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アメリカでの報道から時間が経ってしまったが、重要なことなので伝えたい。
福島第一原発事故から8年目を迎えた数日後、アメリカ3大ネットワークTV局の一つであるCBSテレビが衝撃的なニュースを伝えた。
「新たな研究が、福島第一原発事故と乳児の心臓手術数急増の関連を示唆。先天性心疾患の手術を受けた1歳未満の乳児の数が、14%以上急増」
これは、3月13日、心臓病研究の世界的権威「アメリカ心臓協会」が発行している国際科学誌「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ハート・アソシエーション」が「福島原発事故後の複雑心奇形の全国的増加」 と題した研究論文を掲載したことを受けて、報道されたニュースだった。
タイトルからわかる通り、論文は「福島第一原発事故後に、複雑心奇形という先天性心疾患を持って生まれた乳児が、日本で全国的に増加した」という“衝撃的な事実”を伝えている。論文の中心的な著者は、名古屋市立大学で生態情報測定学を研究する村瀬香准教授である。
報じない日本の主要メディア アメリカの大テレビ局が報じた重大なニュース。しかし、見たところ、日本の主要メディアでは報じられていない。不思議に思い、筆者は村瀬氏にコンタクトし、話をきいた。
村瀬氏が残念そうにこう話す。
「実は、メディアに大きく取り上げられるだろうと思い、研究チームはスタンバイしていたんです。しかし、結局、報じてくれたのはアメリカのロイター通信やCBSニュース。日本の大手通信社や大手新聞社の記者は取材には来たものの、なぜか報じていません。唯一、大学の地元という縁からか、中日新聞だけは取り上げてくれました」
こういった科学研究論文は、同じ研究者から審査を受け、承認されると、科学誌に掲載されるが、村瀬氏の論文も同じ過程を経て掲載された、研究者お墨付きの論文だ。しかも「アメリカ心臓協会」は心臓病の研究ではアメリカ最大で、世界的にも信頼性の高い機関である。
研究論文の結果は衝撃的だが、世界的権威が認めた重要な研究論文を、原発事故が起きた当事国・日本の主要メディアが報じていないのは、ある意味、もっと衝撃的だ。日本のメディアは何を考えているのだろう? オリンピックや選挙を控えて神経質になっているお上の顔色を伺っているのだろうか?
複雑心奇形の手術件数が急増 村瀬氏チームの研究結果について説明したい。
研究の大元になったのは、日本胸部外科学会が日本全国の病院から集めている先天性心疾患に関する全ての手術データ。このデータには46 種類の先天性心疾患に関する手術件数がほぼ全て含まれている。その中でも、村瀬氏は、「複雑心奇形」という先天性心疾患に着目し、福島原発事故前(2007〜2010年)と事故後(2011年〜2014年)の手術件数の変化を解析した。
複雑心奇形とは、胎児の心臓が形成される段階で生じる障害のこと。いわば、“先天的奇形の心臓”が生じる障害と言ってもいいかもしれない。複雑心奇形には29種類あるが、この障害を持って生まれた乳児は、治療のために、高度な手術を受けなければならない。
村瀬氏は、複雑心奇形という先天性の障害を持って生まれた乳児(1歳未満)の治療のために日本全国で施された手術のデータを、原発事故前と原発事故後で解析した。その結果、原発事故のあった2011年以降、手術数が有意に増加(偶然に起きた増加ではなく、統計的に意義のある増加のこと)していることがわかったのだ。
しかも、以下のグラフから分かる通り、その数は急増している。
乳児(1歳未満児)に対する複雑心奇形の手術件数は、原発事故後に、約14.2% の有意な増加が認められ、調査終了時の2014 年まで増加したままの状態が続いていたのである。
また、解析は、複雑心奇形の中でも、心臓が形成される早期の段階で重篤な複雑心奇形を持つ乳児の手術が急増したことを示している。
加えて、29種類の複雑心奇形のうち、有意に減少したものは一つもなかった。つまり、ある一つの複雑心奇形だけが大きく増加したわけではなく、たくさんの複雑心奇形で増加が見られたのだ。
2011年以降、先天性心疾患の乳児の手術数が急増している。
出典:プレスリリース「福島原発事故後の複雑心奇形の全国的増加」より。
29種類の複雑心奇形のうち、有意に増加したものは9種類あった。
有意に減少したものは一つもなかった。
出典:プレスリリース「福島原発事故後の複雑心奇形の全国的増加」より。
原発事故の影響以外に説明できない チェルノブイリの原発事故後、旧ソ連や近隣諸国では先天性心疾患の発生率の増加が報告されたが、同じ状況が今、日本でも起きているということなのか?
