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「レイト・ショー」1977年アメリカ映画 探偵映画
監督:ロバート・ベントン 撮影:チャールズ・ロッシャー・Jr
出演:アート・カーニー、リリー・トムリン、ビル・メイシー、ユージン・ロッシュ、ジョアンナ・キャシディ、ジョン・コンシダイン、ルース・ネルソン

ロバート・ベントンのデビュー作『夕陽の群盗』はジョン・フォード、ビクトル・エリセ級の映画であったと言っても全く大げさではなかったと思う。それに比べたら、このベントン第二作はノスタルジーに走りすぎていて、些かガクンと評価を下げる。もちろん『夕陽の群盗』にもノスタルジーはあったけど、それを超えるものがあった。

とはいえフォード、エリセの超一流と比べたら評価が落ちるという話で、同時代の作家と比べたら、この映画はちっとも見劣りはしないどころか、最良作の一つだと断言できる。
主演のアート・カーニーはある時はジョージ・C・スコットのように、ある時はイーストウッドのような貫禄すら見せる。爺ちゃんなのに銃の腕前はピカイチで『ダーティハリー』(絶対に意識してる)ばりに車に弾丸をお見舞いして、派手に見せ場を作った後、襲撃犯を追いかけないことを非難されて一言「俺は心臓病で走れねぇんだ!」…いやぁ〜カッコ良すぎでしょ(笑)。この後ヘリコプターの光が導入されるけど、この心臓病といい画面の連鎖感といい『ブラッド・ワーク』をちょっと先駆けてるな。アート・カーニーといえばアカデミー主演男優賞を取った『ハリーとトント』は見てないんですが、この映画を見て、そりゃジャック・ニコルソン、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマン、アルバート・フィニーという強力なライバル候補を抑えて主演男優賞取っちゃうわ、と思いましたね。アート・カーニー最高です。

それと製作がロバート・アルトマンというのも僕としては大収穫。当然『ロング・グッドバイ』は何度も見直した大好きな映画ですが(ついでにDVDは友達に借りパクされている)アルトマンが再び『ロング・グッドバイ』のような映画を作る気概は感じられる。最初に依頼されるのは猫探しですしね。それをリリー・トムリンを起用させてロバート・ベントンに任せたというのも正しい選択な気がする。実際、ベントンは後でフィルム・ノワールを撮っているところを見ると、ノワールの思いはアルトマンよりもベントンのほうがあるみたいですが。
リリー・トムリンが興奮して「私たちはコンビでやっていくべきよ…『影なき男』の鴛鴦探偵みたいに」と将来計画を饒舌にぶちまけるが、それを言った瞬間に刹那的に破算して、後は後悔と悲しみしか残らないシーンはこの映画で最も美しいシーン。アルトマンも饒舌な演出が好きだけど、このようにしゃべっている間に感情が変化してしまうシーンは演出できないんじゃないだろうか

ヤクザの用心棒が最初は主人公以上のタフガイを気取って出てくるのに、後で本物のタフガイである主人公に痛めつけられるというのは、まさに『マルタの鷹』のピーター・ローレだな。ラストで一同で会するシーンもそうだけどジョン・ヒューストンが出演している『チャイナタウン』よりも『マルタの鷹』的な映画と思う。

(映画館で鑑賞)

「ドクター・ブル」1933年アメリカ映画
監督:ジョン・フォード 撮影:ジョージ・シュナイダーマン
出演:ウィル・ロジャース、ヴェラ・アレン、アンディ・ディヴァイン、マリアン・ニクソン、ハワード・ラリー、バートン・チャーチル、ルイーズ・ドレッサー

掛け値なしの傑作。フォード&ロジャース三部作の中では一番好き。鈍感なのか『周遊する蒸気船』と『プリースト判事』を見てもウィル・ロジャースの魅力というのがいまいちわからなかったんですが、これを見て一気に好きになっちゃった。淀川さんが熱っぽく語るのも頷ける。
実際はプロフェッショナルに徹しているのに町の皆からは評価されないどころか権力者からは疎まれる医者の話で、ほとんど類似点はないものの手塚治虫の『ブラック・ジャック』と黒澤明の『静かなる決闘』に影響を与えているかも。とりわけ自暴自棄になりつつも、体は医者として動いてしまうシーンは『静かなる決闘』で三船敏郎が心境を吐露するシーンを彷彿とさせます。

