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景気回復で人材他業種に


空席が目立った「ふくしワーク就職フェア」の面接会場(東京・豊島区で) 高齢者介護の現場で、人手不足が深刻になっている。景気が回復し、労働条件の良い他職種に人材が流れているためで、高齢者介護分野の7月の有効求人倍率は、全産業平均の倍近い2・03倍。団塊世代の高齢化で介護需要の急増も見込まれるなか、国も介護職員の労働環境の改善に乗り出した。(社会保障部 小山孝、中館聡子)

内定者6分の1
 「これほど人が集まらないとは思わなかった。質の良い介護が求められている折、誰でもいいというわけにもいかないし……」

 来春、東京都中野区にオープンする「江古田の森保健福祉施設」。特別養護老人ホームや老人保健施設などを併設する国内最大規模の施設で、介護職員など約330人を採用する予定だが、現段階で内定者は約50人にとどまっている。

 運営する社会福祉法人「南東北福祉事業団」では、これまで説明会を15回、試験を7回実施した。開設まであと半年と迫り、担当者は「説明会や試験の回数を大幅に増やさなければ」と危機感を募らせている。

 求人難に悩む施設からの要望で、ハローワーク池袋などでは、例年2月に開いている福祉職の合同面接会「ふくしワーク就職フェア」を今月3日、急きょ追加開催した。参加した都内の特別養護老人ホームの担当者は、「数年前までは口コミで人が集まったのに、今はインターネットや求人雑誌で手を尽くしても集まらない」。入所者の高齢化に伴う介護度の悪化で以前にも増して人手が必要なため、このホームでは常勤職員だけでは賄えず、「派遣も受け入れている」と話す。


 全国老人福祉施設協議会が今年4月に介護職員の充足状況を会員施設に調査したところ、6割が「不足している」と回答した。

 訪問介護事業所もホームヘルパー不足に見舞われている。大手の「やさしい手」(本社・東京)では、「景気がいい名古屋地区は特に厳しい。5年前なら採用しなかった無資格者も採用し、資格を取らせて対応している」と話す。1人の採用にかかる経費は、5年前の約1万2000円から、今では3万9000円にまで上がっているという。

 全国の福祉関係の求人求職状況をまとめている「中央福祉人材センター」によると、高齢者介護分野の有効求人倍率は2004年度から急激に上昇し始め、今年7月には過去最高となった。同センターでは、「景気回復の影響は予想以上。より条件のいい業種に人が流れている」と分析する。

時給 実質1000円
 人材難の要因は、仕事のきつさと、それに見合わない給与水準だ。

 厚生労働省によると、05年のフルタイム労働者の平均時給額は、施設介護職員が1210円、ホームヘルパーは1142円で、全産業平均(1830円)より低い。一方、パートタイムで働くホームヘルパーの平均時給額は1329円と低くはないが、移動や待機時間は賃金が支払われないケースが多く、実際は1000円程度と言われている。

 「介護労働安定センター」の調査(05年)によると、ホームヘルパーの5割が腰痛を抱え、3割弱はコルセットを使用。施設職員の9割弱は夜勤時などに強いストレスを感じている。こうした現状に都内の訪問介護事業所の人事担当者は、「責任は重いのに時給はファストフード店のアルバイトとほとんど変わらない」と嘆く。

 介護分野の離職率も20・2%と、全産業平均(17・5%)より高い。「この分野は最近まで就職難の受け皿だった。景気が良くなり、福祉なら就職できると考えていた人が他産業に転職している」とハローワーク池袋の担当者は話す。

魅力ある職場目指せ!…厚労省が検討会
外国人労働者、受け入れ論議も
 「雇用情勢が改善する中、人材確保は重要な課題」だとして、厚労省も今年度から対策に力を入れ始めた。

 6月には、離職率改善と魅力ある職場づくりを目指して検討会を発足させた。IT(情報技術)化による事務経費圧縮など、経営効率化のモデルケースづくりに取り組む。介護職員の賃金アップや、介護福祉士の資格を持ちながら働いていない「潜在的介護福祉士」(約32万人)の就労促進も検討している。

 ただし、賃金アップは介護報酬引き上げと、それに伴う介護保険料の増額につながる。日本ホームヘルパー協会会長で、第一福祉大の因(いん)利恵・助教授(介護福祉学)は「高齢者の心身の状態をチェックする役割を担う介護の仕事は、誰にでもできる単純労働ではない。質の高い介護を受けるためには、保険料や税金がかかることを国民に理解してもらわないと」と強調する。

 外国人労働者受け入れ論議も活発化している。

 今月9日、日本とフィリピンは経済連携協定(EPA)に署名し、フィリピン人介護福祉士を2年間で最大600人受け入れることが決まった。

 日本人の雇用機会喪失などへの懸念から受け入れに慎重な厚労省は、「人手不足解消というより、貿易政策上の決断」と受け止めている。

 だが、将来的な人手不足や規制緩和の観点から、さらなる受け入れ検討を政府に迫る声が高まっている。

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介護保険施設の食費・居住費が利用者負担となった昨年10月の改正以降、「負担増」を理由に退所した者が多かったのは、施設では「老健」、利用者負担段階では「第四段階の利用者」だったことが、厚生労働省のまとめから分かった。同省は「施設サービスが必要にも関わらず負担増で退所せざるを得なかった例は少なく、家族介護が受けられる、在宅サービスの利用が可能という合理的判断から自宅に戻った例が多かった」と分析し、負担増の影響はなかったと結論付けている。ただ、都道府県ごとの調査の積み上げ結果のため調査の精度には疑問符。「負担増による退所者はなし」と断定するには根拠不足といえそうだ。

介護施設虐待 調査へ

厚労省 全国1000か所抽出も検討
 介護施設でお年寄りが職員から暴力や暴言を受ける被害が起きているのを受け、厚生労働省は、施設での虐待防止に関する初の調査研究事業に乗り出す。専門家によるプロジェクト委員会を今月スタートさせるほか、先進施設へのヒアリングや全国の介護施設に対する実態調査などを実施。表面化しにくい施設内虐待の根絶を目指す。

 調査研究は、「認知症介護研究・研修仙台センター」(仙台市)が主体となって行う。今年度の事業費は約2000万円。

 具体的には、都道府県に対し、今年4月に施行された高齢者虐待防止法の施行半年後の虐待の把握件数や内容などについて調査する。施設への調査については、全国から約1000施設を抽出し、虐待の実態や防止体制、職員への支援方法などを調べることを検討している。

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