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「日々の考古学2」

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「こりゃまたまるっきり違う分野の本を買いましたねえ。『日々の考古学2』ですか?東海大学文学部考古学研究室の編集になってますね。あなた東海大学と関係あるんですか?」
「ないよ。いいじゃないか。こう言うの好きなんだよ。」
「まあ、いいですけど。でも、考古学に興味があるとは知りませんでした。」
「アホやなあ。人間だったら自分の先祖がどういう生活をしていたかはそれなりに興味があるだろうよ。で、昔の人がどうしていたかを知るには2つの方法がある。一つは古文書を研究する。もう一つは遺跡を実地で調査する。オレとしては実地で調査する方が好きだ。」
「外出るの嫌いなくせに(笑)。」
「例えばだ、お前、『古事記』を知ってるか?」
「失礼な!それくらい知ってますよ。」
「で、中身についてどう思う。」
「どうって、まあ、作り話じゃないんですかねえ?」
「今の時代の人にとってはどう考えてもおかしな所があるよな。例えば、冒頭の「天之御中主神」(あめのみなかぬしのかみ)なんか、天地が出来ていきなり現れるわけだ。で、現れたはいいんだけど、消えて無くなるわけだ。これっておかしいだろ?天地に一人だけ現れて何の痕跡も残さずにいなくなってしまったわけだ。どうやって証拠を見つける?」
「分かりません。」
「だろ?今の時代の論理では説明不能なわけだ。だがな、少なくとも『古事記』が成立した時代の人にとってはそう言う事を言われてもふつうに受け入れる共通観念みたいなのがあったんだよな。じゃないといくら何でもでっち上げでは見向きもされない。」
「でしょうね。おそらく、その時代の歴史みたいなものを反映していたんでしょうね。」
「じゃあ、なんでその時代の人は理由はともあれ、『古事記』を信用したのかが問題なわけだ。こちらの方は文献では分からない。古代の人たちの生活を再現してそう言う生活のあり方がそう言う意識のあり方を産み出したのだと説明しないとどうしようもないわけだ。」

「あなた、本当に無神論ですね(笑)。」
「だってそうじゃないか。生活実感のまるっきり伴わない伝承なんかすぐに廃れるよ。誰も信用しないからな。ま、『古事記』は権力基盤の証拠みたいなものだから伝承もクソもないけど。」
「まあ、正史ってのはそう言うものなんじゃないですかねえ。」
「だが、民間伝承みたいなのは、絶対にその時代の生活実感を伴ってるはずなんだよ。で、それは実地で調査するしかないんだ。とすれば、考古学は伝承を理性で捉えようとする試みだよな。オレとしてはそう言うのは好きだ。」
「じゃあ、桃太郎なんかどうなんですよ。」
「『昔々、おじいさんとおばあさんが住んでいました。』でかなり時代が特定できるだろ?おじいさんとおばあさんが二人暮らし出来ると言うことは、それなりに生産力が向上していたことを意味してるはずだ。少なくとも縄文時代にはこの発想はない。みんなで生活しているし、おじいさんとおばあさんだけでは生きて行けない。で、『おじいさんは、山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に行っていました。』と続くわけだから、社会的分業が成立しているんだよ。柴刈りだけで生きていけないだろ?柴を何かと交換しなければならない。しかも、柴を交換することでおばあさんは家事労働をするゆとりがあるわけだ。これはかなり生産力のある社会だろうと推測されるわけだ。」
「そう言う考え方では昔話はおもしろくないじゃないですか。」
「まあ、いいから聞け。川に洗濯に行っておばあさんは、くそでかい桃を持って帰るわけだ。その桃をどうしようとした?」
「え?割って食べようとしたんじゃないですか?」
「そうだ。鉈か包丁かそんなのはどうでもいいけど、とにかく何らかの金属製品が家にあったわけだ。個人が金属製品を所有できると言うのは実際かなり新しい話しだぞ?平安時代にはちょっと無理っぽいだろ?鎌倉時代でも果たしてじいさんやばあさんに金属製品を与える余裕があったかどうか怪しい。」
「てことは、桃太郎って室町時代に成立したんでしょうかねえ?」
「さあな。そう言うのはオレの本業じゃないからどうでもいいよ。」
「何ですか!聞いて損しましたよ。」

考古学っておもしろいですよね。
こう言うのを一生研究できるのはある意味幸せかも知れません。
でも、一生研究してもまだ研究が足りないと思われるので、それは、死ぬ時に悔しい思いをするのかも知れません。
ま、どっちでもいいですが、この本はおもしろいです。

『日々の考古学2』(東海大学文学部考古学研究室編)六一書房。ISBN987-4-947743-81-7
ちょっと高いですけど、ぜひともあなたの本棚へ。

閉じる コメント(6)

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桃太郎をそこまで深く読めるなんて・・・すばらしい
この先の鬼退治まで解説して欲しかった〜(笑)

2009/12/26(土) 午後 8:58 decora

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たぶん、現在では残ってないと思いますが、戦前の新作?桃太郎は満州に渡って大金持ちになるって言う「満州桃太郎」と言うのがあったんですよ(笑)。
だから、今、原作だと思われている「桃太郎」もどこかで色んな部分が書き足されていると思います。

2009/12/27(日) 午後 6:57 [ fuminori62 ]

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このたびはご購入いただき、誠にありがとうございました。

2010/1/2(土) 午後 10:13 [ flyingman ]

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>flyingmanさん。
実におもしろい本です。著者ご自身のご光臨に賜りまして感謝の極みです。

2010/1/2(土) 午後 11:16 [ fuminori62 ]

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ご光臨などとおっしゃられると、とんでもなく僭越です。ご購入いただいたばかりか、私どもの論文集をご宣伝いただき恐縮しているところです。今後ともよろしく御願い申し上げます。

2010/1/3(日) 午後 11:38 [ flyingman ]

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>flyingmanさん。
やはり専門家の議論は実証的でおもしろいですね。
あの、別刷りの奴もすごくおもしろい論文でした。
あの手のことをやってくれる研究者を捜していました(笑)。
頑張って下さい。

2010/1/4(月) 午後 9:03 [ fuminori62 ]


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