ヘ短調作品34

ルブランの回想録の link 先はゲストブックを御覧ください。

イギリス宮廷詩人

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全2ページ

[1] [2]

[ 次のページ ]

イメージ 1

これもふと目にとまった詩である。チャールス一世作とあるが、いまだに誰の真作かは結論されていないとのこと。教養豊かな宮廷文化をイギリスに根付かせたチャールス一世は、美術愛好家であり、ヴァン・ダイクを呼び寄せて宮廷人の肖像画を描かせた。これ以来イギリス人の肖像画への愛着は決定的になった。だが豊かな教養は有能な政治を保証しない。

この作を伝チャールスとしても、彼が詩の愛好家だったという話は聞かない。不眠に悩む彼に宮廷詩人が書いて献呈したのか?彼の死を悼んだ詩人が書いたのか?彼の置かれた境遇に相応しい詩であるが、ちょっと出来すぎた話にも思える。議会派との不利な闘争の中で、彼が何よりも欲したのは眠りであったろう。チャールスゆかりの詩にふさわしいことは確かである。

最初の一行は、命令調で強弱格、次は一転して弱強格で静かに、静かに語りかけている。催眠を妨げないように、一行中の頭韻や同語反復に工夫がある。

(sleep secure)、(safe sure)、 (slumber sleep)、(music mirth)

脚韻は英雄韻である。

絵はヴァン・ダイクによるチャールスの肖像画。


Upon a Quiet Conscience

Close thine eyes and sleep secure,
Thy soul is safe, thy body sure;
He that guards thee, he that keeps,
Never slumbers, never sleeps.
A quiet conscience, in a quiet breast,
Has only peace, has only rest:
The music and the mirth of kings
Are out of tune, unless she sings.
Then close thine eyes in peace, and rest secure,
No sleep so sweet as thine, no rest so sure.

Charles I (1600-1649)


静かな心

目を閉じ、眠りを得よ
心は安らか、身は健やか。
汝を護り、汝を衛ずる人
微睡み、寝入ることなし。
胸中穏やか、心静かにして
平安と安息がある。
王者の楽も歓びの声も
静かなる歌にて調う。
安らかに目閉じ、憩いを得よ
甘きは眠り、確かなるは憩い。

チャールス一世(1600-1649)

イメージ 1

才気煥発のエリザベス一世も詩を残している。彼女の宮廷内では詩のやり取りをしていたらしい。彼女の寵臣であるサー・ウォルター・ローリー(Sir Walter Raleigh)が寵愛を失ったと思い込み、その悲しみの詩を彼女に送っている。それに対する返歌である。女王は一笑にふし、私は気まぐれな「運命」に操られることはないと書いている。詩中の

徳が「運命」を監視し、「運命」に服従しなければ
「運命」とても徳の力に叶わぬと思うがよい。

は彼女の性格を表すものとして、ウィキでも引用されている。

ここに出てくる「ワット」と「パグ」はいずれもサー・ウォルター・ローリーを指すが、「パグ」は女王がつけたあだ名である。

一箇所対がないが、後は英雄韻である。なお訳文はピリオドのあるところで一行空白にした。


Ah, Silly Pug, wert thou so Sore Afraid

Ah, silly Pug, wert thou so sore afraid?
Mourn not, my Wat, nor be thou so dismayed.
It passeth fickle Fortune’s power and skill
To force my heart to think thee any ill.
No Fortune base, thou sayest, shall alter thee?
And may so blind a witch so conquer me?
No, no, my Pug, though Fortune were not blind,
Assure thyself she could not rule my mind.
Fortune, I know, sometimes doth conquer kings,
And rules and reigns on earth and earthly things,
But never think Fortune can bear the sway
If virtue watch, and will her not obey.
Ne chose I thee by fickle Fortune’s rede,
Ne she shall force me alter with such speed
But if to try this mistress’ jest with thee.
Pull up thy heart, suppress thy brackish tears,
Torment thee not, but put away thy fears.
Dead to all joys and living unto woe,
Slain quite by her that ne’er gave wise men blow,
Revive again and live without all dread,
The less afraid, the better thou shalt speed.

Queen Elizabeth I (1533-1603)


パグのお馬鹿さん!

パグのお馬鹿さん!怖かったの?
泣かないで、私のワット、うろたえないで。
気まぐれな「運命」に力や技があっても
私にそなたを嫌いにさせることはできません。

どんな酷い「運命」でもそなたは変らない?
だけど盲目の魔女が私を征服するとでも?
それはない、私のパグ、「運命」は盲目でないけど
信じなさい、私の心は「運命」には支配されない。

ええ、「運命」は王者を征服しますし
世界と世俗のことを支配しますけれど
徳が「運命」を監視し、「運命」に服従しなければ
「運命」とても徳の力に叶わぬと思うがよい。

汝を選ぶのは「運命」のむら気な勧めではない
この女主人のからかいを試すのでなければ
「運命」もそんなに急いで私を変えないはず。

心を休め、汝の嫌な涙を抑えなさい
汝を苦しめず、恐れを振り払いなさい。

「喜びは死に、人生が悲しみに」だって?
生き返り、恐れなく生きるがよい
恐れなければ、いよいよ汝には栄えあらん。

エリザベス一世(1533-1603)

イメージ 1

ヘンリー八世作の詩と音楽が残されている。彼の音楽に関してはマニアックなサイトもあるし、YouTube でも紹介されている。素人の私は下手なことは言わないほうがよい。Representative Poetry Online: RPO に選ばれている詩から “Green Groweth the Holly”を訳してみた。正妻だけでも六人の妻を所有した王が女性に真の愛を誓う詩である。彼も宮廷詩人の一人、忙しい王様である。


Green Groweth the Holly

Green groweth the holly,
So doth the ivy.
Though winter blasts blow never so high,
Green groweth the holly.

