梶原一騎の原作「愛と誠」は、1973年〜1976年にかけて少年誌に連載された純愛物の先駆けとなった作品。1974年の映画化では、主演の西城秀樹の相手役が公募され、早乙女愛(本人の芸名となった。2010年死去)が決まり、映画は大ヒットした。その後続編など3本がつくられ、今回、4度目の映画化である。
当時は、幼き日の太賀誠を回想して語った「白馬の騎士」や、その早乙女愛への報われない愛を貫く優等生・岩清水弘のセリフ「きみのためなら死ねる」などが流行語になった。
高校生たちが主役でありながら、この映画が本格スクリーン・デビューとなる18歳の武井咲(たけい・えみ)は別として、不良生徒の面々が、ほとんど歳を食った(?)役者が演じていて、多少の違和感はある。
伊原剛志が、影のスケ番長のボディガードの高校生役だが、実年齢48歳!(映画の中でも「オレ、老けてきたんだよな」というと、取り巻きの子分たちは「中学生のころから落ち着いていて、変わりませんよ」とごまをするのだが・・・)。おっちゃんの高校生では、違和感がありすぎ(笑)。
三池崇史監督作品と言うだけで、これまでの3作とは異なるだろうと予想はできたが(もっとも、未見だが・・・)、奇抜で、エンタテイメントの要素をごった煮にして、作り手も楽しんでいる、といった作品である。40年も前の劇画・映画をなぜいまさらという批判や、酷評も目にするが、映画の面白さという点では、今年の上位に来る作品だろう。
スケ番グループの親玉であるガムコ(安藤サクラ)が、とにかく凄い。荒廃した不良ばかりが生徒の「花園実業」高校では、新入生・転入生は、スケ番長のガムコにまず挨拶するというのが、習わしとされていた。
ガムコ(安藤サクラ)
そこにやってきた誠は、ガムコを目の前にしても、あいさつをしないどころか、じゃまだからどいてくれ、という始末。ガムコは、「私を誰と知って話してんだろうね。だれか、教えてあげなよ!」とすごむと、子分の一人が、「ガムコさん、こいつ、なにも知らなかったんですよ。いつもガム噛んでいるからガムコっていうんだよ」というのがおかしい! (ガムをポイ捨てしたときが、もはや、その地位も失い、グループをまとめららない時なのだが、その時がのちに来ようとは・・・)。
そのあとで、あっと驚くシーンが・・・。
誠とガムコの大げんかの大立ち回りがあった後、ベランダの柵から落ちそうになるガムコの両足を誠がつかんで、いまや地面に落下寸前の、スカートの女子高生の”逆さづり”の光景。○ンチラどころではない(女優・安藤サクラも大変だが、監督もまったく・・・笑)。
そのガムコをも陰で操り、その人物の前では、「はい。わかりました」と絶対服従の女番長がいて、これが、外見は清楚なのだが、誠からは「悲しい女だな」と見透かれる女・高原由紀(大野いと、なんと16歳!)が またすさまじい。容赦・手加減を知らない、普段とは別の顔。
「殺(や)っちまいな!」
まさに「キル・ビル」のルーシー・リューだ。
早乙女愛を演じる武井咲は、これまでCMでは多く見ていたが、濃い女優で、ネコ目と言われるそうだが、17歳くらいなのに、妙に大人びていて、あまり・・だったが、今回の映画を見て、これは将来の大物!という印象を持った。30年後は、吉永小百合を超えているかもしれないが、見届けられない(墓の中で)のが残念。とくに、おびえたような表情で、眉間にしわを寄せるところなどがいい。
映画のシーンでは、昔の70年代当時の看板があふれている。
天下のお嬢様がメイドまで→
トルコ国からのクレームでイメージが落ちるとして改名を余儀なくされた「トルコ風呂」や「女給募集 時給XX円」といったものまで、よく再現している。
主人公・誠がぐれたのは生い立ちにあった。
母(余貴美子)は元トルコ嬢であり、見知らぬ男の子を宿し、子供が幼いころに放り出して、消えてしまったのだ。その子供こそ誠であり、誠は母親を探し出し、復讐するのが目的だったのだが・・・。余貴美子は、またしても、存在感を示している。誠と母との絆のようなシーンもあった。
疲れ果てて生活臭ぷんぷんの役が絶品の余貴美子→
内容は、あれもこれもてんこ盛り。一粒で、5度くらいおいしい映画だった。
それにしても、不良学生の面々、どれも悪党面、不良スケ番グループの、ふてくされた態度の女たちの俳優・女優をよくもそろえたものだと感心する。美男・美女だけでは映画はつくれないことを改めて感じる(笑)。
配役:
太賀誠 - 妻夫木聡 / 幼少期 - 加藤清史郎
早乙女愛 - 武井咲
岩清水弘 - 斎藤工
高原由紀 - 大野いと
ガムコ - 安藤サクラ
座王権太 - 伊原剛志
先生 - 前田健
早乙女美也子 - 一青窈
早乙女将吾 - 市村正親
監督 - 三池崇史
脚本 - 宅間孝行
原作 - 梶原一騎
オープニングから、太賀誠(妻夫木聡)が西城秀樹の「激しい恋」を歌いながら踊る。コンサートだったら「ヒデキ!」とアイの手が入るであろう、あの曲である(笑)。歌い踊りながらの喧嘩のシーンなどは、古くは「ウエストサイド物語」そのものだ。妻夫木も「悪人」出演を機に、一皮も二皮むけたような、ニヒルな高校生役だった。
誠から”メガネ”と呼び捨てにされる岩清水弘(斎藤工)がにしきのあきらの
「空に太陽がある限り」を歌う。懐かしい!
早乙女愛(武井咲)が「あの素晴しい愛をもう一度」を太賀誠への愛情表現として、いかにもお嬢さんっぽく、ぶりっこキャラで歌う。
早乙女愛の母親(一青窈だった!)が歌い、父親(市村正親は、舞台の第一人者!)も軽やかに「愛のために」を歌う。
そのほか、高原由紀(大野いと)は、藤圭子が歌ってヒットした「夢は夜ひらく」、太賀誠の母親(余貴美子)は「酒と泪と男と女」、座王権太(伊原剛志)は「オオカミ少年ケンのテーマ」、ガム子(安藤サクラ)は先日死去した尾崎紀世彦の「また逢う日まで」をそれぞれ情感たっぷりに歌っている。”オオカミ少年ケン”は余分ではないか。
ラストは、オリジナル曲「愛と誠のファンタジア」を一青窈、妻夫木聡、武井咲、斎藤工の合唱で締めている。
☆☆☆☆(好みで)