アカデミー賞作品賞を受賞した「グリーンブック」(原題:Green Book, 2018)を公開初日の初回に見た。「MOVIXさいたま」にて。字幕:戸田奈津子。やはりアカデミー賞作品賞を受賞するだけのことはある、近年ではまれに見る重量級の正統派実話ベース・ロードムービーだった。
監督は「メリーに首ったけ」「愛しのローズマリー」「ふたりの男とひとりの女」などのピーター・ファレリー。コメディ以外の作品は今回が初めて。
アカデミー賞効果か座席が空いていたのは最前列の3,4席のみ。平日とタカをくくっていたが、まさかの最前列で首が痛くなった。それでも「グリーンブック」の感動は微塵も変わらない(笑)。
1960年代初頭を舞台にガサツなイタリア系移民のクラブの用心棒と孤高の天才黒人ピアニストが差別意識の強い南部(ディープサウス)へ危険なツアーに出かけたという実話もの。
ありきたりの珍道中映画と違って、行く先々での厳しい人種差別はお決まりだが、随所に小さくも驚きの逆転劇も散りばめられていて、後味のいい結末となっている。
最初から最後まで登場する1962年型キャデラック・セダン(1962 Cadillac Sedan DeVilles) がかっこいい。同じ型の車が少なくとも2台登場していた。
出演者はどちらかといえば地味。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのヴィゴ・モーテンセン。
腕っ節の強いバーの用心棒で、運転手役を買って出る役。惜しくもアカデミー賞主演男優賞を逃したが賞を獲ってもおかしくないほど。別人のように増量、太っちょに変身。
トニー(モーテンセン)の妻・ドロレス・バレロンガを演じるリンダ・カーデリーニが素晴らしい。
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ニューヨークのナイトクラブで用心棒として働くトニー(ヴィゴ・モーテンセン)。
そこに、いかにも大物然とした老境の紳士が、クロークの女性に帽子を預ける。
「この帽子は、母親からもらったもので大事だからくれぐれも大切に扱って欲しい」と係の女性に念を押す。「かしこまりました」と奥にしまう。そこにトニーが現れて、その帽子を出してくれと女性にドル紙幣を渡し強引に帽子を受け取ってしまう。
紳士が帽子が紛失した事を知り大騒ぎになる。
しばらくしてその紳士と仲間が飲んでいる席に帽子を見つけたと差し出したのがトニーだった。紳士が喜び、お礼をしようとすると、トニーは断るのだが…。
導入部から目が離せず引き込まれる。
ある時、店舗の改装でぽっかり空いた2か月を、あるドクターの運転手として働かないかと誘われる。
面接のため訪ねた場所は、なんとカーネギー・ホールだった。
住所は間違いなく、聞いてみると、この上に住んでいるというのだ。ドクターというので、医者だと思いこんでいたトニーの彼の前に現れたのは、黒人ピアニストノドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)だった。ドクターというのは、博士号を持つことの呼び名だった。
数人が職を求めて、既に面談を済ませていたが、トニーもその一人だった。
「黒人と働くことに抵抗が?」という質問に「問題ない」と答えるトニーだが、南部、特に人種差別意識の強いディープサウスのツアーに出かけるというドン・シャーリーの計画を聞き無謀すぎると仕事を断ってしまう。
しかし、事前の調査でトニーの機転が利き腕っぷしの強いこと知っていたドンは、トニーの希望する高額のギャランティを約束してトニーを雇うのだった。トニーの妻にもドンが電話して、了解を取り付けるのだった。
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同じアメリカでも黒人に対する接し方は、ニューヨークなどの北部では差別は少ないが、南部では1960年代始めの頃はかなり厳しかったようだ。例え著名な音楽家であっても、食事の場所は、白人と同じテーブルではできないのだ。トイレも、外の納屋のようなところが黒人専用だった。
行く先々で、黒人への差別をみるトニーは、怒りがこみ上げてくる。
車で道に迷っていると、パトカーに止められ、問答のうちに、トニーは、警察官を殴ってしまい、関係のないドンも巻き添えで拘留されてしまう。
ドクターが、弁護士を呼ぶ権利があるので電話をかしてほしいと訴えると、警察署長も渋々許可をすると、そこに折り返しで電話がかかってきた。
署長が電話を取ると、直立不動で「承知しました」といって、若い警察官に「釈放しろ」と即座に言いつけるのだ。「納得がいかない」という警察官に署長は厳命する。「仕事を失いたくなかったら署長(自分)の言う事を聞け」だった。
電話をしてきた相手というのが一般の警察署長などから見たら雲の上のような存在のとんでもない人物だった。ドンは、それでも、こんなことでその人物に電話をするのは恥だと自責の念を覚えるのだ。
このあたりは「夜の大捜査線」にも通じる。
若手警官が黒人の身元も確認せず、ヴァージル・チップス(シドニー・ポワチエ)が駅のホームにいて、相当の所持金を持っていたというだけで署にひっぱってきた。署長(ロッド・スタイガー)に北部の署に電話をさせると、先方から「殺人捜査の優秀な刑事だ」という連絡が入るのだ。署長は「お前さんは偉いようだな。あっちじゃ、何て呼ばれているんだ」と聞くと、”They Call Me Mister Tibbs”だ。おっと、脱線。
トニーとドン・シャーリーのふたりは、ケンタッキーやルイジアナ、アラバマ(バーミンガム)などあちこちの演奏会に参加しながら、ぎこちなかった関係がいつしか笑いが絶えない旅となっていった。
その間、トニーは、妻から言われていたようにせっせと手紙を書いていたが、文章をチェックして、書き直させていたのがドクターだった。
文面は、ロマンチックなもので、手紙を読むトニーの妻ドロシーは、喜びにみちあふれ、友達にも読み聞かせるほどだった。親戚の中には、さすが祖父の祖・祖・祖・祖父の血筋にミケランジェロがいた、その血筋だとか言い出すものもいた。
ただトニーも、ドンのアドバイスによって、途中から、自分でも文章の書き方を覚えたといい、自分の言葉で書いたところ、ドンから「いいね」と言われるのだ。
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ふたりの旅も終わり、帰りのトニーの家の近くまで運転したのはドン・ドクターだった。トニーの家ではクリスマスパーティでにぎわっていた。友人、親戚一同が会食していた。そこに現れたトニー。迎えるドロシー。そして、一旦は帰っていたドクターがワインを持って戻ってきた。ドロシーは、ドクターを歓迎しハグしながら囁く。「手紙を(手伝ってくれて)ありがとう。」
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最近の映画の傾向か、大ヒットが期待できるマーベル・コミックの映画化(「アベンジャーズ」関連など)か、実話ものが多い。実話では、とくにマイノリティ、多様性、差別などが流行のように続いている。映画のテーマが賞レースを意識しているとしたら、少し違うような気もする。エンタメ系でワクワクさせるような、サスペンスタッチの映画が見たい。
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