この結果について、村瀬氏はこう解説する。
「原発事故との関連は不明です。また、原発事故との関連の有無を証明することは不可能です。しかし、原発事故以外に、複雑心奇形の手術件数の急増に結びつく要因が考えられないのです。例えば、新たな手術法が開発された場合、その手術による手術数の増加は起きるかもしれませんが、新手術というのは通常じょじょに浸透していくものなので、このように急増することはありえません。
また、グラフからわかるように、2010年は前年よりも手術数が増加しています。同年は、妊産婦に対して行われたアンケートの回答率が99%とこれまでで一番高かったことから、増加しても不思議ではありません。しかし、2011年の場合、震災の影響か、その回答率が96.4%とこれまででは最も低かったんです。それにもかかわらず、手術数は急増しました。原発事故の影響以外に説明がつきません」
確かに、村瀬氏チームの論文によると、調査した2007年〜2014年では、子供の出生数はゆるやかに減少しているにもかかわらず、複雑心奇形の手術数は増加している。
手術件数は全国的に増加したということだが、福島県でも増加したのか? それについて村瀬氏はこう説明する。
「各県別のデータがないため、それは不明なのです。また、福島県の場合、心奇形の内訳が出されていないので、どれだけが重篤で複雑な種類の心奇形であるか不明で、手術数が増加しているのかどうかも非公開です。また、事故後、福島県外に移住し、県外で母子手帳をもらって出産した妊産婦もいますが、そのデータは福島県のデータには含まれていません」
しかし、全国の複雑心奇形の手術数には、福島県から県外に移住し、県外で母子手帳をもらった妊産婦が出産した複雑心奇形を持つ乳児の手術数も含まれている。
睾丸の位置異常も増加 増えているのは複雑心奇形の手術だけではない。
村瀬氏が、35都道府県の94の病院で、「停留精巣」と呼ばれる、睾丸の位置に異常がある精巣を持って生まれた乳児に対して行われた手術退院件数を調べると、その数は、原発事故後は事故前と比べて平均13.4%も増加していた。村瀬氏がこの結果について書いた研究論文は、昨年5月、国際科学誌「Urology(ウロロジー)」 に掲載された。
そもそも、村瀬氏はなぜこのような研究をするに至ったのか? それについて、村瀬氏はこう話す。
「もともと、原発事故前からオオタカという野鳥の生態を研究していたのです。そのオオタカの7、8割あった繁殖成功率が原発事故後は5割に下がったことがわかり、それについて論文を書きました。この時もある大手新聞の記者が取材に来たのですが、なぜか掲載されませんでした。
また、イノシシの研究も行った結果、原発事故後、オスなのに精巣がないイノシシが数多く見つかったのです。先天性奇形という疾患かもしれない。そう思い、調べようと思ったのですが、イノシシではサンプル採取が難しいため、入手可能な人のデータで調べてみようと考えたのが、停留精巣や複雑心奇形の研究に着手したきっかけです」
なくなった研究費枠 村瀬氏は現在、イノシシのDNAや臓器が受けた放射線影響について研究を行なっている。「衝撃的な結果なので、信じてもらえるかわからない」という研究結果をすでに得ているというが、今後、研究を続けていけるかどうか不安も感じている。先天性奇形の研究を始めてから、科学研究費という国が出す研究資金を得るための申請書を出しても、申請が通らなくなったという。また、福島原発事故による被曝の影響を研究する研究費枠もなくなってしまったという。
「今では、一般的な放射線影響という研究費枠しかありません。研究を続けるためのエンジンがなくなったのを感じています」
と声を落とした村瀬氏。
それでも、村瀬氏の研究にかける情熱は衰えない。
「取り掛かっているこの研究は最後までやり抜きます」
と筆者のインタビューを毅然とした姿勢で締めくくった。
原発事故と疾患の因果関係を立証することは非常に困難かもしれない。しかし、政府や関係機関はこの結果を真摯に受け止めて、さらなる研究や調査をする必要があるのではないか。
参考記事:
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=2016年11月、篠山市今田町今田新田、今田体育館
福井県の関西電力高浜原発が再稼働する中、約50キロ圏にある兵庫県篠山市が事故対策を本格化させている。昨年1月、30キロ圏外では全国で初めて甲状腺の内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の事前配布(3歳以上)を始め、本年度は対象を乳児まで拡大。原発事故対応に特化したハンドブックも作り全戸に配った。国は安定ヨウ素剤について原発から5キロ圏内は事前配布、30キロ圏内は備蓄の指針を示しており、篠山市の独自判断は際立っている。(安福直剛)
