廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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この写真は今月の8日に撮影したものですが、この種のカメムシを見るといつも疑いもなくアオモンツノカメムシだと言ってきました。先日、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」を見たとき、ヒメアオモンツノカメムシやベニモンツノカメムシ類などの近縁種が多数あることに気が付き、もう一度調べ直してみることにしました。

12月4日と5日に採集した♂と♀の標本について、実体顕微鏡で焦点位置を変えながら20-30枚の写真を撮り、これをフリーソフトCombineZPで深度合成をして標本写真を作りました。この写真をもとに図鑑の記述と比較してみました。カメムシについては素人なので、そのつもりで見てください。

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♂と♀の腹側と背側の写真です。一見すると♂と♀の違いは分かりませんが、後で載せる拡大写真のように尾端の生殖節の部分が明らかに違うのですぐに分かります。

まず、「新訂原色昆虫大図鑑III」のアオモンツノカメムシの記述との比較です。

①黄緑色の地に赤褐色ないし暗褐色の斑紋があり、②暗色小点刻を散布する。③前胸背側角の突出は少ない。④中胸板の竜骨突起や⑤第3腹節の棘状突起はヒメツノカメムシ属のものに似る。⑥♀の第6,7腹板の両側にベンダーグラスト器官があり、同側のものは接近して位置する。

ポイントとなる部分に数字を入れていて、それぞれ写真に載せた番号の部分に対応しています。①は主に革質部と呼ばれる硬い翅の部分に褐色の紋があることを書いています。②は黒い点が散布していることです。③はツノカメムシの由来ともなる突出についてですが、「突出は少ない」というのは他のツノカメムシに比較してという意味のようです。④と⑤は拡大した写真で見るとわかりやすいと思います。

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④が竜骨突起で、竜骨というのは船の船首から船尾にかけて船底を走る構造材を指しています。⑤は腹部から頭部の方に向かって飛び出している突起のことです。この竜骨突起と棘状突起は互いに密着しているので、体の中心に低い塀があるような感じになり、黒い線の見える口吻が中心からずれた位置に見えています。

最後の⑥のペンダーグラスト器官は聞き慣れない用語なのですが、これも♀の尾端を拡大すると分かります。

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この写真の⑥にある左右1対の器官を指しているようです。ペンダーグラスト器官というのは、1953年に調べたPendergrastに因んで名付けられた器官です。最近でもその働きはよく分かっていません。古くは交尾のときに使われる器官だとされていたのですが、最近では産卵のときに使われるとする考えの方が有力です。この場合にも二つの意見があり、一つはペンダーグラスト自身が提案したもので、この部分を脚でこすることで、その刺激で産卵するというものでした。もう一つは産卵するときに、後脚の跗節でこの部分をこすり、そこから出る液を卵になすりつけることで、卵を捕食者や寄生から守るようにしているというものです。しかし、別にこの器官を持たない種でも問題なく産卵を行うので、最近では後者の考えの方が有力です(C. Fischer (2000)による)。この腹部第6節と第7節にある器官は互いに接するように付いています。

次に、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」のベニモンツノカメムシ属のところでの記述についても見てみます。

④中胸腹板の隆起は後方に伸長し、後端が後脚基節付近まで達する。⑤腹部第3節の棘状突起は短く、中脚基節付近まで伸びる。

この④と⑤については、原色昆虫大図鑑の記述と基本的に同じで、竜骨突起と棘状突起の長さについて書いています。

最後に、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」に載っている近縁種との違いを検索表から見てみます。アオモンツノカメムシの部分を抜き出すと次のようになります。

アオモンツノカメムシ類がベニモンツノカメムシ類と違う点
①革質部中央にやや不明瞭な小黒紋がある。⑦腹部覆面の両側部に黒紋はない。⑧♂生殖節の後縁は長毛の束を欠く。

アオモンツノカメムシがヒメアオモンツノカメムシと違う点
③前胸背側角は三角形に突出する。⑨小楯板は通常暗赤色の紋に覆われる。⑩腹部第7節後端は鋭く突出し、雌雄とも生殖節の後端を明らかに超える。⑪♂生殖節の後端は腹面側に多数の長毛を具える。⑫把握器の先端部外縁に鈍い角がある。


最初の①については上と同じです。⑦については♀の尾端の拡大写真の⑦の位置の左右両側に黒点(黒い気門)がないことで確かめられます。♂についても同様です。⑧については♂の尾端の拡大写真を見てみます。

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上の写真でベニモンツノカメムシ類は⑧の位置に長毛の束があるらしいのですが、この写真ではありません。

2番めの記述で、③の突起がアオモンでは三角形状ですが、ヒメアオモンでは丸くて弱いと書かれています。⑨の小楯板は最初の標本写真で体の中央にある三角形状のものを指しています。この部分がアオモンでは暗赤色ですが、ヒメアオモンでは淡いと書かれています。⑩は腹部第7節の突起です。この突起が、アオモンでは鋭いが、ヒメアオモンでは突出が弱いということです。⑪は♂の尾端の拡大図で分かりますが、アオモンでは長毛を多数持つが、ヒメアオモンでは長毛はほとんどないということです。上の写真の⑫は♂の把握器ですが、これがアオモンでは鈍角の角があるが、ヒメアオモンでは丸く、角がないということで違いが書いてあります。おそらく、⑫の位置の角を指しているのでしょう。

以上のような比較からこれらの標本はアオモンツノカメムシであることは間違いなさそうですが、ベニモンツノカメムシ類とは革質部の黒い不明瞭な紋①があるかないかで見分けられ、ヒメアオモンツノカメムシとは腹部第7節後端の突起⑩が鋭いか鋭くないかでだいたいは見分けられそうです。

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