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先日、青森県の八戸にお邪魔し、指導林家の田中さんの所有森林を見学させていただいた際に、何気ない会話の中のフレーズでチョッと気になったことがあります。
 
 なんとなれば、「木のてっぺんが丸まっているから、もう成長は止まっている・・・。」という内容の話です。そこは日本の民有林としては珍しい、針広混交林の長伐期施業林で、話に出てくる樹木は70〜80年生くらいの杉ではなかったかと思います。
 
 日本の造林学のテキストに出てくる林齢と樹高生長の関係を表すグラフは、せいぜい50年位までのデータしか載っていません。50年程度が主伐期で、さっさと柱材として伐採しているから、それ以上のデータは必要なかったのだと思いますが、「造林学」 朝倉書店  や 「多様な森林の育成と管理」 東京農大出版会  など、書店で普通に手に入るテキストにも、150年生くらいまでのデータは全く見当たりません。データがないのだと思います。
 
 今回載せたグラフは、ヨーロッパにおける長伐期施業の考え方の基本となるものです。
(図1)は、 J, -Ph. Schütz 教授の 「Skript Waldbau Ⅱ」 からの引用です。グラフは、説明のためのモデル図です。
 実線は、一般的な樹木の各生長期における樹高:H(m)の成長曲線、 
 破線は樹高の生長速度:⊿H(cm/年)
を表わしています。破線は、数学的に言うと、実線のグラフの微分(傾き)です。
 また、横軸のZeit(時期)で、 
 1.(若木期)  その生命力は植生における競争に打ち勝つために、すなわち、根系の良好な形成のために使われる時期です。
 2.(主成長期)  樹木の上方生長が最も激しい時期です。
 
 3.(成熟期)  樹木は常に、もっと力強く水を上へ運ばなければならないので、樹高生長に関してはゆっくりになります。代謝はそこそこ減っていきます。
 4.(老齢期)  病害に対する抵抗力は低下していきます。生長はかなり低下します。
 
 
また、(図2)は Mayer ,H. 1977: Waldbau auf soziologisch- ökologischer Grundlage 1. Aufl. Fischer, Stuttgart ,4:35  からの引用で、樹種別の林分における年間生長速度(cm/年)を表します。
 Fichte(トウヒ) 、Tanne(モミ)、 Buche(ブナ)などは、樹齢100年でもその年間樹高生長速度は 25cm近いことが分かります。150年を過ぎても15cm以上の成長が見られます。
 
 
 今回、何を言いたいかというと、日本ではせいぜい、50〜60年の短伐期で捉えているために、製材工場も細い主伐木しか扱えず、大径の高価値材を扱えないどころか、径が大きくなると材価が逆に、に安くなってしまい、安物のスギ、ヒノキ柱材しか流通できないという、情けない状況をこの30〜40年間続けているということです。
 樹木自体は100〜140年まで十分成長する力を持っているのです。大きく立派に成長した、多様な樹種の高価値材を高い値段で流通させているのが、ドイツ林業です。
 
 日本林業は樹木の持つ高い可能性をもっとしっかり見てあげてください。
 
きょうはここまで。
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 先週末、八戸市森林組合の工藤さんの計らいで、森林組合の事情を伺ったり、地元の指導林家の田中さん所有の針広混交林、工藤さんが手がけておられるいろいろな広葉樹施業林や混交林を見学させていただきました。
 八戸市森林組合は、工藤さんが入社された当時、職員が3人だけでほとんど活動していないような状態だったそうです。逆にそのおかげで、他の森林組合が背負っているような経営面や精神面の「負の遺産」がなくて、これまでの日本林業にとらわれることなく、自由な発想で積極的に広葉樹を取り入れてこられたようです。八戸周辺のいくつもの林分で様々な樹種の組み合わせを試しておられます。
 
 本当なら、北東北で一つの森林(営林)研究所があって地域地域の地質、土壌、森林気候、固有樹種などから林分ごとに推奨される目標林型が研究され、ドイツのように地元の森林官によって助言されるべきなのでしょうが、日本にはどこにもそんなシステムがなく、大学の林学科も植物学や造園学は教えていても、肝心な造林学は教えてくれないようです。
 
 工藤さんから、高田研一氏の「自然配色」という冊子を頂き、この考えはどうですかとのご質問なのですが、残念ながら、植物学的な記述は誤ってはいないと思いますが、森林科学、営林学的な視点がなく、あくまでも庭作り、造園学の範囲を出ていないように思います。「自然配色」というのは大手住宅建築メーカーのための庭作りの指導用の考えで、自然の姿を小さな庭の中に再現しようという日本独特の造園学の発想のようです。森としてのまとまりや相互関係、土壌や森林気候ごとの適応樹種の相関関係、最適な組み合わせなどが、残念ながら「自然配色」からは読み取れません。庭は作れても、森は作れません。
 
