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森林官、森林施業プランナーが自分の受け持つ森林で、前回説明したような3つの機能(利用機能、環境保護機能、保養回復機能)を十分生かした形で管理、施業していく際に、その目指すべき目標の置き方にもいろいろな大きさがあり、様々な段階が考えられます。それらをドイツ林業では混交林の複層林ですから、森林計画を作成する際、便宜上、簡潔に表現しています。(現状、日本の単相単層林には必要ないと思いますが、・・・悪しからず!)
例えば、今までにも何回か取り上げた
(WET)目標林形あるいはその推奨タイプ
これは現在の林況から将来的な大まかな目標を簡潔に表記したもので、
例えば、labile Fi - Ziel Ta -Mischwald(現状不安定なトウヒ林からモミの混交林を目指す)
(BE)林況(Bestand)
これは造林技術的に調整できる林分の最小単位を、林齢で区分けしているもので特別なものではありません。
ただ、ドイツ独自の林齢の指標で、ただ、ドイツでは複層の混交林が普通なので
例えば、 「5」 =平均41〜50年生 と、単層林ならこれで済むのですが、複層林もありますので
「12/2」=平均111〜120年生/その下部は 11〜20年生の若齢林 という感じです。
(BHT)施業タイプ(Behandlungstyp)
これはそれぞれの施業計画期にどのような措置を行うかを簡潔に表現したものです。計画をすべて簡潔に併記します。:WET、若木保育措置、間伐利用、主伐利用、・・・これも混交林施業の場合は計画し、記載せざるを得なくなります。
例えば、WET(ブナ-針葉樹-混交林)、主伐期は「目標直径木の収穫は傘伐、とその他は蓄積のための保育」
更新目標(Verjungungsziel/Kulturziel)
これも混交林施業計画には必要な記載事項になります。
例、ブナを 5%混ぜた、トウヒ65%-モミ30%の割合に確立する。
保育目標(Pflegeziel)
若木育成期、間伐期、成熟木蓄積期ごとに目標とする林分作り、保育計画を記載する。
例、将来木(Z-Baum)候補のトウヒ100本,モミ50本がある安定なトウヒ、柱材目標
更新目標と更新行程目標(Verjungungsziel und Verjungungsgangzahl)
例えば向こう30年についてすべての樹種について更新の工程を記載する。
例、<532>: (5) =今後10年で50%を抜き取り伐採
(3) =次の10年で30%
(2) =そのあとの10年で20%
ドイツは、日本のように単層林の一斉皆伐ではないので、例えばこのように10年刻みで持続的に伐採、更新(天然更新)が計画的に続いていくことになる。
という風に、複層混交林の択伐林を作っていくとなると、1000ha以上の森林を受け持つ森林官、プランナーは全体、及び、林地ごとの目標、行程を計画していくことになります。
この後、将来木(Z-Baum)としての生産目標(Produktionsziel)や森林構造をご紹介していきます。
さて、話は変わりますが、今、普天間基地問題でにぎやかですが、それを解決するには沖縄だけでなく、北朝鮮問題、米軍の事情、日本の国防力、基地受け入れを含めた沖縄以外の地域の人の在日米軍に対する自覚
などいろんな要素をすべて考えてトータルで政策を進めていかないと動かしようがありません。
物事を解決しようとするとき、特定の要素だけに着目して、そこだけを変えようとしても、それによる副作用が生じてうまくいきません。
昔、日本には弘法大師のような、いわゆる「博物学者」がいて、あらゆる分野の知見を持って、その全体の知識、理解から個々の事象、現象の理解、解決へつなげていくことができていました。
本来、東洋の物の考え方は「全体主義」で、西洋科学の方法論は「要素主義」でした。ところが、この林業に関しては、ドイツのシステムは、政治、行政、森林法、森林庁・森林局、民間事業体、市民生活、利害関係、林業・木材産業構造、木材需要、自然・環境問題などすべてがトータルに考えられていて、まさに博物学的、全体主義的な思考、発想で大変うまく調整されています。
もちろん、マグロ、クジラ問題に象徴されるような西欧人、ドイツ人の、合理的で変わり身の早さも、ドイツ林業のシステムがうまく回るのに大きな役割を果たしていると思いますが、日本の林業関係者にはもっと、もっと海外の林業、システム、や日本の気候、固有の自然環境・樹種、地質・土壌、地域伝統文化、地域社会の産業構造などをトータルに勉強して、時代の変化をしっかり読み取ってほしいです。知らないと変われないし、勉強しないと損します。産業・文化は滅びます。
「自分の祖先が守ってきた森だから」「昭和30〜40年代には杉の丸太1本が今の十倍の値段で売れたから」と、ただそれだけの発想で、保守的に、日本の森林・林業を再生させる動きに協力してもらえないのは大変残念なことです。でも、その「かたくな」な人達を説得できないのは、知識、理解が不十分なのか、説明不足、言葉足らずなのかもしれません。
3、4月に林野庁の方にドイツ林業のシステムを散々教えてあげたのに、林野庁のHPでいまやっている「森林・林業再生プラン」の検討委員会の議事録や資料を覗いてみたら、ドイツの林業システムが、でたらめに書いてあって、がっかりしました。やはり、林野庁は機能不全状態が続いているんですかね?
