介だったのは最終楽章だけです。曲はすべて愛撫したくなります。わたしはどんなに喜んで第一楽章でクラウス・グロートの歌(2)に会い抱きしめたことでしょう。第一楽章は太陽のように明快で、第二楽章のパストラールは 愛らしく、第三楽章は弾き終えたときには、すっかりわたしのお気に入りでした。いいですか、あなたは大変な喜びをわたしたちに与えたのです。でもああ、なぜ、なぜ、トリオのパーツを送らずに、わたしたちを悲観させるのですか。あなたが新年を気持ちよく迎えたければ、すぐに送ってください。ヨアヒムが懇願し ています。

 この短い手紙で我慢してください。この手紙はベルリンW.で、今月31日、午後8:30に受領の証書です。まだ新曲を知り、初演奏した興奮の温もりが残っています。

 どうか、どうかトリオのパーツを送ってください。わたしたちには時間がありますので、すべてあなたの手許に早く戻ります。

 あなたの曲は愛すべきものです。あなたもそうでしょう。トリオ・パーツでわたしたちを幸せにしてください。

感謝し、幸せなあなたのエリーザベト・ヘルツォーゲンベルクより

 交響曲(2)は近々演奏されます。信用できる写譜職人が写すのにこんなに時間がかかりました。



(1) 書簡193。

(2) イ調のソナタ(作品100)の第2主題は「メロディーのように」の主題の変奏であり、クラウス・グロートの追想である。この歌曲はソナタの前に作曲され、「雨の歌」とト調のバイオリン・ソナタと同じ関係にある。イ長調ソナタにはさらに追想がある。すなわち、最終楽章には「教会の墓地で(Auf dem Kirchhofe)、作品105第4曲」の感触がある。

イメージ 1

195.ブラームスからエリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクへ

[ウィーン、1886年12月30日]

 私はソナタと三重奏曲(1)を今日送ります。たとえニューイヤー・イヴでも、例の紙(2)で 包んだ荷物が無事についたという手紙をぜひ下さい。このおめでたい季節にはあなたにも自由な時間があるから、素敵なお手紙を頂戴できるかと思いました。言うまでもありませんが、できる限り早く送り返していただきたいです。シューマン交響曲の演奏はすぐですか。あなたはリハーサル(3)には間に合いましたか。



(1) 作品100と作品101。

(2) ブラームスは彼の原稿を可能ならば書籍郵便で普通の包み紙で送った。あるとき、ウィーンで、友人がホ短調交響曲を見るというので返しに来た。彼は、ブラームスが急いでテープを巻き、そのままヨアヒムに送るのを見てぞっとした。書留にしてくれと懇願したが、ブラームスは答えた。「馬鹿げている。こんなもの無くなるものかね。もし無くなったとしたら、もう一度書けばいいことさ。どのみち、私は元気だし、いずれ書留にすることにしよう。」小包に封をして、面倒な書式を埋める等の作業は忙しい作曲家には我慢のならないことであった。ポールや後にはマンディチェフスキーが彼の手を煩わせないようにした。しかしブラームスは彼らに面倒な仕事をさせるのを好まず、いつも速くて簡単な方法で発送したのである。

(3) 書簡189-191。

イメージ 1

194.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

[ベルリン、クアフルステン・シュトラーセ 87

[1886年12月28日]

 親愛なる友へ

  クリスマス・イヴにあなたの手紙が届くなんて、わざとでしょうか、それともまぐれでしょうか。初めてのことで縁起がいいですわ。あなたのお手紙にまたわた しの名前が載るなんて感動します。心に留めてくださっていたら、ペンを取られたはずです。以前はまめな方でしたので残念です。たしかにあなたは長文の手紙 をたくさん書きましたが、すてきだと誉めてくださいました。しかしこの手紙の内容に満足しています。時々「文なしで」新曲を送ってくださるかわりに、わた しが「すてきな返事」をするという提案には依存はありません。どうかこの契約を忘れずに、すぐに実行に移してください。

  わたしたちはフロイライン・シュピースのことでも意見は一致すると思います。時期を選んで印象に残ることを言っておくべきだと思います。それは音楽家が言 うべきで、あなたが唯一の人です。オールを漕ぐのを止めないように警告する価値のある才能の持ち主です。一般の意見は変化しますから、彼女はもっと真面目 になるべきです。彼女はあなたの二曲をまるで朗読するように歌いました。彼女の軽い最高音域は美しいし、蠱惑的だと思います。低音は濁り、高音は虚ろで粗 雑です。彼女に言ってやりたいのですが、叱るわけにいけません。あなたにはそれが可能ですし、そうすべきです。

 明日の夜ヨアヒムがあなたの変ロ調の六重奏曲(1)を演奏するので、わたしたちは聴く予定です。わたしはこの曲を新鮮に聴くためにピアノでそれを弾いています。わたしたちにはあなたを聴く機会が多いでしょう。それに良い人に演奏されています。先日、渋々我慢していた長いコンサートの最後に、「愛の歌」(2)が歌われました。その時、ハウスマンが背景から顔を出し、わたしたちは彼に気付き、彼も気付きました。これは愛する曲が喚起した活力です。

 昨年わたしはあなたの音楽のおかげで知人を得ました。ホ短調の演奏の時です。フラウ・ハルトマン(3)と息子さんが大変熱心に聴いていましたので、知り合いになるべきだと思い、自己紹介しました。話しかける前から、彼女の思慮深い顔と熱心な聴き方で彼女に大変好感を持ちました。わたしは「共同体」という言葉の美しい意味を悟り、ゲーテの魅力的な詩が浮かびました。
「何が尊いかって?多くの心で結ばれたものさ。
イグサで編んだ花冠のように軽かろうとも」
‘Was ist heilig? Das ist’s, was viele Seelen zusammenbindet
War’s auch nur so leicht, wie die Binse den Kranz.’ (4)

さようなら、イグサさん。――では失礼します。
親愛にして傾倒するあなたのヘルツォーゲンベルク夫妻より

 ラ・マラ(5)宛のあなたの手紙は愉快でした。彼女の本への反映が分かってはいなかったのです。ところで、あなたの手紙からは現在の所在がつかめません。



(1) 作品18。

(2) 作品52。

(3) フラウ・ベルタ・ハルトマン。詩人モリツ・ハルトマンの未亡人で、ビルロートの友人。

(4) ゲーテの「四季」から秋、作品69。

(5) 書簡149注記。

.
fminorop34
fminorop34
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事