風来梨のブログ

別サイトに記載した景勝地ガイドを小出しに載せていきます。

『日本百景』 晩夏

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『日本百景』 晩夏  第346回  中アのいぶし銀の名峰へ  〔長野県〕

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空木岳より望む南駒ヶ岳

   中央アルプス ちゅうおうアルプス (中央アルプス県立自然公園)
中央アルプスは南北アルプスの間に連なる“木曽山脈”の総称で、高さも南北アルプスのそれにひけをとらない。 最高峰は木曽駒ヶ岳 2956メートル で、そのすぐ横に剣先の如く鋭く尖った頂を魅せる宝剣岳 2931メートル 
が並ぶ。 また、この中央アルプスの山々は氷食が著しく、鋭く尖った峰を持つ山が多いのが特徴である。

・・中央アルプスの魅力は、何といっても氷河による浸食でできた数多くの“カール”地形と、そこに群生するお花畑であろう。 濃ヶ池・千畳敷・極楽平のカールが、夏になると高山植物の花々に飾られた天然の“うつわ”となり、悠然と構える峰々に囲まれた『神の園』となる。



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中央アルプス縦走ルート 行程図

    行程表                 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR駒ヶ根駅よりバス (0:50)→しらび平よりロープウェイ (0:10)→千畳敷
      (0:40)→浄土乗越・木曽駒ヶ岳までは往復1時間40分
      (0:20)→宝剣岳 (1:00)→極楽平・
三ノ沢岳まで往復3時間
      (2:20)→桧尾岳 (0:10)
→桧尾避難小屋
《2日目》 桧尾避難小屋 (1:30)→熊沢岳 (2:00)→木曽殿越 (1:30)→空木岳
      (1:30)→摺鉢窪避難小屋・摺鉢窪避難小屋分岐より南駒ヶ岳まで上り40分・下り30分
      (0:20)→摺鉢窪避難小屋
《3日目》 摺鉢窪避難小屋 (0:25)→摺鉢窪避難小屋分岐 (1:20)→空木岳
      (2:20)→小地獄・大地獄 (1:20)→池山小屋 (1:30)→駒ヶ根高原登山口
      (0:20)→菅ノ台バス停よりバス (0:15)→JR駒ヶ根駅

     ※ 前回の『第345回 宝剣岳岩稜』からの続きです。

  《2日目》 稜線縦走路を伝って空木岳・南駒ヶ岳へ
本日の行程は8時間と少々キツい。 従って、早出を心掛けよう。 小屋を出て桧尾岳の頂に戻り、進路を左手に取る。 朝、桧尾岳の上に出ると、波のような稜線の起伏が空木岳に向かって連なっているのが望めるであろう。 雲海を挟んで対峙する空木岳を眺めてから出発しよう。 

まずは、恐竜の背びれの如くギザギサの岩峰の熊沢岳 2778メートル へ向けて登っていく。 
桧尾岳との鞍部となる《船窪》を過ぎると、前方にそそり立っていた熊沢岳へと取りかかる。
熊沢岳への登りは、少々足場が悪い岩場となるので注意が必要だ。 一枚岩のトラバースやアングル付の岩場の下降など、重い荷物を担いでいては少々厄介である。

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空木岳へ続く痩せた稜線

この登りは見た目程キツくはないが朝一番のアルバイトで、今日の体調の良し悪しを測るにはいいかもしれない。 これを乗りきると、巨大な露岩が突き出た熊沢岳 2778メートル の頂上だ。
頂上は広い丘状で、ウスユキソウの群落が咲き乱れる所だ。

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熊沢岳頂上の大岩

展望も、北アルプスの山なみが頃合のいい位置に浮かび立ち、剱や後立山が雄々しい姿で望める。 また、御岳山も堂々とそびえ立ち壮観だ。 思う存分に花と景色を楽しんだなら、空木岳に向かって進んでいこう。 

熊沢岳よりは下り基調となり、左手に《池ノ平カール》が望めるはず・・だが、カールの規模が小さい上に《大田切本谷》のスケールが大きいが為に目立たない。 やがて、空木岳が対峙して望めるようになると、東川岳 2671メートル の頂上だ。 これより、200mの急下降で《木曽殿越》の峠へ下っていく。 

熊沢岳の宝剣岳側、つまり登り方は幾分緩やかで苦もなく登れるが、下りにかかる空木岳側は《池ノ平カール》を隔てる“窓”状に切れ込んでおり、このカール壁の裏側をトラバースで越えていかねばならない。

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カールを雲海が覆う
“雲海のかけ橋”をたどっていく

眺めはカール壁が逆光に黒光りしてなかなかシブイが、この間の通路には鎖があり・・、一枚岩のトラバースあり・・と気を引き締めていかねばならない。 特に“窓”の最低部、やや空木岳よりの長い一枚岩のトラバースは朝露などで濡れていると滑りやすいので気をつけよう。 

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カールに吸い込まれるように
ガスが晴れてきた・・

この鎖場を越えると“ルンゼ状”の岩登りとなり、手足を引っ掛けて登っていくとハイマツに囲まれた砂礫の丘の上に出る。 標高2703mのピークである。 この頂上は小庭園を成しており、トウヤクリンドウなどが咲くお花畑となっていた。 また天気が良ければ、《池ノ平カール》を見下ろす眺めと木曽駒ヶ岳・宝剣岳・空木岳のおりなす山岳パノラマも眺める事ができるだろう。 

2703mピークからは波打つように連なる稜線のコブを忠実に越えていくが、足場も熊沢岳の“窓”に比べると格段に良くなり、すんなりと東川岳 2671メートル までたどり着ける。 実際には桧尾岳から東川岳まではピークが5つあるが、数を気にして歩くよりは速やかに通過する方が精神的にも楽であろう・・。

東川岳からは、砕石混じりのザラ場をジグザグに下っていく。 この下りはかなり急で、滑りやすいザラ場なので足元には注意が必要だ。 下る最中に見上げると、東川岳が崖状にそびえていているのが見えるだろう。

下る最中に《木曽殿越》の小屋が見えるが、これがなかなか着かない。 得てして距離というものは、目に見えて意識の中にかかると長くなるものである。 ジグザグに切って下るだけ下ると、やがて小屋が設置したと思われる土嚢の階段を下って《木曽殿越》の小屋前に下り着く。

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断崖絶壁の崖っぷちに建てられている
木曽殿山荘
※ 中アの山小屋紹介ウェブより

この小屋は二階建てのプレハブ小屋で、食事付で宿泊できる。 木曽駒に寄っての縦走や、テント・自炊装備を持たない縦走者にはうってつけの小屋である。 ただ、かなりの谷間に位置しているので、朝日の写真目当てならばやや不利かもしれない。 

この小屋の名称である“木曽殿”とは、木曽義仲の事である。 830年もの昔に“木曽殿”こと木曽義仲が、仕従を従えてこの峠を乗り越えた・・との伝説よりこの名称がつけられているのだが、史実では“ほとんど疑わしい・・”との事である。 
 
それは、《木曽谷》と《伊那谷》の両側がスッパリと切れ落ちて風が吹き上げる難所を、“戦上手”の義仲が兵馬の危険を犯してまで通る事はない・・という事からである。 故に地名の説明文でも、“木曽殿越の伝説”が事実だとするとすごい事であるが、史実では疑問が残る事柄だ・・とある。

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木曽殿の力水
少し細いがいい「力水」だ
※ グーグル画像を拝借

さて、《木曽殿越》の鞍部に下り立つと、必ず実行しなければならない事がある。
それは、《木曽殿の力水》と呼ばれる岩清水へ水を汲みに行く事である。 なぜなら、今日の宿泊地である《摺鉢窪》の避難小屋は水がなく、ここで補給した水が“本日の生活水”となるからである。
この岩清水までは、鞍部に建つ山荘の裏手から『倉本登山道』を下る事約8分である。

行動水と今日1日をやり過ごす為の水の補給を終えたなら、これより+3㎏(水の重さ)を担いで空木岳に向かって標高差400mをイッキ登りせねばならない。 この登りは前半がザラ場の急登で、後半は岩場のよじ登りである。 

このザラ場の急坂に息が上がる頃、ハイマツが途切れて《木曽殿越》の鞍部が見渡せる所に出る。 
この高台より見下ろす《木曽殿越》は、木曽・伊那の両側が深く切れ落ち、2つの谷を隔てる稜線が刃のように迫り上がって壮観だ。 ここからは空木岳をかたどる大きな岩壁が現れ出し、この岩をヘツッたり、高巻いたり、くぐり抜けたりしながら登っていく。 

