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洋一の荷物が何も無いのを気づいた時
私は遠い日に連れ戻された。
「啓子は、何だか趣味がおかしいよね〜」
「と、言うより。男性の好みが変だよ」
「だって、誰も良いと思わない子を好きにならない?」
中学生の頃に、仲の良い同級生に何度も言われた。
好きな男の子の話をしていた時に。
「”けいこ”と言う名前は、二度縁と言われていますから
結婚を二度するかもしれませんね。」
「もしくは何度もの別れを、経験する事になるかも」
社会人になって。
仕事の同僚が占いを見てもらうから。と云うので。
面白そうと、従いてきただけなのに
その占い師のおばさんが、啓子を見て云ったのだ。
同僚の女の子が「啓子」と私を呼んだ後に。
洋一とは仕事の時に知り合った。
私は「ヘアーメイク」
洋一は「カメラマンのアシスタント」として
何度か顔を合わせているうちに
撮影後の打ち上げの酒席で、洋一が隣に座った。
雑談の中で不意に真顔になり
「本当は、俺はコックになりたいんだよね」
「だから仕事で料理の撮影をするカメラマンの弟子になったけど」
「ちょっと、遠回りかもしれないな」
それから仕事以外でも会う事になった。
私は「フリーのメーキャップ・アーティスト」だから
収入も多いし、使うあても無いから。
年下の洋一の夢を手伝って挙げられるかも、と。
そして、その話を聞いた時の洋一の嬉しそうな笑顔。
その可愛さに本気になってしまったから。
洋一はカメラのアシストを辞めて、調理学校に通い出し
私の家から通学しはじめた。
もちろん私が総てを出して。
将来、二人でお店を出すという、夢の第一歩として。
高い調理器具も材料も厭わず…
その年のクリスマスには
洋一の手作りのフランス料理を楽しむ
クリスマスパーティーをした。
洋一の友達や、私のアシスタントの女の子を数人呼んで。
あれからまだ数ヶ月
洋一のいなくなった日
私のオフィスの机の上に手紙が置いてあった。
アシスタンントの子が「やめます」と書いてある。
もう、これで何人目だろう。
年下の男の夢にお金を出して
或る日突然その夢が消えてしまうのは。
いつだって
私は、みんなと同じ夢を追っているだけなのに。
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