Gekko!の登山用品の選び方

元登山ショップ店長が、実践に役立つ登山用品の選び方を解説、お薦め品の紹介。

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北アルプス南部周遊山行を終えた僕は、完全に山の魅力に引き込まれていた。
山に行けない間は、登山に関する本を片っ端から読みまくる日々。

新田次郎の山岳小説は完全読破。
それこそ何度も読み返したものだ。

他にも井上靖の「氷壁」などの古典的名著から、小西政継の登山記を始め、登山家のエッセイなどもう、手当たり次第である。
「山溪ノンフィクション・ブックス」の登山家伝記シリーズも、おもしろいものが多く、これもすべて読破した。

夏も終わり、秋が過ぎ、気が付いたら冬だった。
冬山に挑戦するという意気込みよりも、登りたいときがたまたま冬だったという感じで、冬山山行を計画する。

候補地は夏に登った蝶ヶ岳。
危険な箇所も無く、冬山初心者の僕でもいけそうだ。

それでも必要な装備はそろえなければならない。
相変わらず、普段着のような質素な装備しかもっていなかったが、夏と違い最低限のものはまた買い込まなければならない。

10本爪アイゼン、ピッケル、わかんを買い揃えた。

寝袋は安物の化繊を2個持参。
ダブルにして使おうという魂胆である。

たいそう嵩張るが、この頃はまだダウンシュラフを買うお金がなかったのでしょうがない。
依然寄せ集め的な不完全装備ではるものの、これでも自分なりに真剣に検討した結果でもある。

(1日目)

年末に出発。
沢渡に車を止め、徒歩上高地に入る。

釜トンネルがこんなに急斜面だったなんて、歩いてみて始めて感じた。
トンネル出口の雪崩跡をトラバースして、大正池に。
気温は温度計を見ると−10度だったが、不思議に暖かく感じる。

氷の張った大正池を眺めつつ小梨平を目指す。
上高地小梨平に着き、今日はここでテント泊だ。

当時の写真を見ると、ここで使用しているテントが、始めて御岳に登ったときに使用した安物テント!
まったく懲りないと言うか、無謀と言うか・・・。
実にお恥ずかしい限りである。

蝶ヶ岳では、冬季小屋を使用する予定なので、あくまでも予備としてのテントだった。
しかし予備テントとしても、こんなもんは使い物にならない。
もしこのテントを山頂付近で使用していたら、今回の強風では確実に全壊していただろう。

若気の至りとはいえ、大いに反省しなければならないところである。

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(2日目)

徳沢から樹林帯の登りが始まる。
年末ということもあり、年越し組の入山者がいるようだ。
踏みあとが出来ていて歩きやすい。
ルートを見誤ることがないのも、ありがたい。

天気もよく、順調に高度を稼ぎ、蝶ヶ岳の非難小屋に到着。
重い鉄の扉を開き、中に入ると、6〜7人ほどの先客がいるが、充分スペースがありほっと一安心。

畳部分は空きが無いので、僕は木のベンチのひとつを陣地にする。
ちょうど体のサイズほどのベンチで、この上に寝袋を敷いて快適に眠れる。
安物の化繊シュラフの2枚重ねも、結構暖かい。

(3日目)

翌日から低気圧の影響で、荒れ模様に。
誰も下りようとするものは無く、そのまま沈殿。

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(4日目)

この日も天候は回復しない。

食料はあるものの、酒を切らしてしまったのが辛い。
他の登山者にウイスキーを分けてもらうが、その美味いこと!
飲みたくても飲めないという環境が、極上の美味に感じさせるのだろう。

一日やることも無く、酒も無い生活は辛い。
僕は思い切って、出発の準備をする。

「出発するのですか?」
「ええ、樹林帯に入ってしまえばこっちのもんですから・・・」

装備を身につけ、出入り口で待機し、少しでも吹雪の収まるタイミングを待つ。

風が緩んだので、思い切って外に出る。
ちょうど飲料水用の雪を取りに、外に出ていた登山者に、写真を一枚とってもらう。

「気をつけてください」

そう声をかけてもらって、僕は勇気が出てきた。
視界もあまり利かない吹雪の中に身をゆだねる。

樹林帯まではそう距離は無いはずだが、まったく前が見えない。
強風でまっすぐ立っていられない。

ルートもわからず、樹林帯までも辿り着く自信が無い。
僕は出発してわずか10分ほどで、あっさり下山をあきらめる。
ふたたび小屋の人となり、寝袋を広げていた。

意気揚々と出ただけに、なんともバツが悪いが致し方ない。
動こうとしなかったほかの登山者と比べ、僕は自分の経験の無さを痛感した。

観念して、吹雪の収まるのをとことん待つ決意。

(5日目)

風は相変わらず強いが、吹雪は収まった。
みんな競うようにパッキングをし、下山にかかる。

樹林帯では深いところは膝上のラッセル。
行きはアイゼンだったが、帰りはワカンの出番だ。
ときどき「変わりましょうか?」と声がかかり、先頭を交代する。

みんなで変わりながら、いいリズムでラッセルをこなす。
下山したいというエネルギーが溜まっていたのか、まったく疲れを感じることなく一気に徳沢に到着。

美しい景色を見るでもなく、ピークを踏むでもない、味気ない山行だった。
それでも僕にとっては得るものの多い、思いで深い山行のひとつである。

今年は去年以上に登るぞ。
元旦の徳沢園でビールを飲みつつ心に思うのであった。

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はじめまして!

突然の書込みで失礼します。

勇気の出るホームページを見てください。

ご迷惑でしたらスルーしてください。 削除

2008/6/30(月) 午前 0:05 [ 井上魔王 ] 返信する

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