森の現場、森林組合で働く若い人たちの柔軟な頭と、自分たちが変えていくんだという意欲に期待しています。
今日はここまで。
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無題
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<造林(Waldbau)と多機能性(Multifunktionalität)>
森には
(A)利用機能(Nutzfunktion) 、(B)保護機能(Schutzfunktion) 、(C)保養回復機能(Erholingsfunktion)
がある。
(A)利用機能には
1)選別による、高い価値を持った木材の生産
2)ドイツではクリスマスツリーなどの副次的な利用に供される木材生産
3)雇用と従事者の収入の確立のための森林利用
4)森林所有者の収入源、資産としての森林利用 などがあり、
(B)保護機能には
1)土壌の保護
2)水源、水資源の保護
3)気候の保護、安定化
4)空気の浄化、フィルター機能、CO2吸収
5)騒音からの保護
6)物質循環の保護
7)自然保護、種やビオトープの保護
8)景観保全、保護 などがあり、そして、
(C)保養回復機能には
1)健康を回復、森の中でのスポーツによる心身の釣り合いを保つ
2)森の中での自然体験
3)森の中でのエステティーク
4)芸術、教育、森林教育
5)心身の静養、リラックス などの機能がある。
この(A)、(B)、(C)の3つの機能は当然、お互いに強く関連し合っており、個別に切り離されるべきものではなく、「ゾーニング」などと称して林地にその機能を指定すべきものでもない。この3つ、すべてが営林事業体の事業目的、経営目的でなければならない。
決して、補助金システム作りのために個別に森林を「ゾーニング」してはいけない。
せっかく林野庁の諏訪さんや田坂さんたちと仲良くなったのに、また、林野庁のやることにケチをつけて敵にまわすようなことを書いてしまいました。ご勘弁を!
さて、<ドイツの近自然型造林>という概念は
持続可能な森林管理や自然から与えられた森の進化、発展のダイナミクスのさらなる利用を目指すもので、そこには、立地に適した樹種の利用の基に、事業経営の確立と生産性を同時に満たし、化学薬剤、農薬、肥料に頼らないことがその根本にある。
それでは、「択伐林(Plenterwälder)」は、近自然型森林形態の形成に近づくことができるんでしょうか?(書いている人間が聞くなよ!ってか。)
Landesforstverwaltung Thüringen(チューリンゲン州森林庁)は
「森林管理の理想像とは、近自然型で、構造の変化に富む森を目指すものであり、生物・非生物両起源の危険性に会いにくいものであり、それによって期待される多様な成果は森や森林管理、営林事業に持続性や優越性をもたらすものである。」
と、述べています。
これをもう少し詳しくまとめていくと、
<近自然型造林>の原理とは…
@林地の多様性にしっかり着目すること
・樹種の豊富な近自然型混交林への発展を促進する。
・持続林の構造のための<不均質性>と<階層性>を促進する。
@天然更新の優位性
・皆伐は基本的に避け、可能な限り樹冠の傘下での更新を目指す。
・結果的に、極上の樹木を作り上げるような森林保育を遂行する。(すべてを、一定の樹齢で切らない)
@健全で高い価値を持った樹木への到達が、その収穫期を意味する
・その際、連続的な森林の発展のプロセスを十分考慮する。
・エコロジーと事業経営を両立させるような森林自然の状態に持っていく。
@森林とその土壌の損害を回避する
・ 森の自己調整機能を高めることも必要である。それが総体としての「森林保護」になると考える。
そして、森林管理、造林の理想像を明確にしていくためには