「乳児にゼリー薬剤を配れるようになるとは。本当に喜ばしい」。委員の一人は声を弾ませた。 公募の市民や専門医、有識者で構成する篠山市原子力災害対策検討委員会。5月中旬の会合で、乳児向けのゼリー薬剤を入手する方針が示された。市は医師への謝礼などを含め約160万円を予算化。配布用、備蓄用各千人分を購入し、配布は10月から始める。
兵庫県が2013年に公表した放射性物質の拡散予測によると、高浜原発で事故が起きた際、同市では1歳児の甲状腺被ばく線量が7日間で167ミリシーベルトに達し、安定ヨウ素剤の服用が必要となる国際基準(50ミリシーベルト)の3倍超となる。
原子力規制庁は、30キロ圏外での安定ヨウ素剤の使用方針を明示していない。圏外の住民からも「備蓄や配布は不要なのか」との不安が上がっており、同市は全国に先駆け配布を始めた。
市の人口は約4万2千人。14年度に5万人分の備蓄(3歳以上、約80万円)、15、16年度に計2万5千人分の配布(同、計約860万円)を予算化。これまでに市民の3割に当たる約1万2500人が受け取った。配布者へのアンケートでは「備えができ安心した」「危険を身近に感じるようになった」など肯定的な意見が多かった。乳児にも配布する理由について、市の担当者は「子どもを守りたいという保護者の強い思いがうかがえた」と説明する。
「ヨウ素剤の配布だけで大丈夫か」という声にも配慮し、今年7月には約200万円をかけハンドブックを2万部作った。まずは「逃げる」など要点を示し、イラストも多用。被ばくによる影響、事故発生時の人間心理や取るべき行動も説明した。原発の立地しない市町村が単独で冊子を作るのは全国的にも珍しく、他の自治体から問い合わせがあるという。
酒井隆明市長は「原発に関する施策は国が決めること。自治体が独自で災害に備えるのは限界があるが、市民のためできる限りのことをしていきたい」と話す。
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2015年10月29日 5時24分配信
「知見の積み重ねがまだ必要」と回答した丸川環境大臣(10月26日筆者撮影)
「知見が積み重ねられていくことがまだ必要な分野だという理解がございますので、そうしたものにもキチンと耳を傾けていきたいと思っております」
これが、10月27日の記者会見での丸川珠代環境大臣の回答である。
筆者の問いは、国立がん研究センターの昨年11月の疫学分析で、東京電力福島第一発電所の事故後に事故前の10年と比較し、18歳以下の男子で90倍、女子で50倍の甲状腺がんまたはその疑いが発生していたことに加え、最近の知見を踏まえての大臣の所見である。最近の知見とは以下の2つのうち、筆者が例にあげたのは後者である。
「十分な統計資料」一つは国際環境疫学会の学会誌「Epidemiology」(疫学)に掲載された岡山大学の津田敏秀、時信亜希子、時信亜希子、山本英二、鈴木越治による分析だ(*1)。
日本外国特派員協会で会見を行った津田敏秀岡山大学教授(写真中央)、9月30に筆者撮影)
これは、日本全国の年間発生率(1975〜2008年の国立がんセンタ−のデータ)と比較して、福島県が東京電力の原発事故後に18歳以下を対象に行った甲状腺検査(2014年12月31日まで)で、一巡目で最高50倍、途上の2巡目ですらすでに12倍の発生率比を示した地域があるというものだ。「福島県における小児および青少年においては、甲状腺がんの過剰発生が超音波診断によりすでに検出されている」と結論づけている。
もう一つは、イギリスの医療雑誌「BMJ」に掲載された、英仏米の原子力産業労働者における低線量の長期被曝の調査で、日本の厚生労働省も研究費を出している(*2)。
この調査では、結腸への累積の被曝線量が平均20.9mGyの約30万人の労働者のがんによる死亡で調べた結果として、がん罹患率と線量は比例して増加することが示された。「今回の我々のデータは、約20mGyの累積被曝線量の人々におけるがん死リスクを比較的正確に推計するための十分な統計資料となった」としている。
甲状腺がん発生を見ず、「推計線量」で先延ばしところが、日本政府は、未だに事故直後の初期被曝の推計線量が低いことを理由に、健康への影響を論じることを避け、結論を先延ばしている。その結果、あたかも「影響がない」かのように、年間の空間線量20mSv以下の地域への帰還が推し進められている。
