|
名峰百選の山々 第105回 『26 至仏山』 群馬県
独立峰(尾瀬国立公園) 2228m コース難度 ★ 体力度 ★
朝もやにけむる至仏山
尾瀬ヶ原より
尾瀬ヶ原〜至仏山 縦走ルート 行程図
行程表
《1日目》 会津高原駅よりバス (2:15)→沼山峠 (0:50)→尾瀬沼 (2:40)→下田代十字
(1:40)→山ノ鼻 《2日目》 山ノ鼻 (1:10)→鳩待峠 (2:30)→至仏山 (1:50)→鳩待峠よりバス (0:20)→戸倉〔バス乗継〕 (1:35)→JR沼田駅 尾瀬沼と日光連山
《1日目》 沼山峠より尾瀬沼・尾瀬ヶ原へ
今回は、最もアプローチが容易な《沼山峠》を起点として、『尾瀬』を縦断して《鳩待峠》に至る一番人気のあるコースを歩いてみよう。 もちろん、『尾瀬ヶ原』の重鎮・至仏山 2228メートル もコース設定に入っている。 さて、《沼山峠》までは、バスを利用した方が賢明だ。 それは『尾瀬ヶ原』の端にある至仏山より、車を回収するべく戻ってこなければならなくなる為である。 またシーズン中ともなると、首都圏からの夜行列車とそれに引き継ぐ早発のバス便が設定される。 これを利用すれば、朝の7時には《沼山峠》のバス停に到着する事ができるだろう。 尾瀬に咲く花々 その1
ヒツジグサ サワギキョウ
“茶屋”の建ち並ぶ《沼山峠》バス停の右手にある木の階段が、『尾瀬』への入口だ。
これを登っていくと樹林帯の中に木道が延びていて、これを15分ばかり登っていくと《沼山峠》の最高点に着く。 峠の上には案内標が立っているが、樹林帯に囲まれて展望は開けてはいない。
“峠からの眺め”は、この最高点より100m程進んだ展望台で味わう事ができる。 この展望台に立つと、《尾瀬沼》や《大江湿原》などがおりなす素晴らしい眺めを望む事ができる。 尾瀬に咲く花々 その2
コオニユリ ミズギボシ
展望を楽しんだなら、ニッコウキスゲが咲き乱れる《大江湿原》へ下っていこう。 大きくジグザグを切って緩やかに下ると、《大江湿原》の端に下り着く。 湿原内はほぼ完全に木道が敷設されているので、花に見とれて木道を踏み外さぬように注意したい。 湿原の天敵は“人間の足”なのであるから。 道は《小淵沢田代》への道を左に分けて、真っすぐに延びている。 途中、尾瀬の開拓に携わった平野家の墓所があり、この墓所の入口から、5分ばかり歩くと《長蔵小屋》だ。 ここまでは、1時間弱である。 ひと休みしたなら、《尾瀬ヶ原》に向けて歩いていこう。 《長蔵小屋》からは、来た道を少し戻って《大江湿原分岐》で進路を東に取り、《尾瀬沼》の沼畔沿いを進んでいく。 《大江湿原分岐》より20分程歩くと、燧ヶ岳への登路・『長英新道』を分ける。 もし、日程的に余裕があるのなら、このルートを使って《尾瀬沼》〜燧ヶ岳〜《尾瀬ヶ原》〜至仏山の『尾瀬』完全縦走にチャレンジするといいだろう。 なお、燧ヶ岳については、前回の『名峰百選 第104回 燧ヶ岳』を参照して頂きたい。
尾瀬ヶ原全景
燧ヶ岳山頂より
『長英新道』を分けて、更に進むと《浅湖湿原》に出る。 辺りは、ニッコウキスゲ・サワギキョウなどの湿性の花がチラホラと咲いている。 《浅湖湿原》を抜けると《大入州半島》の潅木帯に突入し、これを抜け出るまでしばらく展望はお預けとなる。 この潅木帯を抜けると、再び《尾瀬沼》の沼畔に出て、畔の湿地帯を歩くようになる。 ここからが、《尾瀬沼》の“最高潮”である。 歩いていくうちに小さな湿原が次々と現れ、辺りは湿性の花々が咲き乱れている。 もちろん、お花畑越しに眺める《尾瀬沼》も絶品だ。 花と《尾瀬沼》のおりなす眺めを楽しみながら歩いていこう。 この湿地帯を抜ければ、尾瀬沼の左端にある《沼尻》に着く。 《沼尻》には立派な休憩所が建ち、ハイカー達の憩いの場となっている。
尾瀬に咲く花々 その3
コオニユリ ウサギギク
ひと休みしたなら、休憩所の裏手に延びる木道を歩いていこう。 《沼尻休憩所》から少し歩くと、左手に祠が建っている。 “沼尻そばや”である。 経緯は知らないが、その名の通り“そば”を祀っているとの事である。 道はこの辺りから樹林帯の中に入り、《尾瀬沼》より流れる《沼尻川》に沿って緩やかに下っていく。 下りきると、《白砂沢》を渡って《白砂田代》に出る。
この田代の中央には木道を挟んで左右に池塘があり、アクセントの効いた眺めを魅せている。 この小湿原を抜けると再び樹林帯に入り、5分程登ると《白砂乗越》である。 ここが《尾瀬沼》と《尾瀬ヶ原》を分ける境界で、後は《尾瀬ヶ原》に向かってひたすら下っていくだけだ。 ここから、《尾瀬ヶ原》の入口・《下田代十字》まで1時間位である。 燧ヶ岳から延びている『見晴新道』を併せれば、《下田代十字》は近い。 至仏山と朝もやかかる尾瀬ヶ原
ここに泊まると贅沢な尾瀬の朝を堪能できる
《下田代十字》は『尾瀬』の最大の宿泊地で、山荘が別館も含めると十数件も建ち並んでいる。 だが、これらの宿は風呂もあり、洋風の豪華な食事も可能で、もはや“山荘”というより“民宿・旅館”といった感じだ。 もし、燧ヶ岳に登ってきたのなら、この辺りで1日の行程を終えるにちょうどいいだろう。 だが、至仏山に登るのであれば、《山ノ鼻》まで進んでおきたい。 従って、ここは《尾瀬ヶ原》を縦断して《山ノ鼻》へ向かう事にしよう。 《下田代十字》よりは、緑眩しい湿原の中を真っすぐに延びる一本の木道を歩いていく。 眼前には、山裾を優雅に広げる至仏山がそびえている。 背丈の高い草に覆われた草原状の丘を30分程歩くと、《尾瀬ヶ原》を蛇行しながら流れる福島・群馬の“県境”である《沼尻川》を渡って、ほどなく《竜宮小屋》の建つ《中田代》に着く。 《尾瀬ヶ原》の景観は、これからいよいよ“最高潮”へと向かっていく。
