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「『眼の誕生』がどうしたって?」
「どうも、眼が大事らしいです。」
「だろうな。眼がなきゃ眼科医は首だしな。要するに5億4300万年前に眼科医が職業として成り立つ基盤が出来たってわけだな。」
「まあ、そう言う結論もありですね。でも、話は全く別方向なんですよ。」
「しかし、この本はおもしろくねえ。最新の研究を若手の研究者に書かせたらろくな事がないという見本だな。こう言うのはこの作者から話を聞いたサイエンス・ライターに書かせたらいいんだよ。あるいは老練の学者の余生に書かれるものだ。」
「『眼の誕生』に至るまでの道順があまりに遠いですね。私なんか知らなくてもいいような学説だの聞かされてもあんまりうれしくないです。それよりもっと眼について書いて欲しかったですね。」
「要するに大言壮語を吐く以上、他の学説を論破しねえといけねえんだろうな。だったら題名も考えりゃいいのによ。『眼の誕生』なんて書名をつけるから引っかかって買うんだよな。眼についてなんか最後のほうだけじゃねえか。知りたいと思う内容に行き着くまでに何百ページも読まされたらたまらねえよ。」
「どこに重要な事が書かれているか分からないので、全部に渡って目を通さないといけないので、苦労しますね。」
「全くだ!最後の章だけ読んだらいいんだよ。」
「いや、それは言い過ぎです。」
「それにしても、この頃、あいつ、妙にカンブリア紀について調べてるなあ。なんでだ?」
「さあ、好きなんじゃないですか?管理人さんよく分かってない分野に首を突っ込むのが好きですからね。カンブリア紀の爆発的な生物進化は絶対的な学説がないから好きなこと言ってもいいじゃないですか。だから気になるんでしょうね。」
「だろ?あいつ三葉虫が異様に好きだが、カンブリア紀の三葉虫だけ好きなんだよな。」
「言われてみたらそうなんですが、カンブリア紀の三葉虫って眼がほとんど分かりませんよね。まだはっきり分化してないみたいです。カンブリア紀以降の三葉虫のギョロッとした複眼は全然見られませんね。」
「目が見えねえ三葉虫なんか食われたい放題だったんだろうよ。きっと大急ぎで目が見えるようになったんだろうな。」
「美しさを感じるより生き残る方が大事ですからねえ。」
「この時代に美しさなんかあったんか?どうせ地表は生き物を含めて茶色だったんじゃねえのか?全然美しくねえよ。」
「いや、空は青かったでしょうし海も青かったんじゃないですか?夕日は赤いし夜の星々も色とりどりだったと思いますよ。」
「三葉虫が星を愛でることはなかっただろうよ。母三葉虫が子三葉虫に『ご覧。あれがシリウスよ。』とか言うわけねえだろ。」
「三葉虫に母子関係があったかどうかは知りませんけど、星は見なかったでしょうね。でも珊瑚礁とかは見たんじゃないですかね。だったら綺麗だと思いますよ。」
「本当にあの時代に珊瑚礁はあの色だったんか?世の中の生物に見る能力がないのに色づけして意味あるのか?実際は茶色だったんじゃねえのか?」
「じゃあ、生き物に眼が出来た瞬間に世の中色づき始めたんですか?」
「そうに決まってるだろ。目が見えるから色で自己主張するんだよ。」
「そんな事ないでしょ。光合成するからきっと植物は緑だったし、血液は赤かったと思いますよ。」
「よし、分かった。眼は青と緑と茶色と赤が分かればいいんだよ。それに決定だ。」
「たぶん間違ってると思いますけど。」
目が見えるっていいですね。最初に世界を見た奴は世界をどう思ったでしょうか?
では
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