飛べない豚

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さて、ここからは各ライターの記事を個別に読み進めていきます。

まずは三鷹氏の記事から。
これまでも様々な方が指摘していますが、重量の制限は同氏も軽量化による防御力の低下を懸念しておられるようで、日本の歴代戦車の重量の制約を書き綴っておられます。
文句ばっかり言って申し訳ないんですけど、ここでも気になる主張が見られました。

三鷹氏の主張を要約すると「かつて日本の戦車はかつてはデリック(港のクレーン)の性能から来る重量制約で、軽装甲・軽火力・軽量を目指さざるを得なかった。今は国土の制約から軽量化で軽装甲を選んだが、これが正しいかどうかは現時点ではわからない」と言うものです。
かつての日本の戦車に関する部分は、97式戦車などを指して言われていることですね。
しかし97式戦車は装甲厚などは同世代の戦車とあまり変わりません。
そうであればなぜ「装甲が薄い」と言われるかと言うと、機銃陣地や歩兵を倒すことだけしか考えていない主砲が、戦車戦になると俄然弱かったからです。

「主砲の威力が戦車相手では弱い→敵戦車を倒すのには距離を詰めないと弾が通らない→敵戦車の主砲は対装甲を考慮しているので、97式のアウトレンジから装甲を貫ける→日本の戦車は弱い」

日本戦車の最弱伝説は、このようにしてできあがりました。
だから97式戦車は同時代の戦車と比べて「軽量化を選んだために軽装甲だった」というより、「主砲の威力が対装甲向きではないことによる弊害」の要素が大きかったと言えます。
砲の威力で言えば「歩兵戦闘車と主力戦車」ぐらい違うとも言えるわけで、装甲厚が同程度なら、矛の弱さがモロでるのは当然ですね。
その後の戦車開発は諸外国より決定的に遅れてしまい、アメリカのM4戦車に対しては装甲も火力も圧倒的に弱かったのは、皆さんご存知のことと思います。

ではTK-Xは「軽量化を選び、軽装甲」なのか。
これもかなり疑問があります。
その1で述べたように、結局のところ防御レベルと重量の関係は正確にはわかりませんが、側面モジュール装甲装着状態が48tだとしても、諸外国の戦車より圧倒的に軽いのは事実です。
あの装甲がどの程度の性能を持っているかは知りませんが、90式の側面装甲も大口径機関砲に耐えたということですし、RPGなど携帯用対戦車兵器対策を考えると、90式以上の防御力があると考えられます。

一方で、かつて野木恵一氏の「戦車の重量は装甲の影響が大きく、装甲は表面積で必要な量が決まるので、装甲の技術が同一なら戦車の重量は概ね大きさの二乗(表面積)に比例する」の理屈を引用して90式と比較し、90式と大体相似形であるTK-Xの重量(想定)として「47.233t」という概算が出ましたが、小型化それ自体が軽量化へ貢献したところもあるでしょう。
2乗3乗則で「相似形の立体の重量は、体積(三乗)に比例する」と考えるのが一般的ですから、野木氏の理屈は「縦・横・長さの違いが重量に与える変化」を戦車の場合は小さいと見ていることになりますが、それでも上記のような数字が出てくるけです。
今回同じ比較を、TK-Xと同じ44口径比長120mm滑腔砲を搭載するレオパルド2A5でやってみます。

     TK-X  レオパルド2A5  対レオ2比
車体長  7.4    7.55      0.959
全幅   3.24    3.74        0.866
全高   2.3    2.64      0.871
重量  44t〜48t    62.26t

平均対レオ2比 0.898
平均比^2    0.80
面積比重量  49.90t

48tを2t弱、44tを6t弱上回りましたが、想像の値の割には結構近い数字が出てきました。
これは野木氏の理屈がかなり正確なのかも知れません。
もちろん二乗三乗則を用いればより軽い数字が出てきて、計算すると45t程度ですから、いずれの計算方法を用いても「レオパルド2A5と同質の装甲を用いていても、TK-Xと同程度の大きさなら40t台にすることは可能と推測される」と言えます。
TK-Xはレオパルド2A5にはないRPG対策の側面モジュール装甲(レオ2砲塔側面のショト装甲は中は空洞で、空間装甲程度の能力と見られている)をつけても最大で48t程度ですから、TK-Xの装甲技術はレオパルド2A5より進んでいる可能性があります。
これのことを考えれば、軽量化と軽装甲を安易に結びつけるのは同意しがたいですね。

ここまで散々三鷹氏の記事に文句をつけっぱなしですが、同意できる内容もあります。
それは価格に関することです。
産経新聞などの報道で「一両7億円」という数字が紹介されましたが、世界の第三世代以降の主力戦車に関する情報をある程度集めている人にとっては「うわ、安っ!」というかなり安い価格です。
アメリカのエイブラムスやドイツのレオパルドは「国内向けのアップデート費用で数億円」といわれており、最新のデータ通信機器を搭載したレオパルド2の新造機(輸出用)は10億円以上と言われていたからです。
しかしTK-Xは484億円の開発費もかかっており、これは生産数頭割りなので、実際に幾らになるかは現段階では一概には言えません。
三鷹氏は「(90式の事例を考えても)初期生産価格が10億円を下回るとは私は思えない」と書いておりますが、この点は同氏の指摘通りとなる可能性は十分にあります。
最近はまとめ発注が行われており、TK-Xも最初からまとめ発注すれば単価を下げられるかもしれませんが、それでも数百両いっぺんにというのは無理でしょう。
となるとより効率的な調達・契約が行われるにしても、調達初年度から7億円というのはやはり考えにくいことなのかも知れません。

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