尾瀬ヶ原にて その1
漂う雲を映す池塘
《竜宮小屋》を出ると木道に沿って大小様々な池塘が点在し、その水面にオゼコウホネ・ヒツジグサなどの水生植物が咲き競っている。 中でも、ヒツジグサの清楚な白には目を奪われる。
尾瀬ヶ原にて その2
深夜・羊の刻に花開く・・という
ヒツジグサ
またこの辺りは、珍しい《竜宮現象》を見る事ができる。 《竜宮現象》とは、湿原の一方から流れ出た水流が池塘の中をくぐり抜け、他方に流入する現象だ。 木道もこの現象を見やすいように、流入口と流出口で二手に分かれて敷設されている。
そして、正に“最高潮”なのは、《尾瀬沼》・《尾瀬ヶ原》の重鎮・燧ヶ岳と至仏山の美しきその姿を眺める事であろう。 眼前には優雅でしとやかな至仏山、振り返ると雄々しくそびえ立つ燧ヶ岳。 そして、これらの山々を水面に映し出す池塘の数々。 『尾瀬』の魅力とは、正にこれであろう。 尾瀬ヶ原にて その3
池塘に影を落とす燧ヶ岳
だが、カメラを構えるとなると、国民的行楽地『尾瀬』ゆえにその人だかりに悩まされる。 もし、日程に余裕があるのなら《竜宮小屋》辺りを基点にして、早朝の人のいない時間帯に湿原散策するのもいいだろう。 早朝の『尾瀬』は、きっと格別の情景を魅せてくれるはずだ。 尾瀬ヶ原にて その4
静かなる雰囲気
これこそ尾瀬の醍醐味
さて、この《中田代》を過ぎると、《東電小屋》へ至る《ヨッピ川》沿いの道と合わさって、カキツバタの群落が咲き競う《牛首》を経て《上田代》へと続いていく。 《牛首》は《尾瀬ヶ原》の幅が最も狭まった所で、周りには大きな池塘が数多く点在する。 この池塘に影を落とす燧ヶ岳は、また格別である。 そして《上田代》。 ここは、コオニユリ・オトギリソウといった花は元より、池塘に浮かぶ“浮島”の妙が楽しめる所だ。
尾瀬ヶ原にて その5
池塘を漂う“浮島”
花を愛でて、そよ風にのって漂う“浮島”を楽しみながら歩いていくと、さしも広い《尾瀬ヶ原》もそろそろ終わりを告げる。 《ヨッピ川》を渡ると林の中に分け入り、その中を15分位歩いていくと、行楽客で賑わう《山ノ鼻》に着く。 《山ノ鼻》も、《下田代十字》同様に設備の整った“民宿街”である。 今日は、ここで1日の行程を終えよう。
尾瀬ヶ原にて その6
路傍に咲く
ノジギクの花
《2日目》 至仏山を往復して鳩待峠へ
山に登るには、早朝出発は絶対条件だ。 その為にも、ここはテント幕営が望ましい。 《山ノ鼻》の“民宿”は一般客、しかも家族連れが多いので、早朝の出発はし辛いであろうから。 《山ノ鼻》から《鳩待峠》へは階段状の木道を登っていくが、周囲の光景には幻滅させられる。
何と、電柱に高圧電線が架かっているではないか。 昨日の《尾瀬ヶ原》を味わった目には、腹立たしくも映る“物”である。 《尾瀬ヶ原》にそびえる至仏山の優雅な姿を“魅”とするなら、これは“非”そのものだ。 『尾瀬』の負の部分を垣間見た感じである。 この間は見るべきものもないので、足早に《鳩待峠》へ登り着く事ができるだろう。 要するに《鳩待峠》までは、まだ俗界を抜け出してはいないのだ。 さて、《鳩待峠》の広場奥にある登山口をくぐると、ササに覆われた緩やかな傾斜の道が続いている。 所々、急傾斜となるこの道を登りつめると1886.9mのピークをかすめるように通り抜け、その頂から広がる湿原の中を歩いていく。 この湿原には、タテヤマリンドウやイワオトギリなどの背丈の低い可憐な花が咲き競っている。 至仏山に咲く花 その1
タテヤマリンドウ チングルマ
この小湿原を抜けて更に15分程登ると、至仏山の湧き水・《オヤマ沢》の清水を口にする事ができるだろう。 この《オヤマ沢》の湧き水はコース唯一の水場なので、水筒などに汲んでおくといいだろう。 この水場より少しばかり登ると、展望が開けて正面に笠ヶ岳 2058メートル や上州武尊山 2158メートル などが望める。 再び《オヤマ田代》なる湿原を通り、『湯ノ小屋温泉』からの登路と合わさって前方に小至仏山の岩稜がそびえるガレ場に出る。 一度このガレ場を急下降して、ゴツゴツした小至仏山への“岩登り”に至る。
所々、補助ロープをつけている箇所もあるので、足元には注意したい。 なお、この辺りは、“花”の至仏山の中でも一番のお花畑だ。 至仏山に咲く花 その2
ハクサンイチゲ イワギキョウ
オゼソウ・チングルマ・ハクサンイチゲなど、色とりどりの花々が咲き乱れるのだ。 小至仏山の岩稜を登りつめると、ハイマツ越しに至仏山の頂が望まれる。 麓の《尾瀬ヶ原》から見た優雅な姿とは違って、ゴツゴツした岩尾根を集めてドーム状を成していかつい感じである。
小至仏山からは見た目通り、ゴツゴツした岩の転がるガレ場をトラバース気味に登っていく。 至仏山の手前に立つ岩の門をくぐり抜け、ひと登りすると至仏山の山頂である。
至仏山頂上にて→