やがて、最も大きな岩の基部を巻くように進んでいくと、“鎖場跡”の難所に差しかかる。 
以前に鎖が掛けられていた形跡はあるが今はなく、文字通りよじ登らねばならない。 
手足で岩を確実にホールドして、注意して登っていこう。 これを越えると、オーバーハング状に迫り出している大岩の伊那側をヘツッて稜線上に飛び出る。 稜線上に積み重なる傾いた岩の上をトラバースしたり、飛び越えたりすると、白亜の岩が散りばめられた空木岳 2864メートル 
の頂上だ。 

空木岳の登りはキツい事はキツいのだが、的確に登っていけるので時間は思った程にかからない。 コースタイムは1:30だが、荷物を担いでの私でも1:15であったので、たぶんほとんどの人が1:30未満で登りきれるだろう。←コレは『奇跡の体力』を保持していた頃の記述です・・、念の為

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空木岳にて・・

登りきった空木岳 2864メートル からは、360°の大展望が広がる・・。 北アルプスと、南アルプスに挟まれた位置に立つ高峰ゆえの眺望が展開する。 そして前方に目を向けると、目指す南駒ヶ岳が鋭角的な美しい三角錐を魅せてくれるだろう。 

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南駒ヶ岳を望む

さて、頂上で素晴らしい展望をたっぷりと味わったなら、前方にそびえる南駒ヶ岳に向かっていこう。 
ルートは、空木岳の下りから始まる。 空木岳を成している白いザラ場を急下降していくのだが、途中にはタカネツメクサなどの花が咲き乱れて心地良い。 これを十分に下りきると、今度は赤榔岳 2798メートル 
への登り返しとなる。 ガレ場をつめていくと頂上だが、それを示すものは木の棒1本と貧相なものであった。 

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赤榔岳からは、目指す南駒ヶ岳が山体を斜めにした勇姿を魅せてくれる。 赤榔岳の頂上に乗っかる大岩を巻いて、南駒ヶ岳との鞍部へ向かって急下降していく。 
 
前方には、今日の宿泊場所である《摺鉢窪》の避難小屋とそのカール地形が望まれる。 
鞍部まで下ると、《摺鉢窪》への下降路が分かれている。 








←摺鉢窪は典型的なカール地形だ


ここに荷物をデポって、前面にそびえ立つ南駒ヶ岳へアタックしよう。 ガレにガレた傾斜をイッキ登りで200m程つめると、祠の立つ南駒ヶ岳 2841メートル の頂上だ。 私の登った時は残念ながらガスで何も望めなかったが、晴れていれば今までに歩いてきた道程がダイナミックに望める事だろう。 

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南駒ヶ岳頂上にて・・

頂上にある露岩には、ペンキで『コスモ→』と描かれてある。 有人小屋は、次の越百山の小屋までないのだ。 ここから3時間の道程である。 《桧尾岳避難小屋》からでは、所要10時間超とかなりキツ過ぎるオーダーである。

・・頂上でひと息着いたなら、荷物をデポッてある《摺鉢窪》へ戻ろう。 《摺鉢窪》の避難小屋は、カール地形の底にポツンと立っている。 カール壁の傾斜はキツく、疲れた足腰には少々コタえる。
カール特有のガレにガレた砕石の下りを乗りきると右背後に南駒ヶ岳の大岩壁がそびえ立ち、コバイケイソウやイブキトラノオのお花畑が広がる楽園に立つ事ができる。

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摺鉢窪より南駒ヶ岳を仰ぎ見る

お花畑の中、自然が創造した庭園状に敷きつめられた砕石の道を伝っていくと、潅木に隠されて見えなくなっていた避難小屋がひょっこりと現れる。 小屋内は中央が土間で、つめれば50人は収容できるスペースがあるが、水もトイレ(現在は簡易トイレ有)も電気もない暗い小屋が“満員御礼”となる事はまずないであろう。 小屋の脇に天水を溜めたタンクは存在するが、水質の事を考えるとあまり使う気はしない。 従って、《木曽殿越》より水を担ぎ上げるのが必要となるのだ。 

イメージ 10こんなに不便な小屋なれど、小屋の周りに広がる豊かな自然とカール底から望む里の展望を独り占め(たぶん、宿泊者1人きりであろう)にできる高揚感がある。

“山の民”には、これさえあれば十分だ。
孤独だが、“山の民”としての贅沢な一夜を結ぼう。

←摺鉢窪より下界を俯瞰する



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擂鉢窪のカール壁上からの空木岳は
端正な三角錐の容姿を魅せていた

  《3日目》 池山尾根を下山
今日の行程は、空木岳への往路を戻り、《池山尾根》を下って《駒ヶ根》に戻るルートである。 
空木岳までのルートは右手に南アルプス、左手には北アルプスと御岳山・・。 
そして、背後には美しい三角錐を魅せる南駒ヶ岳・・、正面には白亜の頂を魅せる空木岳と展望には事欠かない。 

空木岳の頂にて・・ 
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対峙してそびえる御岳山

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宝剣岳から続く
この山行で辿ってきた稜線を望む

花も、私の通った夏の終わりでも、トウヤクリンドウやイワツメクサなどが咲き競っていて目を楽しませてくれる。 だが、山歩きを堪能できるのは空木岳の頂上までだ。 空木岳の頂上では《木曽殿越》の山荘からの登山客がゾロゾロとたむろしていて、現実に引き戻されたような感じを受ける事だろう。

後は、この登山客達と連なって下っていくのだが、特に団体登山客はマナーがなっていない(狭い道で団体で立ち止まったり、下山歩行中で傘を差したり・・と、難所を通過する事よりこれらを抜き去る方が困難である)ので、少々厄介である。

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空木岳カールを下っていく

頂上から下る事10分足らずで、《駒峰ヒュッテ》の建つ《空木平》に出る。 ここでカールに下る道と、カール壁沿いに歩く道とに分かれる。 ここからは、目的に合わせてコースを選ぼう。 
最短ルートを行くなら、カール壁上のコースがいいだろう。 でも、体力的な余裕があって“花”が目当てなら、少し遠回りとなるがカールに向かって下っていこう。

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空木カールはもう秋の気配だった

摺鉢状に削られたカール底部は季節になると、高山植物の咲き乱れる“花のうつわ”となる。 
ハクサンイチゲ・オヤマノエンドウ・シナノキンバイ・シクサンフウロ・ウメバチソウ・トウヤクリンドウ・・など、五色の花々がカールに彩りを添える。 花を見ながら下りるからであろうか。

空木カールに咲く花 その1
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                ウサギギク                  イブキトラノオ

頂上から見えていた《空木避難小屋》へはなかなか着かない。 またカール底は、岩が不規則に転がる河原状を成しているので、足にもかなり負担がかかる。 これは到底、ガイド本などが示している“30分”では行けそうにない。 従って、本行程表ではやや多く見積もって“1時間”としたのであるが・・。

空木カールに咲く花 その2
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              トウヤクリンドウ                   ウメバチソウ

それなりの時間をかけて下っていくと、やがてダケカンバの樹木に囲まれたバラック小屋・《空木避難小屋》が見えてくるだろう。 この避難小屋は管理人の入っている《駒峰ヒュッテ》と違いかなり荒れており、泊るに当たってはそれなりの気構えが必要だろう。

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石室同然だった旧空木岳避難小屋
入口の戸は外れて
立てかけているだけだった

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建替えられて綺麗になった
新空木岳避難小屋
※ 避難小屋の上下2枚はグーグル画像を拝借

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小屋前から望む空木岳
荒廃して不便な小屋なれど
山の雰囲気を味わうには格別の小屋だ

また、水場となる沢の上にトイレの残骸があり、“水”に関しても心許ない感じである。
安全を目指すなら、《駒峰ヒュッテ》か《木曽殿越山荘》に宿泊するのが賢明だろう。
だが、より山を味わうには、こういう悪条件も“また良し”である。

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朝の光に染まる空木岳カール

避難小屋よりは沢沿いに歩いていくと、カール地形の窪みが尽きてくる。 なおもカール壁を斜めに登っていくと、《駒峰ヒュッテ》からの尾根通しの道と合流する。  ここから下の《駒ヶ根高原》まで延々と樹林帯の中をいくので、見通しはほとんど利かない。 また、樹林帯の中を縫うようにいくので、道を見失ってブッシュに迷い込みやすい。 
 
延々と続く薄暗い樹林帯の急下降にいささかウンザリするが、見るべきものもないので以外と早く下っていける。  やがて、コース唯一の鎖場・《大地獄・小地獄》に差しかかる。
だが、鎖場としては何の事もなく、急なハシゴがあるのと岩をヘツる所に鎖が掛けられてあるだけである。 どちらかといえば、空木岳の《木曽殿越》側の方が鎖が必要だと思うのだが・・。

