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「あ〜あ。いいんですか?」
「いいんだよ。まったくぅ。もうオレの手には負えないわ。」
「だからといって部屋ごと壊さなくてもいいじゃないですか。」
「だって、あの部屋、トイレットペーパーが山のように出てきたと思えば、分解したバイクだの、壊れた真空管ステレオだの、イヤになったんだよ。」
「と言うわけで、2階の6畳間は隣の4畳半の部屋とぶち抜きにするために、部屋にあるものぜ〜んぶ捨ててしまいました!」
「しかし、あれってどうよ(笑)。たかが6畳間だよ?あの部屋にどうして2トン車で運べないほど荷物が詰まっていたんだ?」
「そりゃ、天井にもゴミ袋がありましたし。しかも、あなたの荷物もあったじゃないですか。」
「ああ、小学校の通知表とか出てきて懐かしかったよ。捨てたけど。」
「え!あなたが何かを捨てると言うことがあるんですか!」
「今回はきっぱりと捨てることにしたんだ。」
「ウソ言わないで下さい。妙な中国の事典みたいなの。あれも捨てて下さいよ。」
「いや。あれはそのうち値段がつく。」
「そう言う事を考えるから荷物が溜まるんですよ。でも、よく奥さんが納得しましたね。」
「納得も何も『開かずの間』だったんだからいいだろ。広くなって。」
「いや、誰がお金出すんですか?」
「それなんだよ。オレ、今年のボーナス時の小遣い0円になっちゃった。」
「それは、可哀想かも(笑)。」
「ああ、ずいぶん可哀想だよ。だいたいさあ、部屋をぶち抜きにしようってのはオレが考えたんじゃないんだよ。」
「じゃあ誰なんです?」
「部屋に取り付けてある押し入れだのの取っ手を外しに来た大工が『こりゃ、絶対にあんたが思っているような部屋の配置には出来ないよ』って言うんだ。」
「ま、薄々私も無理だとは思ってましたけどね。運び込もうとしてる物が多すぎますよ。」
「でさ、『こりゃ、部屋ぶち抜くしかないね。』って言うからなんだか乗り気になっちゃってさ。」
「それは単純に大工さんの口車に乗せられただけじゃないですか?」
「だろうな。でも、そう言う発想はなかったな。すごく新鮮だったよ。で、その気になっちゃって妻と大げんか。」
「怒るでしょうね。いきなり部屋を改造ですから。」
「最初はものすごく反対してたんだよな。こりゃダメかなあ?と思って部屋に閉じこもっていたら、妻が来て『やっぱりぶち抜いてもいいよ』だって。」
「何があったんですか?」
「オレにもよく分からないけど、四川大地震の被災地の映像を見てなんか思うところがあったらしい(笑)。」
「確かに『開かずの間』は被災地みたいですけど。」
「取りあえず、思うところがあったのならそれでOK。考え直される前に業者さんを呼んじゃったよ。」
「何事にもやる気のないあなたにしては珍しいですね。」
「明日から工事着工だって(笑)。」
「そりゃ素早いことで。」
ものごと、諦めることが出来たら案外、素早く解決するのかも知れません。
今回の教訓。
「壊してしまえばいい。」
実に素直で新鮮な気分です。
では
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