山頂からは、《尾瀬ヶ原》の広がりとその背後にそびえる燧ケ岳のおりなす素晴らしき眺めを望む事ができる。 また、四方遮るものはなく、平ヶ岳 2141メートル や越後三山・会津駒ヶ岳 2133メートル など名峰目白押しだ。
至仏山の頂上より眺める
尾瀬ヶ原と燧ヶ岳
奥越後の山々を望む
山頂にある山なみの挿絵入りコンパス盤で、山の名前と方位を確かめながら望むと、より一層楽しめるだろう。 展望を十分に堪能したなら、往路を戻ろう。 バスは《鳩待峠》から1時間に1本の割合で出ているので、時間の心配はない。 カメラ片手に花でも撮りながら、ゆっくりと下っていこう。
|
名峰百選・甲信越
[ リスト | 詳細 ]
|
名峰百選の山々 第100回 『28 平ヶ岳』 新潟県・群馬県
奥越後(三国)山系(越後三山只見国定公園) 2141m コース難度 ★★★ 体力度 ★★★★
なだらかな山容を示す平ヶ岳
平ヶ岳 ひらがたけ (越後三山只見国定公園)
奥只見の山は懐が深い。 そして自然が創造する雄大な眺めを併せ持っている。 この平ヶ岳 2141メートル もそうだ。 嶮しく深い山斜面と全くもって対照的な穏やかな山頂大平原からの眺めは、キツい山登りの汗をイッキに吹き飛ばしてくれる。
また、“たまご石”に見られる突拍子な自然の創造物にも驚かされる。 大自然は雄大で、壮観な眺めを創造するかと思えば、このような“悪戯”も魅せてくれる。 この奥深き山・平ヶ岳を“登ってみたい山”として訪ねたいと思う。 “登ってみたい”という魅力こそが、【名峰百選】の最も重要な選択基準であるのだから。
平ヶ岳登山ルート行程図
行程表 《1日目》 魚沼市小出より車 (2:00)→鷹ノ巣・平ヶ岳登山口 (2:20)→下台倉山
(1:00)→台倉清水 (1:50)→姫ノ池 (0:30)→平ヶ岳
(0:20)→平ヶ岳沢源頭キャンプ指定地
《2日目》 平ヶ岳沢源頭キャンプ指定地 (0:30)→たまご石 (0:45)→姫ノ池 (1:30)→台倉清水 (0:50)→下台倉山 (1:40)→鷹ノ巣・平ヶ岳登山口より車 (2:00)→魚沼市小出 《1日目》 鷹ノ巣登山口より台倉山を経て平ヶ岳へ
《鷹ノ巣口》から平ヶ岳までは、延々12km。 かなりの長大コースだ。 そして、正規に認められた平ヶ岳への登山ルートは、このコースしかない。 このような訳で、前日までに必ず《鷹ノ巣登山口》までアプローチする必要がある。 そして、できれば行程表の通り、テント利用での山中1泊の山行としたい。 なぜなら、往復24kmというのはかなりの強行軍で、山頂での余裕はほとんどなく、またその下りがかなりの急下降となるので、ここを時間に追われて焦って通過する事となる。 そうなると転倒や滑落の危険が高くなり、また足にも負担がかかり足首などを痛めやすくなる。 山を楽しむ為にやってきて、楽しむどころかケガを持ち帰っては何にもならない。 せっかく行くのである。 それもあまりガイドで紹介されていない所に行くのである。 是非とも、“楽しい思い出”を持ち帰って頂きたいものだ。 奥只見の山々は
その奥深さが魅力だ
さて、“まえおき”が長くなったが、平ヶ岳に向かって登っていこう。 登山口からしばらく砂利道が続くが、『下台倉山3.0km』の道標が立つ《下台倉沢出合》から、いよいよ急登が始まる。
《前坂》と呼ばれる標高差700mの尾根登りだ。 この急登は下台倉山までイッキに登りきる強烈なもので、ひとことで言い表すと“バカ登り”である。 また、途中にかなりの痩せ尾根地帯があり、下りでは厄介なものになりそうだ。
前坂の登り
奥にそびえる山が下台倉山だ
強烈な登りで汗を搾り取られる急坂なのだが、登りがいのある坂でもある。 それは、尾根筋全般に渡って眺めがいい事にある。 特に燧ケ岳の姿が素晴らしい。 登っていくごとに朝の光を受け、かぎろい色から七変化する空と燧ケ岳のシルエット。 これを見ながらだと、滴り落ちる汗も心地よいものとなる。 疲れたなら、尾根の節目ごとにある鞍部でひと息ついて、燧ケ岳の絶景に心を癒すといいだろう。
美しき朝の燧ケ岳のシルエット
尾根の節目にある鞍部を5〜6ヶ所乗り越えた辺りから、この急坂でも最大の傾斜となっていく。 もはや、岩角や木の根につかまりながらでないと登りきれない。 更に登りがキツくなってから鞍部を3〜4ヶ所乗り越えると、ツガの原生林が樹立する下台倉山に登り着く。 ここまででも、充分1つの山行をやり遂げた位のボリュームを感じるが、距離に直すとまだ全体の1/3を過ぎた辺りである。 下台倉山からは、稜線上につけられた道をひたすら歩いていく。 眺めも樹林帯に入る事がほとんどで、それらに遮られてほとんどなくなる。
小さな登降を数回こなすと、三角点だけがあり山名表示が全くない台倉山 1695メートル がある。
下台倉山より眺める燧ケ岳
これより燧ケ岳の勇姿とは、平ヶ岳の山頂付近までしばらくお別れとなる。
ここからは、深いコメツガの樹海の中にもぐり込んでいく。 樹林帯に突入してしばらく歩くと、《台倉清水》の広場に着く。 この広場から20mほど下りた所に清水が湧いている。 水量は少ないが、なかなかの清水である。
《台倉清水》を過ぎると、更にコメツガの樹海の中深くに入り込み、緩やかな登降を繰り返しながら進む。 ここからは登る分には大した事はないのだが、樹海の中の木漏れ日一つ差し込まぬ環境のせいで水はけが悪く、ぬかるみ化した道ともいえぬ所を進まねばならない。