これを越えると再び樹林帯の中のジグザグ下りとなり、見通しのほとんど利かない中を1時間半程下っていく。 やがて、《池山分岐》という水場施設の残骸が残る木立の丘に下り着く事ができるだろう。 この分岐からは、地名の通り池山 1774メートル まで登山道は続いているが、あまり登り甲斐もなさそうなので無視していく事にしよう。 この分岐からしばらく歩いていくと沢のせせらぎが聞えてきて、やかてこの沢を見下ろす土手の上を行くようになる。 

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山荘なみの施設に建替えられた池山小屋
※ ウィキペディア画像を拝借

《池山尾根》の道は長い道程ではあるが、数年前より整備が成されているらしく道標も新しくなり、池山の避難小屋も新しく建替えられたようだ。 前回通った池山の水場も荒廃して全く使えなかったものが、水槽が新設されて豊富な水がポンプアップされている。 

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避難小屋前にある水場
小屋入口の分岐にも水場が新設されていた
※ ウィキペディア画像を拝借

《池山小屋》の旧小屋は木造の古びたものが沢のそばに建っているのだが、使い勝手はともかく雰囲気は断然こちらが上だろう。 近々取り壊されるらしく、立入禁止となっていた。
山の中でも、“古き良き”ものが失われつつあるように思う。 《池山小屋》を越えると、遊歩道化された道が林道終点まで続く。 林道終点は整備されていて、トイレも設置されていた。

《池山小屋》からは遊歩道然となって、広い緩やかな下り道が続き歩きよい。 
あまり見通しの良くない《タカウチバ展望台》を過ぎると、《駒ヶ根高原》のスキー場から延びる林道に出る。 ここでようやく、下界の眺めを見る事ができるだろう。

後は、林道を交差しながら山道を下っていくと、《駒ヶ根高原スキー場》の脇に出る。 そこから舗装道を20分程で、《駒ヶ根高原》の《菅ノ台》のバス停である。 バス便は多くあるので、ホテル街でひと風呂浴びてから帰路に着こう。












第345回  宝剣岳岩稜

『日本百景』 晩夏  第345回  宝剣岳岩稜  〔長野県〕

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宝剣岳岩稜と中央アルプス主稜線

   中央アルプス ちゅうおうアルプス (中央アルプス県立自然公園)
中央アルプスは南北アルプスの間に連なる“木曽山脈”の総称で、高さも南北アルプスのそれにひけをとらない。 最高峰は木曽駒ヶ岳 2956メートル で、そのすぐ横に剣先の如く鋭く尖った頂を魅せる宝剣岳 2931メートル 
が並ぶ。 また、この中央アルプスの山々は氷食が著しく、鋭く尖った峰を持つ山が多いのが特徴である。

・・中央アルプスの魅力は、何といっても氷河による浸食でできた数多くの“カール”地形と、そこに群生するお花畑であろう。 濃ヶ池・千畳敷・極楽平のカールが、夏になると高山植物の花々に飾られた天然の“うつわ”となり、悠然と構える峰々に囲まれた『神の園』となる。



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中央アルプス縦走ルート 行程図

    行程表                駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR駒ヶ根駅よりバス (0:50)→しらび平よりロープウェイ (0:10)→千畳敷
      (0:40)→浄土乗越・木曽駒ヶ岳までは往復1時間40分
      (0:20)→宝剣岳 (1:00)→極楽平・
三ノ沢岳まで往復3時間
      (2:20)→桧尾岳 (0:10)
→桧尾避難小屋
《2日目》 桧尾避難小屋 (1:30)→熊沢岳 (2:00)→木曽殿越 (1:30)→空木岳
      (1:30)→摺鉢窪避難小屋・摺鉢窪避難小屋分岐より南駒ヶ岳まで上り40分・下り30分
      (0:20)→摺鉢窪避難小屋
《3日目》 摺鉢窪避難小屋 (0:25)→摺鉢窪避難小屋分岐 (1:20)→空木岳
      (2:20)→小地獄・大地獄 (1:20)→池山小屋 (1:30)→駒ヶ根高原登山口
      (0:20)→菅ノ台バス停よりバス (0:15)→JR駒ヶ根駅


  《1日目》 千畳敷カールより宝剣岳・三ノ沢岳を経て桧尾岳へ
「山に登る時は、一番楽で“おいしい”コースを目指す」という『日本百景』における格言!?通り、ロープウェイ・リフトは積極的に利用する事にしている。 もちろん、この中央アルプスも例外ではない。
さて、夏シーズンならば、ロープウェイの始発時間が朝6時と早まるので、駒ヶ根駅のバスもこれに合わせて乗車しよう。

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千畳敷より宝剣岳を見上げる

・・《千畳敷》のロープウェイ駅を出ると、ロープで仕切ってある登山道をカール壁に向かって歩いていく。 やかて、金網で包まれた岩道をジグザグを切って登っていく。 このように道の付き方からみても冬とは全く違うが、何よりも違うのが登山者一人一人の“いでたち”が表す山に対する“心構え”ではなかろうか。 

さて、ジグザグ登りを約40分、おそらく疲れを感じる前に《浄土乗越》に登り着く。 
時間に余裕があれば、木曽駒ヶ岳への往復もいいだろう。 ただ、木曽駒ヶ岳は往復するだけではあまりにももったいなく、《濃ヶ池》や伊那前岳といった素晴らしい景色の場所へいってみたくなるだろう。 

これらの景勝に“寄り道”すると、桧尾岳への到着時間が遅れたり、最悪たどり着けなくなるので時間の計算が必要だ。 しかし、木曽駒ヶ岳周辺で遊んで、中央アルプスを縦走する方法はないという事もない。 
 
日程を1日増やして、初日を木曽駒ヶ岳の往復や周囲の山々への往復に充てて、その日の宿泊地を『宝剣山荘』にすれば可能となるのである。 但し、山荘に宿泊するので費用がかさむという難点も出てくるのだが。

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中アの盟主・木曽駒ヶ岳
厳冬期しか登った事がないから・・と
中アの盟主・木曽駒ヶ岳を端折るなんて
ヘンテコなガイドだな・・コリャ

さて、木曽駒ヶ岳を往復して《浄土乗越》に戻ってきた時点から、ガイドを始めよう。
ちなみに木曽駒ヶ岳のガイドを端折った訳は、木曽駒ヶ岳には厳冬期にしか訪れた事がない為なので悪しからず。
 
宝剣岳の登り口は小屋の裏手の左側にあり、やや判り辛いかも知れない。 
宝剣岳のそびえる方向へ進むと、途中で進路を変えて木曽駒ヶ岳への道と合流してしまうので要注意だ。 宝剣岳への道は前項目でも述べた通り、深く切れ落ちた《宝剣沢》を挟み込むように巻きながら登っていく。 

やがて、《伊那谷》側を大きな岩峰が仕切り出す。 トラバース気味に《木曽谷》側に出て、宝剣岳の鋭い剣先を形取る荒々しい岩盤がスッパリと切れ落ちる《宝剣沢》を横目に見ながら、鎖片手にトラバースしていく。 
ここは冬季になると“恐怖のトラバース”となる難所で、冬ほどではないにしろ、やっぱり“冷や汗モノ”の難所である。 これを乗りきると、宝剣岳の山頂である。 

宝剣岳の岩塔にて
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美しい尾根筋を広げる木曽駒ヶ岳

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中ア南部の名峰・空木岳

宝剣岳の頂上は眺めは抜群であるが、鋭い岩峰の穂先ということで山頂は至って狭い。 
宝剣岳までは人が次々とやってくるので、あまりゆっくりとはしてられない。 
さて、頂上からは、“恐怖のトラバース”より格段に切れ落ちたギザギザの稜線を伝っていく事となる。 
ここからは夏だからこそ行ける道で、冬に行くのは“自殺行為”である愚行である事を留意したい。 

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岩の剱・宝剣岳を後にして

頂上からは、浮石まみれの崖っぷちを巻くように下っていく。 途中に岩と岩が積み重なった“門”をくぐったり、岩をヘツッたり、時には一枚岩の懸垂下降をしたり・・と、かなりハードだ。
特に恐怖を感じるのは、《木曽谷》側に向かって鎖片手に一枚岩を下っていく所だ。
足をホールドする鉄杭は打ち込まれているものの、上から音を立てて落ちてくる落石と、引き込まれそうな位深い《木曽谷》の“奈落の底”が視界に入るのには悩まされる。 

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宝剣岳は全般的に脆い浮石が多いので
通過には注意が必要だ

