全体表示

[ リスト ]

 前回、ヨーロッパの樹種別の樹高生長および年間生長量のグラフを紹介しましたが、今回はそのつづき。
モミやトウヒでは、グラフから平均の年間樹高生長速度のピークが樹齢40〜50年くらいのところですが、それはあくまでも生長速度のピークの位置であり、生長自体は120年を過ぎてもずっと続きます。
 
 ヨーロッパの原生林における樹種別の生存期間は
Weisstanne(白モミ)            400(359-460)年
Fichte (トウヒ)                  300-350年
Buche  (ブナ)                  230-260年
Eiche (ミズナラ)                270-300年
 
これらの違いは、損傷に対して、樹齢の進行により、樹勢の保持力、抵抗力に関わる個々の木質に依存します。例えば、ブナはその薄い、敏感な樹皮と、その弱さから、比較的短命な樹種になります。
また、モミはその丈夫で乾いた木質部、丈夫な樹皮、効果的な自己複製能力から、基本的に長寿命です。
さらに、リンデはその木部に丈夫な細胞壁を作るので長寿命樹種に分類されます。
 
 ヨーロッパの樹種別の最終樹高と平均的生存期間を紹介します。
最終樹高          長寿命             中間             短命          
 >40m                モミ、カラマツ、ミズナラ      トウヒ、ブナ             
30-40m              クリ、ウルム、カエデ        トネリコ、ポプラ       カンバ
20-30m           リンデ、カエデ            サクラ、ウルム       Hagebuche,ヤナギ
<20m         イチイ                 Beere,リンゴ        Feldahorn,Traubenkirsch
 
 
そこで、ヨーロッパの経済林における生産期間(伐期)と、天然林における一世代の寿命を比較してみます。
  樹種          経済林の伐期         原生林での寿命               
  トウヒ           110年                350年               
  ブナ            120年                250年                 
  モミ            120年                450年                  
  ミズナラ          160年                300年                
 
 今回 Schütz, J.Ph ; "Skript Waldbau Ⅱ" から引用した図は、実線が樹高生長:Hを、破線が直径成長:Dを表わしています。これは同じトウヒについての樹高生長と直径成長の樹齢:Zeit(Jahre年)による変化のグラフです。
 グラフからわかるように、樹高生長と直径成長は同じ規則性にはなりません。直径成長は、樹齢よりも、立地条件や樹冠の大きさに依存します。そして、樹木の直径成長は、樹高生長よりもずっと長く、続いていきます。したがって、このことが、樹齢の進行とともに樹高/直径-比(H/D-Wert: Schlankheit)の改善が進むことの理由になります。70〜80年生程度だと妙にシャフトが細くて危なっかしいのが、100年を超えてくるとずんぐりと安定してくることにつながります。ヨーロッパのトウヒ、日本でいえばスギ、ヒノキは150年、200年を超えても直径は、まだまだ、成長し続けるのです。
 
 もちろん、
 ・生命力の衰退、樹齢の進行とともに、樹冠の形状、樹冠頂部の角度が緩くなり、上方成長枝に比べ、側方成長枝の比率が高くなってきます。これはモミのような針葉樹でも、あるいは、広葉樹でも言えます。
 
 ・そして、側枝の様子が成長力を示すようになり、頂部の受光樹冠部で側枝の成長が盛んになります。
 
 ・また、樹冠の勢いが落ちて、根と樹冠のバランスを崩すと潜伏芽(不定芽?)が発生しやすいとの報告もある。これはモミ、ミズナラ、リンデ、ウルム、まれにブナでも知られ、何らかの障害やストレスも、老齢化と同様な潜伏芽の発生に関係するようです。
 
 ・また、葉っぱの密度も生育力、生長の潜在力をみる目安になります。
 
ということで、樹木の色々な側面をよく観察して、生長の可能性を良く見てあげてください。
 
今日はここまで。
イメージ 1
 

この記事に

閉じる コメント(12)

顔アイコン

広葉樹林施業や針広混交林への注目度が日本でも高まりつつあるように思います。しかしその発想の根源は間伐や皆伐再造林にコストがかかるから、放置林に広葉樹の侵入を待って言い訳にしたい、的な安易な発想があるような気がします。
広葉樹林施業もいいと思いますが、200年、300年スパンで取り組む資源戦略は必要で、その入り口の議論も日本ではやっと今から、と言うところだと思います。広葉樹の経済林そのものを研究した資料も日本では(まだちゃんと調べていませんが)極めて少ないようなので、このブログはとても参考になります。
その前にいま1000ヘクタールある針葉樹をどうしていくか、という議論も十分ではありませんが。日本でも早くから長伐期施業を目指して高く売れる用材を育ててきた林家では、100年以降も成長を続けることは常識として認知されている気がします。
前から気になっていたのですが、トリネコ→トネリコ? 削除