・森林管理、発展のさせ方の指針
・長期的観察による樹種の転換の方向性
・主要な樹種と構造に言及した目標林形
などを指し示す必要がある。
また、その理想像に基づく木材の生産目標は、個々の目標林形に違いがある中で、さらに、個々の樹木に対して定めていくべきものである。(一斉林施業という日本のこれまでの概念とは、全く対極の考え方になる。だからこそ、上級森林官一人当たり1500ha程度の管理規模が最適になる。)
目標林形は樹種、気候、環境がドイツと日本では異なり、日本では、さらに各地域ごとに地形、地質、土壌、気象、固有樹種、固有植生、営林環境が違うので、各森林組合で林区ごとの「林況調査書」をまず、作る作業が必要になる。それができて初めて、ドイツのような目標推奨林形を提案していくことができる。
ドイツの目標林形の考え方の例としては
例1)あらゆる直径の若木の群状混交林分を、優良で、通直なブナが散らばった「ブナ-広葉樹-混交林」へ誘導
例2)ブナ、その他の樹種との混交による、立地に適した、安定な、優良で価値の高いトウヒからなる「トウヒ-混交林」へ誘導する。この場合、長期的な管理が求められ、また、モザイク状の不規則な天然更新を行っていく。
例3)副次的な混交樹種の中に、突出した、優良で樹冠が広く、よく枝打ちを施したダグラスファからなる「ダグラスファ-混交林」へ誘導する。そこでは、ブナやその他の広葉樹を中間層として、あるいは大きな群状に成長させておく。その林分には、部分的に群状、巣状に天然更新の核になるものを配置し、したがって、林齢には当然、不均質さがあるものになる。
これらは、あくまでもドイツの<Waldentwicklungstypen(推奨タイプ)>ですから、日本で択伐林の近自然型混交林をつくっていく際には、地域、地域での森林研究が必要です。頑張ってください!
次回はドイツ、近自然型造林の、さらに細かい基本概念をご紹介します。
今日はここまで。
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ゴールデンウイークは、暇つぶしに日本の造林学や森林学の本を読んでました。自分はドイツの森林学、林業、森林政策は知っているのですが、日本の、特に、大学で教えているであろう森林学や造林学についてよく知らないので、国立国会図書館まで行って、「造林学」川名他(朝倉書店)、「多様な森林施業」藤森隆郎(全国林業普及協会)や「造林学(現代の林学)」堤利夫(文永堂出版)、「造林学(基礎の理論と実践技術)」佐々木恵彦などの専門書を読みあさってました。
読後の感想:
これまでの日本の林業を否定せずにドイツなどの新しい林業についても紹介しているために、どっちつかずの中途半端で、一体どういう林業を教えようとしているのかが、よく分かりません!これを林学の初学者や林業の現場に入ったばかりの新人が読んだら、たぶん、全然わからないのではないかと思います。皆伐、単相一斉林を容認した議論をしながら、多様性のある複層林施業を紹介せざるを得ない時代の流れも認めるという、苦しい内容です。
また、ドイツのように気候も土壌も植生もそれほど変化のない国なら、ひとまとめの議論でも可能かもしれませんが、日本は南北に長く北海道から沖縄まで周辺環境も樹種も全然違います。なのに、一般的な議論しか書いてないから、各地域の現場の人にはほとんど役に立たない本になってしまってます。各地域ごとの推奨される混交樹種の組み合わせとかは一切書いてありません。(ドイツでは実際は、各州ごとに森林法や造林の基本原則が微妙に違います)
ということで、専門書を何冊も読んだのですが、満足のいくものではありませんでした。そんな中、ふらりと入った本屋さんで見つけた「森林の崩壊 国土をめぐる負の連鎖」白井裕子(新潮社)は、フムフム、納得!という感じで読ませてもらいました。内容が一貫していて、ブレていないので明解でした。おじいちゃんのお家が伝統構法で立てられているそうで、私の実家も伝統構法の大きな家なので読んでいて共感でき、すごくためになりました。