この下りを乗りきると、ひと息つける鞍部に出る。 ここからは、深い《木曽谷》を挟んでそびえる三ノ沢岳 2846メートル や、木曽中岳の後にひょっこりと顔を出す木曽駒ヶ岳、宝剣岳の頂上から連なる鋭い岩峰など、カメラを取り出したくなるような景色が広がる。 この鞍部からは宝剣岳の支峰に向かっての一枚岩の垂直登りがあり、鎖やホールドをつかんでこれを登りつめると、稜線の鋭い尖先を伊那側へ跨いで稜線の上部をトラバースしながら渡っていく。 

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難所に挑む者には緊張を削がれる
“場違い”な眺めの千畳敷カール

背後には《千畳敷カール》が広がり、人々が次々とロープウェイのゴンドラに運ばれてやってくるのが見える。 これから登る者・・、カールを散策する者・・が、“アリ”のようにうごめいている。 
だが、下から稜線の岩にへばりついている私を見ると、どう見えるのだろうか。 
岩にへばりつく“虫”なのであろうか。 

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懸垂下降や上昇のある厳しい岩峰越えだ

とにかく《伊那谷》側は、緊張する難所には“場違い”な眺めである事は確かである。 
しばらく伊那側をトラバースすると、また稜線の尖峰を跨いで、再び《木曽谷》の底に向かって懸垂下降で下っていく。 ここも鎖が付き、足を置くボルトも打ち込まれてはいるが、谷に向かって下りていく緊迫感は相変わらず大きい。 

このような感じの登降を3〜4回繰り返すと、『遭難ノ碑』という石碑の立つ三ノ沢岳への分岐へとたどり着く。 ここでようやく難所から解放されて、白砂の広く眩い稜線を緩やかに下っていく。 
このまま10分ばかり歩いていくと、多くの人で賑わっている広場に出る。 《極楽平》である。

《千畳敷カール》からここまでは初心者コースが設定され、それこそスニーカーなどの軽装で次々と人がやってくる。 軽装でくるのは謹んで頂きたいのは本音だが、最低限その軽装ではここまてで、その格好で宝剣岳には挑まないで・・と願うのみである。

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均整の取れた三角錐を示す
『中アのいぶし銀』・三ノ沢岳

それでは、『中アのいぶし銀』の一つ・三ノ沢岳に登ってみよう。 三ノ沢岳が真正面にそびえ立っていて、登高意欲をそそられる。 これよりその三ノ沢岳を往復するのだが、三ノ沢岳へと続く尾根は宝剣岳寄りにあるので、荷物はここにデポッて空身でいこう。 

《極楽平》より宝剣岳側に10分程戻ると宝剣岳の遭難碑があり、三ノ沢岳へのルートはここより延びている。 宝剣岳の岩峰が逆光に黒光りして、更に迫力を増している。 稜線より離れ、左手を急下降していく。 砂礫の斜面で、所々露岩が突き出した雰囲気の良い情景の中を下っていく。 

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三ノ沢岳へ・・

そうこうしている内に250mも下る事になる。 やがて、《三ノ沢カール》の縁まで下り、カールバンドの細い尾根上で最低点を踏む。 ここは、カール壁特有のギザギサの尾根筋で難所という程ではないが、通過にはそれなりに苦労する。 最低点を通過すると、2段の急登で三ノ沢岳の頂までイッキに駆け上がっていく。 

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ウサギギク

三ノ沢岳 2847メートル の頂上は、大きな露岩が積み重なった不安定な所だ。
だが、その不安定な露岩の上に立つと、対峙する宝剣岳が黒光りした荒々しい峰を魅せている。
これより進む空木岳も雲間から望まれる。 また北アルプスの山々が、剱・立山・後立山・槍・穂高がズラッと並んでいる。 そして、御岳山も孤立高峰としてそびえ立っている。 

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三ノ沢岳より望む宝剣岳と木曽中岳

岩の上で素晴らしい風景と爽やかな涼風を堪能したなら、往路を戻る。 
稜線に戻って《極楽平》にデポってある荷物を回収したなら、縦走路を空木岳へ向かって進んでいこう。

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極楽平を越えると
なだらかな歩きよい道となる

《極楽平》から少し離れると途端に人気がなくなり、再び静かな稜線歩きを取り戻す事ができる。 
白亜の広い稜線を緩やかに登っていくと、『島田娘』の雪形を示す岩峰の頂点に立つ。 
頂点といっても小高い丘の上に立ったような感覚で、気づかずに通り過ぎるかもしれない。 

後は、広々とした白亜の稜線を濁沢大峰 2724メートル 、桧尾岳 2727メートル とアップダウンを繰り返す。 右手に深い緑の窪みを示す《三ノ沢カール》が見渡せる。

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カール地形を示す三ノ沢岳

この《三ノ沢カール》の存在は、三ノ沢岳をより魅力的にしている。 なお、稜線縦走の途中、濁沢大峰付近では大きな花崗岩の一枚岩の登降とトラバースがあり、鎖・アングル付の難所となっているので注意しよう。

また、三ノ沢岳に立ち寄って桧尾岳に登り着く頃は午後も大きく周っているだろうから、「午後からのひと雨」にも注意が必要だ。 山の稜線の午後はよく夕立のような強い雨が降るので、雨に降られながら鎖場を通過する想定も必要だろう。
 
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夕立直後の空木岳を望む

桧尾岳に着いて空木岳の勇姿を眺めたなら、今日の宿泊地・《桧尾岳避難小屋》に向かおう。 
桧尾岳の頂上から下ること10分だ。

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避難小屋の周囲は
トウヤクリンドウのお花畑だった

小屋はまだ新しくきれいなのだが、水場は細くお世辞にもいい水場とは言い難い事、トイレがないこと・・などが難点である。 なお、旧小屋の石垣が残るキャンプ指定地での幕営も可能である。 明日は稜線を伝って、名峰・空木岳の頂に立とう。

   ※ 続きは、次回の『第346回 中アのいぶし銀の名峰へ』にて

















第344回  鳳凰三山

『日本百景』 晩夏  第344回  鳳凰三山  〔山梨県〕

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北岳・八本歯ノコルより望む鳳凰三山

  甲斐駒ヶ岳・鳳凰三山 かいこまがたけ・ほうおうさんざん (南アルプス国立公園)
南アルプスを語る上で忘れてはならないのが、甲斐駒ヶ岳と鳳凰三山であろう。
南アルプスの山は緑豊かで花多き峰は多いものの、荒々しい稜線美や岩のオブジェを魅せる山はこの山域をおいて他にない。 また甲斐駒ヶ岳 2967メートル は、その姿が勇猛な武田軍団を彷彿させ、古くから甲斐国の“守護神”として崇められてきた山だ。 

鳳凰三山は北岳・間ノ岳・農鳥岳からなる白峰三山の前衛をつかさどる山域で、山岳信仰の深い事でも知られている。 それぞれの峰に地蔵岳 2764メートル ・観音岳 2840メートル ・薬師岳 2780メートル と、念仏にちなんだ名がつけられていることからも解かるだろう。
またこの山域は、南アルプスの展望台としても素晴らしい。 
 
優雅な姿の“美人”・仙丈ケ岳や、白竜が天に昇るかの如く光る北岳の大樺沢雪渓、鋸岳のささくれ立った岩峰群、地蔵岳のオベリスク(地蔵仏)と尽きる事なく山岳美を魅せてくれる。



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斐駒ヶ岳〜鳳凰三山縦走ルート 行程図

    行程表                 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR甲府駅よりバス (2:05)→広河原よりバス (0:25)→北沢峠
《2日目》 北沢峠 (1:10)→仙水峠 (1:20)→駒津峰 (1:30)→甲斐駒ヶ岳
      (0:40)→摩利支天峰 (0:50)→駒津峰 (1:05)→仙水峠 (1:00)→北沢峠
《3日目》 北沢峠 (2:00)→栗沢山 (1:25)→アサヨ峰 (2:20)
→早川尾根小屋
《4日目》 早川尾根小屋 (2:30)→高嶺 (0:45)→赤抜沢ノ頭・地蔵岳まで往復1時間
      (1:15)→観音岳 (0:40)→薬師岳 (1:15)→南御室小屋
《5日目》 南御室小屋 (0:40)→苺平 (1:15)→杖立峠 (1:20)→夜叉神峠
      (0:45)→夜叉神峠よりバス (1:15)→JR甲府駅

     ※ 前回の『第343回 甲斐駒ヶ岳』からの続きです。

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早川尾根より望む鳳凰三山
オベリスクもはっきりと見渡せる

