売店の最終日にこんなことがあった。
その朝、とても急いでいた。早めに仕込みをしたかったのだ。
車で信号待ちをしていると、目の前を歩くアンチャンがポケットから何かを落とした。アンチャンは気づかない様子で駅方面にフラフラと歩いて行った。
(ポケットティッシュでも落としたのかな?)
やがて信号が青になり、自分は右折をしたのだが、どうも気になって車を停め、件の落とし物を確認した。ポケットティッシュともう一つ、PASMOだった。
「あのマヌケ野郎。……人が急いでいる時に」
そのまま、PASMOを拾い、別ルートで駅に行った。
階段を上り、改札まで行ったが、アンチャンらしき姿はない。
仕方ないので階段を下りたところの交番に行ったが、お巡りさんがいない。
(オレが出来るのはここまで)
急いでいるので、奥にある机の上にPASMOを置いて車に戻ろうとした時、前方から一人のにーちゃんがフラフラと歩いて来た。
(あれかなぁ)
何しろ件のアンチャンをハッキリと見ていないので確証は持てない。
それでも念のため聞いてみた。
「定期落としませんでしたか?」
「いえ、大丈夫です」
自分のポケットを確認する素振りもなく、にーちゃんはキッパリと言った。
(違うにーちゃんだったか……)
そのまま、いつものルートで氷を取りに行き、再び駅前を通った時、さっきのにーちゃんがキョロキョロと辺りを落ち着かなそうに見回していた。
そこで、チラッと見たPASMOに印刷された名前を思い出した。
(ちっ、さっき名前を思い出しておれば名指しで聞けたのに)
車を停めて窓を開けて叫んだ。
「お前、ジンノタダシか!?」
相手は頷いた。
「定期だろ?」
またもやジンノタダシは頷いた。
「後ろの交番の奥の机に置いといたぞ」
「あ、でも誰もいなくて……」
「誰もいないから机の上に置いといた!」
「ありがとうございますっ!!」
かくして無事、コトは片づき、売店には「いつもの時間に!」到着したのであった。
皆さん、人から「○×落とさなかった?」と訊かれたら、まずそれがあるか確認しましょう。フツーそうするよね? ね?
でもまあ良かった。
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