 ヨーロッパでは、庭はあくまでも庭であり、森は森です。ベルサイユ宮殿でもシェーンブルン宮殿でも庭は噴水や花壇が広がった庭です。庭の中に森を、自然を再現するという発想はありません。
 
 そもそも、日本の森林学、造林学で、樹木(ドイツ語でBäume)と灌木(Sträuche)を区別していないというのが、なんとも妙〜な感じです。ドイツの造林学で扱うのは「Bäume」です。植物学、下層植生学で灌木や林床植生を造林のための重要なヒント、資料として勉強します。
 (参考までにロッテンブルグ営林専門大学のProf.Rugeの「Ökogramm(エコグラム)」を載せておきます。)
 
 
 さて、冒頭紹介しました青森県の指導林家でもある田中さんは、お父上の後を継いで「優良大径木」生産を目的として、80〜100年の長伐期で、スギ、ヒノキ、アカマツ、ケヤキ、その他広葉樹の択伐林施業を行われています。主伐期の樹木はスギが250〜300本/ha、アカマツ150本/ha、広葉樹200本/ha で、きれいな森が出来上がっています。作業道も約140m/ha と、ドイツと変わらないか、それ以上の林道密度で、楽に、個々の樹木状況を良く観察しながら育成できる、ドイツと変わらない択伐林施業を実行されています。皆伐をしないことで、持続的に収入を得る事が出来る、ドイツ並みの持続可能な近自然型の営林が行われています。ただ、所有森林面積が175(ha)と、規模が小さいのでどうしてもぎりぎりの経営のようです。日本と材価が変わらないドイツでも、森林経営が十分成り立つ規模としては、少なくとも 500(ha)くらいは必要なのが実態です。
 
 工藤さんや青森県森連の山本さんが、労働安全の確保、徹底、森林労働で災害を起こさないために、ドイツのような労働安全工学に基づいたウエアーを手に入れたいとのことでしたので、2つほどドイツのホームページを紹介します。ドイツでは労働安全が他の何よりも優先され、ロッテンブルグ大学でも「Ergonomie」の授業でしっかり教わります。
 
 「PFANNER Extrem Gut - Schutzbekleidung GmbH 」[ http://www.schutzbekleidung.at/ ]から Shop へ入っていただくと、直接購入できると思います。
 このオーストリアの会社の防護服、ズボン、作業靴は、ロッテンブルグ営林専門大学のProf.wolff が、安全強度試験を行っているものです。このあいだ、岐阜県で日本林業の実習をやっていたHayo君が紹介してくれた会社です。
 
 「RENZ  Arbeitsschutz 」[ http://shop.waldbekleidung.de/schnittschutz.php] これはグーグルやヤフーですぐ見つかる会社です。セットで売っています。
 
ドイツ語ですからわからなかったら質問してください。
 
ということで、今日はここまで。
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 今年、メディアでナラ枯れ被害の話題が取り上げられていたので、少しだけドイツの状況を紹介します。
 
今年の日本の夏は暑かった!昨年、一昨年と、ドイツでカラッと乾燥したさわやかな夏を過ごしていたので、日本に帰国して、今年の強烈な暑さには参りました。当然、森の木々も相当くたばっていたはずです。
 
 ドイツでも、2003年、2006年の夏は、例年と違った暑さで、かつ、ドイツの場合、乾燥しています。このような気象の異変が起こると、森の木々の病虫害被害は突出してひどくなるようです。トウヒは弱って茶色に枯れ(→ 写真)、Bolkenkäfer木食い虫の被害木も大量に出てしまったようです。(→ 統計グラフ)
(Landesforsten Rheinland-Pfalz のホームページからの引用です。)
 
 ドイツの各州森林法では、
「原則、化学薬剤は使用しない。」、
「色々な可能性を検討し、実行した末の最終手段としてのみ利用する。」ということですから、さらに、FSC(森林認証)や PEFC(持続可能な森林管理からの木材の認証)でも、化学薬剤の利用を排除しますから、ドイツでは単純に対処療法でなんとかするという風にはいきません。
 
@ 被害を各森林局、営林署で、個々の樹木を観察して、常にモニタリングする。
@病虫害の広がりを抑えるように、例えば、被害木を森から遠ざける、燃やす、薪にする、など清潔な森林管理を心掛ける。
@ナラ枯れの被害がひどい場合の最終手段として、やむを得ず、薬剤を使用する場合、水源や地下水の状況、労働安全面などを考慮し、個々の樹木に応じて処方する。
@春から秋の植生時期に被害を事前に防止するように育林コントロールに心掛ける。
など、(大雑把に書きましたが、実際は非常に細かく)森林局、森林官を通じて指導されます。そうしないと、伐採して販売ルートに乗せても、PEFC認証材として出荷できません。付加価値がつけられないと、安く買いたたかれてしまいます。
 
