ヘ短調作品34

ルブランの回想録の link 先はゲストブックを御覧ください。

美術

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The Exceptional Woman

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私は女流画家ルブランに興味を持っているのだが、今回を一つの区切りにして、ルブランの投稿は当分控えたいと思っている。

私は The Exceptional Woman --- Elisabeth Vigee-Lebrun and the Cultural Politics of Art という本を持っている。著者は Mary D. Sheriff で North Carolina 大学の教授である。フェミニストの美術史家と考えてよいだろう。

今回ルブランの投稿で参考にしようと思ったが、内容が濃すぎて読み切れなかった。彼女の学識の深さにふれて、うかつなことは書けなくなったのである。私たちの世代は多少の左翼用語の語彙を持ち合わせており、それで充分読みこなせるファエミニストの著作もあるが、どうもそれだけでは The Exceptional Woman を理解できそうにない。ヨーロッパの歴史・文化とりわけ旧体制の法理論、さらに心理分析の素養も必要のようである。

私は野球の解説記事程度の気楽さで楽しめる美術書しか読んだことがない。私にはまさに exceptional な著作である。それでも子宮を持ち合わせないかぎり解読不能というような不気味なフェミニスト本ではなさそうだ。これを一夏じっくり読むことにしよう。女王の美しくも悲しい恋の物語も出てこないのもよい。途中メモ代わりに彼女の説を紹介していくかもしれない。

さて脱線しそうだが、絵の説明をしよう。

この本によれば、不道徳な噂の絶えない女王の不人気を払拭したいという当局の政治的意図を、機転の利くルブランがくみ取って、女王と子供たちの肖像画を描いた。お世辞にもお美しいとはいえないアントワネットを、優しくて母性愛に満ちた美しい女性に仕立てた、という記述があったが、おそらくこの絵のことであろう。

女王は男の子二人と女の子二人を産んだ。右手の男の子が空の揺りかごを見せているが、妹が生後まもなく死んだことを示唆している。その男の子も病死しているので、膝に抱かれている赤ちゃんがお世継ぎになる。

この子が王党派の言う「ルイ17世」であり、インターネット上ではもっとも人気のある伝説のルイ王である。この子は子供ならではの学習能力でたちまち、革命歌を歌い、人民のダンスも踊れるようになったが、大革命を生き延びることはかなわなかった。

女の子は、捕虜交換という名目で、母親の生まれ育ったオーストリアに送られ、家族の獄中生活を証言している。王政復古で政治的に重要な役割を演じたとされる後の Madame Royale である。


最後にルブランの包括的なサイトを紹介しておこう。アントワネットのみならず、女流文学者 Madame de Stael、ネルソン提督の恋人 Lady Hamilton、ナポレオンお気に入りの美人歌手 Madame Grassini、そして Madame Le Brun 自身には度々お目にかかれる。英訳の「回想録」も収録されている。

The Art of Elisabeth Louise Vigee Le Brun 1755-1842

http://www.batguano.com/vigee.html

女優サーラテの肖像

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今回のエルミタージュの企画展で私が一番興味を持った人物、あくまで人物であるが、典型的な肖像画家はルブランであるとした。しかしながら、最高傑作の絵を外すのはやはり気になるところである。やはりゴヤの「女優サーラテの肖像」について書くことにしよう。

ワシントン・ポスト紙で Paul Richard は謎の画家ゴヤについて問いかけている:

貴族に深々と会釈し、王の手に接吻したこの抜け目ないスペインの宮廷人は、古き時代の最後の巨匠であるのか、それともマネやピカソの革新的絵画に進むべき道を示した近代人なのか?

彼はいずれにも肯定的である。

肖像画は顧客の注文があって成立するものである。ルブランは髪型や服装についてアドバイスすることはあっても顧客の要求に応えるべく努力した。注文主の気に入らなければ書き直している。事実彼女はエカテリナの要求で二人の姉妹の服装を取り替えている。彼女はお世辞も巧かった。顧客と対等の立場にたった芸術家としての自覚は彼女にはない。画才のおかげで、やんごとなき人々にお目にかかれることが出来たことを神に感謝している。この姿勢はその後の肖像画家にも受け継がれてきたものである。

