本の森

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先週、フォーラム福島で映画「日本と原発」を観た帰り、何気なく立ち寄った駅ビルの書店で、NHKテレビテキスト「100分de名著」2月号が目に留まりました。
「フランケンシュタイン」・・・一瞬にして、25年前の論文を思いだしました。

この頃、ラセン的回帰のように、「あの頃の出会い」に、引き寄せられている私です。
1990年に開催した「なの花まつり」の前後でしたか・・・
当時、山口大学におられたA先生から、西表島のフィールドワークの資料などを送って頂いた封筒の中に、大学の研究論文集が入っていました。
A先生の手紙には、
「若手の女性研究者が書いたフランケンシュタインの論文、とても素晴らしいので読んでください」
と・・・。
その若手研究者が、このテキストの著者、廣野由美子さんでした。
今は、京都大学大学院の教授になられた廣野先生は、私と同い年です。

「フランケンシュタイン」・・・と聞くと、私と同世代の方々は、マンガ「怪物くん」のフランケンのイメージでしょうか(笑)

でもネ。ビックリなんです!

実は、フランケンシュタインは、「怪物」の名前ではなく、
怪物を作った青年の名前なんです。(ビックリ①)
原作では、怪物に固有の名前はないとのこと。

そして、怪物は、人並み以上の知性や教養を備えた存在として描かれています。(ビックリ②)
なんと、作者は、19才のイギリス人女性作家、メアリ・シェリー。(ビックリ③)
1818年3月11日に出版されました。(ビックリ④)

「ヨーロッパに妖怪が現れた」という有名な冒頭で知られる「あの本」が出版されたのは、1848年ですから、時代背景がなんとなく想像できますね。
このテキストを使った廣野先生の講話は、今月の毎週水曜日、午後11時からNHKのEテレで観ることができます。
 
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☆久しぶりに積雪があり、雪だるまを作りました

先日ご紹介した「ゲド戦記・帰還」の場合もそうでしたが、
震災後に改めて「フランケンシュタイン」を読むと、以前とは全く違うイメージと感情が湧いてきました。
「フランケンシュタイン」とは、いったい「何者」なのか?
怪物を生み出しておきながら、恐ろしさのあまり「逃げ出す青年」とは、いったい?
皆に嫌悪され「涙する怪物」とは、もしかして・・・・・。
「怪物」を排除する「私」も、鏡を見れば、同じ「怪物」だったりするのかもしれない。
などなど・・・。

放射能という見えない「怪物」を、きゃ〜怖い!と突き放すことで得られる「安心」って、なんとなく解るような気がします。

おそらく、福島でこんなふうに「フランケンシュタイン」が読まれているとは、外部の方には想像もできないかもしれません。
「フランケンシュタインの涙」は、人ごとではない・・・です。

以下、東京の主婦の方が、震災後の自分自身を振り返ってインタビューに
答えた内容を、実名を伏せて一部掲載させて頂きます。涙を流す、福島の青年の話がでてきます。

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雪の梨畑

「放射能パニックからの生還〜ある主婦の体験から〜 」
東京在住のAさんは原発事故後に放射能パニックに陥り、そこから抜け出した。
その経験を実名で語った。
冷静に自己分析できるAさんのような女性でも、こうしたパニックに陥ってしまった。
遠い存在ではなく、私たちの身近に存在する心の病なのかもしれない。

①不安による心身の変調と家庭不和
震災直後からおかしくなりました。・・・原発の状態と放射能汚染の事ばかりを考え、情報収集に明け暮れ、ノイローゼでした。「このままでは放射能汚染で死んでしまう。その前に関東で地震が起きて死ぬ可能性もある」という思いに取りつかれ不安がぬぐえず、めまい、頭痛、だるさ、激しい動気に悩まされ、体調も最悪の状態でした。
生活もおかしくなっていました。食材は東北から離れた西日本や北海道、外国産のものだけを利用。原発事故前につくられた米を大量備蓄しました。私の家は母子家庭なのですが、子どもにマスク登校を強要し、教育委員会には給食やプールの安全性について問い合わせをしました。子どもは私に反発して毎日親子喧嘩を繰り返しました。それでも私は、「自分が正しい」と思い込み、子どもの気持ちを無視して、毎日おかしな情報を集めそれを自らも拡散していたのです。