2011/1/13(木) 午後 11:08 [ kaeruyo ] 返信する

顔アイコン

森林再生構想の一環として、私たちのプロジェクト拠点となる製材工場が建設されました。丹沢山地から間伐された木々たちや他地域で搬出された間伐材、ゴミとなってしまう端材などを無駄なくこの工場で製材し、日本の文化施設や公共施設、建設業者や工務店などの市場に供給されて行きます。その流れが1つのモデルとなり、全国に広めて行きたいと私たちは考えています。今回、宮ヶ瀬モデルで使用される噂の木材乾燥装置。スギ材を銘木にしてしまう、驚愕のバイオ技術で木材を乾燥させる事が出来ます。従来の高温乾燥装置と比べ、約40℃ほどの低温で木材を乾燥させてしまうため、木本来が持っている力をそのまま引き出す事が可能です。 今まで、加工材の表面にしか不燃溶剤が入らないとされてきましたが、置換方式という新しい技術により、材の中まで全てに入る事が実証されました。
間伐材・端材を一般住宅の屋根や内装用、下地材として有効に活用させるため、工場内で加工される木材パネルです。竹ひごで小巾板を連結させるので、接着剤などの化学物質などを発生させません。このパネル生産を軌道にのせ地域雇用促進、自然素材100%の家造りなどを考えています。

2011/4/5(火) 午後 3:27 [ - ] 返信する

顔アイコン

北海道で森林管理のコーディネートを目指し活動している者です。貴ブログを偶然拝見しました。まだ全て読んでいませんが、非常に勉強になりました。ぜひいつかお会いできたらと思い、投稿いたしました。日本でもフォレスター制度が検討されていますが、名前は同じでも中身がまったく違います。しかし嘆いてもはじまらないので、民間初、地域初、現場初で、少しでも理想に近づくためのモデルをやっていこうと考えています。昨年、ドイツのフォレスターが北海道に来た際、今の日本はドイツの50年前と同じ状態だ、しかし、がんばれば必ず素晴らしい林業国になれる、と言っていたことを励みにしています。また読ませていただきますのでどうぞよろしくお願いします。(北海道、NPOもりねっと 陣内) 削除

2011/4/14(木) 午前 10:36 [ jinnouchi ] 返信する

顔アイコン

昨日、ゲストブックに書かせていただいた宮です。
試験勉強しないといけないのですが、読み応えがあって、ついつい時間を忘れて読んでしまいます。
まだ、全部拝見させてもらっているわけではありませんが、半年更新していらっしゃらないのが、残念です。忙しくなってしまわれたんで
しょうか?
もどかしい思いを抱えている林業関係者は大勢いると思います。
ドイツと同じには出来ないことは沢山ありますが、このブログを読むとちょっと目の覚めるような思いがするので、次の更新を待っている方、いらっしゃると思います。
それとも、私が情報に疎いだけで、shujiさんは、”林政に関わっているから”忙しくなられたんでしょうか。 削除

2011/6/9(木) 午後 4:30 [ 吉舎調 ] 返信する

顔アイコン

吉舎調さんへ
私の現在の活動ですが、6月末に青森県八戸にドイツの森林林業についてお話をしに行くくらいです。良くお世話になる岐阜県は、たまにオファーがあるとお会いしたり、こちらから出かけていくくらいです。
日本に帰国した当初は、フライブルグの池田さんつながりで梶山審議官に頼まれて林野庁の官僚さんや林野庁のプロジェクトを請け負っている方々にドイツの森林林業の状況を色々教えてあげていたのですが、今の感想としては正直、「教え甲斐がなかったかな」というところです。日本の林政、林業が変われない背景がはっきり見えてきてしまって…。「ホントに変える気あるの?」って感じです。熱意が伝わってきたら、また書き始めると思います。