  《3日目》 アサヨ峰から早川尾根を伝って早川尾根小屋へ
今日は、荷物一式を背負って鳳凰三山へ向かって進んでいこう。 鳳凰三山までは、《早川尾根》を忠実に伝っていく。 さて、《北沢峠》のキャンプ場を早立ちして、甲斐駒ヶ岳の登路をすぐに分けて樹林帯の中へ真っすぐ突入していく。 人の流れは、ほとんどというより全て甲斐駒ヶ岳へ向かっているようだ。 

出発時間帯でこの有様なので、たぶんこの道を行くのは日に2組か3組位であろう。 
まず、人に会うことは期待できそうにない。 この光景を魅せられたなら、そしてこれから深い樹海の中に入っていく・・となると心細くもなるだろう。 鬱蒼として光が全く差し込まない樹海の中を、ジグザグを切りながら道は続いている。 周囲は見通しが利かず、踏跡らしきものを拾って樹海の中を彷徨うように登っていく。 

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北岳の雄姿を目にすると
登高意欲がムクムクと湧いてくる

約1時間程登っていき道が正しいのか不安になり始める頃、右手の樹林に隙間ができて、そこから左巻きに尾根を引っ張る北岳の勇姿が望めるだろう。 これが目に入ると、ようやく道筋に確信が持てる。 道が判ると、足取りも軽快になるから不思議なものだ。 傾斜は強くなっていくのに、よりハイテンションで登っていける。

やがて頭上から光が差し込み、それが広がってトンネルを抜け出すように樹海の中より抜け出して、ハイマツと巨石の転がるガラ場に出る。 ここからは北側の見通しが最高で、北アルプスや中央アルプスの山なみが雲上にゆったりと浮かんでいるのが見渡せる。 背後から照りつける太陽光に黒光りする大岩群をよじ登る感じで乗り越えると、栗沢山 2714メートル だ。 この頂上からは遮るものが何もなく、360°大パノラマで山なみが見渡せる。 

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カールを抱く優しい山容を魅せる仙丈ヶ岳

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白亜の頂を魅せる甲斐駒ヶ岳
※ いずれも別の所で撮ったモノです

に巻く太い尾根筋が見事な北岳や優雅な仙丈ケ岳、白亜の大峰と巨大な摩利支天峰の岩峰を突き出す甲斐駒ヶ岳、雲海に浮かぶ北や中央アルプス、《五丈岩》のコブをシルエットに魅せる金峰山と秩父山塊、うっすらと煙を噴き出す浅間山、雲間の下に広がる甲斐国と八ヶ岳、振り返るとアサヨ峰に連なる稜線とその背後に逆光で黒光りするオベリスク・・などなと、どこを向いても絶好のカメラアングルだ。 

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北岳の雄姿
大樺沢雪渓が一筋に突き上げている

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鳳凰三山のシンボル・オベリスク(地蔵仏)
も視認できる

あまりにも素晴らしい景色に、フイルムの残り数を忘れてしまいそうになる。 
栗沢山でひと休みしたなら、栗沢山の山体を形成する大きな岩のガラ場を伝っていく。 
頂上から眺めた感じではあまり起伏のないような稜線が、歩いてみたらアップダウンはあるわ、ガラガラの岩場で歩きにくいわ・・と結構厄介な道である。 中でもアサヨ峰の肩に上がる大岩の乗っ越しはややオーバーハング気味で、取り付く岩角も少なく足の踏み切り場所に手間取るかもしれない。 

これを乗り越えると、その上に乗っかかる岩峰をひと登りでアサヨ峰 2799メートル 
の頂上だ。 
頂上は岩が積み重なって盛り上がった不安定な所で、カメラ片手に駆け回る・・といったことはできないが、大岩に馬乗りになって真正面にそびえる北岳に焦点を合わせよう。 

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アサヨ峰より望む勇峰・甲斐駒ケ岳

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北岳バットレスと青空
※ 別の所で撮ったモノです

ここから見る北岳は、《野呂川》から斜上した山稜が美しい三角形を示して頂点に達している。 
両側の《池山尾根》と《小太郎尾根》が脇を締めて、“山”という感じの原点を見る思いがする眺めだ。 
あまりにも素晴らしい眺めに引き込まれぬように。 北岳を望む西面は、断崖絶壁となって切れ落ちているから気をつけよう。

・・アサヨ峰からは東へ90°大きく折れて、痩せた稜線上に突き出す岩峰群を乗り越えたり巻いたりしながら進んでいく。 まずは、スリップしそうなザラザラの砂礫からなる痩せ尾根を、《ミヨシノ頭》とのコルに向かって進んでいく。 この辺りは森林限界のギリギリを行くので、鞍部まで下がるとハイマツが足元を覆い出してくる。 一枚岩をトラバースして越えるとダケカンバやハイマツに囲まれた鞍部に出て、ミヨシの頭へは右寄りに伝って登り返していく。 

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早川尾根の合間より
姿を魅せる甲斐駒ヶ岳

登りきった《ミヨシノ頭》は何でもない砂礫の中の丘で、それとなく通り越してしまうだろう。 
再び下り気味に次のピークへ移る。 正面には鳳凰三山とそのシンボル“オベリスク”、その右に富士山の三角錐のシルエットが浮き立っている。 小屋までの稜線の中で際立つ絶景を見ながら進むと、程なく次のピーク上に立つ。 

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雲海に霞む八ヶ岳

ここから尾根は左に曲がり、《早川尾根小屋》を遙か下に望んで樹林帯の中へ深く切り込んでいく。 
足がガクガクする程の急下降で下っていくが、滑りやすい粘土質の道が足元を脅かし、また道を覆い隠す倒木が行く手を迷わせる。 ともすれば、樹海を彷徨う恐れも有り得る所だ。 

これを下りきると、最も顕著な鞍部に出る。 この鞍部からは、両側がダケカンバで覆われたピークを本格的に登り返す。 ザラザラの砂礫が所々掘り起こされた登りにくい坂を、ピークとなった強い日差しを背に受けての辛い登りだ。 今までの疲れもあいまって、今日の行程では一番の踏ん張り所だ。 

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早川尾根と仙丈ヶ岳

これを乗りきると樹海の中を小さなコブを2つ程上下して、再び下に《早川尾根小屋》が見えてくるようになる。 今度は、“遙か”という言葉が抜ける分だけ気分も軽い。 後は、樹林帯の中を一度平坦なコブを経て右下がりに下っていくと、《早川尾根小屋》の立つ狭い鞍部に飛び出す。 

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早川尾根小屋
素朴な雰囲気満点の山小屋らしい小屋だが
今は休業中で解放扱いとの事

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早川尾根小屋の中
土間に丸ストーブと素朴な小屋だった

 《早川尾根小屋》は仕切りのない大部屋の中央に広い土間、その真ん中に据付けられたダルマストーブと、素朴な雰囲気を残す造りとなっている。 樹林越しに望まれる北岳の眺めとともに、南アルプスらしいムードを漂わす絶好の宿営地で山の静かな一夜を過ごそう。 
ちろん、小屋前のーでキャンプを張って満点の星空の下、一夜の夢をつなぐのもいいだろう。



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朝の光に染まる北岳を望んで出発だ

  《4日目》 高嶺を経て鳳凰三山縦走
小屋の前で朝日に染まって、ほのかなオレンジ色を魅せる北岳を眺めたなら出発しよう。 
今日は標高差500mの高嶺を越えて、“オリベスク”から鳳凰三山を縦走していく、この山の核心部をいく行程だ。 緩やかに下る道は、途中で展望の利く小さなピーク上に出て、そのまま樹林帯を《広河原峠》へ下っていく。 《広河原峠》に近づくにつれて左側が開けてきて、梢の隙間から望む八ヶ岳は朝の白く輝く雲海に美しい姿を浮かべて感慨深い眺めとなっている。 

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雲海と樹海が八ヶ岳をより美しく演出する

峠に下りて、小平地で右に《広河原》へのエスケープルートを分けて、前方の樹林帯に続く道を登り返していく。 これより樹林帯の中を、ほぼ直登で《赤薙沢ノ頭》を目指す。 しばらく展望が途絶えて重苦しい感じの登りが続くが、高度を上げるにつれて背後に甲斐駒ヶ岳の白亜の岩峰が突き出してきて、少しは気分を取り戻せる。 

このピークの頂上が近づくにつれて右手の樹林に隙間が空いてきて、カラマツと北岳の取り合わせが抜群の好展望となってくる・・。 そのままガレた右崖を見ながら、白亜の巨岩が積み重なった《赤薙沢ノ頭》のピークに着く。 涼風の下に北岳の好展望・・、素晴らしい景色と腰を下ろせる大石群、ちょっと早いが第一休憩所には持ってこいのロケーションである。 