で、要するに、上記の専門書の著者の学者先生たちはその立場やしがらみにズルズルと引きずられているのですネ。
一方、ドイツの学者たちはそこを、すぱっと合理的に割り切って、変えるべき時代の流れになれば、あっさりと、今までの林業・施業の方法を変えてしまうのです。日本食のすしが大ブームでマグロの握りを散々食ってたくせに、大西洋クロマグロ漁禁止案が国際会議で出てくると、マグロの握りをあっさりとやめてしまうのが、ヨーロッパの人達の合理性です。クジラについても同じです。あっさり手のひらを返して、規範を振りかざすのが、あちら流のやり方です。
さて、「自然に適合した森林管理(naturgemäßer Waldbewirtschaften)」 の原則
1.個別の樹木の持続可能な利用
皆伐は禁止。収穫と保育を同時進行させる。(まず最初に、有無を言わさず、「皆伐禁止!」です。)
2.その土地固有種の天然更新
世代交代は、林内で、早い時期の、連続的な天然更新によって、長期的に漸次、行う。皆伐で裸地をつくってしまうと、更新経費が高くついてしまうから。
3.調和のとれた生物個体数を持つエコシステムの創造
固有生物種からなるエコシステムの、調和のとれた生態系は、自発的な森林更新や精選され、立地に適合した樹種で構成された森林のダイナミクスが機能するための大前提である。
4.安定性と弾力性を最大限可能にする支援
多くの形態や多様性で作られた、立地に適した樹種からなる持続林は、均質な同種の人工林に比べて、その抵抗力が勝っている。そのような森は気候変動に弾力的に反応することができ、それは、風害、乾燥、病虫害に対する抵抗力にもつながる。持続林の、広い樹冠を持つ木々は、空気中の汚染物質の負荷を低減する。
5.自然の推移をうまく利用することでの、事業成績の持続的な改善
自然に適合した森林管理は最新のエコシステムの知見を利用している。その造林、森林管理は天然林の中の遷移の過程を可能な限り、目指している。それが、無駄なエネルギーの投入や系外物質の投入、侵入をなくし、それは、経費の大幅な削減を可能にする。持続林事業は、中、長期的観察の中で成熟林伐採事業を、事業経営面で深く考慮している。それは、自然な安定性のため、木材市場の発展に安定的に影響を持ち、樹木の病災害への支援プログラムの必要性を減らし、それは、他の事業方法よりも、社会的負担(公費の投入)を減らすことにつながる。
6.土壌や林地をいたわる木材収穫
自然に適合した森林管理は、決して機械を否定するものではない。それは、しかし、機械を何の考慮なく合法化する森作りとは違う。必要なのは、森に適合した機械である。森林土壌をいたわり、林分の損傷を回避することは、人間工学的に適合した作業技術の次に、まず、優先されるべきである。林内の作業道の開設、利用は特別な必要がなければ、制限するべきである。
7.価値の高い優良木を育てる
全体的な持続可能性を考慮して、優良木と不要木のみを収穫する。残されている林分は、より価値の高い品質を持つ木へとつながっていく。極上の樹木の伐採は、その材積の大きさから、経営収支の改善に寄与する。
8.広く森林自然保護を保証する多様性
持続林では、その樹冠が恒常的に置き換わることになる。それは、日照や湿度環境に変化を与え、動・植物に多様な生育条件をもたらす。枯死(倒)木を意図的に放置することも、これに寄与する。持続林はすべての林地上に動的な自然保護の要求を満たしてくれる。したがって、自然保護林と経営林を分ける事は意味のない、余計な作業である。(日本でやっているゾーニングは、それを導入した人が、何か勘違いして?浅読みして?推し進めてしまったのでは?意味ないですよね!)
