Gekko!の登山用品の選び方

元登山ショップ店長が、実践に役立つ登山用品の選び方を解説、お薦め品の紹介。

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数回の単独山行をを経て、僕は友人の一人を登山に引き込むことに成功した。
その友人Mとともに、上高地から涸沢往復の計画を立てた。

「山はやっぱり穂高よ。北アルプスが最高だぜ!」

まだ横尾迄しか行ったことが無いくせに、僕はまるで、北アルプスの主のような顔をして言い放つのだった。

今思うと不思議なのだが、山を始めた当時は御岳山、乗鞍、穂高といった3000m級にしか目がいかなかった。
身近なところに美濃や、鈴鹿など気持ちのいい低山もたくさんある。
しかし当時の僕にはまったくの対象外だった。
山は3000m級、それも北アルプスが1番みたいな思いにとらわれていたようだ。

当時の写真を見ると、一見山用のスタイルのようだが、相変わらずの綿パン、綿シャツ。
装備に無頓着と言うよりも、山道具は高価で簡単にそろえることが出来ないというのが本当のところ。
とりあえず、登山靴だけはそれなりのものを手に入れていた。

いよいよ日帰り涸沢ピストン山行の始まりである。

意気揚々と僕たちは歩き出した。
上高地から横尾までのルートは、僕は既に経験済みである。

「もうすぐ行くと、明神がきれいに見えるんだ」
「あまり飛ばすなよ、まだ徳沢は先だぞ」

先輩面して偉そうな能書きを言いつつ、好調なペースで歩き続けた。
美しい景色を眺めながら、徳沢を越え、横尾には相当速いペースで到着。

登山地図には記されている参考時間を大幅に短縮できたことで、僕たちはかなり気をよくしていた。
食事の準備中に、可愛らしい女の子二人連れが先へ向かう。

「あんな若い女の子が登れるのかなあ」
「山をなめてるんじゃないのか?」
「俺たちは涸沢までは余裕だな。時間があったら穂高まで行っちゃおうか?」

そんな軽口が飛び出す始末。
このあと、山をなめているのは、僕の方だったと思い知らされることになるというのに・・・。

高揚した気分のまま昼食を済ませ、いよいよここから本格的な登り道になる。
食事道具を仕舞い、パッキングをし直し、靴紐を締める。
同時に僕の気持ちも、キリリと引き締まっていく。
準備を終えて、僕は初心者の友人に屹然と宣言した。

「さっきの女の子を追いかけるぞ!」

「よし!」

まったく何しにきたのか、軽薄二人は駆け上るようように、木立の狭い登山道を進む。

後先考えない、ド素人丸出しのハイペースで、あっという間に僕の足は限界に。
ペースはがた落ち、友人Mに励まされつつ、ヒーヒー登る。
こうなると、女の子に追いつくどころか、涸沢到着も危うい。

しんどくてしんどくて、たまらない。
自分ひとりなら、間違いなくここから引き返しているだろう。

僕はもう、心臓が止まりそう。
僕を見捨て、先に行く友人に追いつくことも出来ず、5歩歩いてはゼイゼイの繰り返し。

樹林帯から視界が開け、涸沢が姿を現すものの、いっこうに近づかない。
横尾までの元気はどこへやらである。

「もう帰りたいよお・・・うう〜」

友人Mは、僕のはるか先を歩いている。
まさか、僕だけここからUターンするわけにもいかず、ゆがんだ顔で歩き続ける。

「山をなめた罰が当たったんだ・・・」

ぶつぶつ唸りながらも、何とか到着することが出来た。
涸沢ヒュッテで、冷たく冷えたビールで乾杯する。

「ヤッタゾー!カンパーイ!」

苦労が大きいほど、達成感もひとしお。

まったくよく来れたな〜。
僕は友人の前で面子丸つぶれだが、そんなことより、涸沢に到着した嬉しさの方が勝っていた。

幸せのひとときを満喫していた。
目の前には穂高の稜線が圧倒的なスケールで広がっている。

「次は頂上まで行くぞ!」

懲りない男は心の中でそう誓うのであった。

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