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白砂の稜線と甲斐駒ヶ岳

ここから、再び《白鳳峠》に向かって樹林帯を急下降していく。 途中の倒木帯に手間取ることもあるが、少しの辛抱で《白鳳峠》に下り着く。 この《白鳳峠》は南アルプスの中では《三伏峠》・《福川乗越》に次ぐ高い峠で、標高2470mである。 この峠にも《広河原》へのエスケープルートがあり、右手に下り口が開いている。 この道は、《広河原》から鳳凰三山への縦走ルートの登り道として利用価値は高そうだ。 

ここからは、いよいよ鳳凰山域に入り込んでいく。 シラベの樹林帯を抜け出ると、取り付きにくい一枚岩の岩盤を一段よじ登って上に広がるハイマツ帯に出る。 このハイマツ帯の上からは、高嶺の稜線がピークからすざましい勢いて落ちているのが望めるだろう。 これを見ると、キツい日差しも手伝って気分もゲンナリする。 

仰ぎ見る大きな高嶺に向かって、妥協のない直登でつめていく。 変成岩の敷きつめられたガラ場を登っていくとケルンの立つ中鞍部に出て、この先は幅の広いガラば尾根から一転して左手が切れ落ちた岩壁の直登となる。 
 
尾根上から切れ落ちた左側の岩壁の基部に移って、岩壁の切り込みに沿って這い上がるように登っていく。 この岩壁は見た目程には直立していないが、やはり高嶺の山体を成す巨大岩盤、手足をフルに使ってのよじ登りを要求される。 

背後にそびえる八ヶ岳が朝の雲海からデーライトにくっきりと見え始める頃、最後の岩盤を這い上がって高嶺 2779メートル の頂上に飛び出す。

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真正面に大樺沢の雪渓を
突き上げる北岳が・・

高嶺の頂上からは、真正面に北岳の《大樺沢雪渓》が天に昇る白い竜の如くすざましい勢いで突き上げている。 左側の空の下には仙丈ケ岳の優雅な姿と白亜の大岩をもたげたいかつい甲斐駒ヶ岳が、《野呂川》を挟んで夫婦のように並び立っている。 

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オベリスクが近づいてきた

そして目指す鳳凰三山や“オベリスク”も、かなり近づいた感がある。 八ヶ岳も清里の街を従えて、気高き姿を示している。 この高嶺は、南アルプスのとっておきの展望台である。 高嶺からは、痩せた稜線を左に周り気味に伝っていく。 取り立てて危険な所はないが、ガラ岩やザラザラの砂礫帯を通過するのでスリップに注意しよう。 素晴らしい眺めに熱中し、くれぐれも足元の注意が疎かにならぬように・・。 

白ザレの鞍部からは、名前の通り白砂の滑りやすいザラ場を登り返すと、常に左に見えていた“オベリスク”の大岩が真正面にどっかりと立ちはばかるようになる。 白砂が固まってできたような岩峰を巻いていくと、いよいよ鳳凰三山の取付点・《赤抜沢ノ頭》の頂上だ。 

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真に岩仏・・
オベリスク全景

まずは、“オベリスク”を擁する地蔵岳を制覇しよう。 《赤抜沢ノ頭》より、《賽ノ河原》と呼ばれる白砂の堆積丘に向かって深く掘れた道を下っていく。 15分程下ると《賽ノ河原》に出て、山の“砂浜”の上を緩やかに登り返していく。 傾斜は緩いのだが、白砂に足を取られて足取りはかなり重い。
やがて、“オベリスク”の基部にある地蔵岳 2764メートル 頂上の祠にたどり着く。

ここから“オベリスク”岩を少し登って、巨大な岩の周りを一周してみよう。 
途中に岩を祀る地蔵や祠・結界があり、山岳信仰の深い山である事が解かるであろう。 
こうなれば岩の上にも登りたい所だが、これを登るのはザイルと補助者がないと無理のようである。 
無理に登っても降りれなくなるだけで、岩の上で震えて救助を待つといった“恥”をさらすだけである。 

さて、“オベリスク”をひと周りしたなら往路を《赤抜沢ノ頭》まで戻り、鳳凰三山縦走を再開しよう。 
次に目指すは、鳳凰三山の最高峰・観音岳だ。 相変わらず白ザレのザラザラの痩せ尾根を伝っていくと急下降となり、敷きつめられた白砂の下地に露岩が突き出た庭園風景が広がる中を下っていく。 下りきると鞍部に出て、《鳳凰小屋》への短絡道を見送ってから、観音岳に向かって潅木帯を急登していく。 

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鳳凰三山最高峰・観音岳はもうすぐだ

下地は一変して黒土の粘り気のある道となって、行く手を遮る潅木の枝を跳ね除けながらの急登となる。 僅か150m程の登りだが、潅木の枝がザックに引っ掛かり難儀なことこの上ない。 
この潅木帯を抜けて、ガラ場を左から周り込むと観音岳 2840メートル 
の頂上だ。 
観音岳の頂上に積み上げられている大岩からは、北岳が大きく迫り立っている。 

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広角を使っても北岳が目一杯に・・

あまりにも大きくて全てが見通せない分、眺めは高嶺に一歩譲るか・・という感じである。 
観音岳からは、右側が切れ落ちた痩せ尾根を右に緩やかに周るように伝っていくと、ハイマツと砂礫のおりなす庭園風景の丘の上に出てくる。 この丘の右端につけられている縦走路から、丘の左端にある薬師岳 2780メートル 
の頂上の大岩へ向かっていこう。 この大岩の上は涼風がそよぎ、三山縦走の締めくくり・・、そして山旅を振り返るには最適だろう。 

後は、縦走路を少し下った所にある《薬師岳小屋》に泊るのもいいし、清水を豊富に流す《南御室》のキャンプ場まで頑張るのもいい。 ここではキャンプ山行を基本スタイルとしているので、あとひと踏ん張りして《南御室》まで進もう。 《南御室》へは、白砂の丘に突き出した岩が重なったような砂払岳の岩小屋群を抜け、樹林帯を急降下していく。 

途中、平坦な道を経てから、左に折れて足がガクガクする程の急降下をこなすと、《南御室小屋》の左手に飛び出る。 この小屋の豊富な水場は、小屋の右端を少し行った所にある。
噂通り、豊富な清水を音を立てて流している最高の水場だ。 また、小屋前のキャンプサイトも広く、展望が今一つなのを除けば絶好の幕営地であろう。 今日は、ここでストップとしよう。



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薄っすらとシルエットを魅せる富士山

  《5日目》 杖立峠・夜叉神峠を経て下山
今日の内に帰宅できるかどうかは、下山口となる《夜叉神登山口》バス停でのバスの発車時間、ひいては《南御室》の出発時間に大きく関ってくるだろう。 従って、山のセオリー通り早立ちを心掛けよう。 

《南御室》からは、石畳が敷きつめられた並木道を緩やかに登っていく。 
出発してすぐに甘利山への横断ルートが分かれるが、かなり荒れているとの事なので立ち入らぬ方が無難だろう。 

やがて、路傍に多く植生するシロバナヘビイチゴが地名の由来となった《苺平》の小空地に出る。 
ここは樹林に囲まれて展望はないが、すぐ西方にある辻山のピークに出ると白峰三山が稜線を重ねて美しい山屏風を描いている。 

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白峰三山を望みながら夜叉神峠へ

《苺平》からは、砂利で踏み固められた道を緩やかに下っていく。 
右手に白峰三山を見ながらの楽しい下山路である。 ただ難点を一ついえば、道がダラダラと長ったるいことであろうか・・。 やがて、櫓の立つ《杖立峠》に出る。 

この峠を過ぎると、道は広く整備されたハイキング道となってくる。 登りの登山者と多くすれ違うようになると、《夜叉神峠》は近い。 もはや、高山帯を外れてヤナギランやヨツバヒヨドリなどの高原の花咲く《夜叉神峠》は山荘兼売店があり、ジュースやお菓子・御土産品なども売っていて、更に公衆電話もあるのでかなり下界に近づいた感がある。 峠の広場からは白峰三山が望まれるが、やはり稜線上の眺めに一歩譲る感は否めない。 

後はハイキング道を45分程下ると、車のボンネットから反射した光が見えてきて、程なく《夜叉神登山口》のバス停前に飛び出る。 以前の夜叉人峠はマイカー規制がなかったので《広河原》にマイカーを乗り入れる事が可能だったが、現在は芦安村営駐車場から先はマイカー規制が敷かれているので、マイカー代行バスでマイカーを置いた登山口まで戻る事が必要となっている。

