Gekko!の登山用品の選び方

元登山ショップ店長が、実践に役立つ登山用品の選び方を解説、お薦め品の紹介。

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登山ショップの店長時代は
毎月1〜2回は山に登っていた。
ただ休みが1〜2日程度しか取れないので
なかなか長期の山行は難しい。

たいてい、夜自宅を出発して現地到着後車中泊。
朝歩き始めて、山中1泊。
そして翌日下山。
とうのが、ほぼお決まりのパターンだった。

この限られた時間で、できるだけ歩き回りたいので
結構タイトなスケジューリングをしていた。
それでも、この頃は体力に自身もあって強行軍をこなしていた。

しかし一旦体調を狂わすと、もう大変である…

とある11月の初冬。
新穂高温泉を起点に、双六岳、笠ヶ岳縦走にでかけた。
初日は新穂高の駐車場から双六を目指す。

シーズンオフのため、とても静か。
山を独り占めできる満足感を味わいながら
快調な出だしである。

弓折岳の稜線にでると、そこからの槍ヶ岳が絶景。
双六小屋も営業を終えるための準備をしていて、
ここのスタッフと通りすがりに挨拶する。
それ以外に登山者は全く会わなかった。

僕はこういう静かな登山が大好きである。
双六小屋近くのテント場で酒を飲みつつ、くつろぐ。
とても気持ちの良い時間が過ごせた。

翌早朝は双六岳の頂上でご来光を望むため、
テント場に荷物を残したまま空身で頂上へ。
天候も上場で美しい日の出を拝むことができた。
記念に写真も忘れずに撮る。

今日はここから笠ヶ岳の山頂を踏み、新穂高へ下山する予定。
尾西の乾燥米とスープで朝食を済ませていざ出発。

笠ヶ岳へ向かう稜線は、絶景の続く気持ちのいいパノラマコースで
歩き始めからテンションが上がる。

弓折岳の手前あたりから、
徐々に休みが増えてきた。

いつになく疲労が激しく、やや戸惑いつつも鞭打ち歩く。
なんとも足が重い感じなのだ。

稜線上にはうっすらと新雪が積もって入るが、
アイゼンを付けるほどのものでもなく、ほぼ夏道と同じ感覚。
特に悪い状況でもないのに・・・。

その後も時間とともに歩くペースは落ちていく。
双六小屋と笠ヶ岳のほぼ中間地点にあたる秩父平に付く頃は、
完全に足が動かなくなってきた。

10歩歩いては、ゼイゼイ息を整え休憩するようなペースで
遅々として進まない。

正直これほど急激に動けなくなったのは、後にも先にもこのときだけである。

この時点で笠ヶ岳の頂上はあきらめ、
抜戸岳を越えたところから笠新道を下山しようと決めた。
ここまででも予定時間を遙かに超過してしまい、やや焦りつつも再び歩き続ける。

しかし、本当にもう歩けなくなった。
時間の経過が気になるものの、もう、動けないのだからしょうがない。
ザックを下ろし、開き直って大休止。

食欲は全くなかったが、
インスタントラーメンを作り無理やり流し込む。
それから防寒義を着込みしばらく横になる。

多少うとうとしたが、寒さが厳しくなってきたので、再出発。

今日の自分は全く頼りなく、
どこまでいけるのか不安にかられつつ歩き始めると、
なんだかいい感じ。
おや?ッて感じ。

さっきの疲労が嘘のようだ。
ハイピッチで休みを取ることもなく飛ばしていける。

え〜〜なんだこれ!?

そうか、何のことは無い。
空腹で完全に燃料切れだったんだ。
歩こうとしても針はエンプティーを指した状態では歩けまい。

インスタントラーメンパワーが、まさに全開状態。
この即効性にはわれながら驚いた。

これは大げさに書いているのではなく、
食事を取る前と後では、全くの別人になり、
少し前の辛さが嘘のようなのである。

そういえば、早朝歩き始めてから、昼を回っても
行程の遅れが気になり、何も口にしてなかったもんな。

いつもなら歩きながら口に入れるキャンディーなどの行動食もこのときは持参していなかった。
エネルギー補充の重要性をしみじみ感じた。

何はともあれ、再びエンジンのかかった僕は全力で飛ばす。
日が沈んだらペースも必ず落ちるから、明るいうちになんとか林道までは出たい。

ようやく抜戸岳を越え、笠新道の分岐を探す。
この分岐に迷った。

それらしい分岐が手前に一箇所有り、少し下るとこれは違うなと引き返す。
ここで間違ったらもう一巻の終わりなので、地形図で確認しつつ慎重に進む。
やはり手前の分岐は迷い道で、程なく正解の分岐を見つけ稜線を放れる。

いくらエンジンがかかったとはいえ、疲労困憊なのは代わりは無い。
弱りきった体に、この笠新道の急激な下りが襲い掛かる。

一気に高度を下げるつづらの道は、足腰への負担が半端ではない。
どんなに辛くても、歩き続けない限り終わることができない。
これは登山の宿命。
今タクシーが呼べるのなら、1万でも、2万でも僕は迷わず払っただろう。

もう泣きそうになりながら、
がくがくになった足で段差を飛び降りるように延々下り続ける。
下りながら、この笠新道だけは二度と通らないぞと固く心に誓う。

どんなり辛いことにも、いつかはかならず終わりがやってくる。
あたりに帳が折り始める頃に、ついに林道のでた。
もう大丈夫だ。

ここからの林道歩きも長かったが、なんとか駐車場に付いた。
午後6時を回り辺りは暗闇に包まれつつあった。

(ああ〜終わった・・・)

山をやる方ならお分かりいただけるだろう、
辛ければ辛いほど、やり終えた後に大きな充足感に満たされる。

(よく頑張ったよな〜俺…
全く、最高だぜ、俺ってやつはよお…)

車中のシートに体を沈め、
しばし自分自身を褒め称えるのである。

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こんちは、ハンガ−ノック状態、わかります。
ソロだと、どうしても休むタイミングを逃し、頑張っちゃいますよね
お疲れ様でした<(_ _)>

2009/8/30(日) 午後 2:30 なり 返信する

ナリさん、こんにちは。

肉体的に壊れる前に、精神的な部分が浮ついていたんでしょうね。
だからエネルギー補給などの基本的なことがおろそかになったのだろうと思っています。
ハンガーノックって言うんですね。
こういう辛い山行のほうが、楽しかった山行よりも記憶に残っているのもなんだか不思議です。

2009/8/30(日) 午後 3:12 Gekko 返信する

はじめまして、
僕は山は初心者ですが、なんだか読んでいて
先日の登山で僕の場合、ペースが早すぎたのも
ありますが、10歩歩いて、ゼイゼイ。
物凄い疲労感、進むも帰るもつらい工程だな〜。
参加しなければよかったかな〜なんて。
すいません。全然レベルが違いますが
共感してしまいました。

2009/9/6(日) 午後 9:13 [ HIYOKO ] 返信する

HIYOKOさん、はじめまして。
経験の少ないときって、自分のペースがつかめていないので
つい飛ばしすぎてしまうんですよね。
でもHIYOKOさん、大丈夫ですよ、次の山行ではきっと「嘘!?」と思うほど楽だったりします。

そして徐々に深みにはまっていくんです(^-^;)

2009/9/6(日) 午後 11:28 Gekko 返信する

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