公害によって腸チフスが蔓延しているのを察知したロジャースが孤軍奮闘するんですが、住民…とりわけ婦人会によって町の衛生管理責任者を解任する集会が開かれ、そこでコテンパンに叩かれたロジャースがあれほと落ち込んでいたのに、ずっと診察していた下半身が麻痺した患者に回復の兆候が表れたシーンでは「ついにやった…!」と病気に対して憤り、次のシーンでは町の外に飛び出して「ついに治ったぞ!」と天真爛漫に喜びを露にするシーンはこの映画の白眉。しかもここでは自分をあれほと叩いた人間などまったく眼中になく子供のように喜びまくる。まさにこれこそ人間賛歌!

また結果的に住民を見返すことが示唆されるものの、その敵であった住民が落ち込んだりするシーンはなく因果応報として帰結するようなシーンを提示していないのが素晴らしいと思う。
冒頭の列車が到着するショットはリュミエールを思わせる。麻痺した患者の部屋では表現主義的な斜光、雪が積もったぼんやりとした早朝の景色も忘れがたい。アンディ・ディヴァインが若い。このときから幾分かデブだけど、後の体型を知ってるから、これでも痩せているように見えちゃう。

(映画館で鑑賞)

「犯罪王ディリンジャー」1945年アメリカ映画 フィルム・ノワール
監督:マックス・ノセック 撮影:ジャクソン・ローズ
出演:ローレンス・ティアニー、エドマンド・ロウ、アン・ジェフリーズ、エドュアルド・クランネル、マーク・ローレンス、エリシャ・クック・Jr、エルザ・ジャンセン

12月に同じくジョン・デリンジャーを描くマイケル・マン監督の『パブリック・エネミーズ』が日本で公開されますが、だからというじゃないけど脚本がフィリップ・ヨーダンだし、B級ノワールとして名高い作品なので見ました。
マンの新作はタイトルからしてウェルマンの『民衆の敵』の原題っぽいですが、この映画の劇中でFBIがデリンジャーを「パブリック・エネミー1号」という台詞が出てきます。でこの“パブリック・エネミー”とはなんぞやと英語版のWikを斜め読みしたら、どうも30年代にジャーナリストやFBIが極悪犯罪者に対しそう呼称してたようですね。アル・カポネからこの言葉が使われはじめたようで、他にも有名どころではボニーとクライドにも使われたようです。まあそのへんは映画が公開されたらもっと詳しく紹介されるでしょうが。

低予算映画として名高いこの映画、ほんとに金が無いのがありありとわかる。刑務所内のロング・ショットは実際の映像を使っているし、スクリーン・プロセスと小さなセットを変化させて同じ場所で撮影しているようにしか見えない。結局これらのショットはセット予算を抑えるためにアングルが変えられないから、大体のシーンがその平面的な構図のフルショット気味の1カットだけで終わる。しかしこの平面的な構図というのが逆に異質な空間として見えるので良かったりする。例えば刑務所で食事するショットは、照明さえ凝れば『狩人の夜』の映画館のショットのようにも見えなくもない。このようにこの映画は全体的に簡潔さの美学が冴え渡る。初犯の強盗なんて、外に出た瞬間に警官とばったり出会う!(笑)

銀行強盗は『暗黒街の弾痕』のストック・ショット(流用ショット)を使った有名なシーンですが、実は『暗黒街の弾痕』のショットは全然覚えてなくて、正確にどこがどのショットがわからなかったので(笑)この映画を見終わってから、『暗黒街の弾痕』の銀行強盗のシーンを見直したんですが、いやこのストック・ショットの使い方は大胆不敵。オリジナルを知っていたほうが断然、凄味がわかります。オリジナルの強盗のシーンは単独犯なんですよね。今作でははストック・ショットを使っているのにもかかわらず複数犯の強盗として見事に演出している。オリジナルでは様子を伺う視線のショットを、今作では目配せをするショットとして、催涙ガス弾も手投げ式から銃撃として、そのガス弾の音もプシューという音からドゴン!という爆弾みたいな音に変えられて迫力が増しています。なぜかストック・ショットを使っているのにオリジナルとは違った新鮮さが出ているアクションになってます。

