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ユーロシステム(ユーロ圏の中央銀行とECBの総体)が受け入れているユーロ圏の銀行からの預金の増 加が著しい。
上のグラフは2010年1月1日から6月3日までの預金合計、必要準備預金金額及びECBの資金供給メインオ ペ残高(MRO: Main Refinancing Operations)を表示したもので、預金合計が5月中旬以降、急激に増 加している。この背景とその意味するところを推論してみたい。 1、預金合計の構成 ユーロ圏の金融機関が各国中央銀行に預けているEUR建の預金で、3種類で構成
①Current account :所謂準備預金で金利ゼロ ②Deposit facility :オーバーナイトの定期預金で金利0.25%に固定 ③Fixed-term facility :入札による定期預金で、現状、準備預金の積みの最終日に行われるオーバーナイトの定期預金と、ユーロシステムが公社債市場に介入して(SMP:Securities Markets Programme)購入した国債の購入代金を不胎化するための定期預金。 後者の不胎化定期預金は期間7日と極短期で、ユーロシステムからの借入の担保になり、ユーロシステムの限界貸付facilityによって即現金化可能。 従って、預け入れた金融機関の流動性にとっては準備預金と大きな差はなく、不胎化は名目のみ。 金利は、前者が直近の5月11日で約0.80%、後者が6月2日スタートで約0.28%。 ②、③とも翌日あるいは即時に現金化可能で、金融機関にとってはベースマネーとほぼ同じ流動性供給金額とみなせる。
①、②はECBのサイト、
http://www.ecb.europa.eu/stats/monetary/res/html/index.en.html ③は、ECBの公開市場操作のデータで公表 http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/top_history.en.html 6月3日の残高、①2,159億ユーロ、②2,994億ユーロ、③350億ユーロの合計5,503億ユーロ。
必要準備預金額2,113億ユーロ。 2、預金金額はECBのみが決定できる 金融機関が中央銀行に預けている自国通貨建て(準備)預金の金額合計は、中央銀行のみが増減させることができ、民間取引で個々の金融機関の預金金額は変更されるが、合計金額は変えることはできない(前の記事『FRBは養豚場』参照)。
従って、ユーロシステムに民間金融機関から預け入れられているEUR建の預金合計が増加しているのは、ECBが増加させていることになる。 3、5月13日以降、預金合計が急増 関連する(と思われる)報道を並べると
①5月10日 EU、90兆円規模の緊急支援枠発表−ECBは債券買い取りへ(Update3 )
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aBhEAftrvyfY ②5月10日 日銀:ドルスワップ取り決めを再開、臨時の決定会合で(Update1)
FRBと欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、カナダ銀行、スイス国立銀行の5中央銀行は日本時間の同日午前、米ドルスワップ取り決めを再開。日銀も同様の取り決めの再開を決定した。 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aITXbfBx27_Y ③5月11日 オバマ米大統領がスペイン首相と電話協議、債務危機などで−報道官
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=actC4gW_Wgto ④5月14日 米FRB、スワップ協定再締結後の外国中銀へのドル供給額は92.05億ドル=NY連銀
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJS869447920100513 全てECB向けで、ECBから7行が転借り http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/USD10001_all.en.html ⑤5月17日 ECB:ターム物中銀預金入札へ、債券購入による流動性吸収(Update1)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aDpo4LvTjC18 ⑥5月26日 スペインBBVA:株価が上げ縮小−資金再調達できずとWSJが報道
WSJによれば、BBVAは今月に入り、米コマーシャルペーパー(CP)市場で資金再調達ができていない。 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aphgwYDmwkoE http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703341904575266722784462634.html?mod=rss_markets_main 報道は26日であるが、⑥は月初に起こっている。
FRBによるスワップ協定再締結によるドル資金供給は、大がかりな国際協調体制の復活であり、国際的な金融機関のドル資金調達に懸念が生じていると考えるべきだろう。
スペインは、米国に次いで世界第2位の経常収支赤字国で、その分国内の貯蓄過小で海外から資金調達をしなければならない国。
BBVAは、09年末の総資産5,350億ユーロでスペインのGDPの約半分の規模、貸付3,320億ユーロで国内向けが2,050億、顧客預金が2,540億でその内の国内預金が970億ユーロと、国と同様、海外からのファンディングに強く依存している。
ECBによるユーロ流動性供給増加は、公社債の購入資金をそのまま流動性として供給(ECBは定期預金で不胎化していると表明しているが実態的には上記の通り流動性の供給)しているのと、資金供給オペによる。その内1週間ものの資金供給メインオペ(MRO:金利1%で金額上限なし)の残高推移はグラフの通り。
4、金融機関のEUR流動性問題(以下は個人的な推論)
①必要な準備預金額に比べて、現状の預金合計水準は明らかに過大。
②金利も、メインオペでの調達(1週間、担保付)が1%に対してEuribor3ヶ月(無担保)0.7%、Deposit facility金利0.25%は経済的には不合理な水準。 ③ECBは受け入れ預金金額を、銀行間の短期資金取引(無担保)が有効に機能していれば、資金の余った銀行が足りない銀行に貸すことによって、必要準備預金金額に近い金額にすることが可能で、それが正常な姿(下のグラフ参照)。
④銀行間の資金取引が機能していないため、オペで調達しなければならない“資金不足グループ”と、なにもしなくても資金が流入してくる“資金豊富グループ”、“その他中立グループ”が存在するのだろう。
“資金不足グループ”が有担で、中央銀行から調達し、そこから“資金豊富グループ”に資金が流れ、そのまま中央銀行に預けたままとなる。 結果として、ユーロシステムの預金残高は増加することになる。 ⑤ユーロ圏全体でユーロシステムにアクセスできる金融機関は6,430社あり、内、直近のメインオペで借りている金融機関が86社。
⑥恐らく、国によるEUR資金の流れも相当発生しているだろう。
例えば、ドイツの金融機関からスペインの金融機関への資金放出のロール見合わせ→スペインの金融機関はオペで借入、ドイツの金融機関は回収資金をそのまま中央銀行に滞留するなど。 ⑦BBVAのような巨大でかつ短期の市場調達依存が高い金融機関の調達不安が実名で報道されており、今後、調達期日が来るに従い緊張は高まっていくだろう。
⑧各銀行の適格担保(流動性準備)の保有水準は推定困難であるが、経験上総資産の10%から15%ぐらいだろう。
銀行間資金取引(無担)が機能せず、有担のオペに依存し続けると担保不足に陥る可能性が高い。 ユーロシステムでの信用維持は、各中央銀行の責任であり、担保不足に陥った銀行が出た場合、恐らく、超ルール的な対応で中央銀行が資金供給せざるを得ないだろう(既に発生しているかもしれない)。 過去には、BOEがRBSやロイズ向けに、FRBがAIG向けに行っている。 ⑨そうなった場合、ECBが中央銀行(≒政府)のリスクを直接取ることに近い。
グラフはCurrent accountとDeposit facilityの預金合計。 Fixed-term facilityを加えていないため、毎月の準備預金の積み最終日に大きく減少している。 2007年の動きが必要準備預金を若干上回る水準で安定的に維持できており、正常な状況。 2009年の6月に大きく上昇しているのは、最後の1年もの供給オペの結果が4,422億ユーロと非常に巨額であったため吸収するのに時間がかかったためと思われる。ちなみに、この期日が7月1日であり、市場の注目を集めている。 |
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