ここを歩くには、少しでもましな所を見つける『ルートファインディング』が必要だ。
ぬかるみの端を伝ったり、木の枝が転がっている所を伝ったり、ついには周りのササヤブの上を漕いだりしながら歩いていく。 このような歩き方を余儀なくされるので、時間も思った以上にかかってしまう。
タカネスミレ イワイチョウ
ぬかるみの中のピーク・標高1751m地点を越えるとひたすら緩やかな下りとなり、これを下りきった所が《白沢清水》だ。 この清水は少し澱み気味で、あまり水場としては活用せぬ方がいいだろう。
この清水を越えてしばらく歩くと、平ヶ岳が樹木の隙間より見えてきて、やがてこの樹海を抜け出る。
ここで、ようやく“ぬかるみ歩き”より解放されるのだ。 樹海を抜け出ると進路を右に変えて、右側そびえる池ノ岳に取り付いて、そのままイッキに登っていく。
ササのブッシュの中に埋もれた急坂を、ササを掻き分けながら登っていく。 このササのブッシュを乗りきると池ノ岳の肩に出て、再び平ヶ岳の丸く穏やかな姿を見ながら登っていく。 ここは砂礫地のお花畑となっていて、穏やかな平ヶ岳の山容と可憐な花々がキツい登りや悪路に滅入った心を潤してくれる。
タテヤマリンドウ
肩から続くガレた岩場を登りつめると、木道が現れる。 ようやく、池ノ岳山頂だ。
キツい登りに思わず腰を下ろしたくなる所だが、ここはグッとこらえてあとひと踏ん張り木道を歩いていこう。 なぜなら、この木道の僅か100m先に絶好の憩いの場・《姫ノ池》があるからだ。
姫ノ池と平ヶ岳
辛く長い登りを乗り越えると
山は素晴らしき風景を魅せてくれる
《姫ノ池》からは、緩やかな起伏に続いて膨らむ平ヶ岳の姿や風になびく草原、空をたなびく雲を映す池塘など、いつまでも眺めていたい穏やかで心なごむ情景が広がる。 しばらく休んで、この優しき風景に疲れを取り払おう。
心ゆくまでくつろいだなら、平ヶ岳の山頂を目指して登っていこう。 ここからは、平ヶ岳のなだらかな山容が示す通り緩やかに下って、乳房のように膨らんだ山頂に向かってひと登りするだけだ。 登り着いた山頂付近は、池塘を無造作に散りばめた大湿原が広がっており、その先に燧ケ岳や至仏山を“衛士”とした《尾瀬ヶ原》が見渡せる。 この穏やかな大湿原を見ながら進んでいくと、丸い丘の中心に着く。 ここが平ヶ岳 2141メートル の最高点だ。
平ヶ岳の頂上に広がる大平原
急峻な尾根筋からは想像できない 最高点からの眺めは北側の眺望が一段と良くなり、越後駒ケ岳 2003メートル を盟主とした越後三山や荒々しく突き出た荒沢岳 1969メートル 、そして《奥只見湖》の蒼く輝く湖水を挟んで浅草岳 1586メートル の穏やかな姿など絶景が広がる。 平ヶ岳山頂から望む奥只見の山々
また、周囲に無造作に散りばむ池塘はたなびく雲や周囲にそびえる山々を映し、さながらアストロビジョンの画面を見ているようである。 花もイワイチョウ・リンドウ・ハクサンチドリなどが、池塘の周りを飾っている。
山頂に散らばる池塘と
越後三山の山なみ
ヤマリンドウ タテヤマリンドウ
夏も終わりに近づいたか
秋口の花が彩っていた
平ヶ岳に散らばる池塘群
ちなみに平ヶ岳の三角点はこれより2m低く、また潅木に囲まれた中にあり、あまり見通しが良くないので、湿原が広がり“平ヶ岳”の魅力を押し出している最高点を山頂とした。 頂上でのひとときを満喫したなら、今日の宿泊地・《平ヶ岳沢源頭》にあるキャンプ場に向かおう。 キャンプ場の分岐は平ヶ岳と池ノ岳の鞍部にあり、ここから平ヶ岳沢源頭にある雪渓に向かって10分程歩いていくと着く(早い時期は雪に埋もれて判り辛いので注意が必要)。 ここは、《平ヶ岳沢》の生まれた水が雪渓の下より湧き出る絶好のキャンプ地である。 今日は、ここで大自然に抱かれよう。
大自然の創造した
パラレルワールドに魅せられて
《2日目》 “たまご石”を経て下山
平ヶ岳にやってきたなら、是非とも見ておきたいものがある。 それは、大自然の悪戯“たまご石”である。 キャンプ場から平ヶ岳沢源頭の雪渓に登り、その上の朽ちかけた木道を歩いていく。 池塘やハイマツが生い茂る中を30分程行くと、俗世界とかけ離れた不思議な光景が目に入ってくるだろう。 “たまご石”とその下方に散らばる池塘群だ。 大きな土台の上に、坊主の頭のような見事な“たまご”が乗っかっている。 何とも奇妙な光景だ。 そして、その背後を飾る宝石のように蒼い輝きを放つ池塘群。 言葉には表せぬ魔訶不思議な空間が眼前にある。 本当に、何とも奇妙な光景だ。
大自然が一枚の大岩をその力によって“悪戯”したのだ。 大自然の“魔訶不思議”
たまご石と池塘群 これを見ていると、時など忘れてつっ立っていたくなる。 それゆえに、あまりじっと眺めるのは良くないのかもしれない。 時には周囲にそびえる山々に目をそらさないと、『パラレルワールド』に引き込まれそうだから。 この何だか解からぬ魔訶不思議な光景を満喫したなら、帰路に着こう。 下りは往路を忠実に下っていくのだが、12kmの長丁場であり、しかも《前坂》は痩せ尾根の急下降となるので十分な注意が必要だ。 落ち着いて、慎重に下っていこう。 また下山の後、マイカーで小出方面に抜けるのだが、国道352号線は《奥只見湖》に沿った山斜面につけられている為に道幅が細くかなりのグネグネ道なので、奥只見の観光地《銀山平》に着くまで気が抜けない。 安全運転でいこう。 ※ 詳しくはメインサイトより『平ヶ岳』を御覧下さい。