ジョン・デリンジャーを演じているローレンス・ティアニーと、今度演じるジョニー・デップとでは、細身の端整な顔立ちでさぞ実在の人物もこんな顔をしているんだろうと思ったら、全然似てませんね(笑)。実在のジョン・デリンジャーはジョン・ミリアス版のウォーレン・オーツのほうが忠実で、田舎臭いオッサンです。ジョニー・デップを起用したのは、マイケル・マンも『犯罪王ディリンジャー』を見ててローレンス・ティアニーの記憶からジョニー・デップを起用したんだろうか?
キャグニー等のギャング像とは違って、あくまでも冷徹に仲間を殺していくところにこのギャングスターの怖さがありますね。多分、マイケル・マン版も感情移入をできる余地はない造形になってるんじゃないでしょうか。

(DVDで鑑賞)

「3時10分、決断のとき」2007年アメリカ映画 西部劇
監督:ジェームズ・マンゴールド 撮影:フェドン・パパマイケル
出演:ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル、ローガン・ラーマン、ベン・フォスター、ピーター・フォンダ、ヴィネッサ・ショウ、アラン・テュディック

映画の巻頭はマッチに火をつけるショットから、火事へと至る火の映像の連鎖で、このへんの趣味は作家主義的なのだが、しかしそれにしても冒頭の息子の咳(だったのかは、うろ覚えなんだけど)は何の意味があったのかと劇中ずっと疑問だったけど、最後の最後でその謎が氷解するのは、素直に感動した。ただ残念だったのが、オリジナルでは夫を見送るシーンでジョン・フォードの映画ばりの深い感情を定着し、鮮烈な印象を残した妻のレオラ・ダナ(僕のオリジナルのベストシーンはこのシーンです)が素晴らしかったのに対し、今作では妻のヴィネッサ・ショウはきっちり描かれているものの、排除の方向に向かっているのがちょっと残念。
役者ではベイルもラッセルもそれほど好きになれない(特にラッセル・クロウはどっちかというと好きな俳優なんだけど、このドヤ顔には毎回呆れてしまう。この系統ならコリン・ファレルのほうが断然上手いと思うし、僕は好きですね)。そんなわけで一番好感が持てたのが、息子役のローガン・ラーマン。彼主演で『スパイクス・ギャング』みたいな西部劇をスピルバーグあたりが撮ってくれないだろうか。勝手に第二のゲイリー・グライムズとして期待します(笑)。次に良かったのがリチャード・ハリスを思わせるベン・フォスター。正直、ラッセルよりも凶暴さが出てたと思う。

元々オリジナルが少々頭でっかちな西部劇であり、それを再び頭がいい監督がリメイクした印象。本格西部劇と形容するよりは、やはり50年代以降の知的西部劇という趣が強い。
その監督の頭のよさというのは、ピーター・フォンダ演じる探偵を思い切り膨らましたことからもわかる。『地獄への道』のように西部劇でしばしばピンカートン探偵社というのは、西部劇らしかぬ姑息な手段で暗躍する胡散臭い連中として提示されており、その探偵が胡散臭いピーター・フォンダが演じるのだから(笑)やはり頭がいい。(ただし退場のさせ方はもうちょっと何とかならなかったのか)
主人公の牧場の土地が線路が通り道ということで重要な土地となっており、そのために鉄道会社の圧力があるというのも『地獄への道』で扱われた要素であったし、『ウエスタン』でも言及された西部開拓史の側面だった。さらにこの映画は“探偵社”“鉄道会社”に加え“インディアン”“ダイナマイト”“ガトリングガン”まで出てくるんだから、西部劇ファン、マカロニ・ウエスタンファンへの目配せとなれば、かなり上手く詰め込んでいる。