ゴヤの「女優サーラテの肖像」の成立のいきさつはもう少し調べなければいけないが、展覧会カタログでは30代で結核で死亡したとあるが、web検索では、サーラテはゴヤの肖像画のモデルとして後世に名を残しているのみである。当然彼女の当たり役も出てはこなかった。なにせ19世紀初頭の女優のことである。女優でありながら、普通の男性と結婚し、子供を産み、健全な家庭を築き上げたとしたら、それだけで評判になり、後世に名が残った時代である。だからというわけではないが、彼女も当時の女優の多くがそうであったように、貴族の愛人であり、この絵も貴族の注文で描かれた可能性は否定できない。

でもそれはどうでもよい。いったん彼の筆にかかると、彼女は教養があり、魅力的であり、女優という偏見を持たれやすい職業に誇りを持った新しい女となる。ゴヤは彼女に芸術的創作意欲をかきたてられて、芸術家としての主体性をもって、存在感のある女性の肖像画を自分のために描いたのである。ここにゴヤの近代性がある。

この作品の制作者は、王侯貴族におもねるゴヤではなく、マネやピカソに道を示したゴヤである。

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先日旧友達と名古屋で集まることにした。実質的には会食であるが、一応名目としては、「華やぐ女たち エルミタージュ美術館展 ルネサンスから新古典まで」の鑑賞である。

名古屋の催し物はすべて地球博開催記念であるが、地球博人気に押されてか、比較的入場者も少なくゆっくり見ることが出来た。

エカテリナ女帝の私的なコレクションから始まり、現在では世界でも屈指の美術館になったが、今回は女性の肖像画に限定した企画である。

展覧会のポスターは、古今の肖像画家でも第一人者とされ、その後のイギリス人の肖像画への愛着を決定的にしたヴァン・ダイクの名声に敬意を表してか、ヴァン・ダイクの幼い貴族の姉妹を描いたものである。企画の趣旨からすれば、無難な選択であろう。

友人と一致したのは、残酷な肖像画家、リアリストのゴヤの女優の肖像画の評価である。これは傑作である。しかし、20世紀以前の肖像画家に要求されるのは、実物より良く描くことである。という意味ではゴヤは生まれてくるのが早すぎた画家である。その時代の紳士淑女の要求を反映しなければ肖像画家にはなれないのである。現代でいえば七五三やお見合いの写真を撮る写真屋さんか、髪型や衣装の流行に影響を与えるファッション誌のカメラマンのような存在である。

画家としての評価はともかく、同時代のヨーロッパの代表的貴婦人を数多く描いた画家は、女流画家エリザベート・ルブランではないであろうか。今回必ず登場すると思っていた画家はルブランであるが、はたして亡命中のロシアで描いた二枚の絵が来ていた。

マリー・アントワネットの寵愛を受け、実物よりはるかに美しく、上品な女王を描いた彼女の名は女王の名とともに記憶されるべきである。美貌のマリー・アントワネット伝説にはルブランが大いに貢献しているのではないだろうか。

革命後は亡命先のイタリア、オーストリア、ロシア、イギリスの宮廷を転々として、ルブランは多くの肖像画を描いた。上流階級の注文が殺到した彼女の「作品録」はさながら「名流婦人録」である。服装、民俗の資料的価値はもちろん高い。

絵筆のみならず、彼女は文筆の方でもなかなかである。彼女は晩年「回想録」を書いている。最近一部読んだが面白かった。人並みはずれた視覚の持ち主である彼女の古き良き革命前の描写は、パリの歴史を知る上で貴重な証言である。また革命下のフランスからの脱出行はスリルがある。現代でも革命におびえる支配階級の人たちは世界中にはまだ数多くいるが、少なくとも彼らには一読の価値がある。

王党派の彼女は、ヨーロッパを代表する高尚で人間性に富んだ人たちが支配していた社会を懐かしみ、フランス革命で堕落し、下品で非人間的な人たちに支配された社会を呪っている。彼女のような人物の著作はなかなか読む機会がなかった。

昨今のフェミニスト・ブームで、容色にたよらずに大金を稼いだ女が注目を浴びているが、彼女はその筆頭格である。もっとも彼女は容色に大変自信があり、「回想録」にも、不美人であるがゆえに頑張ってひとかどの評価を得たそこいらの女流画家とは違うといわんばかりである。美しい彼女に見つめられ、見つめ返したいがために肖像画を注文する男性をどう処するか書いてある。あまりに美しい容姿が自分の創作活動の障害になっていると信じている女流画家やカメラウーマンには是非おすすめしたい著作である。