実際は、子ども達にすでに1巡目で113人(*3)、その「多発」がスクリーニング効果を理由とするものであればもう発見されないはずの2巡目ですでに25人(*4)、計138人の甲状腺がんまたは疑いが見つかっている。
昨年11月に、男子90倍、女子52倍とされた時点(下図)からさらに増加しており、事態は進行しているとみるべきだ。疫学とは政策決定者が予防的措置を講じるための学問である。
10月7日に就任した新環境大臣の認識はどうか。そう挑んだ会見だった。その一部始終は文末に付けるが、この会見と会見後のぶら下がり取材で明らかになったことがある。
初期被曝を精緻化?第1に、丸川大臣に助け船を出した得津馨・放射線健康管理担当参事官の回答からすると、環境省は事故後5年が近づく今になってまだ、「初期被曝」を精緻化することにこだわっている。一方で、その「精緻化」が完了しないなか、初期被曝に加えて、放射線管理区域以上の被曝を継続的に強いられる住環境に「帰還」するよう住民を事実上、追いやっている。
このことについての大臣の見解は、「(疫学調査結果)は帰還されるにあたって、それぞれの皆様がどのような判断をされるかということの要素の中の大変重要な一つであると思っております」である。
国立がん研究センターの調査を「研究も色々」?第2に、森本英香大臣官房長は「調査研究自体も色んなものがございます」と言うのだが、冒頭で述べたように、筆者が持ち出したのは「色んなもの」ではない、「国立がん研究センター」の調査である。「わが国のがん医療の拠点となる国立機関」であると理事長が対外的に挨拶をしている機関の精緻な分析である。
これを、「色んなもの」と放念するのか。その森本官房長官は、「しっかりと検証して今後活かしていくという基本的な姿勢は環境省持ってございます」というのだが、そうとは思えない。
男子なら90倍とした「国立がん研究センター」の分析結果に対し、同センターの津金昌一郎・がん予防・検診研究センター長は、以下のような考察を加えていた。
「今後、検査受診者から新たな甲状腺がんは検出されない(将来診断される甲状腺がんを全て検出した)と仮定すると、今回の甲状腺検査は、35歳(100人を超える年齢)迄に臨床診断される甲状腺がんを全て検出したことになる。その殆どは、20歳以降に診断されることになると推定される。」
出典:「福島県における甲状腺がん有病者数の推計」
津金昌一郎(国立がん研究センター)2014年11月11日
この2番目の考察を国立がん研究センターがグラフ化したのが左である。これでは分かりにくいので、筆者が加筆したのが以下である。本来なら35歳(実線)までに見つかる甲状腺が、検査をした結果、18歳までに全部見つかってしまった、斜線部分が「スクリーニング効果」であるというのが、男子90倍、女子52倍の「多発」についての津金氏の考察だ。
上記データに筆者加筆
これは、つまり、暗黙のうちに2つの仮定が置かれた上での推定だ。
1.「104人」の甲状腺がんは放射線の影響で発症したものではない。
2.将来見つかる甲状腺がんを早期に診断している。
この仮定のもと、今回の検査がなかった場合に、いつこの「104人」の甲状腺がんが見つかったかを、事故がなかった2001年から2010年の累積データをもとに逆算したものだ。その結果、「35歳までに臨床診断される甲状腺がんを全て検出した」「その殆どは、20歳以降に診断されることになる」と考察していたのだ。
今後もこの考え方を続けるなら、斜線部分が右上に増えるだけの話で、どこまでも「スクリーニング効果だ」「甲状腺がんは放射線の影響で発症したものではない」との結論を出し続け、先延ばし、つまり、被害の拡大を抑えるための予防的措置を取らない選択をすることが可能である。
色々な研究を「しっかりと検証」するというのであれば、「104人」はすでに「138人」となり、発症率はさらに高まっていることを踏まえ、「影響はない」の結論ありきの考察も検証すべきである。
環境省の計算でスクリーニング効果は50倍?第3に、ぶら下がり取材で明らかになったことだ。会見では言及しなかったが、得津馨・放射線健康管理担当参事官は、BMJの論文に目を通しており「100mSv以下のでしょ?」と聞き返し、その存在と意義に気づいていた。
一方で、国立がん研究センターによる、筆者が引用した男子90倍の数字に首をかしげて、手元に用意した昨年12月に環境省の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」の「中間取りまとめ」をめくって、29頁にある「 成人に対する検診として甲状腺超音波検査を行うと、 罹患率の 10〜50 倍程度の甲状腺がんが発見されること」との箇所を指さし、「10〜50倍でしょ。うん」とつぶやいた。