ということで、病害虫被害についてちょこっと紹介しました。
 
今日はここまで。
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先日、岐阜県郡上の河原さんの主催の広葉樹混交林施業の研修会に、お手伝いで行ってまいりました。福井県との県境に近い標高1000mにある、上村さんの所有されるきれいな広葉樹と針葉樹の混交林でほんの少しドイツの雰囲気を久しぶりに感じてきました。
 
 さて、以前にも少し紹介したと思いますが、もう一度簡単に混交の形態、構造について説明します。
 
 まず、鉛直方向の混交には、
①単層混交(単木、塊状、群状、巣状)  と、
②複層混交                   があります。
 (Prof.Schutz  "Skript WaldBau Ⅰ"より、図3.12 Abb 3.12 混交の形態(左と真ん中は①、右は②)
これは、もちろん伐採の様式の違い(Schirmhieb, Saumhieb, Femelhieb, Plenterhieb)によって出来上がるものです。
 ①の単層混交で
 単木混交(Einzelständer)は1〜2本を適宜混ぜていくものです。
 塊状(Truppenweise)は3〜5本程度の塊で混交させるもので
 群状(Gruppenweise)は5〜10本位
 巣状(Horst)は10〜50本をごっそり混ぜてしまう感じの混交を言います。
 
 ②の複層混交では
 図3.14 (Abb3.14 )混交の下位層の形成(前出 "Skript Waldbau Ⅰ"より)  を参考にしてもらうと、
上の図は、主要林分である高層林の高価値木(Hauptbestand) の下層に、次の世代の林分(Nachfolgebestand)が育成されている状態です。
下の図では、主伐用樹木林分の下に更新木が林床の気候を良好にする目的で利用されている状態です。
 
 図3.15 (Abb3.15) 期間混交(Zeitmischungen) は、Vorbau(伐倒せずに残しておいた、残存木)を、下層に成長している主要林分(Hauptbestand)を凍裂などの被害から守るために残存させておく手法で、主要林分が十分成長した段階で、伐採して取り除き、光環境を完全にします。
 
 
 <混交と安定性>
 ヨーロッパでは普通に、ブナとトウヒを単木で混交しています。混交林は単相林より15%以上よい成果を上げるとされています。この混交は、生長面だけでなく、林分の安定性を良好にするような樹冠形成に効果を発揮するとされています。しかし、この長所は、トウヒにブナが損害を及ぼす問題点にもつながっています。例えば、ブナとトウヒが一緒に成長する過程で、大面積での風害のリスクの高まりという点です。
 
 混交林での間伐では、混交の目標を明確にしておく必要があります。樹種間の競合度や序列にはいろいろなパターンがあります。
(A)強い競合関係 (例:ブナとミズナラでは、ブナの表層での密な根系のせいで、ミズナラの更新に不利)
(B)中立的     (例:トネリコは地下部での競合に敏感)
(C)共生関係   (例:カンバは周りの樹木に常に良い影響を与える)
などなどです。
 
 上手な樹種構成は、例えば、質的、経済的な基準で決まる場合もあります。さらに、混交状態の発展の傾向にも気をつけなければなりません。例えば、競争力の弱い樹種をどのように支援していくか、などです。
 
 さらに、生物多様性の視点から、あるいは、希少種保存の観点からは、できれば、豊富な種類の混交が望まれることも、さらに、希少種を優先することなども、必要かもしれません。いろいろな試みが必要でしょう。
 
今日はここまで。
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引き続き、間伐について。
 前にも少し書きましたが、雪害に対する安定性は、より適切なシャフトの形成、すなわち、H/D-wert樹高ー直径比(あるいは、Schlankheitsgrad)によります。このことは、伸長生長が最大になるStangen-Holz期(樹高15mくらい)が、安定性に対して最も危険な時期になることを意味します。(日本とドイツでは雪の湿り気が違いますから、日本ではもっと大きな木も雪害の被害にあいやすいのではないかと思います。)
 
