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FRBは養豚場

FRBは養豚場

FRBが19日に公定歩合を0.25%引き上げました。
これに前後して銀行の手元流動性(キャッシュ)と金利に関して記事がでています。

まずは、16日のブルームバーグ『米シティとBOA、JPモルガンの現金保有が拡大−利益率低下の恐れ』
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=a3Cz5ZlteaBk
“2月16日(ブルームバーグ):米銀が手元に保有する現金が最大1兆2900億ドル(約116兆円)と、企業向け融資にほぼ匹敵する規模となっている。融資残高1ドル当たりでは、過去最高の98セントだ。
ブルームバーグ・ニュースがまとめた米連邦準備制度のデータによれば、この割合は2008年6月の21セントから4倍余りに拡大。同期間に企業向け融資は14%減少して1兆3200億ドルとなった。銀行がデフォルト(債務不履行)抑制で貸し出し基準を厳格化し、手元流動性の確保を求める当局に対応したためだ。”

この記事、あたかも銀行が手元流動性(キャッシュ)の量を増やしているように書かれているが、これは変だ。
キャッシュの量を増やしているのはFRBで、銀行は自分ではキャッシュ(=準備預金)の量を増減させることは出来ない。
このことについて、順を追って説明しよう。

まず、この記事中で参照されているFRBのデータ、銀行全体の2月17日のCash assets 1,313.0十億ドルの大部分はFRB向け準備預金である。
(同じサイトのFRBの2月24日付けバランスシート中、銀行からの準備預金残高は1,248.9十億ドル)
http://www.federalreserve.gov/releases/h8/current/default.htm
http://www.federalreserve.gov/releases/h41/current/h41.htm#h41tab10

FRBは、必要準備預金金額を超える部分につては現在、0.25%の金利をつけています。

必要準備預金金額を超える部分は、日本の金融専門用語では“ブタ積み”といいます。
ブタとはオイチョカブのゼロを意味するブタからきており、通常ではその名のように、金利をつけません。

米銀のブタ(以降、超過準備預金をブタと呼ぶ)は、今1.2兆ドル程度で、民間銀行のBS上はキャッシュ項目に計上されます。
一方、FRBのBS上は負債で、すなわち、FRBの資金調達となっています。

これによって、FRBはいくらでもBSを大きくすることが出来ます。

例えば、X銀行からRMBSを100億ドル購入した場合、FRBとX銀行との資金決済は、FRBに開かれたX銀行の準備預金口座でおこなわれますので、X銀行の資産サイドでRMBSが減り、ブタが100億ドル増加します。一方、FRBは資産にRMBS、負債にブタが100億ドル計上されそのままファンディングされます。理論的には、FRBはファンディングの心配をすることなく、市中のRMBS全部を買いきることができます。

ブタも含めて、民間銀行の準備預金残高の総額はFRBが決定しています。

民間取引のみでは、ドルはFRBの準備預金の口座間で相互に決済されるだけで総額は変化させることはできません。

例えば、X銀行がY銀行からRMBSを購入すると、Xのブタが減ってYのブタが増えますが、ブタの総額は変わりません。

X銀行がA社に1億ドルの貸付を行い、その後A社がB社から1億ドルの機械を購入しB社のY銀行にある口座に代金を振り込んだ場合、貸付時にはX銀行の貸付とA社からの預金が計上され、機械の購入決済日には、X銀行のA社預金が減少し、Y銀行のB社預金が増加、この決済をFRBのX銀行とY銀行の口座間で行う。このケースでは,X銀行のブタが1億ドル減少し、Y銀行のブタが1億ドル増加する。しかしブタの総量は変化しない。

この関係は、海外銀行とドルの売買を行う場合でも変わらない。
例えば、X銀行がロンドンのZ銀行に1億ドルを@90円で売った場合、ドルの決済はFRB/NYのX銀行の口座とZ銀行(NY支店もしくは、Z銀行がNY支店を持っていない場合はZ銀行のコルレス銀行のFRB/NYの口座)間で1億ドルのブタのやり取りで決済し、やはりブタの総額は変化しない。
(同様に、円も日銀/本店内の準備預金口座間で決済され、総額は変化しない)。

どんな取引を民間が行っても、銀行毎のブタを変化させることは出来ますが、ブタの総額を変化させることはできません。

ブタの総額はFRBと民間銀行の資金取引でのみ総額を変更することができ、それは全てFRBが決定、コントロールしています(FRBからの紙幣の引出や持込、政府と民間との取引でもブタの総額は変化しますが、これも込みでFRBがコントロールしています)。

FRBがブタを減少させるには、例えば、保有しているRMBSを市中に売却する(FRBの資産の減少とブタの減少)、保有している米国債を使ってリバースレポで資金調達する(負債のブタの減少と負債のレポの増加)など。

米国の場合、必要準備預金の総額は非常に小さいため、1.2兆ドルの大部分が超過準備預金、すなわちブタです。

通常な状態では、ブタは限られた金額で、付利はされません。危機対応中の現状は、膨大なブタにして、それに0.25%の金利をつけています。
膨大なブタが0.25%である限り、FFレートは完全に死後硬直状態で、ブタの金利調整で政策金利を変更するか、ブタを正常な水準に戻して、ブタ金利を廃止してからでないとFFレートは機能しないでしょう。

現状のFFレートの0%から0.25%までの部分は、FRBに直接預金をすることができない企業が出すFFレートで、例外的なものです。また、FRBに担保を入れて調達するディスカウントウィンドーも、通常状態よりも多額のままですが、これも例外的で、膨大な資金余剰からあぶれている金融機関が利用しているのでしょう。

0%から0.25%のFFレートについて参考となるロイターの記事は、
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK036548420100112
です。

また、現状では民間の資金需要とブタの総額とは直接的には無関係で、膨大な流動性(ブタ)を供給しても、民間の借入の増加には直結しません(これがバランスシート調整の恐ろしいところ)。

日本銀行もかって膨大なブタを飼っていました。
ピムコの人が、FRBの養豚場と日銀の養豚場を比較しています。FRBの養豚は信用緩和であるが、日銀の養豚は量的緩和で、FRBは資産に信用リスクを持つものを購入して、信用市場を緩和していると。
http://japan.pimco.com/LeftNav/Featured+Market+Commentary/FF/2009/Global+Central+Bank+Focus+June+2009+Exit+Strategy+JPN.htm

中央銀行が民間の信用リスクを取り、民間の資源配分により介入せざるを得ないFRBの養豚の方が、より重篤なのでしょう。


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笛土
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