|
|
名峰百選の山々 第87回 『73 鳳凰山』 山梨県
鳳凰山系(南アルプス国立公園) 観音岳 2840m、薬師岳 2780m、地蔵岳 2764m
コース難度 ★★ 体力度 ★★
高嶺を越えると
鳳凰山のシンボル・オベリスクが近づいてくる
今回は、甲斐駒ヶ岳と鳳凰三山をつなぐ早川尾根上にある名峰を訪ねて歩く山旅の第三弾である。
今回縦走する早川尾根であるが、甲斐駒ヶ岳や北岳・仙丈ヶ岳といった名を馳せた山々がある為か、登山者の往来も比較的少なく静かな山旅が楽しめる縦走路である。 それでは、北沢峠から鳳凰三山を経て夜叉神峠までの山旅の締めとなる第三弾を書き記そう。
早川尾根〜鳳凰三山 縦走ルート行程図 行程表
《1日目》 JR甲府駅よりバス (2:05)→広河原よりバス (0:25)→北沢峠
《2日目》 北沢峠 (2:00)→栗沢山 (1:25)→アサヨ峰 (2:20)→早川尾根小屋 《3日目》 早川尾根小屋 (2:30)→高嶺 (0:45)→赤抜沢ノ頭・地蔵岳まで往復1時間 (1:15)→観音岳 (0:40)→薬師岳 (1:15)→南御室小屋
《4日目》 南御室小屋 (0:40)→苺平 (1:15)→杖立峠 (1:20)→夜叉神峠 (0:45)→夜叉神峠よりバス (1:15)→JR甲府駅
※ 前回『名峰次選 第87回 高嶺』からの続きです。
《3日目》 高嶺頂上より
高嶺からは、痩せた稜線を左に周り気味に伝っていく。 取り立てて危険な所はないが、ガラ岩やザラザラの砂礫帯を通過するのでスリップに注意しよう。 素晴らしい眺めに熱中し、くれぐれも足元の注意が疎かにならぬように。
白砂の稜線と甲斐駒ヶ岳 白ザレの鞍部からは、名前の通り白砂の滑りやすいザラ場を登り返すと、常に左に見えていた“オベリスク”の大岩が真正面にどっかりと立ちはばかるようになる。 白砂が固まってできたような岩峰を巻いていくと、いよいよ鳳凰三山の取付点・《赤抜沢ノ頭》の頂上だ。 真に岩仏・・
オベリスク全景
まずは、“オベリスク”を擁する地蔵岳を制覇しよう。 《赤抜沢ノ頭》より、《賽ノ河原》と呼ばれる白砂の堆積丘に向かって深く掘れた道を下っていく。 15分程下ると《賽ノ河原》に出て、山の“砂浜”の上を緩やかに登り返していく。 傾斜は緩いのだが、白砂に足を取られて足取りはかなり重い。 やがて、“オベリスク”の基部にある地蔵岳 2764メートル 頂上の祠にたどり着く。
ここから“オベリスク”岩を少し登って、巨大な岩の周りを一周してみよう。 途中に岩を祀る地蔵や祠・結界があり、山岳信仰の深い山である事が解かるであろう。 こうなれば岩の上にも登りたい所だが、これを登るのはザイルと補助者がないと無理のようである。 無理に登っても降りれなくなるだけで、岩の上で震えて救助を待つ・・といった“恥”をさらすだけである。
さて、“オベリスク”をひと周りしたなら往路を《赤抜沢ノ頭》まで戻り、鳳凰三山縦走を再開しよう。 次に目指すは、鳳凰三山の最高峰・観音岳だ。 相変わらず白ザレのザラザラの痩せ尾根を伝っていくと急下降となり、敷きつめられた白砂の下地に露岩が突き出た庭園風景が広がる中を下っていく。 下りきると鞍部に出て、《鳳凰小屋》への短絡道を見送ってから、観音岳に向かって潅木帯を急登していく。 鳳凰三山最高峰・観音岳はもうすぐだ
下地は一変して黒土の粘り気のある道となって、行く手を遮る潅木の枝を跳ね除けながらの急登となる。 僅か150m程の登りだが、潅木の枝がザックに引っ掛かり難儀な事この上ない。 この潅木帯を抜けて、ガラ場を左から周り込むと観音岳 2840メートル の頂上だ。 観音岳の頂上に積み上げられている大岩からは、北岳が大きく迫り立っている。 広角を使っても
北岳が目一杯に・・
あまりにも大きくて全てが見通せない分、眺めは高嶺に一歩譲るか・・という感じである。 観音岳からは、右側が切れ落ちた痩せ尾根を右に緩やかに周るように伝っていくと、ハイマツと砂礫のおりなす庭園風景の丘の上に出てくる。 この丘の右端につけられている縦走路から、丘の左端にある薬師岳 2780メートル の頂上の大岩へ向かっていこう。 この大岩の上は涼風がそよぎ、三山縦走の締めくくり、そして山旅を振り返るには最適だろう。 後は、縦走路を少し下った所にある《薬師岳小屋》に泊るのもいいし、清水を豊富に流す《南御室》のキャンプ場まで頑張るのもいい。 ここではキャンプ山行を基本スタイルとしているので、あとひと踏ん張りして《南御室》まで進もう。 《南御室》へは、白砂の丘に突き出した岩が重なったような砂払岳の岩小屋群を抜け、樹林帯を急降下していく。 途中、平坦な道を経てから、左に折れて足がガクガクする程の急降下をこなすと、《南御室小屋》の左手に飛び出る。 この小屋の豊富な水場は、小屋の右端を少し行った所にある。 噂通り、豊富な清水を音を立てて流している最高の水場だ。 また、小屋前のキャンプサイトも広く、展望が今一つなのを除けば絶好の幕営地であろう。 今日は、ここでストップとしよう。 うっすらとシルエットを魅せる富士山
