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268.ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ
ローマ、ピアツァ・ディ・ピエトロ、パラツォ・チーニ
1892年3月21日
親愛なる友へ
「堂々巡り」(1)(レアンダーのおとぎ話にある)を避けるために、来月の予定をお知らせします。所々で変更の可能性がありますが、出会いを調整しても変更はしない場所です。
四月の始めにはフィレンツェにいます。ヒルデブラントが設計したモニュメント(2)を見るためと、春にそこに来るフィードラー夫妻に会うためです。五月の大半をフィレンツェで過ごし、サン・レモ経由でパランザに行き、月末にはフラウ・シューマンとお会いして、その後ハイデに行き、家を整えます。そこで秋まで過ごし、冬はベルリンで過ごす予定です。
静かなトスカナ観光にぜひ参加したいものです。オルヴィエトはまだ行ったことがありません。シエナやヴァルテッラはあわただしい観光旅行で行ったことがあるだけです。この世界は私には夢のようでしょう。昨日のティヴォリのように素晴らしい夢です。
あ なたから妻のピアノ曲の出版を評価していただき、言葉では言い尽くせぬ喜びを感じております。これまでにしてきた仕事のなかで何よりも愛の労働です。記憶 から呼び戻して再製しなければならぬものもありました。これには大変困難かつ感動的な時を費やしました。私の歌曲集で妻が作曲したものは作品44の第7曲 です。彼女の曲を編集しようとしましたが、相当手を入れなければならず、ついに断念しました。いつかあなたにお見せしましょう。感受性が実に豊かな曲があ りますし、ハーモニーは明瞭で独創的な曲もあります。ピアノ曲ははるかによくできています。私はそれには実質的には何も手を加えていません。
二 つのクラリネット曲が私の中で育ちつつあります。今までのところ、クインテットがトリオより好まれる理由が理解できません。その形式のせいであり、つねに 優劣の比較をしてしまうという単純な事実からではないかと思います。私はどちらも大好きで、楽器が見事に溶け合う様子が想像できます。あなたがクラリネッ トに「交唱的」役割を与えたのは基本的に正しいのです。
今日、デ・サンクティス(De Sanctis )がへ長調のラズモフスキーを初演します。団員は非常に上品に演奏します。不思議な話ですが、彼らはだんだん用心深くなってきます。彼らは勝手気侭になることを恐れているのでしょう。
さようなら。いつまでも変わらぬご親切をお願いします。さらに詳しい計画をお聞かせいただけるものと思っております。
いつもあなたのヘルツォーゲンベルクより
注
(1)リヒアルト・レアンダー(Richard Leander)による「フランス風暖炉のそばでの夢想(Tr??umerien an franz??sische Kaminen)」 。
(2)ヒルデブラントの見事なモニュメントは初期ルネッサンス様式で製作され、(フラウ・フォン・ヘルツォーゲンベルクの特徴を持った)オルガンに向かう聖チェチリアを表している。
(3)スイスのアッペンツェル州のコンスタンス湖畔に、ヘルツォーゲンベルクは夏の家 「夕焼け(Zum Abendrot )」を建てた。
(4)書簡266の注。
(5)おそらくローマの四重奏団。
(6)ベートーベンの四重奏曲、作品59。第1番。
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