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「今日の詩」はアメリカの詩人ロングフェローの詩「ダンテ」である。ロングフェローの先祖はメイフラワー号にまでさかのぼるというから、彼はアメリカ屈指の名門の出身である。彼はヨーロッパに滞在して語学力を磨き、ハーバード大学の教授席を占めた。アメリカ詩壇の大御所的存在であり、イギリスのテニスンに相当する人物である。
彼はダンテの「神曲」をアメリカで最初に翻訳した。この詩はトスカナの首都フィレンツェ滞在中にダンテをしのんで書いた詩であろう。
Dante
TUSCAN, that wanderest through the realms of gloom,
With thoughtful pace, and sad, majestic eyes,
Stern thoughts and awful from thy soul arise,
Like Farinata from his fiery tomb.
Thy sacred song is like the trump of doom;
Yet in thy heart what human sympathies,
What soft compassion glows, as in the skies
The tender stars their clouded lamps relume!
Methinks I see thee stand with pallid cheeks
By Fra Hilario in his diocese,
As up the convent-walls, in golden streaks,
The ascending sunbeams mark the day’s decrease;
And, as he asks what there the stranger seeks,
Thy voice along the cloister whispers “Peace!”
Henry Wadsworth Longfellow
ダンテ
冥界を遍歴してきたトスカナ人
炎の墓より出でしファリナータのごとくに
思慮深い歩みと悲しくも偉大な判断力により
汝の魂より出でし恐るべき厳粛なる思想。
汝の聖なる曲こそは運命の切り札。
だが汝の心には人間的な共感と
優しき同情が光り輝く。星が大空に
曇ったランプをそっと点灯するように!
金色の縞が修道院の壁を照らし
昇る光線が一日の終りの接近を告げるとき
頬青ざめたる汝が教区のヒラリオ師と
親しくしているのを見る思いがする。
師が訪問者に用を尋ねるとき
回廊に響く汝の小声「静粛に!」
ロングフェロー
ここでトスカナ人とはダンテをさし、ファリナータは「神曲」中の登場人物である。ヒラリオ師はよく分からなかった。
脚韻の構造
[a, b, b, a, a, c, b, a, d, c, d, c, d, c]
となっており、14行の詩の末尾を4種類の韻で締めくくっている。見事ではある。本質的な問題ではないが、14行からなり1行10音節で構成されているのでソネット形式であろうか。古典的なソネットではないし、彼の名前が残るほど綺麗な形式のソネットとも思えない。
さらに彼をもってしても、ダンテのように「三行韻詩」は無理だったのであろうか。「三行韻詩」とは三行連句の脚韻が aba bcb cdc … と次々に韻を踏んでいって鎖状に連なるという押韻形式である。通常英語では無理とされている形式である。
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