『ウォーク・ザ・ライン/君へつづく道』では描かれてなかったけど、ジョニー・キャッシュは30年代がカントリーの全盛期だと考えると、自分がカントリー歌手として遅れてきたことに自覚的だった部分があると思う。それは65年の『西部の伝説を歌う』というアルバム製作のために、幌馬車隊についていくというアプローチからも見え隠れします。マンゴールドもまた遅れた西部劇を作ることに自覚的で、それがこの西部劇の“類型的な要素”の詰め込み具合からも現れていると思う。

ジョニー・キャッシュ関連で言うと、彼が60年に出した4thアルバム『ライド・ジス・トレイン』のライナーノートによれば、このアルバムのジャケットに写っている列車は“3時10分ユマ行き”であり、これが事実ならジョニー・キャッシュもまた『決断の3時10分』を愛していたことになるし、その意味でマンゴールドの前作と明確に繋がっている映画である。これもまた父と子の関係性において、キャッシュに捧げられた映画なんじゃないだろうか。

(映画館で鑑賞)

「ロビン・フッド」1922年アメリカ映画 スワッシュバックラー映画
監督:アラン・ドワン 撮影:アーサー・エディソン
出演:ダグラス・フェアバンクス、ウォーレス・ビアリー、サム・ド・グラッス、エニッド・ベネット、アラン・ヘイル、ウィラード・ルイス

アラン・ドワン監督、ダグラス・フェアバンクス製作・主演によるサイレント映画の大作。
この映画のロビン・フッドは獅子心王リチャード1世に寵愛されている騎士という設定。リチャード王と共に第三次十字軍としてエレサレムに向かう途中、イングランドがリチャード1世の弟、ジョン王子に掌握され圧政で民が苦しんでいるとの連絡が入るが、王の聖戦を邪魔してはならないと思い、理由を話さすに単身イングランドに戻らしてくれと懇願する。しかしジョン王子の部下の罠もあり、幽閉されてしまう(史実ではタイミングは違うものの、幽閉されたのはリチャード王のほうですね)。そこから脱獄しイングランドに戻っては、ロビン・フッドと名乗り義賊として圧政で苦しんでる民を助けジョン王に抵抗しつつ、リチャード王の帰りを待つというストーリー。

ほぼ前編の騎士編と後編のロビン・フッド編に分けられ、ロビン・フッド編は小刻みにアクションがありテンポがよろしい。しかし前編の重厚で、それでいてユーモアも忘れていない歴史劇も見応えがある。サイレント映画だけあって、やはりセットが超巨大(全長30mは軽くあるか?)、大量のエキストラや、細かな衣装や小道具など迫力がある。また城や森でのロマンスシーンのほとんどがロング・ショットで、絵画のような画面になっており、しっとりとした光による撮影が美しい。

ストーリーからわかる通り、この映画はリチャード1世の側近という立場なので、リチャード王をたっぷりと描いてます。そしてその獅子心王を演じるのは天才ウォーレス・ビアリーなんだから、たまらない。最初は豪快豪傑で見事に演じつつも、ダグラス・フェアバンクスから「何も聞かずにイングランドに戻らしてください」と言われたときには、笑いながら「冗談だと言ってくれ」と、信頼する部下を疑えばいいのか、信じればいいのか悩む繊細な演技も見せる。また暗殺の危機に道化が代わりに死んでしまったときの「ワシの真似をしすぎたばかりに…」と悲しむところも名場面だと思う。それに続くジョン王による圧政の報告が来たと同時に、「ロビン・フッドと名乗る元騎士の義賊が抵抗しているようです」と聞いたとき、「誰であるか、見当がつくぞ!」と大笑いする演技も傑作。しかも鉄火面を被り顔と身分隠しながらロビン・フッドの仲間になるんだから…はっきり言って、ダグラス・フェアバンクスを完全に食ってます。(笑)

(ストリーミング配信で鑑賞)

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ふくやまん
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