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ロシア

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 ロシア軍は、インド軍の協力を得て特殊訓練を行なっていた。

 七月十四日、ロシア陸軍の山岳旅団と極東司令部幹部訓練学校の一団が、インドがパキスタンと対峙する最前線である北部ジャンム・カシミール地方にあるトレーニング施設に入り、三十日までの二週間にわたってインド軍の山岳作戦向けの訓練を見学した。インド陸軍には、標高の高い場所での戦闘に特化した師団が十個、歩兵師団が一個ある。

 一方、ロシアは昨年、グルジアと接する北カフカス地方に山岳旅団を二個配備したばかり。旅団は四千五百人の“契約兵”で構成されている。契約兵は、正規軍とは別にチェチェン共和国などでの危険な任務に限って十倍近い報酬で赴くロシア人傭兵。問題のグルジア・南オセチア自治州は、カフカス山脈に抱かれた山岳地帯だ。

 ロシア軍のインド派遣は、インド陸軍総長デーパク・カプーアが六月に訪露し、ロシア陸軍司令官アレクセイ・マスロフとの間で合意したものだった。

(フォーサイト2008年9月号)

 サーカシビリ大統領のインターネット・サイトが、実はロシアからと見られるハッカーの侵入によって大きな打撃を受けていた。

 グルジアへのハッカー侵入については、米国土安全保障省コンピューター異常事態対応チーム(US―CERT)をはじめ、複数の米インターネット監視組織が確認している。US―CERTによれば、七月初めに同じ旧ソ連・リトアニアの数百のサイトがサイバー攻撃を受けた事件と手口が酷似。いずれもロシアの公機関が直接関与しているのは間違いないという。

 米国土安全保障省の専門家は「昨年の四月と五月、反ロシア的姿勢を示した旧ソ連・エストニアの政府機関のサイトにロシアのハッカーが侵入したケースとも共通点が多い」と述べている。

 グルジア当局によると、大統領のサイトのほか、同国政府機関の複数のサイトがアクセス不能な状態に陥ったという。

(フォーサイト2008年9月号)
 

 グルジアからの分離独立を図る南オセチア自治州をめぐるロシアとグルジアの「戦争状態」は、ロシア軍が首都トビリシ郊外やポチ、ゴリなどグルジア各地を攻撃するなど、戦線拡大でロシア軍の「ルール違反」が目立つ。プーチン政権下の軍改革で不満を高めた軍部の「独走」との見方も出ている。

 グルジア高官は「ロシアが先に動いた」と批判したが、たしかにロシア軍部隊の南オセチア進出は極めて迅速で、グルジア側の動きを十分想定していたのは間違いない。

 ロシア軍は八月二日まで、北カフカス軍管区で一万人近い部隊が参加する軍事演習「カフカス2008」を実施。演習そのままの攻勢が目立った。休暇中のメドベージェフ露大統領、北京五輪開会式出席のプーチン首相は、虚を衝かれた格好だった。

 ソ連時代、巨大な利権を謳歌したロシア軍は、プーチン政権下でリストラや軍改革を強いられた。ソ連国家保安委員会(KGB)出身のイワノフ前国防相、セルジュコフ現国防相は参謀本部の人員削減、軍資産や軍保養所の売却を進め、これに抗議していたバルエフスキー参謀総長は今年六月に解任された。

「ソ連軍の流れを汲む軍首脳は、プーチンらKGB派によって疲弊を強いられたことに不満を強めていた。今回、軍の存在感を誇示するため、政治命令を超えて行動した」(モスクワの消息筋)という。

 軍とKGBはソ連時代、実は犬猿の関係だった。プーチン首相が慌てて北京から北オセチア共和国に飛んだのも、軍の独走に歯止めをかける狙いがある。最も右往左往したのは、就任したばかりのリベラル派最高司令官・メドベージェフ大統領だろう。

 エキセントリックな行動の多いサーカシビリ・グルジア大統領も独走が目立った。ライス米国務長官が七月にグルジアを訪れ、グルジアの北大西洋条約機構(NATO)加盟を支持。その後、ロシア軍の演習と並行して、グルジア領内で米国と合同軍事演習を実施したことから、南オセチア攻撃に米国の支持が得られると判断したようだ。今回、敗北となると、同大統領の失脚につながる可能性もある。

 ただ、グルジアには、米軍将校ら数十人が駐在してグルジア軍の訓練に当たっており、軍内部の動きから米国は南オセチア進攻を察知していたはずだ。

 エネルギーの国策利用や周辺諸国への膨張など、ロシアの行動への懸念を強める米国が、ロシアを挑発するため、グルジア軍の行動を容認したとの見方も成り立つ。関係当事者の誤算と思惑が増幅して予想外の戦火拡大につながった模様だ。
 
(フォーサイト2008年9月号)

 ソ連時代に屈辱的な撤退をしてから二十年、ロシアが再びアフガニスタンに戻りつつある。六月十九日と二十日の二日間、モスクワで開かれた米露対テロ作業グループ(CTWG)会合で米露が原則合意したもので、アメリカとNATO(北大西洋条約機構)の要請を受け、ロシアがアフガニスタン国軍に軍事物資を提供することになっている。

 とはいえ、実際にはロシアはこれまでも密かにアフガニスタン軍に武器を提供してきた。
 NATO側にとって重要なのは、今回ロシアが、食糧やその他の「殺傷兵器」ではない貨物に限って、NATOがロシアを通過してアフガニスタンに運ぶのを許可したことだ。アフガニスタンに届けられる物資の七割はパキスタンを通るか空路で運ばれるが、タリバン残党の攻撃によってどちらも危険が増していた。

 ロシアがアフガニスタンへの関与を深めるのはなぜか。自国の南に不安定地域を抱えるロシアとしては、関与によってNATOがアフガニスタンの治安が固まる前に撤退しないようにする狙いがあるとの分析が一つ。他方、アフガニスタンでの負担を肩代わりする見返りに、ウクライナやグルジアを加盟させようというNATOの東方拡大戦略を牽制する意図があるとの見方もある。

 オイルマネーを国防予算増に注ぎ込むロシアが、新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載の新原潜「アレクサンドル・ネフスキー」の建造を急ピッチで進めており、来年太平洋艦隊に配備される予定だ。

 北方艦隊に配備した第四世代原潜「ユーリー・ドルゴルーキー」に次ぐ二番艦で、カムチャツカ半島のペトロパブロフスク・カムチャツキー港付近の新基地が母港になる。タス通信によれば、現在、新型原潜用の部隊編成や訓練がカムチャツカの海軍基地で行なわれている。

 ロシアは、太平洋艦隊の本拠地であるウラジオストクを貿易経済都市にする一方、カムチャツカを対米核戦略の前線基地に特化させたい意向だ。

「アレクサンドル・ネフスキー」は、十発の多弾頭を持つ射程八千キロの新型SLBM「ブラワM」を十二基搭載。米国ミサイル防衛網の突破が可能とされる。米第七艦隊は警戒を強めており、配備後は海上自衛隊のイージス艦に監視を求めてくる見通し。

 一方で、日本は一隻当たり八億円のロシア退役原潜解体協力事業を続けており、これまでに六隻の解体と計四十八億円の資金提供を表明。G8最大の債務国が財政黒字国・ロシアを支援する無駄なプロジェクトだ。

 来年配備される新型原潜も、三十年間日本が監視した後、退役後は日本が原子炉解体に協力――ということにでもなったら、笑えないジョークだ。

(フォーサイト2008年7月号)

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