9.単調連続な森の、改変のための機会としてのかく乱
自然に適合した森林管理は風害、病虫害、雪害などによる、経営的に痛手を与えるかく乱の発生を抑えるものではない。しかし、自然に適合した森林管理の理解は、一斉で大規模な損害を生じやすい、連続で単調な森林の改良と、より多様な構造を生む機会とも、見る事ができる。
10.美的感覚を持つ森林の姿の創造
それぞれの森の、お決まりの形ではない、個別の取り扱いは、変化に富み、面白い森の姿を創造する。すべての齢級の樹木からなる森、そして、著しく巨大なまでに、意図的に育てられた木々は、それを目にし、体感する価値を高める。
最初にも述べましたが、自分はドイツの大学や研究所、森林局で森林学や造林の手法を学んできたので、これは当たり前のことで、何ら特別な内容ではないのです。日本の大学や林業の現場で森林学、造林学を学んだ方々にとって、この「自然に適合した造林、森林管理」はどのように映っているのでしょうか?何が疑問点なのでしょうか?どこか違和感があるのでしょうか?教えてほしいです。
ドイツ林業をご存じの岐阜県庁林政部の中村さんから時々メールが来て、「ドイツの森林の多様性や施業方法を地元の人に理解してほしいんですが、それが…、難しいんです。」と、よく嘆いておられるのですが、やはり、日本の森しか見たことない人にはイメージがわかないのでしょうか?自分には、何がわからないのかがわからないのですが。
今日はここまで。
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腰痛から復活。近所の、広い芝生(混じりの原っぱ?)のある辻堂海浜公園で約3週間ぶりに軽く50分程試走し、今朝も腰は大丈夫なようなので、ドイツ造林学を再開します。それにしても、公園なのに歩道はアスファルト。公園くらい、土の地面にしてほしいです。マンハイムにいたとき、ライン川河畔の広大な森林公園の中を走っていましたが、網目のように縦横に柔らかい地面の歩道があり、散歩、ウォーキング、ジョギングにお年寄りからベビーカーを押すご婦人や子供までいつも大勢の人が利用していました。雨の後ビチョビチョの大きな水たまりができていても、誰も、「アスファルトにしろ!」、なんて言う人はいません。日本の公園の設置基準はどうなっているんですかね?公園の歩道用に木材のチップやペレットを森林組合は売り込めばいいのに、ね!経営は楽じゃないはずなのに営業は嫌いなんでしょうかね?
さて、近自然型造林(naturunaher Waldbau).
1.安定な森林エコシステムの確立(Aufbau und Pflege stabiler Waldökosysteme)
・これは持続可能な森林機能の実現のための基盤になる。
・完全に自然に任せるのではなく、人の手による造林措置が認められる。
・適地適木の考え方が要求され、その達成のための重要な育成・管理の中に、赤松や樺など陽樹のパイオニア樹種のような森林の遷移的要因も含めて考える。
2.自然に近い形の樹種選択(Naturunähe bei der Baumartenwahl)
・立地に適した樹種を高い割合で保持する。これは次の4つの<樹種の適合性>基準に沿った評価を各地域、地区、林地ごとに行う。
①競争力(Konkurrenz) ②経済性(Pfleglichkeit) ③安定性(Stabilität) ④効率(Leistung)
樹種別にこの4点の満足度を 1.非常に適切 2.可能である 3.適性が小さい 4.不適
例えば、Rottenburg郊外の Rammert地区 Nr.24林地では
トウヒ: 3 モミ: 2/3 ダグラスファ: 2 赤松: 2 唐松: 3 という風に。
3.混交と階層性(MIschung und Stufigkeit)
・基本的には、混交林が良い。多層で、階層性のある造林の形に移行させていく。
・管理は個々の樹木ごとに行うことで、持続林の構造が完成していく。(多様性のため個々の個性の管理必要)
・当然、長期的に更新のプロセスが続くことになる。(皆伐、一斉植林のような短期的なものではない)
4.自然な森林の更新(Natürliche Waldverjungung)
・天然更新を効果的に利用していく。当然、このためには <皆伐の回避>が必要になる。(皆伐は一部の例外のみ)
・天然更新が経費のかからない森林の更新を可能にし、確立することを理解しなければならない。
5.森林の管理育成(Pflege der Wälder)
・管理育成は林分の安定性のために大変重要であり、それによって初めて、混交、多様性、そして階層性が可能になる。
・また、これは木材の品質や価値を高めることにつながる。
・しかし、一方、これは自然なプロセスの進行にある程度の制限を人為的にくわえることも意味する。
・またこれには、種の保存のために特別な管理の形もありうる。
6.森林や生態に適した狩猟(Wald und wildgerechte Jagd)
・鹿やイノシシなどの効果的でかつ、生態系に適合した狩猟が必要になる。