この「10〜50倍」とはスクリーニング効果のことであり、男女ともにそれを超えるデータが昨年11月に出ていたことになる。
しかも、この時に「中間取りまとめ」で使われたスクリーニング効果は、筆者も見落としていたが、「成人に対する検診」である。甲状腺がんの罹患率は年齢差があり、成人に多く子どもに少ないことが特徴だ。この「専門家会議」は「成人に対する検診」を子どもに対する検診における「スクリーニング効果」の根拠に使っていた。しかも、「10〜50倍」の注釈には「事務局で算出したもの」となっていた。つまり環境省の算出だ。
丸川大臣は「知見が積み重ねられていくことがまだ必要」というが、いったい「いつまで」必要なのか。折しも、福島第一原発事故後の作業(2012年10月から2013年12月)を含めた累積被爆線量が19.8mSvとなった作業員の労災が認定されたばかりであり(*5)、約20mSvで放射線被曝の増加とがん発生が比例するとの国際的なデータとも符号する。検証すべき時期なのである。
2015年10月26日、丸川珠代環境大臣会見での質疑
−国立がんセンターの疫学調査によれば、昨年11月の時点で男性で90倍、女性で50倍(略)、スクリーニング効果は実際にあったとしても2、3倍から5、6倍であってケタが違う。(略)それが昨年の時点の20歳以下の子どもの福島の子どもたちの状況なんですが。
丸川珠代大臣:県民健康調査、進めさせていただいておりますが、丁度、発災からまもなく5年、非常に重要な時期だと思っておりますので、専門家の先生方のご意見を伺いながら調査の推移をよく注視したいと思っています。
−最近、原子力産業の低線量の長期被曝を30万人を対象に英国、フランス、そしてアメリカのデータをもとに調べたところ(略)、白血病以外の色々ながんで増加が見られたと(略)、イギリスの医療雑誌「BMJ」に掲載されたばかりです。日本でも労災が認定されましたよね、福島の作業員の。こういったデータが出ている中で20mSv以下になったらば帰還していいという政策(略)について大臣としてはどうされますでしょうか。
今年の2月の専門家会議の中間報告を受けて今後対応を考えて行くという方向になっているとは思いますが(*6)、その中では初期線量についてをさらに把握すると言っていますが、帰還してしまうと、どんどん低線量の被曝が継続していくことになりますので、初期のものだけの把握ではすまないと思うんですが。これについてのご所見もお願いします。
丸川大臣:あの、じゃ。(森本英香大臣官房長を見る)
−(マイクを持つ森本英香大臣官房長に対して)大臣に一応聞いてもいいですか?(と聞いているうちに森本官房長がマイクを下ろす)
得津馨・放射線健康管理担当参事官:初期被曝の関係なんですけれども(略)駆け上がってきたので申し訳ありません(ケホっ)。放射性ヨウ素のですね、被曝。これがですね、できるだけ正確に測る必要があるといいますか、色々なデータがまだ十分に集め切れていない。そういったことで初期ですね、線量をできるだけ精緻化する、こいったことの主旨を書いてあると理解をしています。私どももそういった研究事業をやっているわけでございます。あと一方でですね。あの帰還された方でですね、線量を把握したいといった方については、私どもの事業で個人線量計の配布、そういったものをしておりますので、そういった中で線量をはかることになっております。
森本英香大臣官房長:補足させてもらいますけれども。今、ご指摘になったような色々な調査研究があることを我々は承知しております。そういった調査研究自体もですね、色んなものがございますので、しっかりと検証して今後活かしていくという基本的な姿勢は環境省持ってございますので、こういった中で対応していくという考えでございます。
−今のを受けていかがでしょうか。要は疫学調査というのは、目的としては、予防的措置を国が取るために、専門家が行うものです。そこで90倍もの子どもの男子ですね。子どもの男子については90倍という、おそるべきことですが、90倍というデータなんですね、それも昨年の11月の時点です。そうすると早急に国として予防的措置をこの調査結果を活かした上でとるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
今のお答えだと、知りたければ、ガラスバッジをあげますとか、今後もとすごくゆったりしているんですけれども、そういった不信感をぬぐえない限りは、どのように帰還を進めてもどのように処分場を作ろうとしても(*7)、信頼ができなければ無理だと思うんですけれどもどうでしょうか。