《4日目》 杖立峠・夜叉神峠を経て下山
今日の内に帰宅できるかどうかは、下山口となる《夜叉神登山口》バス停でのバスの発車時間、ひいては《南御室》の出発時間に大きく関ってくるだろう。 従って、山のセオリー通り早立ちを心掛けよう。 《南御室》からは、石畳が敷きつめられた並木道を緩やかに登っていく。 出発してすぐに甘利山への横断ルートが分かれるが、かなり荒れているとの事なので立ち入らぬ方が無難だろう。 やがて、路傍に多く植生するシロバナヘビイチゴが地名の由来となった《苺平》の小空地に出る。 ここは樹林に囲まれて展望はないが、すぐ西方にある辻山のピークに出ると白峰三山が稜線を重ねて美しい山屏風を描いている。 白峰三山を望みながら夜叉神峠へ
《苺平》からは、砂利で踏み固められた道を緩やかに下っていく。 右手に白峰三山を見ながらの楽しい下山路である。 ただ難点を一ついえば、道がダラダラと長ったるい事であろうか。 やがて、櫓の立つ《杖立峠》に出る。
この峠を過ぎると、道は広く整備されたハイキング道となってくる。 登りの登山者と多くすれ違うようになると、《夜叉神峠》は近い。 もはや、高山帯を外れてヤナギランやヨツバヒヨドリなどの高原の花咲く《夜叉神峠》は山荘兼売店があり、ジュースやお菓子・御土産品なども売っていて、更に公衆電話もあるのでかなり下界に近づいた感がある。 峠の広場からは白峰三山が望まれるが、やはり稜線上の眺めに一歩譲る感は否めない。 後はハイキング道を45分程下ると、車のボンネットから反射した光が見えてきて、程なく《夜叉神登山口》のバス停前に飛び出る。 後はシャトルバスで登山者駐車場に戻るか、そのまま甲府市街へ戻るといい。 もし、芦安の登山者駐車場に車を置いての登山なら、芦安温泉でひと風呂浴びる事ができるだろう。 バスならば、帰宅可能時間を睨みながら甲府近郊の温泉につかるといいだろう。 ※ 詳しくは、メインサイトより『甲斐駒ヶ岳・鳳凰三山』を御覧下さい。
|
|
名峰百選の山々 第82回 『39 北奥千丈岳 ・ 38 甲武信岳』 長野県・山梨県・埼玉県
秩父山系(秩父多摩国立公園) 北奥千丈岳 2601m、甲武信岳 2475m
コース難度 ★★ 体力度 ★★★
秩父連山の殿・雲取山から望む奥秩父の山なみ
《メインサイトより抜粋》
日本の山地で南北・中央アルプス次いで高い山地が、この秩父山域である。
最高峰・北奥千丈岳 2601メートル を先頭に、金峰山 2599メートル ・国師ヶ岳 2592メートル ・甲武信ヶ岳 2475メートル など2500m級の山が数座連なる。
この秩父連山は、長大な褶曲山脈で火山は1つもなく、山肌は深い森に覆われている。 このように植物の生育条件はいいのだが、厳しい条件でこそ育つ高山植物があまり見られないのが残念である。
しかし、この山域を源とする大河川が多くあり、その源流地帯は深く切れ込んだ見事な渓谷美を魅せて、これが原生林の深い緑と共にこの山の大きな魅力となっている。 秩父連山縦走コース 行程図
行程表
《1日目》 JR韮崎駅よりバス (1:05)→増富温泉より乗合タクシー (0:20)→瑞牆山荘 《2日目》 瑞牆山荘 (0:50)→富士見平 (1:50)→瑞牆山 (1:40)→富士見平 (1:00)→大日小屋
《3日目》 大日小屋 (2:30)→金峰山 (2:20)→大弛峠 《4日目》 大弛峠 (0:40)→北奥千丈岳 (0:15)→国師ヶ岳 (2:00)→東梓 (3:30)→甲武信ヶ岳 (0:20)→西沢遊歩道分岐 (0:25)→千曲川水源地標 (2:20)→モウキ平 (1:00)→梓山バス停よりバス (0:35)→JR信濃川上駅
※ 『名峰百選 第82回 金峰山』(《3日目》行程)からの続き
《4日目》 北奥千丈岳・甲武信ヶ岳を踏んで下山
今日は前回に予告した通り、10時間超のロングラン行程だ。 下り基調といえども、かなりキツい行程である。 当然、出発時間も早朝5時台に設定せねばならない。 だが、【名峰百選】の峰を2つ制覇して、なおかつ日本一の大河・信濃川(長野県内は千曲川)の源流水源より湧き流れる清水で喉と心の渇きを潤すことができる、“歩き甲斐”のあるコースだ。 体調と相談して、無理のない範囲でチャレンジして頂きたい。 それでは出発しよう。 奥秩父の縦走路は、《大弛小屋》の脇から延びている。 登山口からいきなりの急傾斜だが、傾斜段ごとに丸太がかましてあり登りやすい。 丸太の急坂を15分程登ると、《夢の楽園》というハイマツと岩の小庭園に出る。 《大弛小屋》で“売り出し中”の庭園だが、あまりにも小規模すぎて印象度は低い。 ほんの20mほど庭園風景を見たあと、すぐにハイマツの生い茂る中に潜り込んでいく。 やがて、廃道となった《夢の楽園》を経由しない『旧道』を併せて、ひと登りすると《三繁平》だ。 ここで道は2つに分かれる。 左へ進むと甲武信ヶ岳への奥秩父縦走路だ。 右は秩父連山の最高峰・北奥千丈岳に連なっている。 北奥千丈岳を踏んだ後に奥秩父を縦走するので、荷物をデポして気軽に往復してこよう。 奥秩父最高峰・北奥千丈岳頂上
奥千丈岳頂上は岩と針葉樹がおりなす