・個々の生活空間の容量に適合した生物個体数の保持が求められる。その際の尺度とは、柵、囲いなどの保護処置を必要としない森林更新が可能かどうか、で考える。
7.総体としての森林保護(Itegrierter Waldschutz)
・そのための規定、法規に沿った生物起源の外敵を利用した駆除に努める。この意味は、造林学的、生物学的、生態工学的、機能的な処方が、植生保護のための薬剤の投入より優先的に用いられるべきである、ということである。(農薬などは最小限に抑える)
8.森林をいたわる森林労働、作業法(Pflegliche Waldarbeit)
・森林管理育成などの施業の際、土壌や林地の損傷を回避するように注意深く行う。そのためには、より適切な作業方法と収穫技術の習得が求められる。
9.自然や景観の保持の視点(Aspekte von Naturschutz und Landschaftspflege)
・野鳥の巣穴のある樹木を切り倒したり、野生生物の利用可能な空洞のある樹木を伐採してしまうようなことは起こしてはいけない。
・森林や木材の管理は、自然なプロセスが活かされ、利用されるように、例えば、枯死木、倒木などを効果的に配置していく。
・生物相の貧困な林地は、森林計画の中でその保護目的の配慮をしていくべきである。
以上の9つの項目にまとめられているHS-Rottenburugロッテンブルグ大学造林学の近自然型造林という考えは、Uni-Freiburgフライブルグ大学 , Institut Forstpolitik森林・環境政策学の Winkel先生と Volz先生のまとめた「森林管理の17項目」とほとんど同じです。どっちが先なのかはよく分かりません。
さらに、近自然型造林(Naturnaher Waldbau)に近い考え方に、自然に適した造林(Naturgemäßer Waldbau)という考え方、概念があります。これは ”ANW”という団体が、メーラーの持続林思想(Möller's Dauerwaldidee)を基本に、組み立てていったものです。チョッと紹介すると、
---自然に適合した森林管理---その基本原則
要約すると
・林内での日陰での作業
・ブナの 「森の母」 としての意義の強調
・継続的な林分保持のための皆伐の禁止
・個別の樹木を利用
・単相林(同一樹種のみ)の禁止
・外来樹種のみで林分を形成しない
・頻繁な、軽度の施業
・天然更新の完全利用
・野生生物より森林優先
ですが、細かく10項目ほどに実際はまとめられています。これと、フライブルグ大学の17項目は次回にしましょう。
今日はここまで。
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約10日ぶりにブログを更新します。チョッとぎっくり腰気味で腰の周囲が痛くて新規投稿する気力がありませんでした。新調したランニングシューズが合わなかったのか、帰国して走っている近所のランニングコースがコンクリートやアスファルトの硬い道ばかりなのが体にダメージを与えているのか、原因はよくわかりません。ドイツではいつも森の中の土の林道(アスファルトにすると補助金がもらえません)を週に2回、15キロ気持ち良く走っていたので、日本に帰国して満足なトレーニング環境がないのが残念です。透水性があって地面に近い柔らかい道を作れないものでしょうかね?せめて、歩道だけでも、例えば木くずやペレットなどを押し固めて作れませんかね?大雨の際の都市型災害を防止するために重要だと思うのですが。
さて今回から「現代ドイツ」の造林学(Waldbau)特集にします。その前に。
日本に帰国して林業の現場を視察させていただいたり、日本の森林学、造林学の本を読んだりしてみましたが、現場も、学問的な発想も、対象である主要な林分はいまだに、杉か、ヒノキ、あるいはカラ松の一斉林(単相単層林)で、主要な木材生産の方法は皆伐後に人工植林、そして木材はあくまでも柱材生産が主目的であることは変わらないんですね。でも、これでは、いくらドイツ林業を紹介しても、林野庁が林道造成、高性能機械導入を促進しても、この発想を変えないと経営的にみて産業として成立しえないんです。
昭和30〜40年代の林業バブル期を除けば、例えば戦前でも薪炭林があって、燃料の薪や炭に広葉樹をしっかり利用していたわけだし、あらゆる樹種が、家具や食器、役所や駅舎、学校などの建物、橋、電柱、線路の枕木などいたるところに余すところなく木は利用されていたはずです。今の職場の同僚に神奈川県、逗子の山持ちがいて、昔は、大きなヤマザクラを切り倒すと聞けば、すぐ、まな板用にほしいと注文が来たそうです。
それが、戦後、自動車社会を迎えて原油が中東から輸入されるようになると、社会は林産業から石油化学工業中心にすっかり転換されてしまいました。でも石油化学工業社会を作り上げた、当時のその産業界は賢かったと思います。原油の精製の過程で生じる成分をすべて、有効に利用して産業を作り上げたのですから!