②福島県民の苦しみを知りパニックに気づく
疎開先を探し、北海道の田舎に移り住もうとしました。引っ越しの準備を始めようとした矢先、私の狂乱ぶりを心配した現実での友人たちが何人も「やめなさい」と忠告をしてくれました。仕事に支障が来たすし、私が常軌を逸していたことを指摘してくれました。しかし同じ放射能パニックに陥っていたネット上だけの知人達からは「疎開決定おめでとう」コールが殺到しました。
 (中略)
生活や収入のことを考え、東京にとどまることにしました。
疎開を止めたころから考え直したり、しっかりした人の本を読んだり、行動が少しずつ変わったのです。
そして友人である福島出身の若い男性が「福島から来た」というだけで、ひどい差別とイジメを受けたことを聞きました。彼は私の前で泣きました。
それを見て、私は大きな間違いを犯していたことに気が付いたのです。私は被災者のことは考えずに自己中心的な思いだけで「放射能」を捉えていたのだと理解したのです。
私のノイローゼが悪化したのは、自分の生活や、心の問題があったためです。
落ち着き始めると、それに気づきました。東日本大震災から私の生活は悪化しました。
私は自営業をやっていますが震災自粛ムードで、仕事が減りました。
そして震災や原発事故のテレビ映像にばかり関心を向けて、何もできなくなってしまったのです。
すると、あらゆることにやる気を失いました。どうせあがいても、放射能で東北と関東は壊滅する、もう未来はないと思い込みました。絶望感でいっぱいでした。
ところが同時に、当時は正直に言うと、うれしい気持ちもあったのです。「放射能と地震で、私の苦しみが解放される」という矛盾する気持ちも、わいてきたのです。

③「苦しみからの解放」
私は44歳です。数年前から幾つかの大きな壁に直面して、困惑していました。まず自分の年齢により、容姿とスタイルが明らかに劣化しています。「おばさん」として社会から扱われ、自分もそう見ている。この現実が受け入れられませんでした。
そして仕事の問題がありました。大きなことをして世間をアッと言わせたい。長年そんな願望がありました。けれども、何もできていません。
他にも子育てや人間関係など悩みは一杯ありましたが、どれも解決の見通しは立っていませんでした。自信を喪失していました。
「心に大きな穴」というか、絶望めいたものがあったのです。
そんなときに、放射能問題によって、すべてがリセットされて、一から人生をやり直すことができるのではないかという思いが起こったのです。
破壊の中に救いを求める気持ちです。私が震災情報に夢中になったのは、それが刺激的で、これまでの人生の悩みを忘れる事ができるほどのものであったためです。
不安が強ければ強いほど現実の問題から目を背ける事ができました。
「放射能で子どもが死ぬ」というのは強烈なメッセージで心底怯えました。
しかも母親として子供を救う使命感もありました。
「母親」という立場が、パニックに拍車をかけたと思います。
私は役割を得たとも思いました。
思うような人生を歩むことができない事を、社会のシステムの責任にしていました。
「原発」問題は社会に反撃を行うチャンス。原発というこれほど分かりやすい「悪」はありません。
「反原発」を唱えることで、特別な使命を持った選民意識を持てましたし、自己愛が満たされました。
自分のパニックの背景に、「自尊心の維持」があったと、今になって思います。

④脱パニックは周囲の理解でゆっくりと
おかしさに気づく過程で自分の嫌な面に気づき、自己嫌悪に陥りました。
またおかしな情報を拡散したことや、福島や被災地の差別に加担したことの罪悪感も抱きました。また自分の心の先行きにも心配しています。
私は極端から極端に触れやすく精神のバランスの悪い人間です。
以前は放射能ノイローゼに依存しましたが、今は「脱放射能」に傾きすぎているのではないかと不安を抱きます。放射能や生活のリスクを直視せずに「これでいいのか」という心配があります。
パニックから抜け出ることも、かなり精神的に苦しいことでした。
放射能パニックはカルト宗教への依存と似たものがあったと感じています。パニックに陥った人々の世界には、不満や不安を抱いている自分を心地よく受け入れてくれる仲間がいます。同類同士が傷の舐め合うことができます。
しかも現実の煩わしさの少ない、ネットでの情報のやり取りが多かったのです。
さらに自分の頭で考えることを放棄できます。道を示してくれる崇拝者、つまり「恐怖情報ソース」がいるのでとても楽でした。居心地のいい場所で、現実の世界にはない絶対的安心感を抱けました。
しかし、それが何も問題を解決しないこと、さらに虚構の上に成り立っていることを、この中にいる人は知りませんし、認めたがりません。そこからの脱出の道筋は人それぞれであると思いますが、他の人が示す情報によって、少しずつ気づかせ、変えることしかできないのではないでしょうか。周囲の協力が必要であると思います。

私は「心の闇」を持ち、それが放射能パニックに陥った大きな原因であると思います。ただし、私のような人ばかりではないでしょう。情報を調べることが得意ではないとか、子どもへの心配が大きすぎて冷静ではいられないとか、人間関係も苦手で情報が手に入らないとか、多様な視点から問題を考えられない状況にいるだけの人もいると思います。そのような人は私よりも、気づかせることで簡単に状況から抜け出せると思います。
私はできるなら、こうした方々を救うお手伝いをしたいと思ってインタビューに応じました。パニックに陥った人を批判、攻撃するのではなく、
温かく見守ってほしいと思います。

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