芦安村営駐車場にマイカーを置いてきたか、又は甲府駅からバス利用でのアプローチなら、そのままバスで甲府方向に向かえばいいが、長野県の戸台や静岡県の奈良田温泉からの入山なら、一度《広河原》に出て、それぞれの方向に向かうバスに乗り継ぐ必要がある。

なお、山の後の温泉は、芦安・戸台・奈良田の各登山口に温泉クアハウスがあるので、ひと風呂浴びてから帰路に着く事ができるだろう。

















第343回  甲斐駒ヶ岳

『日本百景』 晩夏  第343回  甲斐駒ヶ岳  〔山梨県・長野県〕

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アサヨ峰より望む勇峰・甲斐駒ヶ岳

  甲斐駒ヶ岳・鳳凰三山 かいこまがたけ・ほうおうさんざん (南アルプス国立公園)
南アルプスを語る上で忘れてはならないのが、甲斐駒ヶ岳と鳳凰三山であろう。
南アルプスの山は緑豊かで花多き峰は多いものの、荒々しい稜線美や岩のオブジェを魅せる山はこの山域をおいて他にない。 また甲斐駒ヶ岳 2967メートル は、その姿が勇猛な武田軍団を彷彿させ、古くから甲斐国の“守護神”として崇められてきた山だ。 

鳳凰三山は北岳・間ノ岳・農鳥岳からなる白峰三山の前衛をつかさどる山域で、山岳信仰の深い事でも知られている。 それぞれの峰に地蔵岳 2764メートル ・観音岳 2840メートル ・薬師岳 2780メートル と、念仏にちなんだ名がつけられていることからも解かるだろう。
またこの山域は、南アルプスの展望台としても素晴らしい。 
 
優雅な姿の“美人”・仙丈ケ岳や、白竜が天に昇るかの如く光る北岳の大樺沢雪渓、鋸岳のささくれ立った岩峰群、地蔵岳のオベリスク(地蔵仏)と尽きる事なく山岳美を魅せてくれる。



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甲斐駒ヶ岳〜鳳凰三山縦走ルート 行程図

    行程表                 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR甲府駅よりバス (2:05)→広河原よりバス (0:25)→北沢峠
《2日目》 北沢峠 (1:10)→仙水峠 (1:20)→駒津峰 (1:30)→甲斐駒ヶ岳
      (0:40)→摩利支天峰 (0:50)→駒津峰 (1:05)→仙水峠 (1:00)→北沢峠
《3日目》 北沢峠 (2:00)→栗沢山 (1:25)→アサヨ峰 (2:20)
→早川尾根小屋
《4日目》 早川尾根小屋 (2:30)→高嶺 (0:45)→赤抜沢ノ頭・地蔵岳まで往復1時間
      (1:15)→観音岳 (0:40)→薬師岳 (1:15)→南御室小屋
《5日目》 南御室小屋 (0:40)→苺平 (1:15)→杖立峠 (1:20)→夜叉神峠
      (0:45)→夜叉神峠よりバス (1:15)→JR甲府駅


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広河原からの南アルプス市営バスと
戸台からの伊那市営バスとの中継点・北沢峠
山荘やテント場がある登山の要衝だ
※ ウィキペディア画像を拝借

  《1日目》 北沢峠へ
今日はアプローチのみの行程だ。 従って、前夜までに北沢峠までアプローチしておこう。 
当日出発だと、JR甲府駅3:00発のバスに乗り、《広河原》で2時間近くの待ち時間を経て北沢峠着7:15となる。 これは体力面でかなりキツいし、何よりもこれでは“山に登ろう”という気力が萎えてしまうだろう。 楽しい登山を満喫する為にも、この《1日目》の行程を組み込んだ次第である。



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六方石より見上げる甲斐駒ヶ岳・本峰

  《2日目》 北沢峠から甲斐駒ヶ岳を往復
今日は全国に散らばる“駒ヶ岳”の中で最も標高が高く、最も誇らしい山体を成している甲斐駒ヶ岳に登ってみよう。 甲斐駒ヶ岳へは一般ルートが3つあるが、最も登頂が楽な『仙水峠ルート』を使っていこう。 さて、出発だ。 今日も《北沢峠》に泊るのだからテントはデポっておいて、余計な荷物はテントに全てしまい込んでいこう。 持ち物は水筒とカメラとタオル、そして食料はパンでもあれば十分だ。 

テント場の先で栗沢山から鳳凰三山のコースを分けて、《北沢》の流れに沿って歩いていく。 
やがて、砂防ダムを越えていくようになる。 ここから桟橋で沢を数回渡るが、沢沿いの道は概ね左岸についている。 台風などで崩れた沢岸をヘツったり、荒れた沢に転がる岩をロープ片手に高巻きしたり・・と、目まぐるしくバリエーションを連ねると、右岸へ架かる桟橋で沢を渡って樹林帯の中を急登していく。 

登っていくと、程なく《仙水小屋》の建物が見えてくるだろう。 まだ、疲れている程でもないが、“あること”の為に休憩しよう。 この“あること”とは、《仙水小屋》前に流れている水はとても冷たく上手いからである。 持ってきた水を捨てて汲みなおしても、十分“元”はとれるだろう。 

この小屋を出ると樹林帯の中に深く分け入り、ほとんど傾斜のない道を歩いていく。
30〜40分歩いていくと右側から徐々に樹林が薄れていき、これに変わって黒光りした溶岩の積み重なったガラ場が迫ってくる。 やがて、道はこれに乗り上げて、このガラ場をトラバース状に伝っていく。 ある程度伝って、ガラ場の間からハイマツが伸び出すと《仙水峠》は近い。 

《仙水峠》は正面が行き止まり、道は右も左も急傾斜で両側の山へ突き上げている。 
この《仙水峠》ほど、如実に“峠”を示す地形はそうはないだろう。 この道を左へ進むと甲斐駒の前衛峰・駒津峰への登路だ。 なお、右へ進む道は鳳凰三山への縦走路である。 

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仙水峠より望む
朝の甲斐駒・摩利支天峰

峠からは、甲斐駒の次峰・摩利支天峰が威風堂々とそびえ立っている。 これを見て、気合を入れて進んでいこう。 登路に取り付くと、駒津峰の樹林帯をジグザグと縫うように登っていく。
1時間程登ると辺りをハイマツが囲み出し、道も甲斐駒の山系らしい白い砂岩の登りとなる。
この登りでどれ位登ったかを測る目安としては、背後にそびえる栗沢山が最適であろう。

栗沢山の標高は2714mと、駒津峰と40m程しか変わらない。 目線が栗沢山の頂上付近を指すようになったなら、目指す駒津峰の頂上は近いという事だ。 やがて、白亜の大峰・甲斐駒の本峰と重厚なる北岳の山体が見えはじめて、それを頼りにつめていくと駒津峰 2752メートル の頂上だ。

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白竜が駆け昇るが如く
雪渓を突き上げる北岳

駒津峰頂上からは白亜の菱をもたげる甲斐駒・本峰、深い緑の重厚な山塊・北岳、《薮沢カール》を大きく広げて優雅にたたずむ仙丈ケ岳、振り返れば栗沢山からアサヨ峰・鳳凰三山と続く山なみと、稜線上に角のように突き出すオベリスクが見事だ。 素晴らしい山の景色を眺めてひと息着こう。

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早川尾根より望む鳳凰三山
オベリスクもはっきりと見渡せる

駒津峰からは、甲斐駒ヶ岳に向かって痩せた岩稜上を伝っていく。 距離は僅かなのだが切り立った岩の登降が数回あり、鎖片手のトラバースもあるので結構厄介だ。 岩峰を伝っていくと途中で岩峰を直接伝うルートと、下を巻くルートとに分かれる地点がある。 

これは、この岩峰で遭難事故が相次いで発生した為に、下の樹林帯を巻くルートが設けられたからである。 上のルートも何とか通過できるが、右側がスッパリと切れ落ちて高度感があり、しかも鎖が破損したまま復旧されていないのでここは巻道を通った方が無難だろう。 

この岩稜を通過すると、《六方石》という噴出した花崗岩の大岩が見えてくる。 
この岩の立つ地点が甲斐駒ヶ岳の取付となる。 《六方石》の背後にある営巣のように刳り貫かれた岩小屋が多く見られる岩壁を、右に巻くように登っていく。 ここから甲斐駒の岩尾根の先に突き出したリッジの上に登り、ザラザラの砂礫帯を斜めに突っ切って主稜線に出る。 ここで、砂礫帯をジグザグに切りながら大きく迂回するルートと、主稜線の岩峰を直接登るルートに分かれる。 

