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中国政府に対するチベットの抗議行動を弾圧したことへの批判として、八月に開かれる北京オリンピック開会式をボイコットする動きが各国首脳に広がる中、中国政府がパブリックディプロマシー(宣伝外交)に打って出ようとしている。
二〇〇七年の米ロビー活動実績ナンバー1のワシントンのロビー会社「パットン・ボッグス」のアジア担当者はこう語る。
「元々中国政府は、ワシントンのロビー会社を使ってアメリカ人政治家のオリンピックへの来場を働きかけるロビー活動を計画していた。しかし〇五年、中国海洋石油総公司(CNOOC)がカリフォルニアの石油会社ユノカルの買収に失敗した教訓から、ロビー会社ではなく、PR会社を使っての宣伝を優先すべきという結論にいたった」
CNOOCはユノカル買収のため、ロビー実績第二位(昨年)のエイキン・ガンプ・ストラウス・ハウアー&フェルド社をパートナーに選び、対議会ロビーを行なったが、米国内の反対論を跳ね返すことができず、結局、買収を諦めた。一方、エイキン・ガンプはこれ以降、国益に反して中国企業のためにロビー活動をしたと国内で非難された。
消息筋によると、オリンピック広報のために中国が接触しているPR会社は、英系と米系の企業で、なかでも最有力候補は、ワシントンの本部に加え、全米七カ所に支部を持つパブリック・ストラテジーズ社で、二〇〇〇年、〇四年の大統領選挙でブッシュ現大統領の広報映像をほとんど独占的に製作した、共和党に近い会社である。
ワシントンのシンクタンクのあるアジア専門家は「韓国政府がワシントンのロビイストを雇って、米韓ビザ免除協定の締結に成功した事実を中国は熟知している。しかし、ロビー会社は法律によって多くの制約を課されているうえ、中国が隠したい秘密情報も公開することを要求してくる。それもまた、より隠密な姿勢で仕事が出来るPR会社をパートナーにした理由だ」と解説する。
こうしたPR会社の臭いがプンプン漂うのが、四月二十六日にニューヨーク中心部のコロンブス・サークルで開かれる予定の大規模親中デモだ。中国が動員をかけているのはワシントンとニューヨーク周辺に暮らす中国人留学生と在米中国人で、集会は過去最大規模のものになると予想されている。
三月半ばのチベット騒乱以後初めて行なわれた親中デモは、三月二十九日にカナダで開かれた「在トロント大学生集会」だ。「ワン・チャイナ」と書かれた揃いの赤いTシャツを着た二千人あまりが、中国旗を振って、北京オリンピック開催を支持すると訴えた。この集会は、最後はチベットの独立を訴えるデモ隊との衝突で終わった。
米シンクタンクの中国専門家は、「三月末ごろから、在米中国人がよく見るウェブサイト北美華人網(www.huaren.us)内のブログやeメールを通じて、親中集会参加運動が始まった」と語る。
アメリカには約三万七千人の中国人留学生がいるが、この専門家は、「集会参加者の半分以上は大学生ではなく、お金で雇われた『日雇い労働者』だ」とも言う。
(フォーサイト2008年5月号)
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