As the holly groweth green
And never changeth hue,
So I am, ever hath been,
Unto my lady true.

As the holly groweth green
With ivy all alone
When flowers cannot be seen
And greenwood leaves be gone,

Now unto my lady
Promise to her I make,
From all other only
To her I me betake.

Adieu, mine own lady,
Adieu, my special
Who hath my heart truly
Be sure, and ever shall.

Henry VIII, King of England


いつも緑のヒイラギ

いつも緑のヒイラギ
ツタもそう
冬の風は高く吹かないのに
いつも緑のヒイラギ。

ヒイラギはいつも緑で
色はかわらない
私も同じ、今も昔も
ご婦人にはまこと。

ヒイラギはいつも緑
ツタと一緒に
花も若葉も
なくなっても。

ここで今ご婦人に
私は約束します
だれよりも貴女が
好きなのですと。

さようなら、愛する方
さようなら、私の心を
つかんだお方よ
今も未来も信じてください。

ヘンリー八世、イギリス国王

上の絵はハンス・ホルバインによるヘンリーの肖像画である。

イメージ 1

「小鳩」はチディオック・ティッチボーン作と認められている。人畜無害な「小鳩」が「カラスの群れ」と一緒にいたために、有害なカラスを駆除しようとする鳥打ちに一網打尽となる話である。「カラスの群れ」はエリザベス一世の暗殺を狙う反逆者であり、「小鳩」は交友関係を悔やむティッチボーン自身である。「鳥打ち」とはエリザベス一世のスパイ・マスターのサー・フランシス・ウォルシンガムである。最後に出てくる「一羽のカラス」とはウォルシンガムが送り込んだ二重スパイのことだろう。


The Housedove

A silly housedove happed to fall
Amongst a flock of crows,

Which fed and filled her harmless craw
Amongst her fatal foes.

The crafty fowler drew his net -
All his that he could catch –

The crows lament their hellish chance,
The dove repents her match.

But too, too late! It was her chance
The fowler did her spy,

And so did take her for a crow -
Which thing caused her to die.

Chidiock Tichborne (1558–1586)


小鳩

バカな小鳩がうっかり
カラスの群れの中

小鳩は餌をはみ、胃を満たす
鳩の仇敵の中。

鳥打ちが巧みに網を引き――
全部捕まえようと――

カラスは恐ろしい運を嘆き
小鳩は交友関係を悔やむ。

もう遅い、チャンスだったのに
鳥打ちは小鳩を見つけ

一羽のカラスに残し
小鳩は死ぬはめに。

チディオック・ティッチボーン(1558–1586)


学生のデモ隊でもそうであるが、デモの呼びかけを断わりきれなかった、ノンポリの大人しい学生に限って逮捕されるものである。ティッチボーンもこの詩では、その程度の「反逆者」のようである。彼は足を負傷して逃亡が遅れたのである。不運な男である。

上の絵詩中の鳥打、フランシス・ウォルシンガム(Sir Francis Walsingham)である。

イメージ 1

チディオック・ティッチボーンなる人物を知ったのは昨晩のことである。ティッチボーン一族はウィリアム征服王以前からの誇り高き貴族であった。チディオックは両親が熱心なカトリック教徒であり、子供のときから宗教上の差別に苦しんだ。首謀者ではないものの女王暗殺計画に加わり、捕らえられ、1586年の今日(9月20日)に処刑された。処刑前夜にロンドン塔で次の詩を書いた。


My Prime of Youth is but a Frost of Cares

My prime of youth is but a frost of cares,
My feast of joy is but a dish of pain,
My crop of corn is but a field of tares,
And all my good is but vain hope of gain.
The day is gone and I yet I saw no sun,
And now I live, and now my life is done.

The spring is past, and yet it hath not sprung,
The fruit is dead, and yet the leaves are green,
My youth is gone, and yet I am but young,
I saw the world, and yet I was not seen,
My thread is cut, and yet it was not spun,
And now I live, and now my life is done.

I sought my death and found it in my womb,
I lookt for life and saw it was a shade,
I trode the earth and knew it was my tomb,
And now I die, and now I am but made.
The glass is full, and now the glass is run,
And now I live, and now my life is done.

Chidiock Tichborne (1558 - 1586)


我が青春は霜降る悲しみ

我が青春は霜降る悲しみ
我が祝宴の献立は苦痛のみ
我が作物の収穫は雑草のみ
我が儲けは儚く夢と消え
太陽を見ずして、一日は去り
今命あるも、我が人生は終わる。

春は跳ばずして、過ぎ去り
実はならずして、葉は緑なり
我が青春は去るも、我はまだ若く
我は世間を見るも、世間は我を見ず
我が糸は切れるも、糸は紡がれず
今命あるも、我が人生は終わる。

我は死を求めるも、死は我にあり
我は命を求めるも、そは影なり
我は大地を踏むも、そは墓場なり
我は死に臨むも、我は生まれて間なし
グラス満つるも、グラス溢れ
今命あるも、我が人生は終わる。

チディオック・ティッチボーン(1558 - 1586)


上の銅版画はロンドン塔を背景にしたある貴族の処刑の光景である。

全2ページ

[1] [2]

[ 次のページ ]


.
fminorop34
fminorop34
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

過去の記事一覧

検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事