彼女の自画像以外に証拠がないが、それを信じる限り、ヨーロッパで一二をあらそう美人である。にもかかわらず、彼女は美貌ではなく絵筆を武器にして、ぐうたら亭主、美貌以外にこれといった才能のない弟、かわいいというだけの一人娘をこの激動の時代にひもじい思いをさせなかったのである。フェミニストが関心を持つわけである。

絵としてはゴヤをあげたいところであるが、エルミタージュゆかりのエカテリナ女帝に拝謁しているという実績、女帝がもう少し長生きしていたら、肖像画を描いたかもしれないルブランである。大革命を生き延びた女のしたたかさに敬意を表して、必ずしも私の好みではないが、今回は企画展の趣旨を代表する画家としてルブランをあげることにしよう。

この絵はエカテリナ女帝の二人の孫娘を描いたものである。この孫娘達にぜひルブランに描いてもらえといわれてその気になったエカテリナだが、実現していたらルブランはこのお婆さんをどう処理したのだろうか。

Queen Guenever Rode a-Maying

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イギリスの挿絵画家 Arthur Rackham (1867-1939) によるものである。

ケルトの民間伝説には、よく妖精が登場するが、ケルトの女王、美しきギネビアを森の妖精のような存在としてみる解釈もある。

異教的要素が色濃く残るブリテン王国の女王の「不倫」をキリスト教で潤色された後世の騎士道の観点からみていいものであろうかという問題提起である。

題材は前回と同じであるが、 John Collier の絵と対比させる意味で紹介しよう。

妖精の画家であるから、彼のギネビアは妖精的ではある。

うっそうとした森の中で、侍女達とサンザシを手折る妖精の女王ギネビアの絵があっても面白い。

In the merry month of May,
In a morn at break of day,
With a troop of damsels playing,
The Queen, forsooth, went forth a-maying.

サンザシの花

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アーサー王の妃ギネビアが騎士たちを引き連れて森に行き、五月の祭に欠かせない、(西洋)サンザシの花の枝を折ってきたところである。

この絵は Maroly の Le Morte d’Arthur Book 19 から題材をとったものである。

SO it befell in the month of May, Queen Guenever called unto her knights of the Table Round; and she gave them warning that early upon the morrow she would ride a-Maying into woods and fields beside Westminster. And I warn you that there be none of you but that he be well horsed, and that ye all be clothed in green, outher in silk outher in cloth;

さて5月のある日、女王ギネビアは王妃の騎士を呼び集め、翌早朝に5月の祭りにウェストミンスター近辺の森と野に出かけると告げた。我汝らに告ぐ、汝ら正しく騎乗せざるべからず。汝ら緑あるいは絹あるいは正規の服を着用せざるべからず。

画家は、ヴィクリア朝のイギリスに遅ればせながら登場したラファエル前派の忠実な後継者 John Collier (1850-1934) である。

彼は凡庸で時代遅れであるが、この絵によって王妃ギネビアの恋人の一人になったことは間違いない。ギネビア本にはからず掲載される絵である。

年下の崇拝者と思われる、花の冠をつけ、緑の服を着た若者を馬上から見下ろすギネビアは、やはり宮廷愛の登場人物であるように見える。「不倫の女王」ギネビアの持物は若き騎士である。



ずいぶん雰囲気は違うが、イギリスの田園詩人 John Clare の詩の冒頭を引用しよう。

Come, Queen of Months! in company
With all thy merry minstrelsy:
The restless cuckoo absent long
And twittering swallows chimney song;
And hedge row crickets notes that run
From every bank that fronts the sun;
And swarthy bees about the grass,
That stops with every bloom they pass,
And every minute every hour,
Keep teazing weeds that wear a flower...

汝、月の女王よ、来たれ!
賑わしき吟遊詩人どもを引き連れて。
郭公は久しぶりに気ぜわしく声を上げ、
燕は煙突から囀る。
蟋蟀の合唱隊の調べは
陽の当たる土手から響き渡る。
黒い蜜蜂は花を見つけては停まり、
休むことなく花をからかう。

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