静けさ漂う庭園風景が広がる 《三繁平》より10分足らずで奥秩父の最高峰に立てる。 北奥千丈岳・標高2601m。 奥秩父で唯一、2600mを越えている【名峰百選】の峰だ。 その頂上は、ハイマツやツガ・シラベなどの樹林と白亜の岩で創造された庭園となっていて、奥秩父のもう一つの盟主・金峰山の華やかさとはまた違った“静”なる趣を魅せている。 山上庭園で“静”なる趣を存分に味わったなら、再び縦走を続けるべく《三繁平》へ戻ろう。 荷物を回収して、先程の分岐を今度は左に進路を取る。 《三繁平》より5〜6分で国師ヶ岳 2591メートル に登り着く。 この山の頂からは、標高差350mの急降下となる。 アカマツ・シラビソ・ツガなどの原生林の中に刻まれた道を、ほぼ直線的に下っていく。 これらの原生林の樹海の中は、朝日が昇る東側でさえ鬱蒼として薄暗い。 また、常に霧が発生して、樹林のたもとには冷風が漂っている。 何か、人間の住む世界とは別の次元に迷い込んだ錯覚を覚えてしまう。
甲武信ヶ岳へは
深い樹林帯の中を伝っていく
そして、なかなか終わらぬ急下降にやや不安も感じる頃、大きなツガの樹に小さく『国師ノタル』と記された札が打ちつけられて、ひとまずホッとする。 ここからは倒木がやたら目立つ中を、上り2・下り1の割合で上下していく。 薄暗い樹林帯の中を倒木を跨ぎ、あるいはくぐったりしながら進むので、かなり時間を食う。
やがて、最も急な傾斜を乗り越えると、樹林が囲む小狭い丘に野球の“塁ベース”大の三角点標柱が埋め込まれた東梓 2272メートル の山頂に着く。 三角点頂上に立ったとはいえ、樹木に囲まれて展望に乏しく、“中間点”位の感覚しか湧いてこないだろう。 この東梓より、あと30分程歩いた《両門ノ頭》という所の方が、より開けた岩崖の上で涼風もそよぐいい休憩場所となろう。 この《両門ノ頭》まで4時間近く。 “まさか、これ程かかるとは”という焦りの気持ちさえ出るだろうが、ここからは《ミズシ》と呼ばれるピークの急登が1ヶ所あるだけで、後は平凡な山道で距離の割には時間がかからない。 また、立ち止まって見入るような所もないので、ここからイッキに下山道分岐まで歩いて行こう。
《ミズシ》の急登を越えて、下り基調の歩き良い道を進んでいくと、『千曲川水源地標を経て梓山へ』との道標が樹木に打ちつけられている《千曲川源流遊歩道分岐》に着く。 この道が下山道である。 ここに重いザックをデポして、空身で甲武信ヶ岳を往復してこよう。 甲武信ヶ岳へは最後に岩ガレの急傾斜を登りきるのを含めて、所要約25分位である。 甲武信ヶ岳頂上にて 甲武信ケ岳頂上より霞む雲海を望む
奥秩父の長い稜線を苦労して歩いてきての甲武信ヶ岳登頂は、また感慨もひとしおだ。 それに、山名標の下にある行政区分に『埼玉県』と示されているのも感慨深い。 “長野県から関東地方まで歩いた”という実感をひしひしと感じたからであろうか。 私は、この甲武信ヶ岳も【名峰百選】に選んでいる。 その理由は、“山の歴史や品格がどうのこうの・・”といった下らぬ理由ではなく、この山頂に登り着いた時に感じた“感慨深さ”が、“この山に登りたい・・”という魅力に通ずると思ったからである。
甲武信ケ岳の山頂での感慨のひとときを味わったなら、そろそろ下りに取りかかろう。
今日の行程は歩く距離が長いだけに、昼の12時過ぎには下山に取りかかりたい。 もし、甲武信ケ岳までの縦走に時間がかかり過ぎて下山開始時間が遅くなってしまいそうなら、甲武信ケ岳頂上から直進して15分程の所にある《甲武信小屋》で1泊して、下山を翌日に延ばしてもいいだろう。 分岐よりしばらく急降下で下っていくと、やがて沢音が聞えてくる。
下っていくごとに沢音が次第に大きくなり、下に身長大の標柱の立つ窪地が見えてくる。 この身長大の標柱こそ、《千曲川源流水源》を示す案内標柱である。
千曲川水源標柱と・・→
これより千曲川・・、やがて信濃川となる大河が始まるのだ。 この標柱のすぐ下に、山に囲まれた幽谷の中から清楚な沢水が音色涼やかに流れている。 この水源地標より先は、『千曲川源流遊歩道』というハイキングコースとなり、源流の沢に寄り添って《梓山》の登山口まで続いている。 この道は緩やかで、清楚な沢水を眺めながら歩ける気分のいいコースだ。
また、案内標も多くあり、安心して歩いていける。
千曲川水源の沢
この清らかな小沢が“大河”・信濃川となる 歩いていくうちに沢幅が徐々に大きくなり、沢を渡るのも飛び石伝いから桟道へと変わっていく。 この変化に、徐々に下っているのを感じる事ができるであろう。 《源流水源地標》より約6km、歩く事2時間余りで、釣り客の車が駐車してある林道の終点に出る。 ここから車も通る砂利道を約1時間歩くと、《梓山》の集落に下り着く。 《梓山》の集落の直前は高原野菜の大規模農場が広がっていて、キャベツ畑の中を一筋に続く道を歩いていく。
登山口を抜けて終える山行とは、ひと味違った印象深い終わり方である。 《梓山》からJR信濃川上駅へは、1日8本のバスが出ているので、帰りの“足”は心配ないだろう。 ※ 詳しくはメインサイトより『秩父連山』を御覧下さい。
|
|
名峰百選の山々 第82回 『40 金峰山』 長野県・山梨県
秩父山系(秩父多摩国立公園) 2599m コース難度 ★★ 体力度 ★★
朝日に映える金峰山
南八ヶ岳稜線より
《メインサイトより抜粋》
日本の山地で南北・中央アルプス次いで高い山地が、この秩父山域である。