 前回引用した Bryndum(1969)の間伐強度の違いによるBHD-Höhe(胸高直径ー樹高)グラフでも明らかなように間伐強度の低い、ひょろひょろとして、てっぺんにちょこっと樹冠のついた樹木は、十分間伐をして太く成長して樹高の2/3位まで樹冠長のある樹木に比べると、その重心がかなり高くなります。したがって、未間伐林分では、冬場に一定方向から卓越して吹く季節風で大きくたわんだところに、重い雪が乗れば、ポキッと折れやすいのは当然です。
 間伐が、樹冠長と幹の直径成長に大きな効果をもたらすことは、他の雪害、風害などに対する効果も含むことを十分認識すべきです。
 
 ただし、間伐もそのやり方次第では様々な不安定性やリスクをもたらします。
 例えば、Z−Baum高価値木の周囲に大きな隙間を作る間伐は、それを孤立させ、より大きな揺動につながり風、雪害へのリスクが高まることになります。
 また、Stangen-Holz期の初期に、高価値木の周囲での、小規模皆伐に近い間伐の集中は、樹冠による林地被覆の減少につながります。湿度、温度環境、下層植生への影響、大きな変化にもつながります。間伐によって樹冠閉鎖が消えると、様々な安定性の消失というリスク大きくしてしまいます。
 Z−Baum高価値木の配置も見極めた上で、間伐を実施しなければなりません。
 
 針葉樹に関してはヨーロッパでは、樹冠長:Lと、樹高:Hの比が、L>1/3*Hで安定になると推奨しています。風雪害の危険地帯や林地の形状によっては、L>1/2*H が必要としています。
 
 
 風害への対処は、第一に「樹種選択」、さらに「造林方法」が考えられます。間伐による「対 風害効果」はいまいち、よくわかっていません。風害は基本的には、高齢級林分に起こりますが、「風害は年輪幅の広いものにひどい」とか、「樹冠の、帆のような働きが大きな影響をもたらしている」とか、「根の、アンカー効果の影響もある」とか、色々です。「風害の受けやすさ」と「直近の間伐からの期間」の関係の研究もあります。間伐後10年経過した林分の風害材積率は10%程度であるが、間伐後1年では50%近いというデータがあります。ただし、これは、樹形との関連が定かではありません。
 
 
 間伐による樹冠空間の光環境については、Aussenac et al (1984): Eclaircie systematique dans un jeune peuplement de Douglas.Modifications microclimatiques et influences sur la croissance.Rev.forest.Fr .36.4;279-288. からの引用ですが、50%の強い間伐後は、Lichtkrone(受光樹冠)とSchattenkrone(下陰樹冠)の境界あたりで、間伐をしないものに比べて40%近く受光強度が増加し、Schattenkroneの最下部でも10%近く増加しているということです。
 
 
 また、下層植生の年間生育日数は、同じく Aussenac et al.(1988):Effects cf thinning on water stress and growth in Douglas-fir.Can.J.For.Res.18,1:100-105 の報告では、間伐後、1〜5年の間のデータでは、生育日数が26〜49日伸びているということです。まあ、もっとも、日本のスギ、ヒノキの単層林は、下層植生どころか、草一本、虫一匹いない、地肌むき出し状態ですから、比較のしようがありません。
 
 
 さらにもう一つ、間伐効果の保水力への影響のデータについて。間伐によって林床へ降雨が直接届き、下層植生の豊かなヨーロッパの森林では林床からの蒸散はむしろ17%減り、保水力が好転するということです。
 
 
 最後に、 Aussenac et al.(1988)から、「強度の間伐の直径成長への効果(Wirkung starker Durchforstung auf den Durchmesser-zuwachs.)」の図5.18(Abb5.18)を紹介しておきます。ダグラスファの、強度間伐林分(durchforster Bestand)と、非間伐林分(undurchforster Bestand)の比較です。79年生時点での間伐後、年間20mm以上と、非間伐林分の2倍以上の直径成長をしています。
 
 まあ、そんなこんなで、高価値木の樹木密度は、前回も紹介したように今日のヨーロッパでは、間伐を繰り返して、最終的に、100〜250本/ha程度に持っていくようにしているようです。
 
 
 先日、民主党の事業仕分けで、林野庁の森林整備モデル事業がやり玉に挙げられていたようですね。今までの林野庁の補助金事業が林業を商業ベースに載せられるようなものでなくてモデルにもならないようなものだったから、梶山審議官が主導してドイツのように本当に商業ベースに乗るような事業形態を見せるためにやっているのに、残念ながら仕分け人さん達にはいまいち、理解してもらえていないようです。梶山さん、プッツン来ているんじゃないかな?
 林野庁解体で、営林署や国有林野事業の道州への移管ということでしたら、わたし、喜んでアドバイスいたします。
 
 と、その前に今度の土日、岐阜の、時々このブログにコメントくださる「つうくん」さんの郡上八幡のフィールドにお邪魔します。どんな森でしょうかね〜?
 
今日はここまで。
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