丸川大臣:帰還されるにあたって、それぞれの皆様がどのような判断をされるかということの要素の中の大変重要な一つであると思っておりますし、皆様の安心安全に答えて努力というのは引き続きやらせていただきたいと思っております。
いろんな専門家の方のご意見というのは、非常に重要な知見が積み重ねられていくことがまだ必要な分野だという理解がございますので、そうしたものにもキチンと耳を傾けていきたいと思っております。 (*3)第20回福島県「県民健康調査」検討委員会資料「県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要【確定版】
(*4)第20回福島県「県民健康調査」検討委員会資料「県民健康調査「甲状腺検査(本格検査)」実施状況
(*5)原発事故被爆で労災初認定、IAEA「健康被害なし」報告に疑問符Newsweek 2015年10月21日(水)18時07分
(*7)この日の会見は、「指定廃棄物」の処分場の栃木県塩谷町の候補地が「平成27年9月関東・東北豪雨」で冠水した件に質問が集中していた。
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毎日新聞 2016年9月2日 21時18分 (最終更新 9月2日 23時41分)
電力6社は2日、フランスの原発で強度不足の疑いがある原子炉圧力容器などの重要設備を製造したメーカーが、稼働中の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)を含む国内8原発13基の圧力容器を製造していたと原子力規制委員会に報告した。
電力各社によると、問題のメーカーが製造していたのは、ほかに東京電力福島第2原発2、4号機(福島県)▽北陸電力志賀1号機(石川県)▽関西電力高浜2号機(福井県)、大飯1、2号機(同)▽日本原子力発電敦賀2号機(同)▽四国電力伊方2号機(愛媛県)▽九電玄海2、3、4号機(佐賀県)−−の原子炉圧力容器。6社は10月末までに強度に問題がないかなどをそれぞれ調査し、規制委に報告する。
この問題を巡っては、フランスの規制当局が6月、同国内で運転中の原発18基の重要設備に強度不足の疑いがあり、調査を進めていると発表。設備は「日本鋳鍛鋼」(北九州市)と同国の「クルゾ・フォルジュ」が製造していた。日本の6社8原発の圧力容器はいずれも日本鋳鍛鋼が製造していた。
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環境省は28日、東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物に関し、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下に下がった場合は指定を解除し、一般ごみと同様の処分を認める新ルールを正式決定した。解除は国と自治体が協議して決める。解除後の処分費用は指定廃棄物と同様、国が負担する。
放射性物質汚染対処特別措置法の省令を改正し、同日付で施行した。
指定廃棄物は宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で発生量が多く、ごみ処理施設や下水処理場、農家の敷地などで一時保管されている。原発事故から5年以上たって放射性濃度が低下し、基準を下回る廃棄物が増えているとみられる。
だが、解除の手続きに関する明確なルールがなかったため、自治体が早期の策定を求めていた。
新ルールは、環境省か自治体が、放射性セシウム濃度が下がっているかを確認し、双方で協議して指定解除を決める。解除後は自治体が通常の廃棄物として処分できる。
宮城県の指定廃棄物は、環境省が再測定した結果、全体の3分の2超の2300トンは放射性濃度が基準を下回ったことが判明している。
■ことば
指定廃棄物 放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超える廃棄物で、ごみの焼却灰や下水汚泥、稲わらなどがある。東京電力福島第1原発事故で発生した放射性物質が付着し、昨年12月末時点で、12都県で計約17万トンが確認された。国は発生した各都県内で処理する方針。福島県内の指定廃棄物は、富岡町の既存の最終処分場で処理する計画が決まっている。
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