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なんだか知りませんが、甥っ子の中間テストの国語の課題図書は森鴎外の「山椒大夫」なのでした。
私的には中1の年齢では理解が難しかろうと思うのですが、とにかく課題図書だったのです。
当然、甥っ子は私にその事実を教えていませんでした。
教えていれば持っている本を貸してやっただろうと思うのですが、甥っ子は図書館で借りてきたのでした。
で、読めば分かるとおり、出だしからおもしろくありません。
森鴎外なんか今の中学生にとっては、いや、大人にとっても難解なことは疑いようもありません。
中学校の国語の教師がなぜ「山椒大夫」を課題図書にしたのか?
おそらく、その教師の一番最初の課題図書で読書感想文を書かされる羽目になった本だったのに違いありません。
その教師、仮に助宗君といたしましょう。
助宗君は読み始めても、砂を噛むような気持ちになったのです。
全然分からないのです。
彼は中学校に上がったばかりでした。
だから、平安時代の人々の生活など知りません。
それより、彼は貧困を経験したことがなかったので、流浪する人々の気持ちが理解できません。
助宗君は困りました。
なにせ生活実感からあまりにも遠すぎる事を考えることが出来なかったからです。
だいたい、人身売買など思いも寄らないことなのです。
奴隷になる事も理解できません。
自分ならさっさと逃げようと思うのでした。
でも、物語はそう言うように流れません。
しかも、さわやかさが全くないのです。
助宗君は時代小説など読んだことがありませんでした。
おぼろげに知っているのは「水戸黄門」と「暴れん坊将軍」なのでした。
黄門様も新さんも、一般人のふりをして悪人の所行を見て大変身。
一方は「天下の副将軍」、一方はそのもの「将軍吉宗」になって悪を裁くのです。
ま、言ってしまえば勧善懲悪。
暴れ出すのがだいたい42分頃からというお約束もありますから、安心して娯楽に浸れるのでした。
ところが、鴎外が勧善懲悪であろうはずもありません。
気持ちが陰鬱になってきます。
読むのが面倒になって本を投げ捨ててしまいました。
あらすじを追うのさえ面倒なのでした。
助宗君は結局「山椒大夫」を読破することが出来ませんでした。
仕方ないので父親に根掘り葉掘りあらすじを聞き出したのでした。
そうして迎えた8月31日(笑)。
読書感想文が出来ていないことを父親に知られ、ひどく怒られてしまったのでした。
世の中の子どもはだいたいこんな成長をするものなのです。
徹夜に近い状態で助宗君はあらすじだけを書きつらね、最後に、おもしろくもないのに、「おもしろかった。」とだけ感想を書いたのでした。
その時の屈辱を助宗君は忘れることが出来ませんでした。
「ちくしょう!オレは先生になる!!先生になって生徒に『山椒大夫』を押しつけてやる!!」
彼の心にそんな気持ちが湧いてきたのは当然のことでした。
こうして、憎しみから読書感想文だの、課題図書だのが出てくるのです(笑)。
で、話は現実に戻って、うちの甥っ子ですが、なんと読むのが面倒だったというもっともな理由で読みもせずに本を図書館に返してしまったのでした。
中間テスト国語の前日の夜10時を過ぎて初めて知った事実!!
こんな時間に「山椒大夫」を売っている書店はありませんし、うちにあるはずですが、どこにあるかなんか今から分かるわけもありません。
むっとしたので、私は即座に甥っ子に言い渡しました。
「明日のテストで『山椒大夫』の問題を1問でも間違えたら許さない!!」
たじろぐ甥っ子(笑)。
で、本日、国語のテストが帰ってきました。
なんと、「山椒大夫」からの設問は白紙で出していたのでした(笑)。
読んでないと解けない問題だったのでした。
でも、私は怒りません。
にこやかな笑顔とともに「山椒大夫」を手渡して
「明日までに読んで原稿用紙5枚の感想文を書くように。」
と言い渡したのでした。
今、かなりいやそうな顔をして甥っ子は読んでおりますが、果たして理解できるのでしょうか?
いや、感想文を5枚も書けるのでしょうか?
こんな使われ方をして鴎外も怒っていることでしょう。
でもね、鴎外さん、あんたも難しい文章を書けばいいってものじゃあないんですよ。
ちっとはのちのちの中学生のために優しく文章を書きましょうよね。
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