最高峰・北奥千丈岳 2601メートル を先頭に、金峰山 2599メートル ・国師ヶ岳 2592メートル ・甲武信ヶ岳 2475メートル など2500m級の山が数座連なる。
この秩父連山は、長大な褶曲山脈で火山は1つもなく、山肌は深い森に覆われている。 このように植物の生育条件はいいのだが、厳しい条件でこそ育つ高山植物があまり見られないのが残念である。
しかし、この山域を源とする大河川が多くあり、その源流地帯は深く切れ込んだ見事な渓谷美を魅せて、これが原生林の深い緑と共にこの山の大きな魅力となっている。 秩父連山縦走コース 行程図
行程表
《1日目》 JR韮崎駅よりバス (1:05)→増富温泉より乗合タクシー (0:20)→瑞牆山荘 《2日目》 瑞牆山荘 (0:50)→富士見平 (1:50)→瑞牆山 (1:40)→富士見平 (1:00)→大日小屋
《3日目》 大日小屋 (2:30)→金峰山 (2:20)→大弛峠 《4日目》 大弛峠 (0:40)→北奥千丈岳 (0:15)→国師ヶ岳 (2:00)→東梓 (3:30)→甲武信ヶ岳 (0:20)→西沢遊歩道分岐 (0:25)→千曲川水源地標 (2:20)→モウキ平 (1:00)→梓山バス停よりバス (0:35)→JR信濃川上駅
※ 『名峰百選 第81回 瑞牆山』(《1〜2日目》行程)からの続き
朝日に染まる金峰山
南八ヶ岳稜線より
《3日目》 金峰山を越えて大弛峠へ
今日は、歩行時間が4時間ほどと短い。 しかし、明日は10時間超と長くキツい行程が待ち受けている。 願わくば、これを均等に分けたいものだが、いかんせん《大弛峠》から甲武信ヶ岳までに宿泊場所がないのである。 従って、偏った行程プランとなってしまった。 さて、短い行程といえども比較的天候が安定していて、なおかつ涼しい午前中に辛い登りはこなしておこう。
小屋上の幕営地を出発したなら、いきなり標高差200mの急登が待っている。
この急登でひと汗搾られると、天然記念物の巨大な岩・『大日岩』の基部に出る。
『大日岩』の基部からこの大岩を巻くように登っていくと、『大日岩』直下に広がる台地の上に出る。 ここから『大日岩』の上に登ることも可能だが、奥秩父の山なみを望むならやはり金峰山の方がいいので、ここはあえてパスしよう。
←“巨岩” 大日岩 『大日岩』直下の台地からは、樹林帯に入り込むように縦走路は続いている。
しばらく薄暗い中での緩やかな登りが続くか、森林限界に近づくにつれ傾斜を増していく。 ちょこんと五丈岩を立てる金峰山
瑞牆山山頂より
森林限界を越えると、ゴツゴツの岩が転がる稜線上に出る。 最初の稜線上の突起が、《砂払いノ頭》である。 ここからは『五丈岩』がシンボルの金峰山を見ながら、ゴツゴツの岩場の痩せた稜線を伝っていく。
岩にヘバリついて3〜4のピークを乗り越えると、『五丈岩』が立つ金峰山 2599メートル の山頂広場に登り着く。
金峰山のシンボル・五丈岩→
金峰山の三角点は、ここから20m東よりの岩塊の中にある。 三角点のある岩峰の最高点に立つと、奥秩父の盟主らしい雄大な山岳風景が360°の一大パノラマで広がる。 芸術的な岩を立ち並べる瑞牆山、山らしい形を魅せる八ヶ岳連峰、白亜の頂をもたげる甲斐駒ケ岳、雲海に浮かぶ富士山、美林に囲まれた奥秩父最高峰・北奥千丈岳、そして同じ山稜にありながら“遙か遠き”山・甲武信ヶ岳。
金峰山のシンボル・五丈岩
南アルプス・甲斐駒ケ岳 他にも、浅間山などの名峰も姿を魅せている。 『五丈岩』を背景に山岳パノラマを撮るのも良し、『五丈岩』の上に登って“雲上”気分を味わうも良し・・である。 奥秩父の盟主の頂で山の魅力を存分に味わったなら、先に進もう。
金峰山からは、砂礫帯を緩やかに下っていく。 やがて森林限界に近づいてきて、徐々にダケカンバやシラビソの樹林帯の中に入っていく。 樹林帯に入る直前に、今日の目的地である《大弛峠》を通る『川上・牧丘林道』がひとつ丘を越えた所に見えて楽観的な気分となるが、この“丘”を越えるのにひと汗かかされる。 この“丘”とは、朝日岳 2579メートル の事である。
この山は低くなだらかな“丘”のように見えて、実際には金峰山と標高がほとんど変わらないのである。 それ故に、金峰山から下った分をそっくりそのまま取り返さねばならない。 この朝日岳を越えると、高度感のある岩ガレ場を伝って、再び樹林帯に入っていく。 この辺りから見る金峰山は、シラビソの美林越しに望めて良い。 後は、朝日岳を越えて小さなピークを越えると、200mばかり急降下して《大弛峠》に着く。 この峠を通る『川上・牧丘林道』は、山梨県・牧丘町側が完全舗装されて車やバイクが次々とやってくる。 これらの車・バイク族は一部の者のマナーが悪い事もあり、自らの足の力でこない者に対する印象はあまりよくない。 今日はここでテントを設営しよう。 もちろん、小屋もあり食事もできるので、小屋泊の縦走もいいだろう。 明日は、奥秩父最高峰・北奥千丈岳、そして“遙か遠き”山・甲武信ヶ岳をめぐって下山するロングラン行程だ。 明日に備えてゆっくり休もう。
続く《4日目》の行程は、次回『名峰百選 第83回 北奥千丈岳・甲武信岳』でアップの予定です。
※ 詳しくはメインサイトより『秩父連山』を御覧下さい。
|



