フォーサイトで日本と世界の情報を先取り

どこにも載っていない「最深」情報をお届けします

全体表示

[ リスト ]

 「派中派を作るべきではない」
 永田町のキングメーカー(?)森喜朗元首相が苛立っている。原因は、弟分である中川秀直元幹事長の動向だ。

 森氏が最高顧問を務める町村派(旧森派)の派閥事務所はグランドプリンスホテル赤坂旧館一階にある。その上の階で、六月四日、「中川勉強会」と銘打った、町村派の政策委員会が開かれた。中川氏が先に出版した著書を派閥の所属議員で勉強するという趣旨だ。直前に開催が決まったにもかかわらず、派内の国会議員三十三人が出席し、代理出席も二十人にのぼった。出席者からは「中川代表を尊敬致します」「中川代表の考えを派閥の考えとすべきだ」など、派閥の代表世話人・中川氏への賛辞が相次ぎ、場はさながら“中川氏への忠誠を誓う会”とでもいうべき、異様な雰囲気に包まれた。

 その翌日に開かれた町村派の定例総会。日ごろ発言しない森氏が、突然マイクを握り、「福田首相の足を引っぱるようなことをすべきではない」と苦言を呈した。著書で過去の女性問題にも触れ「禊をすませて次期総理候補に名乗りを上げた」と評される中川氏の目立った行動に釘を刺した形なのだが、派閥総会に出席していた議員たちの多くは「首相ではなく、自分の足を引っぱるなと言いたいのだ」「森氏のお家芸が始まった」と受け止めた。

 自らを含め四代連続で首相を出した町村派のオーナー・森氏の力の源泉は二つといわれる。

 一つはこれまで参議院を牛耳ってきた青木幹雄・前自民党参院議員会長との結束。だが、早稲田大学雄弁会時代からの森氏の盟友、青木氏も参院での「少数派転落」でかつての神通力はない。

 もう一つの強みが、小泉内閣で国対委員長、政調会長、安倍内閣で幹事長と要職を歴任した中川氏との師弟関係。中川氏は実際には小泉長期政権の中で力をつけたのだが、森氏の顔を立てて、党内の実力者たちとの調整役を務めてきたのである。

 かつて森氏は、事務所に戻ると、秘書に対して「おしぼり、それと中川君」が口癖だったと言われるほど、中川氏を可愛がり引き立ててきた。その中川氏が力を付けすぎると、相対的に自分の出番がなくなる。だから、これまでも中川氏を決して派閥会長にはしようとしなかった。多くの派閥議員が森氏の苦言を聞いて思い描いたのは、そうした図式である。

 そもそも歴代の旧森派内閣に対して、森氏の影響力は全くなかった。小泉政権時は、派閥に入ったばかりの小池百合子氏の入閣は「一〇〇%ない」と断言したにもかかわらず、翌日小池氏が入閣。「福田さんが先だ」と言っていたのに、安倍晋三氏が総裁選に出馬し首相となった。

 最近ではテレビ番組で「首相はサミット後の内閣改造を考えていないのでは」と発言したが、数日後の加藤紘一元幹事長らとの会合では「改造しないということもないかもしれない」とおかしな言い回しで前言を撤回。要は「実力者と近い」という虚像の演出こそが、森氏の政治生命を危うく繋ぎとめているのではないか。ちなみに最近の永田町では「内閣改造アリ」というのが常識で、“キングメーカー”の発言はあまり当てにしないほうがよさそうなのである。

(フォーサイト2008年7月号)

「日本」書庫の記事一覧


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事