原油を蒸留すると、留出温度順に、30℃でLPガス(燃料)、40〜200℃でナフサ(自動車、航空用ガソリン、化学工業原料)、150〜250℃で灯油(家庭用)、200〜350℃で軽油(ディーゼル燃料)、そして分留後の残留物はさらに、重油(ボイラー、船舶用)、潤滑油(機械油)、パラフィン(ろうそく、パラフィン紙)、アスファルト(道路舗装)へと、すべてが利用され、さらにナフサは有機化学工業の原料として、衣料、生活用品、肥料、タイヤなど、現代生活のいたるところで余すところなく使われているのです。
林産業は、「産業としての組み立て」という部分で、石油化学工業の関係者の賢さに負けたんです。そして石油化学産業や機械工業は、自動車や電化製品などの「便利さ」を求める<昭和の時代の流れ>をうまくつかみ、上手にそれに乗ったんです。
かたや林産業は、戦後の住宅建築バブルに浮かれて、高級な柱材への利用にしか目を向けなかったんじゃないですか?木を売ったら儲かって、浮かれてしまって、現代社会の中での林業の、主要産業としての関わり方や戦略を考えなかった、外材の輸入自由化で一気に駆逐され、あっという間に石油化学工業に置き換わられてしまった。
でも、今やっと転機が訪れたではありませんか!石油化学工業は地球環境問題を引き起こし、途上国・後進国が工業技術を身につけて日本をしのぐほどに競争力を増して、その購買力で木材を買いあさり始めているではありませんか!国内では一極集中が都市と農山村のアンバランスを生んで人の集中した都市部に今や就職口はなくなり、地方に雇用の場を創出しなければならない事態になっているではありませんか!
だからこそ、この<環境の世紀>21世紀にふさわしい造林学を身に付け、子供たちがあこがれる林産業を組み立てていかなければならないのです。
そこで最新のドイツ造林学。ロッテンブルグ大学営林学部 Hein教授、Ruge教授の「Waldbau」の講義のSkriptから引用しながら、整理していきます。
で、当然ドイツ林学ですから、あらゆる樹種をすべて有効に利用することで林業がドイツの主要産業として成り立っており、そのため、あらゆる樹種が持続的に、かつ、できるだけ経費のかからない造林や流通システムの中で扱われるということが、発想の基本にあります。
ですから、日本の現状の林産業システムの大枠をいじらずに、ドイツ林業から美味しそうな所だけをつまみ食いしようとしても、うまくいきません!悪しからず!
まず、造林というのは農業との決定的な違いとして生産までの期間の長さがあります。そして、森それ自体に様々な機能があります。ですから、造林技術は、エコロジー的な考え、樹木や森の成長、成長速度に対する配慮や対処が必要で、また、エコロジーの発想は樹木のみならず、下層の植物を含めた林内生態系全体の理解が必要です。そして生産までの期間の長さは、途中の段階での樹木の、木材としての、あるいは森林環境としての利用も加味して考えていかなければなりません。
このようなことから、ドイツ造林学のNormative Rahmenbedingungen(基になる規範、基準、法律)には、
鳥類保護法、野生生物保護法、狩猟法、連邦および州森林法、植物保護法、労働安全法、・・・などなどがあります。卵が先か、鶏が先かはいろいろだと思いますが。
<現代ドイツ林学の森林管理(Waldbewirtschaftung)と近自然型造林(naturnaher Waldbau)>
そして、それは事業経営の確立、および生産性の維持を同時に満たす、適地適木の選択、
そして、化学薬剤・肥料を使わない
ということに基づく。
<近自然型造林> これは、自然なプロセスと、森林エコシステムの持つ自己調整機能を利用して、造林目的を達成するものです。この中では
1.安定な森林エコシステムの確立と育成
2.自然に近い形の樹木選択
3.混交と階層化
4.自然な更新
5.森林の保育
6.森林や生態に適した狩猟
7.完全な森林保護
8.森林をいたわる労働、作業方法
9.自然保護と景観保護の視点
というような考えが重要になってきます。
と、腰もまだ不十分なので、上の 1.〜 9.の詳細は、次回にしましょう。
何やら太文字にしたり、色文字にしたりできるようになったみたいですね。でも、めんどくさ。
今日はここまで。
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