ヘ短調作品34

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ベリー公の時祷書

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詩篇41.3の解読は以下の様である。

fuerunt michi la
crime mee panes die ac
nocte:
dum dicitur mi
hi cotidie ubi est deus
tuus

各節の先頭に出てくる装飾文字は難しい。私は聖書のソフトをカンニングしなかったら、何だろうと思うし、今でも釈然としない。コツはこげ茶色のバックにした色の違う線だけを追うことである。今回は青い線を眺めてみた。Fに見えないこともない。

字体として注意すべくはcでる。筆記体の a らしきものが登場したら細心の注意を払う必要がある。l は長くて上が二又になっている。

r は隣り合わせた文字によっては識別が難しい。

さらに h は特徴があるのでこの際記憶すべきである。

私のソフトでは以下のごとくである。若干スペルが違っている。

fuerunt mihi lacrimae meae panis die ac nocte dum dicitur mihi
cotidie ubi est Deus tuus

fuerunt である 複数完了形
mihi 私 与格
lacrime 涙 主格複数
mee 私 属格
panes パン 対格複数
die 昼 奪格?
ac と 接続詞
nocte: 夜 奪格?
dum 一方 接続詞
dicitur 話す 三人称複数現在
mihi 私 与格
cotidie 毎日
ubi 何処に 疑問副詞
est 存在する
deus 神 主格
tuus 汝 属格

試訳

私の涙は私にとってパンであった。昼も夜も。
だが彼等は話す。何処にお前の神は存在するか?

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詩篇41.2は次のように解字した。


Sitiuit anima me

a ad deum fortem uiu

um quando uenia~ et

apparebo ante faciem

dei


繰り返しになるが

まず頻出する i, u, n, m 識別するのが肝要である。棒の配列に見える。

m は最初と二番目の縦棒の下に鏃が付いているかどうかを見る。そして3本目が撥ねていることである。上部で繋がっているように見える。

n は最初の縦棒の下に鏃が付いているかどうかを見る。そして2本目が撥ねていることである。上部で繋がっているように見える。

i は縦棒の上に鏃がついていることが多い。後世の i の点に相当するのかどうか。下部には鏃がなく、撥ねていることである。

u は二本の棒が下部には鏃がない。繋がっているように見える。

なお今回注意すべきは ci が筆記体のaに似ていることである。


私のソフトのウルガータ聖書では次のようになっている。deus が 大文字で表記され、u と v が区別され分かりやすくなっている。apparebo が parebo になっている。

sitivit anima mea ad Deum fortem vivum
quando veniam et parebo ante faciem Dei


sitivit 乾いている
anima  魂(主格)
mea   我が(形容詞)
ad   に向かい(前置詞)
Deum  神(対格)
fortem 強き(形容詞)
vivum  生きた(形容詞)
quando ―の時
veniam  来る
et   そして(接続詞)
parebo  現れる
ante   ―の前
faciem  姿(対格)
Dei   神(属格)

試訳


我が魂は強く生きいきした神に乾きます
神の姿の前に来るとき。


字体は時代とともに変わる。余談になるが中世の字体の難しい例として以前にこのブログで取り上げた中世の写本職人のお遊びを参照されたい。

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ベリー公のいとも豪華なる時祷書(Les Tr??s Riches Heures du Duc de Berry)をすらすら解読する。これが退職後の私の目標であった。この目標は達成されることはない事だけは重々承知している。だが祈祷書の一部は聖書を参照すればラテン語の字を解読するのは可能かもしれない。目下の目標は字の認識である。今日紹介する祈祷文は旧約聖書の詩篇41である。なぜこの詩を最初にもってきたかというと、メンデルスゾーンがこの詩を合唱曲にしていて記憶にあったからである。聖ヒエロニムスが訳したとされる uulgata 聖書と照らし合わせて解読した。まず第一節である。

全く素人の私が解説するのはおこがましいが、思いつくままに注意すべき点は

1.ローマ字表記が一種類ではないことである。

今回も s の表記が二種類ある。これは何故か私にはまだ分かってはいない。字幅を節約するためか、ライプニッツの積分記号のような字が使われている。慣れるまでは∫で代用することにする。

またaもまた二種類ある。

2.i の上の点が工夫されたのは後世のことである。これが無いので大変である。

3.e c の違いが分かり難い。

4.m が in ni m か判読しがたい。ただ良く見ると m の下部の最初と次の縦棒には矢印のようなものが確認される。i や n には矢印がない。

5.省略記号らしきものがある。これを ~ ^ で表記した。この記号は自明であるための省略か、特定の文字の代用なのか今の所よく分かっていない。

6.筆記体と活字体とが混在しているように見える。

7.子音文字と母音文字がくっついているので他の文字と認識されやすい。

8.t と c の違いは要注意である。

Quemadmodu~
de∫iderat cervu^
ad fontes aquarum:
ita de∫iderat anima me
a ad te deus meus

私のソフトでは次のようになっている。

quemadmodum
desiderat cervus ad fontes
aquarum ita desiderat anima mea ad te
Deus

quemadmodum ように
desiderat 欲する
cervus 鹿が
ad に向かい
fontes 泉に
aquarum 水の
ita ?
deesiderat 欲する
anima 魂は
mea 我が
ad に向かい
te 汝に
Deus 神よ
meus 我が

鹿が水の泉を欲するように
神よ、我が魂は汝を欲します。

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Quemadmodum
desiderat cervus
ad fontes aquarum
ita desiderat anima me-
a ad te Deus [meus]

ダビデ王の祈りの最初の部分を拡大してみました。この古典的ラテン語訳にあわせて古めかしい訳を紹介しましよう。

あゝ神よ しかの峪水をしたひて喘クぐがごとく わが霊魂もなんぢをしたひあへぐなり

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Quemadmodum
desiderat cervus
ad fontes aquarum
ita desiderat anima me-
a ad te Deus [meus]

Sitivit anima me-
a ad Deum fortem viv-
um quando veniam et
parebo ante faciem
Dei

Fuerunt mihi la-
crimae meae panis die ac
nocte :dum dicitur mi-
hi cotidie ubi est Deus
tuus

Haec recordatus sum
et effudi in me animam
meam: quoniam tran-
sibo in loco taberna-
culi admirabilis usque
ad domum Dei

In voce exultationis

以上は絵の右半分のマニュスクリプトに対応する(と私が思い込んでいる)部分です。

前回メンデルスゾーンにふれましたが、彼は旧約聖書の詩編42をたしか合唱曲にしました。題は出だしの「神よ、牡鹿が谷川の水を慕ってあえぐように」だったと思います。

できれば一度と思っていますが、私はまだこの曲を聴いたことはありません。詩編42は(もちろん日本語訳聖書で)読みました。

その後名高い「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」にこの詩編42があることを知りました。解説書で牡鹿が水を飲んでいる絵を見付けたからです。ベリー公は殿様ですから、詩編作者ダビデ王に共感するところがあったのでしょうか、祈っている王様の絵が多くあります。

もちろん神様と会話するためにある神聖なるラテン語で、しかもマニュスクリプトで書かれていますから、私にはさっぱり解読できません。牡鹿の絵だけがたよりですが、どうも確からしい。

聖ヒエロニムスのラテン語訳聖書と対照させましたが、[・}のところだけは製作者のミスではないかと思われる箇所です。それと改行のところには’−’を付加しました。もちろんラテン語聖書には頭文字はありませんが、絵と対比するために変えさせていただきました。本の製作者と聖ヒエロニムス様に申し訳ありませんが。

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