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「また、なんで『田中正造全集』なんですか?」 「安かったんだ。」 「いや、そう言う問題じゃなくて、ほら、購入動機ですよ。」 「だから、安かったんだよ。」 「それは購入動機とは言いませんよ。欲しければ高くても買うでしょ?どう言う理由でこの全集を買ったんですか。」 「そりゃ、お前、田中正造が好きだからだよ。」 「好きって、何が好きなんですか?思想に共鳴したとかそう言う深い理由でもあるんですか?」 「いや、オレは全集買うまで田中正造がどう言う思想を持っていたかなんかはっきり知らなかったし、今でも知る必要さえない。」 「じゃあ、なんで買うんです。置き場がなくて困ってるのにどんどん本買うのやめて下さいよね。」 「オレはなあ、田中正造の生き方が好きなんだよ。真似しようとは全然思わないけどな。」 「と言うか、田中正造ってあの、『足尾鉱毒事件』の人でしょ?」 「そうだよ。それ以外の正造さんは知らない。と言うか、ATOKで『たなかしょうぞう』を変換したら一発で『田中正造』なんだよな。これ単語登録してあるよな。」 「で、どこが好きなんですよ。」 「そりゃお前、自分の能力を遙かに超える権力と正面から戦いを挑み、戦いに勝てないことも十分理解し、それでもなおかつ民衆のために戦い続け、最後には天皇に直訴までしたけど、結局ダメで、最期にはうらぶれて死ぬんだよ。そう言うの、オレは好きなんだよ。」 「何ですか。破滅願望でもあるんですか?(笑)。」 「ああ、もしかしたらあるかも知れないな。なんせ、あれだけのでかい石を集めるのはある意味、破滅だよな。」 「あれ?知ってて集めてるんですか?私は知らないのかと思ってました。」 「最近、古本市場で『○○全集』ってのは全滅なんだよな。ほとんど値がつかないんだ。」 「一種の知的荒廃ですよね。専門分野の人が全然育ってないような気がします。」 「教養ってのがなくなって、実利一辺倒だもんな。何でも金に換算するのやめて欲しいよな。金に換えられない何かがあるという自信がなくなったのかなあ?」 「そんな事言ったら文系は全滅ですね。」 「すでに滅びかけてるんじゃないか?オレが高校の頃は、まあ、周りに変人が多かったのもあるけど、例えば英文学やりたいとか言う奴は少なくともシェークスピアだのミルトンだのを訳本でもいいから読んでたんだよ。哲学ならオレが高校の頃は、実存主義だのマルクス主義だのが流行っていたから、サルトルやニーチェやマルクスを読んでいたんだよな。それが、大学受験を迎えて英文学に進みたいくせに古典を読んでない連中がいっぱいいたり、哲学の古典を一つも読んでないのに哲学科に行ったりするんだよ。訳が分からないな。」 「じゃあ、この『田中正造全集』を読む人はどの学部に行けばいいんですか?」 「さあ?どこだろ?外国語学部じゃないのは確かだけど、あとは何でもありだな。と言うか、高校生の時代に『田中正造全集』を読む奴はかなりいかれた変人だよな。」 「あ、でも栃木とか群馬の人は郷土史で勉強するかも。」 「アホか。オレは四国出身だ。四国の人間からすると栃木と群馬が関東でどの位置にあるのかはけっこう難問なんだぞ?もちろん、関東の人から見たら四国なんか県名を覚えてないんじゃないかな?」 「あなた、九州だってけっこうやばいんじゃないですか?(笑)。」 「でも、四国のおばちゃんの感覚からすると、京阪神より東はどこも『遠く』でひとまとめだよな。この前、『静岡まで行くんだったら、東京まで遊びに行けばいいのに。』みたいなことを言ってた人がいたけど、『じゃあ、静岡市と箱根の関は四国から見てどっちが遠いでしょうか?』とか聞いたら『だいたい同じくらい。』って言われたよ。」 「あながち間違ってないでしょ?」 「たぶん、絶対に違うはずだ。」 「まあ、いいんじゃないですか?どうせおばちゃんたちは『のぞみ』が停車しない地名なんか知らないはずです。」 「そんなことないぞ。この前おばちゃんの会話を聞いてたら驚いたよ。新幹線で京都の次(東)の駅はどこかってのに『山科』とか答えてたし。」 「きっと『新山科駅』ってのがあるんでしょうね。」 またしても話しがずれました。 でも、田中正造は好きなのでした。 |
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2011年02月16日
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