2011/6/11(土) 午前 10:35 [ Shuji ] 返信する

顔アイコン

6月25日の午後に八戸で講演をお願いしております。詳しくは八戸市森林組合 工藤へ連絡を下さい。
講演の題目はドイツの林業と生活です。林業関係者だけではもったいないので、エネルギー等の話もお願いしており、一般の方の参加もOKです。

shujiさん、当日は宜しくお願いします。 削除

2011/6/11(土) 午後 11:36 [ yoccharu ] 返信する

顔アイコン

講演是非とも聞きたいです。でも、無理〜、残念。7月3日の司法書士試験直前〜。しかも極貧の私は、八戸市なんて、私のいる広島からの交通費工面できません。残念、無念。早くおまんま食べれるようにならないと。
shujiさん、あんまり諦め気分にならないでください。それでは、公務員と同じです。私は、いろんな意味での公務員の身動きのとれなさが理解できます。中からは、なかなか変えられないんです。中から変えられる人は、ホントに優秀な人です。私はそんなに優秀ではないから、外に出たんです。
でも、林野庁の人も、元々、林学科の学生です。演習林での実習をこなしてきた学生たちなんです。私の先輩、後輩、同級生、沢山います。私は心のどこかで彼らを信用しています。
現場と行政、研究者、そして森林所有者を繋ぐ、間に立てる人材が必要なんです。発信できる人は、ぜひとも発信を続けてほしいです。 削除

2011/6/12(日) 午前 11:56 [ 吉舎調 ] 返信する

顔アイコン

ツイッターでこのブログの存在を知り感激しています。

埼玉の平地農用林で株立ちした楢・幣・杉混交林の手入れ(道路支障木の除伐が主ですが)をしています。

余りに数多く株立ちしてそのまま放置の楢など、一本に仕立て、高い枝を下ろす作業などを目論んできました。
クライミングとかリギングとかの技術的には十分に可能な作業ではあっても、森にとってそれが正しい施業方法であるか否かの判断がつかず、思い悩む日がつづいていました。

こちらのサイトで拝見した記事、自分のブログにその一部を無断で(リンク明示して)引用してしまいました。
不都合あれば削除しますが、この知見を広く周知したいと思い、改めて引用の許可をお願いする次第です。

手順の前後してしまったこと、先にお詫びします。

2011/7/25(月) 午後 2:05 [ owl*fk*wa*oe ] 返信する

顔アイコン

失礼を重ねてしまいました。 引用させていただいたブログは以下のアドレスになります。

http://pabllo.cocolog-nifty.com/kobikiya/2011/07/post-6811.html

よろしくお願いします

2011/7/25(月) 午後 2:08 [ owl*fk*wa*oe ] 返信する

顔アイコン

shuji様
先日のドイツ林業視察の件、有難うございました。
共にドイツの山を歩けた事は、とても有意義な時間を過ごす事ができました。これからの林業を変えてゆくため、日常に潰されず日々精進したいと思います。
今週からはshujiさん紹介のオーストリアの会社と商談を進める予定です。
またドイツ林業を見てきたので、このブログも改めて読み返してみます。実際現場を見るのと読むだけでは理解度が違うでしょうから。
それを日本の現場にどう繋げるかが、私達の課題です。 削除

2011/8/7(日) 午後 8:42 [ yoccharu ] 返信する

顔アイコン

こんにちは。いつぞやは生意気なメールを送り申し訳ありません。このブログを見てくださる方を少しは増やしたつもりですが、なかなか動きがないので、私、少ししびれを切らしました。こんなに詳しいドイツの林業、林学事情は最近の欧州流行の中でもなかなかありません。まだまだ知りたいことがあるので、これから度々質問させてください。私の勉強不足はちょっと棚に上げることにいたします。
せっかく造林学系の話になっているのでその方面を質問すべきなのですが、もっと気になるのは歴史です。針葉樹一辺倒からどのように針広混交林に誘導していったのでしょうか?皆伐後に更新したのか、徐々に複層林から入っていったのか(陽樹ではできないと思いますが)。いきなり天然更新は難しいと思うのですが、やはり植栽までしたのでしょうか。針葉樹の伐期より混交林化を優先させるようなことがあったのか。かつては法正林を目指していたが、日本のような間伐手遅れの問題はなかったのか、等々、さらに、混交林化の流れとフォレスター制度が出来上がった時期の前後関係はどうだったのでしょうか。知りたいのですが。 削除

2011/8/11(木) 午後 7:51 [ 吉舎調 ] 返信する

顔アイコン

こんにちは。
大学で森林科学を専攻しているものです。
Shujiさんのブログはすごく刺激的で、教授の講義よりも惹きつけられます。
私も日本の林業再生のために日々精進してまいりたいと思います。
ブログの更新楽しみにしております。 削除

2011/8/29(月) 午後 2:07 [ satoshi ] 返信する

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

.


みんなの更新記事