今回は、『甲斐駒』の峰に登る雰囲気を味わう為に直登ルートに進路を取ろう(メインルートは迂回ルートである)。 踏跡に沿ってリッジ通しに登っていく。 少し行くと右に迂回ルートへの連絡道を分け、ルンゼ状に迫ったリッジの大岩を乗っ越す。 この乗っ越しは、最初の踏み出しが全てであろう。
できるだけ足を高く振り上げて、いいポジションを確保しなければズリ下がって“やり直し”となるだろう。 

これを越えると小さな岩の突き出しを伝っていくが、岩の突き出し加減からルートに行き詰まる事もある。 もし行き詰ったなら、“稜線通し”を意識して進むといい。 伝っていくと、やがて砂礫の平坦な尾根上に出て、《戸台川》本谷の深いツメを見ながら本峰に向かって突き上げていく。
後は、広い砂礫の傾斜のどこをルートに取っても、甲斐駒ヶ岳 2967メートル の頂上に建つ石祠の背後に飛び出る事ができる。 

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甲斐駒ヶ岳・頂上祠
古代から山は里の守護神
として崇められていた

甲斐駒ヶ岳の頂上からは、威風堂々とした北岳が正面にそびえ、背後には秩父や八ヶ岳・富士山が美しいシルエットを魅せる。 でも、一番目を引くのは、鋸岳から甲斐駒本峰に連なるノコギリ刃のような岩峰群であろう。

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ノコギリ刃の如くの様相を魅せる鋸岳

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対照的に仙丈ヶ岳は
のっぺりとした穏やかな山容を魅せていた

ただ、仙丈ケ岳はノッペリとし過ぎて、思った程に高さは感じられない。 
もし、時間と体力があれば、この岩峰の途中にある《六合石室》までいってみよう。

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伝説の山小屋・六合石室

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その『伝説の小屋』の前は
最も朝の仙丈ケ岳を美しく望める所

ここから眺める仙丈ケ岳は、その優雅さを取り戻した素晴らしい眺めである。 
それと、“伝説の岩小屋”である《六合石室》にも興味が尽きない。 なお、このルートを経て鋸岳まで伝う山旅は『
名峰百選の山々 第75回 鋸岳 act 1』で歩いてみたので、興味のある方はそちらをどうぞ

・・いい眺めと涼風を心ゆくまで楽しんだなら、下山に取りかかろう。 下りは砂礫帯を大きく迂回するルートを取って、途中で摩利支天峰に立ち寄っていこう。 広い砂礫の道は、ザラザラでスリップしやすいので注意していこう。

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20分程下ると摩利支天峰への分岐(道標なし)が分かれ、縦走路から一段下に下りて張り出した岩壁をトラバースで伝っていく。

1ヶ所大岩の基部のへつりがあるので、ここの通過は注意したい。 15分程歩くと、ガレキの盛り上がりの上に宝剣や玉串・鉾などが突き立てられた摩利支天峰 2940メートル の頂上に出る。 

ここから望む甲斐駒本峰は、白亜の切り立った一枚岩が直立し“そそる”眺めだ。 摩利支天峰で甲斐駒本峰の写真を“ゲット”して下山しよう。




←岩峰に神々が宿った・・
     神々しい姿を魅せる摩利支天峰


下りは《六方石》まで砂礫の急傾斜を下り、後は直登ルートと合流して往路を下る。 下山途中で、《仙水小屋》の流水がとっておきの優しさで出迎えてくれるはずだ。 この水が美味しければ美味しい程、この山行が充実していた事を実感できるだろう。

   ※ 続く《3日目》以降の行程は、次回の『第344回 鳳凰三山』にて・・






『日本百景』 晩夏  第304回  伊勢・参宮めぐり  〔三重県〕

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伊勢神宮内宮へ渡す宇治橋

関西圏に居住の方なら、前夜発の1泊2日(もちろん、車中泊)で手軽に楽しめる景勝地が伊勢志摩であろう。 だが、伊勢以外に『志摩』まで加えてしまうと、到底前夜発の1泊2日では抑えきれないボリュームとなるので、ここは敢えて『伊勢』だけに留める事にしたのである。

それでは、『伊勢めぐり』をしてみよう。 伊勢の風景といえば、ひと昔前の修学旅行の定番地であった『夫婦岩』だろう。 日中は観光客で人だかりとなる『夫婦岩』周辺も、夜明け前なら誰一人としていないのである。 写真を撮るからには、狙い時はこの”誰もいない”夜明けの情景なのである。

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国民的観光地での贅沢極まる
”誰もいない”ひととき

また、この『夫婦岩』は全国でも名を馳せた観光地であるから、車を駐めるスペースも十分にあるし、トイレや自販機もあるので、前夜発でやってきての一夜を明かす仮眠場所としては打ってつけとなるのである。

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灯篭を広角で煽ってみた

要するに、こういう観光地で人だかりに遭遇せず、かつ費用も節約したいなら、”夜討ち朝駆け”の行動をとるのがセオリーとなるのである。 但し、代償としてゆとりがない旅となってしまうのであるが・・。

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観光客が押し寄せる時間帯になると
こういう写真は絶対に撮れないだろうね・・

でも、誰一人いない贅沢過ぎる夜明けの情景は、写真撮りにとっては至福の時である。
観光客がやってくるまでのひととき・・、贅沢極まる我一人だけの『夫婦岩』の夜明け情景を堪能しよう。

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キメはやっぱり
『夫婦岩と御来光』ですね

『夫婦岩』での夜明けシーンが一段落したら、上で述べた観光地での対応法の”夜討ち朝駆け”の行動を取って速やかに退散しよう。 なおこの手法は、ワテ的な旅手法を採用する方以外には有り得ない手法なので念の為。

そして伊勢といえば、”お伊勢参り”の言葉があるが如く、伊勢神宮への参拝だろう。
だが、伊勢神宮の楽しみといえば、神宮の神殿よりも参道に連ねる店屋を訪ねて伊勢の味覚を堪能する事であろう。

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伊勢の《おかげ横丁》の練り歩き
今回だけはグルメを許す!
※ おかげ横丁の紹介サイトより

云わずと知れた国民的お土産品の『赤福もち』を始め、『伊勢・松阪牛のステーキ串』、甘辛いだし汁をつけてすする『伊勢うどん』などを食しながら伊勢神宮までの参道を練り歩くのは実に楽しいのである。 なお、筆者のワテが「この『日本百景』にグルメは当てはまらない」と日頃から口にしている言葉は、ここのこの時に限って藪の中に・・。

でも、こういった店屋が開くのは、観光客が訪れ始める正午前辺りからなので、『夫婦岩』で夜明けの情景に魅せられて”夜討ち朝駆け”をしてきた直後なら、ちょっと早すぎるのである。
従って、伊勢神宮の参道が賑わうまでの開いた時間は、伊勢の海とワテが大好きな鉄道のおりなす風景の地での撮影に費やす事にしようか。

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朝の光が残っている内は
筏が水面の下に

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時が経つと見る見る内に潮が退いて
水面下の養殖筏が現れる

その地は池ノ浦の干潟である。 朝の潮が満ちて筏が水面下にあったのが、徐々に潮が退いて筏が現れる干潟を背景に、干潟を仕切る土手上をゆく列車を撮ったり、係留されているモーターボートをアテにしたり・・と、勝手知ったる被写体で楽しむ事ができたのである。 まぁ、ここは、ワテのように鉄道に興味が無ければ、立ち寄る意義の乏しい場所となるのてあるが・・。

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干潟に係留されたモーターボートをアテに・・

列車は1時間に1本程度の運行があるので、上下列車で均すと半時間に1回のシャッターチャンスがある。 従って、干潟を埋めた潮が徐々に退いていくのを背景に、土手上をゆく列車が撮れるのである。

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ボートのモーターが
干潟のキャンパスのオブジェの様に・・

これらを狙っていると、いい時間になってくるだろう。 もちろん、今日は朝飯は我慢しておこう。
なぜなら先程の予告の通りに、これから伊勢神宮の参道の店屋で味の舌鼓を打つ為である。
そして舌”鼓”に掛け合わせるように、伊勢神宮の参道では『伊勢太鼓』の演技イベントが行われるのである。

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掛け声と共に伊勢太鼓のイベントが始まる

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勇壮な鼓音が会場に響く

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こういう旅もいいかもしれない

『赤福もち』や『牛ステーキ串』をついばみながら、太鼓イベントを見物するのも一興である。
・・今回は、日頃の『日本百景』の流れから大いに外れたが、たまにはこういう旅もいいかもしれない。

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朝熊山より望む伊勢の入江
でも最後は『日本百景』らしく
風景で締めなきゃ・・ね

こういう観光客がごった返す場所に立ち寄って”普通の観光旅行”を味わう事で、本来の『日本百景』の旅が恋しくなるのだから。














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