Gekko!の登山用品の選び方

元登山ショップ店長が、実践に役立つ登山用品の選び方を解説、お薦め品の紹介。

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まだ岳沢ヒュッテがある頃の話。

GW明けに奥明神沢から前穂高を登り、奥穂をつなぎ、涸沢へ降りるという計画を立てた。
今回も単独行である。

早朝上高地から歩き始め、岳沢ヒュッテに着いた。
小屋のおやじさんに、ルートの状況を聞く。

「奥明神沢から前穂に登りたいんですけど、雪の状況はどうですか?」

おやじさんは、一瞬沈黙して、僕の全身をなめるように見て、足元で止まった。

「・・・雪は安定しているよ」

はっきり記憶に無いが、答えとしてはポジティブな返答だった。
入山者の少ない時期に一人でやってきた登山者を値踏みしたんだろう。

危険だから行くなとは言われなかったので、合格だったのだと思う。
このとき、おやじさんの目線は明らかに僕の靴を見た。

それなりに年季の入った重登山靴が、僕の山歴を伝えてくれたようだ。
小屋でホットコーヒーを一杯頂いた。

気合を入れて、一人沢を詰める。

雪は締まっているので、歩きやすい。

ひたすら斜面を登りつめ、時々休憩。
ピッケルを深く突き、ザックを引っ掛け一服。
徐々に小屋が小さくなっていく。

天候は微妙な天候で、時々薄いガスがかかる。
何しろ、今回は初めてのルートなので、地形図を読み込むしかない。
そんな中で、ガスが流れる状況は、精神的にプレッシャーになる。

かなり高度を稼ぎ、稜線が近づいてきた頃、進路を左にとる。
このまま、直登すると、前穂には稜線伝いにルートを取る事になる。
今日の雪の状況からすると、なんとなくやばそうな気がしたので、手前から前穂の方向へ進路をとることにしたのだ。

このルートが正しいのか、間違いなのかは、今でもわからずじまい。

稜線が近ずくに連れて、斜度はかなりきつくなっていた。
そして左手にルートを取ると、さらに急斜面になる。
一歩一歩新調に進み、確実にピッケルを打ちながら歩く。

体力的にもきつい。
絶対滑らないようにと思うと、無駄に筋肉に力が入る。

このあたりに来ると、疲労困憊しながらも、腰を下ろすのが怖くて出来ない。
ちょっとバランスを崩すと、滑落しそうな気がするのだ。
ピッケルを深く差し込み、もたれる様にして息を整える。

あと20mくらいで先が開けそうな感じなのだが、
ここから数メートルのきつい斜度を無事登りきる自信が無い。
正直なところ、ガスが巻きつつある天候に、疲労が重なり、完全に僕はびびってしまった。
もし足を滑らせたら止めることは出来ないかも・・・
考えることも完全にネガティブシンキング。

こうなると、もう駄目。
稜線のすぐ手前まで来ていながら、断念する。
下山することにした。

登り以上に、慎重に下る。
今思っても、不思議なほど、びびりまくり、体が硬くなっていた。
事故を起こすときは、こんなときなのかもしれない。

沢の中ほど、斜度がゆるくなるところまで来て、ようやく一安心。
緊張で心身ともに疲れ果てた。

無事下山できて良かったと思うことにする。

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無理をせず勇気ある撤退が一番ですね。
岳沢小屋のご主人も、それができる人だと思って止められなかったんでしょうね。
ご主人と岳沢小屋はとても残念でした。

2008/8/7(木) 午後 11:44 KUMA. 返信する

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KUMAさん、こんばんは。
ご主人亡き後、確か奥様が仮設小屋を守られていましたが、今年は休止が決まったと、少し前の新聞で読みました。ヒュッテのテラスで美味しいコーヒーを飲みながら奥明神沢を眺めたのが懐かしい思い出です。

2008/8/9(土) 午前 1:08 Gekko 返信する

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